概要
プロジェクト・スーパーノヴァを経て開発された「VF-19」、「VF-22」を超える可変戦闘機として開発された機体。ペットネームは「エボリューション」。
バジュラから採取されたフォールドクォーツを可変戦闘機に導入した最初の機体であり、機体やパイロットに掛かる慣性負荷をフォールド空間に一時的に待機させる「ISC」や操縦桿と射出シートを兼ねる新開発の耐Gパワードスーツ「EX-ギア」などの新機軸の技術が導入されている。
開発経緯
2040年代以降、統合軍の交戦ドクトリンが無人戦闘機で敵の大部分を迎撃し、VF-171で取りこぼした敵に対応する言わば「無人機頼み」になりその結果、軍全体でパイロットの練度低下を招いてしまう。この現状を危惧した新星インダストリーと惑星エデン駐在の統合軍が中心となって開発が行われた。
新統合政府や統合軍中央部も開発に関与しているが、VF-19やVF-22がその試作機である「YF-19」、「YF-21」と比較して性能が抑えられているにもかかわらず乗り手を選ぶ「じゃじゃ馬」であった事から、それ以上の性能を持つ機体の必要性・有用性が疑問視され、積極的な協力は得られていない。(高性能な新型機が反逆に用いられる可能性も危惧していたとされる)
その為に開発は難航し、特に当時の技術で高純度のフォールドクォーツの人工量産が不可能だった為、一時的に開発が停止する事になる。(但し、一部の面々により部分的な開発は続けられた)
暫く時が流れた2048年。銀河中心部を航行していた第117次大規模調査船団がバジュラの襲撃により壊滅、船団旗艦であったSDFN級戦艦も轟沈すると言う悲劇が起きる。この事態に新統合政府もバジュラの力に恐怖し即座に新型機の開発を計画するが、その際に出された要求案の大部分を本機が既に満たす若しくは解決の見込みが付いている状態だった為、急遽開発が本格的に再開。上記の新技術を採用した本機はテストパイロットの実力もあり、模擬戦でVF-19・VF-22数十機で編成された防空網を突破、アグレッサー艦隊の対空砲火を掻い潜りつつ標的の戦艦にトップアタックを仕掛け轟沈判定を叩き出すと言う驚異的な性能を見せつける。
これにより見事、次期主力機の座を射止めるも対バジュラ戦の戦闘データはおろかバジュラそのものについての情報さえまともに無い状態であり、「この機体で対抗可能なのか?」と言う不安を抱えた状態だった。
そんな矢先、「マクロス・フロンティア」、「マクロス・オリンピア」、「マクロス・ギャラクシー」の三船団が銀河中心部のバジュラ生息宙域に侵入する事が判明。これを好機と捉えた統合政府はYF-24の設計データを三船団に提供し、各船団が独自改良した機体でバジュラと交戦させ、その戦闘データを見返りとして入手しようとする「トライアングル計画」を発令。それぞれの試作機に「YF-25」、「YF-26」、「YF-27」の開発コードを与える。元々バジュラと一戦交えるつもりだったフロンティアとギャラクシーは積極的にこの計画へ参加し、オリンピアも当初は参加の意向を示していたが、本来の目的を優先する為に開発を中断しフロンティアと合同開発の体制を取った。これらの計画から「VF-25」、「VF-27」が誕生する事となる。
その後も、最初から対バジュラ戦を想定した(今までの機体は飽くまでバジュラと戦えるかも止まり)「YF-29」や、バジュラ戦役後に開発された「YF-30」とその量産モデルの「VF-31」などの所謂YF-24ファミリーとして系統が続いていくことになる。
なお、本機で採用された「EX-ギア」はその実用性の高さから民生モデルが生産された他、バジュラ戦役後期には当時の主力機であるVF-171の改良時に採用され、その他の武装やエンジンを改修した「VF-171EX」に搭載される事になる。しかし所詮は旧型機に付け焼き刃を施したに過ぎず、何より希少なフォールドクォーツを使用する故に高価な「ISC」は搭載されていない為、VF-25搭乗経験者からは「間に合わせの機体」と評価されている。(それでも従来機では最高峰のVF-19・22クラスまでは底上げされている為、腕利きが乗ればバジュラの撃破も可能)
用語
ISC
「Inertia Store Converter」の略称で「慣性蓄積コンバーター」という意味。
フォールドシステムの応用で、急激な空戦機動をとった際にコックピット周辺で発生した「慣性」を一時的にフォールド空間に転送、その後機動が安定してから少しずつ通常空間に転送する技術。
これにより人体の耐G能力を大幅に超える機動が行えるようになり(どのくらいかと言うと伝説の5秒と同等の空戦機動が普通に行えるレベル)、VF-19・22の時点で既に人間が耐えられる限界性能に達していた可変戦闘機を次のステージに進化せさる事が可能となった。
しかし、完璧な技術という訳ではなく蓄積できる慣性には限界がある他、希少物質であるフォールドクォーツを使用するために機体コストの高騰は避けられず、調達可能な機体数が制限される等のデメリットも多数ある。(人工フォールドクォーツである「フォールドカーボン」も存在し代用品として採用されているが、純度が低いため天然物より性能が低下する。)
なお、戦闘後に蓄積した慣性の還元が不完全なまま帰投した場合、残っている負荷を還元する為に機体とパイロットには「解凍」と呼ばれる待機時間が必要となる。
EX-ギア
次世代可変戦闘機用に開発された耐Gパワードスーツ。
従来のパイロットスーツを超える耐G性能を有する他、装着者の身体能力の底上げや脱出時にそのまま移動ユニットとして機能する為、パイロットの生存性を大幅に上げる事に成功している。
装着時は背部にウイングと小型熱核タービンエンジンを主機とする飛行ユニットが、脚部は足裏にローラー型の走行装置が装備され陸・空問わず高い機動性を誇り、更に飛行ユニットを応用する事でホバリング走行も可能。その他に、この状態で機体の遠隔操作が可能となっている。(但し簡単な動作に限る)
機体搭乗時にはスーツそのものがコックピットと一体化し、手足のパーツが操縦桿とペダルに変形する。この仕様から、パイロットの操縦癖や飛行データは機体ではなく全てEX-ギア側に記録されているため、非常時に他の機体に搭乗しても「愛機」と同じ感覚での操縦が可能となる。
ただし誰にでも扱えるという訳ではなく、ある程度の訓練を積んでいないと各機能(特に飛行ユニットと脚部ローラー)を扱いきれないほか、パワードスーツ特有の急激な身体強化に耐えられる強靭な肉体とそれを制御出来る繊細さを求められる。(劇中でシェリルが体験した際は力加減が出来ずに卵を潰している)
そもそもスーツ本体がかなりの重量であり、上記の身体条件を満たしている者でも動力を切った状態では歩く事もままならず、とある企業では違反行為などの罰則として「無動力歩き」を行っている。
美星学園のパイロット養成コースでは、部品規格が軍用と同じで装甲部分が削減された民生モデルを実習で使用している。規格が同じとは言え、セキュリティーによりVF-25等EX-ギア対応機の操縦は本来不可能だが、パイロットが脱出した後に作動する緊急モード時は、その後の回収作業を効率よく行うためにセキュリティーが解除され運用可能になる。(第1話でアルトが操縦出来たのもこれが理由)