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ディスコ探偵水曜日

でぃすこたんていすいようび

舞城王太郎の小説。2008年に単行本、2011年には文庫版が出版された。単行本・文庫ともに新潮社より発売。 その革新性や異常性から「第五の奇書」と呼ばれている。
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真実なんて天井にぶら下がったミラーボール。眩い光にダンスを止めるな。踊り続けろ水曜日。


ディスコ・ウェンズデイ。あなたが日本を訪れたとき、《神々の黄昏》を告げる交響楽が鳴り響いた——。


ジャスト・ファクツ!真実だけを追い求め、三千世界を駆けめぐれ、ディスコ!!


行け、ディスコ、世界がお前を待っている。


踊り出せよディスコテック。急いでな。




ここが世界の中心



概要編集

舞城王太郎小説。ゼロ年代を代表するスリップストリーム文学の金字塔にして、「舞城王太郎の最高傑作」との呼び声も高い作品。作者の小説中最長であり、まさに渾身の大作と言えるだろう。あの悪名高き『ドグラ・マグラ』『黒死館殺人事件』『虚無への供物』ら三大奇書に連なるものとして、「第五の奇書」(「第四の奇書」は竹本健治『匣の中の失楽』。というか、「三大奇書」自体がこの『匣の中の失楽』の発表時に作られた呼称であり、順番が逆である。そのため「四大奇書」という呼び方もよくされる)と評されるもの一つである(その他に「第五の奇書」とされるものに、乾くるみ匣の中清涼院流水コズミック山口雅也奇偶古野まほろ天帝のはしたなき果実芦辺拓綺想宮殺人事件』などがある)。

舞城作品ではおなじみの東京都調布市と福井県西暁町という架空の町が舞台となっており、劇中時間は2006年7月の設定になっている。

※作品内にグロテスクなシーン・性的なシーン・性暴力を想起させるシーンが含まれるため、苦手な方は注意!どれも結構ハードだぞ!


「第一部 梢」 「第二部 ザ・パインハウスデッド」 「第三部 解決と『◯ん◯ん』」 「第四部 方舟」の全四部構成となっており、1000ページを超える分量と破天荒極まりない内容は要約することが不可能なほど濃密で、まさに「奇書」の名にふさわしく、謎めいた物語がどんでん返しを重ねながら加速を続け、次第に途方もないスケールの《神話》となるのが本作品の大きな魅力。


ジャンル的にはミステリーに分類されることが多いが、それはこの作品のたった一側面に過ぎない。

物語の軸となるのは福井県西暁町にあるパインハウスで起きる一連の事件だが、タイムスリップやパラレルワールドといったSF的要素もかなり前面に出ている(特に物語後半は超理論SFとしての側面が大きい)。物語を通して魔術や占星術などの専門用語が飛び交う異質さも特徴だろう。また奈津川サーガなどの作品群で登場する奈津川兄弟や、清涼院流水の大説(=小説)『JDCシリーズ』や、舞城がそのトリビュート作品として発表した『九十九十九』で主人公として活躍する九十九十九が登場するなど、セルフパロディ的な要素も含まれている(原作中の人物との関連は不明であり、同一人物であるというわけではない。手塚治虫の「スターシステム」のようなものと思われる)など、とても一言で表せるようなシロモノではない。


つまり『ディスコ探偵水曜日』とは、パラレルワールドタイムスリップ、宇宙論などを扱ったSFであり、アニメ調の表紙と、ポップなキャラクターたちの活躍を軽妙な語り口で綴ったライトノベルであり、ホロスコープや神話・魔術などのオカルトチックでペダンチックなガジェットが独特な雰囲気を醸す幻想小説であり、現実の事物や人物、舞城の他作品や先達小説キャラクターが登場するメタフィクションであり、ディスコの一途な「愛」を描いたボーイミーツガールな恋愛小説であり、ディスコたちのささやかな非日常と想いがやがて世界を揺り動かすセカイ系であり、「ブレない男・ディスコ」の梢を救う血みどろの闘いを描くハードボイルド小説であり、「愛の尊さ」や「《悪》だけではない人間の気高さ」を高らかに歌い上げる人間讃歌であり、人間の意識や世界の在り方について思索する純文学であり、殺人事件の謎を名探偵たちと共に推理するミステリーであり、名探偵とは何か、ミステリーとは何かを問う、推理小説へのとびっきりの愛と挑発が込められたアンチミステリー的作品でもあり、新しい世界の創造を描く神話でもあるという、世界の全てを内包したようなとんでもないスケールの、とにかくメチャクチャな小説なのである。


