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ヴォロディミール・ゼレンスキーの編集履歴

2019-06-27 15:53:43 バージョン

ヴォロディミール・ゼレンスキー

ゔぉろでぃみーるぜれんすきー

ヴォロディミール・ゼレンスキーとは、ウクライナの政治家、お笑い芸人、俳優である。

経歴

1978年1月25日、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国クルィヴィーイ・リーフ市にユダヤ系ウクライナ人として生まれた。父オレクサンドル・ゼレンスキーはドネツク・ソヴィエト貿易研究所のクルィヴィーイ・リーフ校に勤務する研究者で、母はエンジニアであった。父の仕事の都合で幼少期はモンゴル人民共和国エルデネトに住んでいた時期もあるという。

家系的には前述の通りユダヤ系となる。ウクライナの公用語であるウクライナ語ロシア語の2か国語を話せるが、ウクライナ語は苦手で、俳優業メディアではこれまでロシア語を使用してきた。ウクライナ語は話せても流暢とは言い難い。

1991年、ソ連崩壊に伴いウクライナが独立すると、クルィヴィーイ・リーフ市はドニプロペトローウシク州の自治体となった。子供時代からゼレンスキーは話芸の才能を示し、旧ソ連時代からの伝統を持つロシアのバラエティー番組KVN」にウクライナ代表のアマチュア芸人として出演している。学業面ではキエフ国立経済大学のクルィヴィーイ・リーフ校で法学を専攻しているが、大学卒業後も法曹ではなくお笑いへの道を選んだ。


芸能活動

1997年、番組内でコメディ劇団「第95街区(УКР:Студія Квартал-95)」を結成、台本の制作も手掛けるなど若くして番組の看板芸人に上り詰めた。2003年、「第95街区」をコメディ映画・番組・舞台の制作会社へと再編して、より幅広い活躍を見せるようになった。KVN視聴者が広がるCIS諸国での巡業やコメディ映画の制作・上映などを手掛け、ウクライナの大手テレビ局「Інтер」「1+1」などに番組を提供した[9][20]。2006年、イギリスダンス番組ストリクトリー・カム・ダンシング」のウクライナ版で本格的なブレイクを果たし、ゼレンスキー出演回は最大瞬間視聴率87.57%という記録的な数字を達成している。2008年にはロシアコメディ映画「Любовь в большом городе」に出演。2012年、ジャン=クロード・ヴァン・ダムが友情出演した事で話題になったウクライナ映画ルジェフスキー対ナポレオン」でナポレオン役を演じている。

順調にキャリアを重ねる一方、不安な状態が続くウクライナ社会への問題提起も行っている事で知られている。ゼレンスキーはオレンジ革命マイダン革命などの自由主義革命に肯定的で、ロシア軍の軍事介入後は知名度を持つロシア語圏での反発を恐れず、ウクライナ軍に多額の寄付を行って支援した。一方でウクライナ政府が推進するロシア語文化弾圧には強く反対し、文化大臣の辞任を求めている。ロシア民族主義とウクライナ民族主義のどちらにも賛同しない中立派として行動し、オリガルヒを筆頭に社会で蔓延する汚職や富の集中も強く批判している。これは、これまでゼレンスキーがウクライナ東部のロシア語圏で育ち、2014年までは主にウクライナの他にロシアを舞台に活躍し数々の作品に出演してきたことが大きい。それらの数々の出演作品はロシア文化の排除という名目でウクライナではペトロ・ポロシェンコ政権によって放映や販売が禁止されている。


「国民の僕」

2015年、ウクライナの国営放送「1+1」でゼレンスキーが主演する政治風刺ドラマ国民の僕(УКР:Слуга народа)」が全24話で放映された。一介の歴史教師がふとした事から素人政治家として大統領に当選し、権謀術数が渦巻く政界と対決する姿をユーモアを交えながら描いた同作はウクライナで大流行した。物語は選挙で授業を妨害された主人公が怒りに任せて政府批判を行う様子が隠し撮りした映像が投稿され、インターネットでバズ化した事が導入部になっている。現実世界でも放送後にインターネット上でエピソードの無料公開が行われ、Youtubeに投稿された第1話の再生数は1200万に達している。

第1シーズンでは主人公を取り込もうとするベテラン政治家の手から徐々に離れ、閣僚を刷新して政権を確立するまでの3か月間を描いている。作品中で政治をゲームとして扱うオリガルヒオリガルヒの駒として動く政治家、蔓延する縁故主義浪費される税金、放置されたインフラ脱税に奔走する資産家などウクライナ社会の腐敗と現状に怒りを覚える国民を描き出している。また歴史教師である主人公にリンカーンチェ・ゲバラユリウス・カエサルイヴァン4世などの人物が啓示を与える存在として登場する。

2016年、映画版として「国民の僕 第2部」が放送され、ウクライナ映画賞に主演男優賞でノミネートされている。2017年、テレビシリーズの第2シーズン全24話が放映された。IMFによる支援を受ける程に悪化したウクライナ経済を立て直すべく、汚職の一掃を目指す姿が物語の中心になっている。2019年、政敵の仕掛けた冤罪で政権を追われた主人公が大統領に復帰するまでを描いた第3シーズンの放送が開始された。

現実と化した政治活動

国民の僕」の流行によって、国民の間ではドラマで描かれた主人公とゼレンスキーを重ね合わせ、現実の大統領選挙への出馬を期待する動きが起きた。2018年、ゼレンスキーは期待に応えて来年の大統領選出馬を声明した。

