概要
海軍における命令の1つで、海軍本部中将5人と軍艦10隻という国家戦争クラスの大戦力で無差別攻撃を行う。
「何をもってもまず殲滅」というスタンスのため、例え発令者が攻撃目標にまだ残存していようが、無関係の市民が紛れていようが、お構いなしに攻撃は発動される。その攻撃は終始徹底しており、行われた後はその場所は更地にされてしまうほど。
また、バスターコール実行艦隊の作戦行動は迅速かつ徹底した任務最優先の行動が絶対とされる。指揮を担当する中将たちは全員が感情を捨てたかのように冷徹無慈悲となり、命令違反及び遅延の海兵はその場で銃殺刑に処されることもあるほど、全ては厳格に遂行される。
金色の電伝虫(ゴールデン電伝虫)を押す事で発令し、銀色の電伝虫(シルバー電伝虫)が受信する事で実行される。発令権限は海軍本部の元帥と大将のみが保持しており、特例として、元帥又は大将から権限を委譲された役人にも発令権限が与えられる。
作中で発生したバスターコール
作中では22年前のオハラと2年前のエニエス・ロビーで合計2回発令されている。
オハラ(22年前)
22年前、西の海の島オハラで発生したバスターコールである。発令者は当時の海軍本部大将センゴクから権限を委譲されたCP9司令長官スパンダイン。参加した中将は、現状クザン(後の大将"青雉")とサカズキ(後の大将"赤犬")が確認されている。
攻撃対象はオハラで空白の100年及びポーネグリフの調査を行ったオハラの考古学者だったが、最終的にはニコ・ロビンを除く同島の島民全員を殺害し島を焦土にしてしまった。
エニエス・ロビー(2年前)
2年前、偉大なる航路の島エニエス・ロビーで発生したバスターコールである。発令者は当時の海軍本部大将"青雉"から権限を委譲されたCP9司令長官スパンダム。参加した中将は、ドーベルマン、オニグモ、モモンガ、ストロベリー、ヤマカジ。
攻撃対象はエニエス・ロビー全域で、最終的に同島は全壊した。
22年前のものと違って、こちらは誤って発令された(スパンダムが電伝虫と間違えてゴールデン電伝虫を押した)バスターコールである。
『ワンピースパーティー』によれば、このあともう一回施設は建て直したらしい。
不明(23年前)
劇場版『ONE PIECE STAMPEDE』にて言及された過去のバスターコール。
場所は不明だが、ダグラス・バレットを阻止するために彼が暴れ回っていた島にバスターコールが発令され、センゴク率いる艦隊が出撃した、
甚大な被害を出しながらも物量差と重厚な包囲で長期戦に持ち込んでジワジワと追い詰め、更にはバレットに恨みを持つ海賊も加勢、ついには消耗の末に疲れ切ったバレットを打ち負かしてインペルダウンに投獄することに成功した。
デルタ島
劇場版『[ONE PIECE STAMPEDE』の舞台となる海賊万博の開催地。
予告編で多数の海軍艦隊に攻め込まれてバスターコールに晒される可能性が示唆される。
余談
繋がり眉毛の海兵
エニエス・ロビーでのバスターコールでは、こちら葛飾区亀有公園前派出所の主人公・両津勘吉がモブ海兵として参加している。これは『こち亀』の連載30周年を記念したもの。
原作での彼の戦闘能力や生命力を考えればどう考えても並の海兵よりも強そう…どころか、本部佐官・将官クラス、下手をすれば三大将やセンゴクすらも真っ青になりそうだが・・・(なにせ、原作においては神様や閻魔大王を、コラボでは惑星を簡単に破壊する宇宙の帝王フリーザやサイヤ人の王子ベジータをも恐怖させたヤツである)。
現実の「軍艦10隻」で島は消せる?
