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ヴォロディミール・ゼレンスキー

ゔぉろでぃみーるぜれんすきー

ヴォロディミール・ゼレンスキーとはウクライナの政治家。旧ソ連時代からコメディアンや俳優として活躍してきた。
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注意編集

Wikipediaでは「ウォロディミル・ゼレンスキー」、この百科事典では「ォロディミル・ゼレンスキー」の表記が異なるので注意。


概要編集

本名は「ヴォロディミル・オレクサンドロヴィチ・ゼレンスキー」のこと。

ロシア語読みは「ウラジーミル・アレクサンドロヴィチ・ゼレンスキー」であり、奇しくもロシア大統領のウラジーミル・プーチンと同じファーストネームである。


経歴編集

1978年1月25日、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国のクルィヴィーイ・リーフ市にユダヤウクライナ人として生まれた。

父オレクサンドル・ゼレンスキーはドネツク・ソヴィエト貿易研究所のクルィヴィーイ・リーフ校に勤務する研究者で、母はエンジニアであった。

父の仕事の都合で幼少期はモンゴル人民共和国エルデネトに住んでいた時期もあるという。祖父は独ソ戦で歩兵として従軍、大佐まで昇進したたたき上げの軍人で、彼の兄弟と父をはじめとした親族の多くはホロコーストの犠牲となった。


ウクライナの公用語であるウクライナ語ロシア語の2か国語を話せるが、人生の大半ではロシア語を使用してきた。

ウクライナ語は大統領選挙の時点では全く話すことができなかったが、就任以降は特訓を受けることでほぼ全てのメディア対応をウクライナ語一本で行うことができるほどに上達した。また、英語も得意でしばしば国外向けには英語で応対することがある。


1991年、ソ連崩壊に伴いウクライナが独立すると、クルィヴィーイ・リーフ市はドニプロペトローウシク州の自治体となった。

子供時代からゼレンスキーは話芸の才能を示し、旧ソ連時代からの伝統を持つロシアのバラエティー番組「KVN」にウクライナ代表のアマチュアコメディアンとして出演している。

学業面ではキーウ国立経済大学のクルィヴィーイ・リーフ校で法学を専攻しているが、大学卒業後は法曹ではなくコメディアンへの道を選んだ。


芸能活動編集

1997年、番組内でコメディ劇団「第95街区(УКР:Студія Квартал-95)」を結成、台本の制作も手掛けるなど若くして番組の看板芸人に上り詰めた。

2003年、「第95街区」をコメディ映画・番組・舞台の制作会社へと再編して、より幅広い活躍を見せるようになった。

KVN視聴者が広がるCIS諸国での巡業やコメディ映画の制作・上映などを手掛け、ウクライナの大手テレビ局「Інтер」「1+1」などに番組を提供した。

2006年、イギリスダンス番組「ストリクトリー・カム・ダンシング」のウクライナ版で本格的なブレイクを果たし、ゼレンスキー出演回は最大瞬間視聴率87.57%という記録的な数字を達成している。

2008年にはロシアコメディ映画「Любовь в большом городе」に出演。

2012年、ジャン=クロード・ヴァン・ダムが友情出演した事で話題になったウクライナ映画「ルジェフスキー対ナポレオン」でナポレオン役を演じている。

2014年には、実写映画『パディントン』の主人公であるくまのパディントンのウクライナ語版の声を担当した。2017年の続編、『パディントン2』も同じく。


ちなみに、芸人時代の持ちネタの一つにイチモツピアノを弾くというものがあった。


他にも全裸ギター全裸サイクリングなど下ネタをしょっちゅう披露しているが、高学歴でトークも演技もハイレベルな、会社経営者としても優秀である彼の人物像が伝わっているからこそ大ウケするという側面もある。


芸能人時代の政治的発信編集

順調にキャリアを重ねる一方、不安な状態が続くウクライナ社会への問題提起も行っている事で知られている。

ゼレンスキーはオレンジ革命マイダン革命などの自由主義革命に肯定的で、ロシア軍の軍事介入後は知名度を持つロシア語圏での反発を恐れず、ウクライナ軍に多額の寄付を行って支援した。

