「仲間にナイフを向けるな。よく見てろ、俺達は家族だ」
「お前達の無念を海の藻屑にはしない」
人物像
CV:大塚明夫/キーファー・サザーランド
謎の諜報組織「サイファー」の策略により、ビッグ・ボス率いる国境なき軍隊「MSF」は壊滅。多くのメンバーが重傷を負い、あるいは死亡した。
脱出したヘリの中で爆発に巻き込まれ、病院に搬送されたビッグ・ボスだったが、左腕を失い、体中に金属片や人間の歯、骨などが100個以上突き刺さっており、医者曰く、「人間かどうかもわからない」状態だった。その後の手術で一命は取り留めたものの、その後意識が回復しないまま9年もの間昏睡状態に陥った。
その間に「伝説の傭兵ビッグ・ボス」の功績や物語は抹消され、ビッグ・ボスはもはや実在したかも怪しい存在として扱われていた。9年の昏睡から覚醒した彼は、サイファーへの復讐を決意。失った左手を筋電義手「バイオニック・アーム」で補い、パニッシュド"ヴェノム"スネークというコードネームを得て、ボスの復活を信じ続けたカズヒラ・ミラーが設立していた新たな傭兵組織「ダイアモンド・ドックズ」を率いてサイファーの謎を追うべく戦いに身を投じる。
これまでのスネークと比較して口数は少なく、また煙草も葉巻ではなく電子タバコ「ファントムシガー」を愛用する。
前述した突き刺さった破片の中でも頭部に刺さった破片が「角」のように突き出ており、彼を見た者達から度々「鬼」と称される。「角」が残された理由は、この破片が大脳新皮質にまで達していて無理に抜くことが出来ないためである(最悪死に至る)。また破片によって言語野や色覚にも障害を抱えることとなった。
昏睡から覚醒した際に、隣のベッドで寝ていたイシュメールという謎の男からエイハブという名前を与えられるが、これはアメリカ文学『白鯨』に登場する捕鯨船の船長エイハブから取られている(ダイアモンド・ドッグズで運用されるピークォドやクィークェグといったヘリの名前などもこの作品が由来)。
『白鯨』は、巨大な鯨「モビーディック」に片脚を奪われたエイハブ船長が、モビーディックへの報復に燃える物語であり、これはその「報復」がMGSVのテーマの一つとされていることのあらわれである。
ちなみにスネークの声優である大塚明夫氏はNHKアニメ「白鯨伝説」と「十二戦支 爆烈エトレンジャー」の両方でエイハブというキャラクターの声を当てている。前者はメインキャラクター、後者はゲストキャラクターである。もちろん両者共に『白鯨』モチーフである。
関連イラスト
世界を売った男の真実
この先はMGSVTPPの深刻なネタバレが含まれます。開覧は自己責任で御願いします。
彼の正体はビッグ・ボスことネイキッド・スネークでは無い。
その正体はグラウンドゼロズの終盤でビッグ・ボスが乗っていたヘリに同乗し、パスの体内に仕掛けられた爆弾を除去し、直後の爆発からボスを庇ったメディックだった。
彼はMSFに在籍していたビッグ・ボスの部下の一人で、ビッグボス本人ではない。
ビッグ・ボスのクローンとして生まれたイーライと遺伝子検査の結果が全く一致しなかったのもこのためである。
ちなみに「GZ」作中のヘリ内で彼が喋るシーンがあるが、この時の声優は大塚明夫氏が務めており、これが伏線になっている。
意識が回復した後に医師に見せられた写真では、ビッグ・ボスやミラーと並んで映っていた隊員が見えなかったが、この人物が整形前の彼の元の姿である。写真の写り方から、スネークやミラーとはかなり親しい仲だった模様。ビッグ・ボスいわくMSFで最も優秀な兵士だったらしく、現実でも航空自衛隊のメディック(救難隊)や米軍のPJなど、優れた医療資格を持つ特殊部隊員は多い。