国家戦争クラスと言われる(実際にオハラはバスターコールで文字通りの火の海と燃えカスとなって滅ぼされ、エニエス・ロビーは見る影もなく破壊しつくされており、本部中将達の実力を見れば、それは決して誇張ではない事は明らかである)バスターコールによって召集される戦力。作中でも圧倒的な威圧感と絶望感を以って迎えられている。
だが現実における軍艦10隻というのはむしろ、島や国を1つ消し去るには(広さにもよるが)「足りない」とすら言える戦力である。
大戦末期、釜石市に対する攻撃(攻撃目標:日本製鐵釜石製鉄所)には戦艦3隻、重巡洋艦2隻、小型の軍艦である駆逐艦9隻、イギリス海軍からは軽巡洋艦2隻、駆逐艦3隻が投じられ、市民も含めた無差別攻撃が2回行われた。
これにより目標である製鉄所は破壊され、市街地は壊滅し多くの市民が犠牲となったわけだが…延べ戦力で言えば明らかに「軍艦10隻」では済まされない戦力が投じられた。
沿岸部の町を一つ壊滅させるだけでも、これだけの戦力が必要だったのである。
つまり国・島全土を攻撃するとなれば…本来これ以上の戦力が必要となるのは言うまでもない。
これを踏まえて、作中で焦土と化し地図から消されたオハラのように、沖縄県を一時的に日本から消し去った「鉄の暴風」…沖縄戦でどれだけの艦隊戦力が投入されたかを見てみよう。
大型艦砲を搭載した「戦艦」だけでも
…おいおい、「戦艦」だけで10隻より明らかに多いぞ。
実際には航空母艦から飛んでくる航空機からの空襲も加わった為、総戦力はお察し下さい。
これらから叩き込まれた砲弾の数、実に16インチ砲弾4411発、14インチ砲弾16,046発、12インチ砲弾2,700発。
「戦艦」だけではない。中型の軍艦「巡洋艦」からも砲弾が降り注いだ。
その数は戦艦よりはるかに多く、8インチ砲弾32,180発。6インチ砲弾46,020発。
(※1インチ=2.54センチ)
もちろんだが、これは1日で投じられたわけではなく「戦闘の終結」までに投じられた数である。
ONEPIECE世界の軍艦の艦砲の口径・威力は不明なので現実と一概に比較できるものではない(砲門数についてはある程度の推測は可能)が、少なくともこの時に匹敵するか上回る「火力」「戦力」を持っていたのは確かである。
そもそも、この世界における「本部中将」格といえば、普通に大砲撃つより高威力かつ高速で砲弾や船よりデカい鉄球を投擲する人、軍艦を持ち上げる怪力の巨人といった、能力者は元より、そうでない者ですら現実世界と比べるのがまず野暮かつバカらしくなるレベルの超人達も揃っている。
また、沖縄に停泊していた船や脱出を試みた船も(サカズキがオハラの避難船を容赦なく撃沈したように)多くは米軍の攻撃により沈没・遭難(対馬丸もその一隻)。
逃げ場を失った沖縄は陸海空から熾烈な攻撃を受け、地形が変わるほどであったが、結果から言えばこの攻撃を生き残った沖縄県民は存在し、今にその地獄絵図と恐怖は語り継がれている。
(もちろん、米軍の目的が「沖縄県民及び沖縄に駐留する日本軍を1人残らず皆殺しにする」というわけではなかったのもある)
沖縄本島より小さく、守備兵力も少なかった硫黄島の戦いにおいても同様で、激越なる艦砲射撃と爆撃を受けたが地下陣地に拠って頑強に抗戦し、1か月粘っている。
この2事例から、艦砲射撃や爆撃で島を完全に破壊するのは、現実には遥かに大きな戦力を投じた、かの米軍ですらも不可能であったことがおわかりいただけるだろう。
1日でオハラを火の海にし、エニエス・ロビー全島を破壊してしまったバスターコールの火力がいかに凄まじいものであったかも逆算できるというものだ。
ONEPIECE世界における「軍艦10隻と中将5人」がいかに強大な戦力であり、絶望的な脅威であるかがよくわかると言えよう。
こう考えると、ビスマルク追撃戦時のイギリス海軍本国艦隊の行動のほうがバスターコールに近い。この時は使える大型艦のほとんどがビスマルク1隻撃沈するために動員された。
作中では大規模攻撃を仕掛け、同士討ち含め大きな損害を出しておきながら結局『目標』は取り逃がしてしまう方が多い、いわば見掛け倒し・かませ犬とも言えるバスターコールだが、現実世界の類似事例と比べると遥かに苛烈と推測できる。やはりバスターコールは恐ろしいのだ。