一方でウクライナ政府が推進するロシア語文化弾圧には強く反対しており、文化大臣の辞任を求めている。


ロシア民族主義とウクライナ民族主義のどちらにも賛同しない中立派として行動し、オリガルヒを筆頭に社会で蔓延する汚職や富の集中も強く批判している。

これは、これまでゼレンスキーがウクライナ東部のロシア語圏で育ち、2014年までは主にウクライナの他にロシアを舞台に活躍し数々の作品に出演してきたことが大きい。

それらの数々の出演作品はロシア文化の排除という名目でウクライナではペトロ・ポロシェンコ政権によって放映や販売が禁止されている。


ドラマ「国民の僕(こくみんのしもべ)」編集

2015年、ウクライナの国営放送「1+1」でゼレンスキーが主演する政治風刺ドラマ国民の僕(УКР:Слуга народа)」が全24話で放映された。

一介の歴史教師がふとした事から素人政治家として大統領に当選し、権謀術数が渦巻く政界と対決する姿をユーモアを交えながら描いた同作はウクライナで大流行した。

物語は選挙で授業を妨害された主人公が怒りに任せて政府批判を行う様子が隠し撮りした映像が投稿され、インターネットでバズ化した事が導入部になっている。

放送後にインターネット上でエピソードの無料公開が行われ、Youtubeに投稿された第1話の再生数は1200万に達している。


第1シーズンでは主人公を取り込もうとするベテラン政治家の手から徐々に離れ、閣僚を刷新して政権を確立するまでの3か月間を描いている。

作品中で政治をゲームとして扱うオリガルヒオリガルヒの駒として動く政治家、蔓延する縁故主義浪費される税金、放置されたインフラ脱税に奔走する資産家などウクライナ社会の腐敗と現状に怒りを覚える国民を描き出している。

また歴史教師である主人公にリンカーンチェ・ゲバラユリウス・カエサルイヴァン4世などの人物が啓示を与える存在として登場する。


2016年、映画版として「国民の僕 第2部」が放送され、ウクライナ映画賞に主演男優賞でノミネートされている。2017年、テレビシリーズの第2シーズン全24話が放映された。

IMFによる支援を受ける程に悪化したウクライナ経済を立て直すべく、汚職の一掃を目指す姿が物語の中心になっている。2019年、政敵の仕掛けた冤罪で政権を追われた主人公が大統領に復帰するまでを描いた第3シーズンの放送が開始された。


国外ではロシア及びベラルーシ以外では放映されず、「コメディアンを大統領にしたドラマ」として語られる程度であったがウクライナ侵攻を受けて再注目され、各国主要テレビ局やNetflixなどでの放映が決定された。日本でもNetflixで見ることができるが、字幕のクオリティがしばしば批判されている。

現実と化した政治活動編集

大統領選挙への立候補編集

国民の僕」の流行によって、国民の間ではドラマで描かれた主人公とゼレンスキーを重ね合わせ、現実の大統領選挙への出馬を期待する動きが起きた。

2018年、ゼレンスキーは1+1の経営にも携わるユダヤ人実業家のイホル・コモイロスキーなどから支援を受けて大統領選出馬を発表した。


2019年の大統領選には過去最大となる44名もの候補者が乱立しており、有力候補は共にオリガルヒ出身で武力を用いた対露政策も選択肢とするペトロ・ポロシェンコ現大統領と政治献金問題で過去に逮捕歴もあるユーリヤ・ティモシェンコ元首相という現在のウクライナ政界の混沌を現した状態となった。

そうした中、ゼレンスキーは「第95街区」のメンバーらとドラマのタイトルを冠した政党「国民の僕」を立ち上げ、「作品の続き」をイメージした宣伝を開始した。

選挙活動面では政治集会や討論会などは挑まず、原作の展開と同じくインターネット上での呼びかけを集中的に行っている。

主人公が作中で国民に呼びかける際に口にする「親愛なるウクライナ国民へ」も多用されている。


選挙戦での訴え編集

ゼレンスキーの政治運動は全体として公正で自由主義的な社会を目指す事にあるといえる。

内政面では何よりもまず「反汚職」を掲げ、税金浪費を止める事を公約している。具体的には議員の免責特権廃止、選挙制度や裁判制度の改革、国民投票による直接民主主義の導入などを掲げている。

経済政策でも企業の脱税賄賂を取り締まり、社会正義を回復させる事が経済成長や国外からの投資に繋がると主張している。税制面ではフラット・タックス制度の導入を検討している。

ウクライナ軍に関しては給与体系をNATOに準じた金額に改定する意向を示している。


外交面では出口の見えないドネツク人民共和国ルガンスク人民共和国との内戦について、軍事力での解決は非現実的で多くの死者を発生させて国内を疲弊させているとしている。

既に併合されたクリミア問題についても「現実的に考えればロシア側での政権交代などを待つしかない」としている。

こうした観点から分離政府を支援するロシア連邦との関係改善を行い、外交的に内戦を終結させたいとしている。

同時に欧州を席巻するポピュリズム運動が選択する欧州懐疑主義の立場には立たず、マイダン革命以来の親欧米派としてEUNATOとの交流も深める全方位外交を志向している。


ロシアとの和解交渉を掲げるゼレンスキーを売国奴とする極右によるネガティブキャンペーンも行われているが、単にゼレンスキーはロシア語圏で育ったことから、これまでのウクライナ政界の主流の一角であるガリツィア地方で根強い排外的・民族主義的な反露主義を支持していないというだけで根本的には親欧米派・ユーロマイダン社会民主主義直接民主主義路線を取る。


細かい政策論争を挑まず、理念的な行動を取る事に批判の声もあるが、腐敗閉塞した状況が続くウクライナ社会に強い不満を持つ青年層や労働者層を中心に絶大な支持を集めている。


