概要
人間が見ることができる光(可視光線)よりも波長が長い電磁波。その範囲は760-830nmから、0.03mm(30 μm)くらいまでである。さらに波長が長くなるとテラヘルツ波(赤外線に含むことがある)、そして電波になる。可視光線を挟んで短波長の領域(紫外線の逆側)は紫外線である。
勘違いされやすいが「赤の外」(可視光線の外)なので人の目には見えない。赤外線ヒーター等が赤く発光しているのは、赤外線と同時に赤い光(可視光線)も発しているからである。
英語ではInfraredだが、IRと略される場合が多い。
特性
熱放射を伝える性質があり、熱線とも呼ばれる。熱放射は熱伝導や対流と違って媒体が必要なく、真空中でも伝播する。物体の温度が高いほど赤外線は強くなり、波長の中心は短くなっていく。
2.5μm(2500nm)以下の比較的波長が短いものを近赤外線といい、透過性が強く、人体の深部に浸透して体を芯から温める性質を持つ。地表に届く太陽光線の40~50%が赤外線のエネルギーである(残りの大半が可視光線、一部が紫外線)が、その多くが近赤外線である。自動車の窓ガラスを透過する近赤外線は、夏場の車内のジリジリした熱さの原因になるため、赤外線を遮断してこれを和らげるIRカットガラスが普及している。また、近赤外線は紫外線と同様に人体に悪影響を及ぼし、皮膚の「シワやたるみ」の原因になる(光老化を促進する)という話もあり、「近赤外線カット」を謳う衣服や日焼け止めも出てきている。これらはIRカットガラスと同様、熱さを軽減する効果も期待できる。
マムシなどの一部の蛇は近赤外線を感じる器官を持ち、獲物の体温を感知できる。デジタルカメラでは可視光をカットし近赤外線のみ透過するフィルターを取り付けることで、赤外線写真を撮影できる。人間も微弱な近赤外線を発していることから、下着が透けるなどとして問題になったことがある。懐中電灯など赤外線フィルターを取り付け、赤外線ライトとして使用可能な製品もある。
遠赤外線は絶対零度でもなければ全ての物体から放射されている。氷のように常温より低い物体であっても微弱だが遠赤外線を放出している(周囲よりも冷たい物体は赤外線を吸収する量のほうが多いが)。遠赤外線は物体を効率的に「乾燥・加熱」できるという特徴があり、暖房や加熱調理のほか、接着剤や塗装の焼き付けなどに用いられている。
利用
熱線としての利用が最も広く知られている。暖房では、ファンヒーターは主に空気の対流で熱を伝えるのに対し、電気ストーブでは主に赤外線の放射で熱を伝える。このため、パネルヒーターなどが局所暖房に多く用いられる。
オーブンや炭火などの加熱調理でも、赤外線の性質を利用する。熱伝導による加熱と異なり食材の表面組織を一気に硬化させ、旨味を外部に逃がさない。
近赤外線はリモコンなどの無線通信の媒体として使用されており、かつては携帯電話でもよく用いられていた。
また、熱を検知するセンサー(ヒートシーカー)として、研究・捜索・救難・検査など様々に用いられる。もっとも馴染み深いのは、炎が発する赤外線を検知する自動火災報知設備だろう。 熱分布を視覚化する赤外線映像装置はサーモグラフィー、「熱映像装置」「熱線映像装置」「サーマルサイト/サーマルスコープ」と呼ばれる場合もある。製品名としてFLIRなども有名。軍用では、夜間でも敵を視認できる暗視装置が発展しており、運転支援など民生品にも応用されている。ミサイル等の誘導方式の一種として赤外線誘導が用いられ、目標の発するエンジンの排気や温度差を捜索・追尾して命中する。
関連項目
太陽光 炎 暖房 オーブン こたつ ヒーター ストーブ 恒星
サーモグラフィー…熱分布を視覚化するもの