あまりにもいろいろ詰め込みすぎたためか本作は莫大なエネルギーを孕んでしまい、息をつく間もなく繰り出される超展開&超推理&超理論に思考回路を焼き切られ、特に物語後半ではずっと何を言っているのかわからない、そもそもなんでこんなことを描いているのかわからない、さっきまでの話と違いすぎてついていけないといった事態が頻発することとなった。だから奇書なんだけど……

だがこの混沌の先に奇才・舞城王太郎の最高傑作とまで言われる所以がある。ディスコは梢を救えるのか?1000ページにも及ぶダンスの衝撃のフィナーレを是非その目で、いや体で感じてほしい。

だからすげえ読むの大変だけど、ゆっくりでもいいから諦めず、頑張って最後まで読んでみてほしい。本当に大変だと思うけど。


あらすじ編集

迷子探し専門の米国人探偵、ディスコ・ウェンズデイは、両親と誘拐犯の双方から引き取ることを拒否され、行き場を失くした六歳の女の子・山岸梢と一緒に暮らしていた。ある日、突然梢の体が巨大化してしまう。そして体には十七歳の未来の梢の魂が侵入していた。さらに少女たちを次々と昏睡状態にする《パンダラヴァー》事件の被害者・島田桔梗の魂が宿ったり、梢の膣から四本の指が出てきたりといった不可解な出来事が相次ぐ。ディスコは水星Cと共に梢の魂の行方を追って、推理作家・暗病院終了の殺害事件が起きた福井県の《パインハウス》へと向かう。パインハウスには日本中から《名探偵》が集い、真相を誤った名探偵が目に箸を刺して死んでいく中、我こそが事件を解決せんとしていた。ディスコは名探偵たちの推理合戦に巻き込まれ、混沌としていく事件は、次第にディスコを想像もできないような《地獄》へと導いてゆく…………


特徴編集

『舞城節』とも言われる、非常に独創的なスピード感のある独りごちた文体が特徴。地の文のようなものはなく、全編を通して主人公・ディスコの一人称視点の語りによって進められる。

また頻出する固有名詞、奇妙な名前の登場人物、ユニークな擬音、途中で繰り出される衒学的な推理、繰り返されるキーワードの太字化、文字の巨大化など、どれも普通の小説では見られないエキセントリックな仕掛けがされており、本作の独特な空気感を構成するのに一役買っている。


文体編集

「特徴的な文体」と言っても言葉では想像できないと思うので、百聞は一見にしかず。冒頭部を引用してみよう。


『今とここで表す現在地点がどこでもない場所になる英語の国で生まれた俺はディスコ水曜日。Disとcoが並んだファーストネームもどうかと思うがウェンズデイのyが三つ重なるせいで友達がみんなカウボーイの「イィィィィハ!」みたいに語尾を甲高く「ウェンズでE!」といなないてぶふーふ笑うもんだから俺は…いろいろあって、風が吹いたら桶屋が儲かる的に迷子探しの専門の探偵になる。俺のキャディラックのボディには俺の名前と事務所の住所と電話番号の上に『ベイビー、あんたが探してんのは結局あんた自身なのよ』って書いてある。』


……いかがだろうか。読点が異様に少なく一息で読ませようとしてくるため、良く言えば非常にドライブ感のある文章、悪く言えば呼吸が続かず読みづらいリズムの悪い文章とも言えるだろう。要は癖が強いということだが、こんなテンションの文章が、全く冷めることなく最初から最後まで1000ページ以上変わらず綴られる。この本の異常さが少しでも伝わっただろうか(舞城作品は全部こんな感じだが……)。

