注意
このキャラクターは、アンチが非常に多く、時折過剰なキャラヘイト表現や、『似たような人物』などの本来の趣旨から離れた内容の書き込みが行われる事があり、それが原因となって編集合戦へと発展する事も多々あります。
原則中立性のある記事を保つ為、そして無益な編集合戦を防ぐ為にもそういった書き込みは極力控える様お願い致します。
概要
藤子SF短編の中でも、激烈にブラックな内容と、あまりにミスマッチな(扉絵・タイトルなどの)見た目で知られている。また、アニメ化もされている。
スーパーマンの力を手に入れたのが、誠実な両親に育てられて確かな正義の心を持ったクラーク・ケントではなく、日々抑圧を感じ続けてきた小市民であったら、というシチュエーションを基に、『正義』という概念の持つ危うさやその独善性、偽善性を皮肉たっぷりに描く。
通称「USD」。
事実上のパイロット版として『カイケツ小池さん』という短編も存在する。
こちらは、細かな設定(主人公の立場、能力の一部)に違いがあるものの、ラーメン大好き小池さんの格好をしている等、共通点が多い。
あらすじ
不死身の肉体を持つ超人・句楽兼人(くらく・けんと)は『正義』の名のもとに自ら定めた『悪』を断罪する。
しかし、強大な力を振り回しすぎた彼は、今や世界中から恐れられる存在となっていた……。
登場人物
- ウルトラスーパーデラックスマン/句楽兼人
CV:龍田直樹
主人公。月星商事(アニメでは日星商事)の待機室長。
全身の細胞が「ウルトラスーパーデラックス細胞」に変質したスーパーマンで、数々の超能力を体得している。
もともとは平凡なサラリーマンで、強い正義感の持ち主ではあったが、暴漢に立ち向かうほどの力や勇気はなく、せいぜい新聞の投書欄で憂さ晴らしするしかないまま日々社会の腐敗と堕落を憂い歯噛みしていた。
それがある日、突然スーパーマンとしての能力(人間の手足程度なら軽く引きちぎる怪力、飛行能力、核爆弾にも耐える耐久力、あらゆる物を見通すX線眼)を手に入れ、以降、暴走族や汚職代議士等を成敗していくようになる。
しかし、「小難しい理屈はおれ、きらいなんだ。悪いやつは悪い、良いやつは良い」と法や人権を全く無視した独善的かつ短絡的な粛清を繰り返すようになり、力を誇示したせいで、各国から危険視され、挙句の果てには核攻撃まで受けてしまい(彼自身は無傷)、世界中から孤立した。作中時点では、世界中のメディアが彼に関する情報に対して戒厳令を敷いており、彼の存在は公然の秘密となっている。
自分の正義を理解してもらえない事や、人外の力を持って生きていく事への重圧もあって、句楽自身もいよいよエゴが暴走しており、仕事中のアイドルを無理やり呼びつけて有無を言わさずベッドインするなど、理不尽極まりない所業に及んでいる。
親友である片山も「(散々自分をしつこく狙った)謎の女をかばう」「自分に対し説教した」という理由で殺そうとした。
最期はウルトラスーパーデラックス細胞がガン細胞に変質してしまい、それを治療する術がなかったため死亡する。
さらにアニメ版では、能力を手に入れてから数年間、秘書からの勧めを断って健康診断に行かなかったせいですでに手遅れだった事実が明らかになった。
「おれの力は世の不正を正せと神があたえたもうたものだ」
「おれに逆らう者はすなわち悪だ。悪をまっ殺するのがなぜ悪い!?」
「言ったな!生き埋めにしてやる!!」(漫画版で片山に『血に飢えた化け物』と糾弾された事に逆上しての台詞)
「正義を邪魔する奴は友達でも敵だぞ」(アニメ版で片山に謎の女を渡すよう要求して「渡したら殺すんだろう」と問い詰める彼に対する台詞)
「句楽兼人」という名前は、もちろん「クラーク・ケント」のもじり。