2019年のウクライナ大統領選挙編集

2018年の年末に行われた調査ではティモシェンコ氏に次ぐ第2位候補として9%の支持を獲得して現職のポロシェンコ氏を上回っていた。

選挙戦本番でポロシェンコが巻き返しを図ったが、それを上回る勢いで草の根での支持が広がって最有力候補に躍り出た。

2019年4月1日、第一回投票でポロシェンコ(17.8%)、ティモシェンコ(14.2%)の両名を大きく引き離してゼレンスキーが30.4%の得票を得た。

単独過半数には届かなかった事から、決選投票で2位のポロシェンコと争う形となる(ティモシェンコ不正選挙を主張しつつも敗北宣言)。


決選投票では「国民の僕 第三部」と題して、支持者に投票を呼び掛けるキャンペーンを行っている。

決選投票を前にしてもゼレンスキー支持の勢いは留まらず、むしろ勢いを増して日を追うごとに現職のポロシェンコとの差を付け、世論調査での支持率は50%以上に達すると見られている。

4月16日、焦りを深めるポロシェンコがゼレンスキーが拒否してきた討論会を挑むと、スタジオや会議場ではなく興行用のスタジアムでの開催という挑発的な条件を突き付けている。


4月20日、投票日前日にスタジアムでの討論会が行われた。

ゼレンスキーは政治経験の不足を批判するポロシェンコの政治経歴を「失敗」と切り捨て、ポロシェンコ愛国心をアピールすると内戦で戦死した兵士下士官士官達に祈りを捧げる仕草を見せた。

堅実な政策論で支持を取り戻そうとするポロシェンコを得意のパフォーマンス合戦や口論に持ち込む事で終始翻弄し、ペースを握り続けた。


大統領選出編集

4月21日、出口調査の段階でゼレンスキーが決選投票で70%以上を得票し、圧倒的な大差を付けて大統領に選出される事が確実となり、現職ポロシェンコ氏が敗北を宣言した。

ガリツィア地方の中心であるリヴィウ州のみでポロシェンコに敗北した以外のすべての州で勝利。

特にロシア語圏である東部や南部では得票率が8割を超える圧倒的な勝利であったことは、特にポロシェンコ政権によって国民の間で利用率の高かったロシアのSNSの使用禁止、映画やドラマ等のロシア文化の排除や空路に於ける両国間の直行便の就航の停止等の政策が行われる中、双方に親族も多くいる等関係の深い隣国ロシアとの関係の正常化に対する期待の大きさをうかがわせる。


大統領選出後編集

大統領就任後は、主にEUへの加盟と政治腐敗の一層を目標として政治活動を行っていたが、この時期のゼレンスキーは、政界への影響力はまだ弱く、議会では法案が否決されるなど政治家としては余り結果を残せない状況が続く。

一方で、基本的には持ち前の演説力から国民の支持こそ高く、全体的には人気はあるがパッとしない大統領という位置付けであった。

しかし、2022年に状況は一変する。


2022年ウクライナ侵攻編集

2022年2月24日、ロシア軍により全面侵攻を受ける。

初期には首都キーウまで侵攻を受けていたが、ゼレンスキーは脱出せずにキーウに留まり続けており、国民に徹底抗戦を呼びかけつつもロシアのプーチン大統領に対話を呼びかけている。

詳しい動向はウクライナ侵攻の項目を参照されたし。


2022年3月1日には、欧州連合(EU)への加盟を申請した。


危険な場所から逃げずに戦うその姿に多くの国民が賛同を示し、なんと支持率は驚異の90%となっている。また顔つきも就任当時の溌剌で柔らかな雰囲気から、精悍で鋭いものに変化している事も話題に上がることが多く、戦争が人を変えるという言葉をより実感できるものとなっている。

3月2日にはロシアへの対処として飛行禁止区域の設定が必要である事を西側諸国に説きつつ同時に「ロシアと言っても国民のことではなく、軍や指導者のことだ。ロシア人の中にも私たちに良くしてくれて、支援してくれる人は大勢いる」(ロイターの動画38秒~)とあくまで敵は侵攻者であってロシア国民そのものではない事を明言した。侵攻開始時の在日ウクライナ大使館のツイートでも「プーチンがウクライナに対して大規模の戦争を始めました」という書き方をしている(ツイート)。

戦争が始まって以降、軍人が着るようなカーキ色のシャツやジャケットを好んで着て公共の場に現れている。


また、積極的に各国の国会でオンライン演説を行っており、当地の歴史や古典などに触れるその演説はおおむね好意的に捉えられている。

日本でも3月23日に演説を行い、東日本大震災地下鉄サリン事件に触れて生命と財産が脅かされる恐怖に言及しながら日本が行った支援とロシアへの制裁に感謝、最後に更なる支援と制裁、日本への親近感についてアピールをして締めくくった。なお、これに先立つアメリカでのオンライン演説で真珠湾攻撃を引き合いにしてロシア空軍の脅威を取り除く支援を呼びかけたことが日本の保守層に警戒心を持たせたためか、演説に先立っては自民党による一部校正が行われる一幕があったとされる。参照


2022年10月7日、ゼレンスキー政権は北方領土に関して日本の立場を支持する決議を採択した。


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ウクライナ 政治家 大統領

ペトロ・ポロシェンコ ユーリア・ティモシェンコ


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