それでも読み進めていくうちに慣れてどんどん頭に入ってくるようになるが、最初はかなり読むのに疲れるため、通読の大きなハードルの一つといえるだろう。

(なお、「今とここで表す現在地点がどこでもない場所になる英語の国」というのはNow:[今]+Here:[ここ]=Nowhere:[どこでもない場所]になる「英語の国」=「アメリカ」という意味)


蘊蓄編集

「衒学的な推理」(恐らく『黒死館殺人事件』の影響を多分に受けたもの)も本作の大きな特徴の一つである。蘊蓄はかなり多方面にわたって展開され、精神医学・脳科学・認識論・ローマ神話・ギリシャ神話・北欧神話・理論物理学・哲学・日ユ同祖論・創世記・キリスト教・西洋魔術・西洋占星術・ユダヤ教・ヘブライ語・天文学・文学・薬学……などなど、上げ出したらきりがないほど。


推理合戦編集

本作の大きな見どころかつ特徴の一つに名探偵たちによる推理合戦があげられる。これ自体は「多重解決」と呼ばれる本格推理小説などでもよく見られる形式だが、さすがは五大奇書が一角。一言で終わるような短い推理から魔術などの知識が活用されるオカルトな推理、宇宙論が引用されるなどほとんどSFな推理、果てはこんなのが真実なら推理なんて無駄では?といったおよそ論理的とは言えないトンデモな推理までもが多数飛び出す様は圧巻で、まさに奇書とはなんたるか(同じく奇書の『虚無への供物』でも同様の超絶推理合戦が繰り広げられる)。またその際推理を間違った名探偵は不可解な死を遂げるという、「名探偵」=絶対に推理を間違えない存在への強烈なアンチテーゼ的設定が他の多重解決モノとは一線を画する要素になっている。


ネーミング編集

作中でも自虐的に触れられるが登場人物(特に名探偵)に奇妙な名前の人物が多い。例えば主人公の名前は「ディスコ・ウェンズデイ(本名)」である。ファウストメフィスト賞作品に慣れている人なら「はいはいいつものね」と流せるかもしれないが、初めてそういったカルチャーに触れる人からしたら混乱してしまうだろう。登場人物も多いので適時メモをとりながら読むのがオススメ。この小説長いし。


固有名詞編集

これはこの作品に限ったことではなく舞城作品の特徴でもあるが、作中には現実の商品や会社名などが頻繁に登場し、それが一見荒唐無稽だが妙にリアリティを感じさせる独特の世界観・空気感を形作る一つのピースとなっている。

また中には重大なヒントや伏線になっているものも。


登場人物編集

非常に登場人物が多いため、中心的な人物だけ記載する。


主な人物編集


  • ディスコ・ウェンズデイ(Disco Wednesdayyy)

「ジャスト・ファクツ。」


本作の主人公である三十五歳の迷子探し専門米国人探偵。アメリカ合衆国サンディエゴ出身だが、現在は東京都調布市にて梢と同居している。日本語は饒舌で作中ではほとんど日本語で会話している。梢のためならなんでもする行動力と、長年の探偵稼業で培った高い戦闘能力をもって事件に挑んでいく。恋愛に対しては一途でロマンチストな性格で、高校時代の同級生「ノーマ・ブラウン」がずっと気になっている。子供好きで子供が傷つくことは許さない。

本名は「ディスコ・アレクサンダー・ウェンズデイ」で故郷には家族もいるが、自身のアイデンティティを創作する癖があり、「孤児」という設定や、「踊場水太郎」や「ウィリアム・イーディー」といった偽名も使う。


  • 山岸梢(やまぎしこずえ)

「この世の出来事は全部運命と意志の相互作用で生まれるんだって、知ってる?」


本作のヒロインである六歳の女の子。自身の誘拐事件を解決したディスコと同居している。平穏な日常を送っていたが、突如身体が巨大化、十七歳の梢が〈侵入〉するなど、超常現象に見舞われる。ディスコのことが大好き。


  • 《六歳》の梢

現実時間の梢。あまり言葉を聞き取ることができず、言い間違えも多い。イクラちゃんのモノマネをするなど、行動や言動は無邪気で健康な六歳児そのものであり、おかしなところはないようだが……?