また、本物のビッグ・ボスは1935年生まれだが、ヴェノムは1932年生まれであり、実際はヴェノムの方が歳上である。
爆発から本物のビッグ・ボスを庇い、彼と共に昏睡状態に陥った後、オセロットによる強力な暗示と共にビッグ・ボスの過去を追体験させられ、顔も変えられた事で己を含む誰もがビッグ・ボス本人だと感じるよう仕立てあげられていた。端的に言うとビッグ・ボスの影武者である。
この身代わり計画の発案と指示はゼロ少佐が行っていた。XOFによるMSF襲撃はあくまでも彼の副官「スカルフェイス」の独断によるものであり、思想的対立から決別したとはいえ、かつての友人であるビッグ・ボスの命を危機にさらすことは、ゼロの本意ではなかった。
ヴェノムよりも少し早く昏睡から回復したビッグ・ボスは、自分が昏睡している間に勝手に進められていたこの計画に対して困惑していたが、この時点で自分が目覚めたことが外部に知られており、9年前と同様に、XOFが今度こそビッグ・ボスを葬ろうと襲撃をかけてくるのは時間の問題だった。やむなく病院が襲撃されることで発生する犠牲者と影武者のヴェノムを囮に、オセロットの指示に従って、覚醒したばかりでまだ十分に体を動かすことができないヴェノムを護衛し、導く役割を与えられる。
つまり、病院脱出時にヴェノムを助け、オセロットの下に導いた謎の包帯男イシュメールこそが、本物のビッグ・ボスその人であった。
オセロットは最初からこのことを知っており、ゼロの作戦を指揮したのも彼だった。ボスの命を守れるならばと、オセロットは一時的にゼロに協力していた。
一方、9年間の昏睡から目覚めたヴェノムだが、実はこの時点ではまだ、メディックとしての記憶を失ってはいなかった。しかし、医師との会話から危機的状況を察し、本物のビッグ・ボスを護る為にビッグ・ボスの影武者を演じ、かつての自分と決別することを決意した。
しかし、ビッグ・ボスとして活動するにはその”決意”さえ不要な為、オセロットによる洗脳の末に忘れさられてしまい、もはやヴェノムにはメディック個人としての記憶も存在も無くなった。
エンディングでは、本物のビッグ・ボスがオセロットによるヴェノムの洗脳を解き、彼自身がどの様な存在だったか、どの様な役割を与えられていたかを思い出させている。
ビッグ・ボスの役割を通したヴェノムを「友」と呼んで感謝し、二人で歴史を刻んでいく事を誓い、ヴェノム・スネークの役割を「もはや影武者ではなく、半身である」とした。
こうしてビッグ・ボスは、歴史の表舞台におけるビッグ・ボスの称号とダイヤモンド・ドッグズをヴェノムに託したのである。
メディックの本名は不明だが、ゲーム開始時にプレイヤーが登録した名前とアバターが彼の整形前の素顔に反映されるようになっており、メタ的にプレイヤー自身とビッグ・ボスが二人でビッグ・ボスの物語(サーガ)と歴史を作ってきたという演出になっている。
しかし、皆に遅れて真相を聞かされたカズヒラ・ミラーはこの計画に納得いかず、ボスに見捨てられたと感じ、ビッグ・ボスへの報復のため、ヴェノムをビッグ・ボスとして扱い組織を拡大していく。
サイファーの影を追う最中に後々MGS4に繋がっていく愛国者達の思惑を知ったヴェノム・スネークとネイキッド・スネークは、独立武装国家「アウターヘブン」を作り上げ蜂起。
『初代メタルギア』にてヴェノム・スネークはソリッド・スネークと対峙し、道連れを狙うも激闘の末に命を落とした。(本物のビッグ・ボスはFOXHOUNDの総司令官として、影からアウターヘブン設立を指示していた)