2019年の大統領選には過去最大となる44名もの候補者が乱立しており、有力候補はオリガルヒ出身のペトロ・ポロシェンコ現大統領とユーリヤ・ティモシェンコ元首相という現在のウクライナ政界の混沌を現した状態となった。そうした中、ゼレンスキーは「第95街区」のメンバーらとドラマのタイトルを冠した政党「国民の僕」を立ち上げ、「作品の続き」をイメージした宣伝を開始した。選挙活動面では政治集会や討論会などは挑まず、原作の展開と同じくインターネット上での呼びかけを集中的に行っている。主人公が作中で国民に呼びかける際に口にする「親愛なるウクライナ国民へ」も多用されている。

ゼレンスキーの政治運動は全体として公正で自由主義的な社会を目指す事にあるといえる。内政面では何よりもまず「反汚職」を掲げ、税金浪費を止める事を公約している。具体的には議員の免責特権廃止、選挙制度や裁判制度の改革、国民投票による直接民主主義の導入などを掲げている。経済政策でも企業の脱税賄賂を取り締まり、社会正義を回復させる事が経済成長や国外からの投資に繋がると主張している。税制面ではフラット・タックス制度の導入を検討している。ウクライナ軍に関しては給与体系をNATOに準じた金額に改定する意向を示している。

外交面では出口の見えないドネツク人民共和国ルガンスク人民共和国との内戦について、軍事力での解決は非現実的であるばかりか、多くの死者を発生させて国内を疲弊させているとしている。既に併合されたクリミア問題についても「現実的に考えればロシア側での政権交代などを待つしかない」としている。こうした観点から分離政府を支援するロシア連邦との関係改善を行い、外交的に内戦を終結させたいとしている。同時に欧州を席巻するポピュリズム運動が選択する欧州懐疑主義の立場には立たず、マイダン革命以来の親欧米派としてEUNATOとの交流も深める全方位外交を志向している。ロシアとの和解交渉を掲げるゼレンスキーを売国奴とする極右によるネガティブキャンペーンも行われているが、単にゼレンスキーはロシア語圏で育ったことから、これまでのウクライナ政界の主流の一角であるガリツィア地方で根強い排外的・民族主義的な反露主義を支持していないというだけで根本的には親欧米派・ユーロマイダン社会民主主義直接民主主義路線を取る。

オリガルヒの専横に関しては自身が出演するテレビ局を保有するオリガルヒイホル・コロモイスキーとの関係をBBCに問われた際、「自分は誰かの傀儡ではない」とした上で「貴方は4000万名のウクライナ人が全て信念が無いと言いたいのですか?」と答えている。全ての事柄で何らかのオリガルヒとの関わりが避けられないウクライナ社会にあって、非オリガルヒ政治家である事自体に期待が寄せられているといえる。

細かい政策論争を挑まず、理念的な行動を取る事に批判の声もあるが、腐敗と][閉塞]]した状況が続くウクライナ社会に強い不満を持つ青年層や労働者層を中心に絶大な支持を集めている。

2019年のウクライナ大統領選挙

2018年の年末に行われた調査ではティモシェンコ氏に次ぐ第2位候補として9%の支持を獲得して現職のポロシェンコ氏を上回っていた。選挙戦本番でポロシェンコが巻き返しを図ったが、それを上回る勢いで草の根での支持が広がって最有力候補に躍り出た。2019年4月1日、第一回投票でポロシェンコ(17.8%)、ティモシェンコ(14.2%)の両名を大きく引き離してゼレンスキーが30.4%の得票を得た。単独過半数には届かなかった事から、決選投票で2位のポロシェンコ氏と争う形となる(ティモシェンコ氏は不正選挙を主張しつつも敗北宣言)。

決選投票では「国民の僕 第三部」と題して、支持者に投票を呼び掛けるキャンペーンを行っている。決選投票を前にしてもゼレンスキー支持の勢いは留まらず、むしろ勢いを増して日を追うごとに現職のポロシェンコ氏との差を付け、世論調査での支持率は50%以上に達すると見られている。4月16日、焦りを深めるポロシェンコ氏がゼレンスキーが拒否してきた討論会を挑むと、スタジオや会議場ではなく興行用のスタジアムでの開催という挑発的な条件を突き付けている。

4月20日、投票日前日にスタジアムでの討論会が行われた。ゼレンスキーは政治経験の不足を批判するポロシェンコ氏の政治経歴を「失敗」と切り捨て、ポロシェンコ氏が愛国心をアピールすると内戦で戦死した兵士下士官士官達に祈りを捧げる仕草を見せた。堅実な政策論で支持を取り戻そうとするポロシェンコ氏を得意のパフォーマンス合戦や口論に持ち込む事で終始翻弄し、ペースを握り続けた。


大統領選出

4月21日、出口調査の段階でゼレンスキーが決選投票で70%以上を得票し、圧倒的な大差を付けて大統領に選出される事が確実となり、現職ポロシェンコ氏が敗北を宣言した。ガリツィア地方の中心であるリヴィウ州のみでポロシェンコ氏に敗北した以外のすべての州で勝利。特にロシア語圏である東部や南部では得票率が8割を超える圧倒的な勝利であったことは、特にポロシェンコ政権によって国民の間で利用率の高かったロシアのSNSの使用禁止、映画やドラマ等のロシア文化の排除や空路に於ける両国間の直行便の就航の停止等の政策が行われる中、双方に親族も多くいる等関係の深い隣国ロシアとの関係の正常化に対する期待の大きさをうかがわせる。


別名・表記ゆれ

ロシア語読みではヴラジーミル・アレクサンドロヴィチ・ゼレンスキーとなる。


関連タグ

ウクライナ 政治家 ペトロ・ポロシェンコ


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ウクライナ Україна 政治家 大統領

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