  • 《十七歳》の梢

十一年後の未来の梢。未来では里親に引き取られたことで「井上梢」(いのうえこずえ)と名前が変わり、住所も調布市ではなく中央区水天宮に住んでいるらしい。また兄は「星野真人」というらしい……?六歳の頃の記憶は断片的にしか無く、六歳の冬に聖リチャード幼稚園に入ること以外、ディスコのこともあまり覚えていないとのこと。どうもディスコに恋愛感情があるようだが、「悲恋ですよ、私たち」と訳あって結ばれないことを示唆している。


  • 水星C(すいせいしー)

「探偵、お前、招かれてるな。」


星野がつれてきた謎の男。白Tシャツとジーンズというラフな服装に、非常に筋肉質ながっちりした体格をしている。性格は傲岸不遜で粗暴、災いを好み、自ら面倒ごとを起こそうとする節があるうえ、口も非常に悪い。親はおらず、特徴的な「水星C」という名前は本名だが本人もあまり好きな名前ではないらしい。

非常に暴力的で、実際に作中でも何回も喧嘩を仕掛けているうえ、喧嘩の腕もかなり強い。殴られてもピンピンし、むしろ楽しんでいるような不気味な雰囲気を放つ。

また非常に厄介なのが腕力だけではなく、ホロスコープや神話などについての知識も豊富なうえ趣味人でミステリーにも詳しく頭の回転も速いなど、知能も非常に高い。精神面にも弱さは全くなく、付け入る隙はない。

作中でも無類の強さを誇り、味方に回れば非常に頼もしい存在ではあるが、気分屋で己の快・不快のみが行動原理なため誰にも制御できないというなんとも恐ろしい存在。だが驚くべきことに、職業はなんと《まくり屋》という和菓子屋で働く和菓子職人


  • 冬野勺子(とうのしゃっこ)

『しっかりしてよね。名探偵なんかに負けないでよ。』


ディスコのアメリカ時代からの知り合い。既婚者で旧姓は室井。現在は夫と共に静岡に在住しており、なぜか外見がノーマ・ブラウンそっくりになっている。


  • ノーマ・ブラウン

「ガッデムディスコシット。やーっと話しかけてきたね。」


ディスコの高校時代の友人の女性。現在は既婚者。高校時代は天文学部所属の変わり者で、いわゆる《ギーク》だったらしい。いまだにディスコはノーマのことが気になっている。


  • 島田桔梗(しまだききょう)

「ディスコさん、こいつら見つけるんでしょ?もちろん」


突然梢の体に入ってきた屋久島に住む中学生。《パンダラヴァー》事件第四の被害者で、顔にパンダ風の落書きを施され胸にマジックで「やーんパンダしぶすぎ」と書かれ意識を失った状態で発見された。事件の記憶はなく、突然梢の体に入って来てしまったことに困惑している。


  • 星野真人(ほしのまさと)

「スイセーさん!今っすよ!」


調布駅南口前でたむろしている不良グループのナンバー3。十六歳だが学校には行っていない。母親の星野ひろみ(旧姓・井上)は横川慎吾と不倫している。ディスコは未来の梢から「星野真人には近づくな」と忠告された。舞城の小説『九十九十九』にも同名の人物が登場する。


  • 暗病院終了(あんびょういんおわる)

「さようなら。また会いましょう。」


ミステリー作家にしてパイナップルハウスの主人。福井県西暁町出身の三十七歳で本名は「三田村三郎」(みたむらさぶろう)。『パイナップル・ライブラリー』で第十九回メフィスト賞受賞(現実の第十九回メフィスト賞受賞者は舞城王太郎)。