なお、アウターヘブンに潜入中のソリッド・スネークに「敵に通信を悟られぬよう途中で無線周波数を変更する」のだが、この周波数に変えた途端にビッグ・ボスからの指令がわざと罠に導く妙なものに変わっていく。この時、通信相手は本物のビッグ・ボスからヴェノムに代わっていたのだった。
つまり、本物のビッグ・ボスが初めて登場したのはその次回作であるMG2からだったのである。
※(ただ、MG2ではビッグ・ボスは瀕死の重傷を負ったとして、両手、両足、右目、右耳を失って、マッドナー博士の治療によりサイボーグとなっているため、辻褄が合わない部分もある。
しかし上記の様に、ビッグ・ボスにとってはヴェノムは表裏一体のものであり、ヴェノムの幻肢痛をビッグ・ボス自身が加え、ヴェノムの役割を乗じた可能性も否めない。
また、MGSではビッグボスの右目は3で傷ついたものであるなど、小島秀夫氏は旧メタルギアシリーズの方は既にパラレルワールドとしている為、多少の誤差はあるのかもしれない。)
しかし、作中で判る通りファントムにも限界があった。
オセロットはヴェノムをビッグ・ボスに仕立てあげるべく、昏睡時の変性意識状態を利用したマインドコントロールや暗示などの洗脳術を用い、過去のビッグ・ボスの作戦記録を追体験させることで経験と知識を植え付けてきたが、ヴェノムにはヴェノムの人格がある。
MSF出身のヴェノムにとって、ビッグ・ボスの活躍を具体的に知っていたのはMGSPWからMGSGZまでであり、それ以前のビッグ・ボスについては飽くまでも「作戦記録として残されているレベル」での知識に過ぎず、本物のビッグ・ボス個人がかつて何を見聞きし、何を考え、何を話したかまでは知り得なかったのである。
ヒューイからクラーク博士の話を持ちかけられても、クラーク博士の人物像自体あまり知らない為「さぁな」の一言だけ言って興味を示さなかったり、あれほどビッグ・ボスがこだわっていた葉巻もファントムシガーという電子タバコで済ませていたり、誕生日イベントで葉巻にロウソクで火をつけようとしている。(葉巻にロウソクで火をつけるとロウソクの匂いに葉巻の匂いが負けて葉巻がダメになってしまうため、葉巻にこだわりがある人間はそのようなことは普通しない)
また、かつてニカラグア湖に捨てたザ・ボスのバンダナを再び手に入れるが(ストレンジラブが回収していた)それを修復して身につける事も出来る
さらに先述のように、ロシア語などの通訳が出来ない(オセロットは脳に刺さった破片による言語野の障害と説明しているが、ビッグ・ボスになる様に洗脳を行っていたのもオセロットな為、怪しいものである)。
またオセロットが兵士訓練で兵士に発したあの台詞に関しても無関心。
そして極め付けはザ・ボスの人格コピーであるAIママル・ポッドが発したヴェノムに対するそのものズバリな「貴方じゃないわね」という言葉と、それに何の関心も抱かなかった事である(勘の良いプレイヤーの中には、ここでピンと来た人も多かったようである)。
これはMGS4でビッグ・ボスが言っていた「遺伝子統制や情報統制を突き詰めても、人が完全に他人に成り切る事など不可能だ」の言葉を裏付けており、オセロットでさえ他人に成り代わっても必ず落とし穴があると言う事になる。
アフガンでヴェノムに救出されたミラーも、その正体に薄々勘づいている台詞を発しており、あろう事かエンディング後は、ビッグ・ボスのファントムである事をマザーベーススタッフ全員が気がついている(それでも「自分たちにとっては貴方がBIGBOSSだ」と言ってついてきてくれる)。
外見に関しても本物のBIGBOSSと以下のような違いがある。