以前は「愛媛川十三」というペンネームで『煙突ルンババ不可解』や清涼院流水の小説の登場人物・「九十九十九」をモチーフにした『九十九十九』などの作品を発表していたがペンネームを変え再デビューした。経歴や著作のタイトルなどの共通点の多さから、おそらく舞城本人がモデルと思われる。


  • エセスネインピナー

梢がつぶやく謎の名前。梢によると「パインハウスで寝ている人の爪を剥ぐ」らしい。


  • 《黒い鳥》の男

梢をレイプ(?)した男。腕に《黒い鳥》の刺青があり眼鏡をかけていること以外、一切不明。


《名探偵》たち編集

パイナップルハウスに集まった名探偵たちは《名探偵》なため、皆ルックスがいいというメタ的な設定がされている。


  • 大爆笑カレー(だいばくしょうかれー)

「A BOY FREAKISHLY BEAUTIFUL & BRILLIANT!」


世界的にも有名な名探偵。暗病院とは幼馴染で、地元も同じくパインハウスのある福井県西暁町。本名「酒井努」(さかいつとむ)。臍を三つ持つ男。躁鬱病を患っていた。自身の推理を発表後、目に箸が刺さり死亡した状態で発見された最初の人物。若い頃はハンサムで愛媛川十三の小説『九十九十九』の主人公・九十九十九のモデルになった。舞城の小説『九十九十九』にも同名の名探偵が登場するが、こちらは本名が「加藤努」。


  • 美神二瑠主(みかみにるす)

「無駄ですよ。この事件、絶対終わりませんよ。」


《推理王子》の異名を持つ名探偵。まだ十一歳の小学生だが、大人顔負けの非常に優れた頭脳を持ち、神話や魔術などの知識にも精通するなどかなりの博識。著名な名探偵の集まったパインハウスにおいても、屈指の実績を持つ世界的に有名な超大物名探偵であり、超多忙。半ズボンをサスペンダーでつるす子供っぽいファッションと可愛らしいルックスから女性人気も高い。


  • ジュディ・ドールハウス

白人の女性名探偵。名探偵連続怪死事件第二の被害者でパインハウスに隠されたホロスコープを推理した後、目に箸が刺さって死亡した状態で発見された。


  • 蝶空寺快楽(ちょうくうじけらく)

名探偵「蝶空寺兄弟」の兄。二十八歳。

名探偵連続怪死事件第三の被害者。


  • 蝶空寺嬉遊(ちょうくうじきゆう)

「犯人はここで一網打尽にします」


名探偵「蝶空寺兄弟」の弟。二十八歳。

兄にそっくりな綺麗好きな性格のハンサムボーイ。兄のことを馬鹿にされ殴りかかろうとするなど兄弟思いな一面も。


  • 八極幸有(はっきょくさちあり)

「果たしてこの事件に、本当の答はあるんでしょうか?唯一の真実というものは?」


名探偵。先月「小浜島ミノタウロス事件」を解決したばかりだがパインハウスまで駆けつけたという。

裕福そうな身なりをした高校生くらいの男子で、やや浮世離れした雰囲気があるイケメン。

ディスコとは以前事件で一緒になったことがあるが、ディスコ自身はそのことを忘れていた。


  • 垣内万々ジャンプ(かきうちママじゃんぷ)

パインハウスに集まった名探偵の一人。男。


  • 鯖山二号半(さばやまにごうはん)

パインハウスに集まった名探偵の一人。男。


  • 出逗海スタイル(でずうみすたいる)

「わははははは!謎は解けた!うわはははは!」


名探偵。上記のセリフを叫びながら登場した瞬間に、水星Cに蹴りとばされ退場。その後も散々な目にあわされている。顔はかっこいいようだ。


  • 日月(ひづき)

パインハウスに集まった名探偵の一人。男。


  • 豆源(まめげん)

「バカでブスですけど、私死なないですよ」


名探偵の一人で派手なタイプの可愛い顔立ちをした女性。ディスコ曰く「チアガールっぽい」。猫猫にゃんにゃんにゃんと仲が良く、「にゃんにゃん」「豆ちゃん」と呼び合う。


  • 猫猫にゃんにゃんにゃん(ねこねこにゃんにゃんにゃん)

「私はバカでもブスでもないよ」


名探偵の一人で派手なタイプの可愛い顔立ちをした女性。ディスコ曰く「パーティーガールっぽい」。舞城の小説『九十九十九』にも同名の名探偵が登場する。本作での本名は不明だが『九十九十九』内での本名は広瀬根子だった。本作との関連は不明。


  • 本郷タケシタケシ(ほんごうたけしたけし)

「俺別に自分のこと名探偵だと思ってねーんだから。他の奴らが俺より頭悪りーだけで」


名探偵の一人にして、劇団《エンジェルバニーズ》団員。本名は本郷雄(ほんごうたけし)。高身長で鼻筋の通ったボサボサ髪の男。ぶっきらぼうで飄々とした性格。エンジェルバニーズとして旅をする道中、さまざまな事件を解決してきた。

舞城の小説『九十九十九』にエンジェルバニーズのメンバーとして同名の人物が登場する。


  • 九十九十九(つくもじゅうく)

清涼院流水の小説の登場人物・「九十九十九」をモチーフにしたという愛媛川十三の小説『九十九十九』の主人公である名探偵。という作中の設定……なのだが、現実にも清涼院流水の小説の登場人物・「九十九十九」をモチーフにしたという舞城王太郎の小説『九十九十九』の主人公である名探偵「九十九十九」がいるため非常にややこしい。


  • ルンババ12(るんばばじゅうに)

愛媛川十三のミステリー小説『煙突ルンババ不可解』に登場する名探偵。かわいらしい外見の男の子で人気がある。舞城の小説『煙か土か喰い物』『世界は密室でできている。』などにも同名の名探偵が登場する。


劇団《エンジェルバニーズ》編集


  • 福島学(ふくしままなぶ)

劇団《エンジェルバニーズ》団長。人の良さそうな風貌と口調で、団員を纏めている。


  • 加藤淳一(かとうじゅんいち)

『他人の存在って大きいんです。そして世界は絶えず揺らいでる。』


劇団《エンジェルバニーズ》団員で、土日はお台場で「桜月淡雪」(さくらづきたんせつ)という名前で占い師をしている。そのため魔術や神話などオカルト的な知識を豊富に持つ。色白の小太りでオタクっぽいファッションをした男。

舞城の小説『九十九十九』にて主人公・九十九十九の父親として登場。本作との関係は不明。


その他編集


山岸和夫(かずお)・かの子夫妻

梢の実の両親。誘拐後、帰って来た梢に対する違和感から梢をディスコに預ける。


織田健治(おだけんじ)

梢を誘拐した男。梢に危害などは加えなかったようで、動機は不明。


シャロン・スタイロン

アメリカのマフィア組織《メデリカ・カルテル》の女幹部。ディスコとはアメリカ時代に面識がある。J・J・スタイロンという腹違いの弟がいる。


ウィリアム・イーディ

ディスコの友人で弁護士をしている人物。ディスコ曰く「蔑むべきところばかりで、ほとんどナイスなところのない男」。


コンコン・デンデン

神代動物園で展示されていた双子のパンダ。何者かに誘拐された。


岩崎浩輔(いわさきこうすけ)

パインハウスのある福井県西暁町のタクシー運転手。


用語編集

パインハウス

物語の舞台となる謎めいた円柱状の館で、暗病院終了が福井県西暁町の山中に建設した二階建ての自宅兼事務所。間取りはかなり独特で、一階と二階で同じ構造をしており、それぞれ円環状に並んで配置された12部屋の計24部屋が存在する。円環状に並んだ部屋の中央部分は吹き抜けになっており、一階部分には植木やソファなどが置かれエントランスホールのような空間に、その上には天窓が設置された特殊な構造をしている。その他トイレやキッチンなどは離れにまとまっている。この館の全てに意味がある。