頭部の破片:メディックが本物のBIGBOSSを爆発から庇った為BIGBOSS本人にはない。
左腕の義手:上と同じ理由で本物はちゃんと腕がついたままである。
顔面の傷:これも上と同じ理由で本物にはない。
眼帯の留め具:本物が2点留めなのに対してヴェノムは3点留めである。
瞳の色:本物は蒼い瞳なのに対してヴェノムは緑色。ちなみに燃える男ことヴォルギンが最期にスネークを殺さなかったのはこの瞳の色で彼を偽物と見破った為である。(MGS3でヴォルギンはBIGBOSSの蒼い瞳が嫌いと発言している。)
髪型:ヴェノムは後ろで髪を結わえている。
胸のS字の傷:ザ・ボスを模してBIGBOSSが胸につけた傷、ワイヤーを仕込んでいたりする。当然ながらヴェノムにこの傷はない。(出撃画面で衣装をネイキッドにすると確認できる。)
MGS4で、ビッグ・ママことEVAがソリッド・スネークに愛国者達について語った際の「BIGBOSSの虚像と真実を折り込ませた物語」とは、” ビッグ・ボスがMGS3からMGSVまで活躍した物語 ”に基づいているということになる。
ただ、回想とはいえEVAとヴェノム・スネークと二人に面識があったかは今の所は不明だが、ビッグ・ボスとヴェノムが昏睡状態の時に、2人の身柄をキプロスまで移送したのはEVAの為、少なくともEVAはヴェノムとなる前の元の人物の存在を知っている事になる。
またMGSでナオミ・ハンターがソリッドに渡したスニーキングスーツは元々、ダイヤモンド・ドッグズで作られ、ヴェノム・スネークが着用していたモノであると小島氏が語っている為、ヴェノムはナオミ・ハンターとはこれから先、面識があったのかもしれない。(彼女がビッグ・ボスと会うきっかけをつくったのはグレイ・フォックスである)
彼の存在はあくまでビッグ・ボスのファントム。
絶対に明るみには出ない存在であり、ソリッド・スネークに倒されても、彼の名前と存在は倒した本人であるソリッドにさえ知らされる事は無かった。
当初は何の変哲もない傭兵だった彼だが、ビッグ・ボスの役割を演じ、死して尚BIGBOSSの名を残して、最後まで役割を貫いたのだった。
核廃絶エンドにおいてはピースウォーカーが示したザ・ボスの自己犠牲の精神を理解し、武器と内なる鬼を捨てる事が生きた証となる事をボスへと告げるように語っている。ビッグボス本人はMGS4の結末においてザ・ボスの意志に辿り着いたが、本来偽物であるはずのヴェノムが一足早く気づけたのは、「遺伝子統制や情報統制を突き詰めても、人が完全に他人に成り切る事など不可能だ」というように彼が別人であるからこそできた事だと考えると、感慨深いものがある。
なお、ゴーストバベルはソリッドシリーズとは繋がらない完全なパラレルストリーのため、倒されたのはビッグボス本人でソリッドはビッグ・ボスの実子だと思われる。
モデルをよく見ると、比較的細身のソリッド・リキッドや、中間くらいのネイキッド・ソリダスと比べ、ヴェノムは顔のパーツこそ似てるものの輪郭の骨格ががっちりとした印象である。
ヴェノムのフェイスモデルと英語版音声には、それまで英語版MGSシリーズでソリッドやビッグ・ボス演じていたデヴィッド・ヘイター氏ではなく、海外ドラマ『24』でお馴染みの俳優キーファー・サザーランド氏に変更されたことが話題となったが、このこと自体もメタ的にビッグ・ボスとは別人であることを意図して盛り込まれた要素とも考えられる。
関連項目
カズヒラ・ミラー リボルバー・オセロット ヒューイ(MGS)
ゴーストバベル …ヴェノムと同じ特殊な義手の男「ブラックアーツ・ヴァイパー」が登場する。
ヴェノム博士 …同じコナミ作品でヴェノムの名を冠する人物。