舞城の小説『九十九十九』にも「クロスハウス」なる館が登場する。


エンジェルバニーズ

日本全国を巡っている演劇団。全十九名の年齢・性別のさまざまな団員が所属している。

暗病院に誘われパインハウスに滞在中、事件に遭遇した。

舞城の小説『九十九十九』にも同名の組織が登場するが、こちらは劇団ではなく芸能事務所や映像制作会社である。本作との関連は不明。


《パンダラヴァー》事件

全国の女子中学生だけが被害に遭う、マジックで顔や腹に落書きされ意識不明の状態で発見される事件。

現在までに6名の被害者が報告されている。

犯人はもちろん、動機や方法、被害者同士の関連など詳しいことは一切不明。


《ラグナレク》

パインハウスのホロスコープが指し示す「2006年7月15日23時26分」という日時。

ディスコたちがパインハウスに到着した次の日を指しているが、何が起こるのか……?


評価編集

  • ミステリー評論家の千街晶之は、概要で挙げた「四大奇書」を「いずれも衒学趣味や超理論などの過剰な要素で充満している大作」とした上で、「もし、これらに続く「第五の奇書」があるとすれば、個人的には本書のほかにはないと考える」「小栗虫太郎の衒学趣味を模倣した作例は数多いけれども、その常識外れな奔放さで元祖・小栗の域に達し得た作品は本書しか存在しない」と非常に高く評価している。
  • 『別冊宝島』(宝島社)で発行されている『このミステリーがすごい! 2009年度版』にて、第九位に選ばれている。
  • 早川書房が刊行している『SFが読みたい! 2008年度版』国内編にて、第八位に選ばれている。
  • SF評論家の大森望は「ゼロ年代SF100」の2008年出版作に伊藤計劃ハーモニー』や円城塔Boy's Surface』らと並べて本作を選出している。
  • DJ TECHNORCHはこの小説を自身のオールタイムベストに挙げている。

余談編集

  • 舞城の小説『九十九十九』は本作との関係性が最も濃く実質姉妹編のような作品。登場人物の名前が同じだったり、トリックや小道具、キーワードに共通点が見られたり、同じセリフをつぶやいたりする。直接の関連性はないが、読んでみると倍楽しめる。
  • その他本作品には舞城の他作品から多数のキャラクターや元ネタがありそうなものが登場するため、事前に舞城の作品を何個か読んでおくといいかもしれない。もちろん原作とは関連のないものが多いのだが、より楽しみながら読めると思われる。またメフィスト賞やその周辺の人物名、作品名も把握しておくとなおのこと面白く読めると思われる。

というかこの本を最初の舞城作品に選ぶのはお勧めできない。悪いことは言わないからやめておきましょう。(本記事内でよく名前を出した『九十九十九』もやめておこう。あれはもっと意味がわからない)


その他編集

  • 単行本・文庫共に表紙を手掛けたのはあの「初音ミク」や「鏡音リンレン」のデザインを手掛けたイラストレーターのKEI氏。
  • 舞城が脚本を務めたアニメ作品『ID:INVADED』と共通する要素が多い。

(『ID:INVADED』企画初期の段階では『ALIEN THURSDAYYY』というタイトルであり、「木曜日の探偵」が「木星Z」というシステムを使って犯人の殺意に入るという内容だった。)

  • 作中に名前だけ登場する名探偵「巴里谷超丸」(ぱりやちょうまる)がパインハウスを訪れる、後日談的な掌編『名探偵巴里谷超丸の二〇〇八年七月』が『波 2008年8月号』に『ディスコ探偵水曜日(上・下)』刊行記念として寄稿された。新潮社のホームページにて無料で公開されているので、本作を読み終えた方は是非。
  • 2023年現在、単行本・文庫ともに絶版となっているため、新品で手に入れることは不可能である。再版は未定であり、話題性や影響力からプレミア価格で取引されることも少なくないため、古本屋で見つけたら購入しておくことをおすすめする。また電子版も配信されているためそちらで読むのもおすすめ。

関連項目編集

舞城王太郎

奇書

ファウスト系

ミステリー

SF

ライトノベル

メタフィクション

KEI-KEI氏のpixivアカウント

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