しかし、「句楽」は「苦楽」とも書き換えることが出来るため、正義と苦しみを兼ねた人・・・つまり、正義の力を得たがゆえの苦悩を抱えてしまった人という意味とも解釈できる。
特にアニメ版ではそうした側面が強く描かれており、片山に自分の本心を吐露するシーンもある。
「お前にだけ言うけど……時々、このままずっと生きていくのかなって思うんだ」
「知ってる奴みんなが死んでも、きっとおれだけがいつまでも生きていくのかなぁって……この先、何百年、何千年、何億年もこんな生活していくのかなぁって!」
「ひょっとして、おれ一生死ねないんじゃないかな!? いや、死ぬまで死ねないんじゃないかな!? いや、おれが言いたいのはな、だからその……つまり……」
- 片山
CV:増岡弘
本作のもう一人の主人公。句楽の親友。
中年太りした容姿だが、アニメ版ではややスマートな体型になっている。妻がいる(アニメ版ではしげおという子供もいた)。
世間が句楽を恐れる中、偶然にも句楽と顔を合わせ、家に遊びに来るよう誘われてしまう。
それを断れなかったため、妻に「だから平社員のままなのよ!」と怒鳴られ(アニメでは物まで投げつけられている)涙ながらに反対されるが、行かなくても何をされるかわからないため句楽邸へ向かう事を決意。
道中、謎の女を轢きそうになり、車が壊れた事でウルトラスーパーデラックスマンに送ってもらい、その正体が句楽である事を知る。
その後、句楽邸にて彼から能力を手に入れた経緯と今後についての悩みを聞かされていたが、そんな中で謎の女が句楽を狙ったため、彼女を咎める。
しかし、彼女は忠告を聞かずに句楽を逆上させてしまい、結局は彼女を助け、彼女を殺そうとする句楽を怒鳴りつける。
それは親友という立場から、これ以上独善を振りかざして暴れるのはやめてほしいと、彼のためを思っての事だった。
結局、逆上した句楽によって殺されそうになるが、その直前、彼はガンに倒れた。
吐血した句楽を見てすぐに救急車を呼ぶが、最終的には病院で彼の死を見届ける。
さらにアニメ版では、句楽の死後、平凡なサラリーマンとして一生を終えたかった彼の気持ちに配慮し、彼の棺にウルトラスーパーデラックスマンの服を納めないことを決めるのだった。
「句楽、貴様は正義の味方なんかじゃない! 血に飢えた化け物だ!!」
「公平に言って、ウルトラスーパーデラックスマンは、現代がなしうる最高の医療を受けたと言えよう。しかし……ウルトラスーパーデラックスガン細胞の増殖を抑える事は不可能であった」(句楽が最期を迎えるシーンにおけるナレーション)
「私は、彼の棺にこの服を入れるのはやめようと思う。彼は、ウルトラスーパーデラックスマンではなく、平凡な一人のサラリーマン・句楽兼人として、一生を終わりたかったに違いないから……」(アニメのラストシーンでのナレーション)
- 謎の女
CV:柳沢三千代
片山が出会った謎の女性。
その正体は、かっぱらいをしたからという理由で恋人をウルトラスーパーデラックスマンに殺された女性で、句楽への復讐を狙っている。
片山の忠告を聞かずに、無謀にも包丁やハンマーで句楽を襲い、その度に返り討ちに遭って彼を逆上させるが、最終的に片山に助けられる。
アニメ版では、句楽に殺された恋人はかっぱらいではなく、句楽に言いがかりをつけられ殺された一般人という設定に変更された。
また、服装がボロボロの服+裸足から少し破れた洋服+靴、武器も包丁+ハンマーからナイフ+マシンガンに変更されており、ちゃんと顔が描かれ台詞も付いた事で、「句楽の独善の犠牲者」や「自己犠牲を覚悟して句楽に立ち向かう必要悪」というイメージが強くなっている。
「あの人は、何もしてないわ! 句楽が……句楽が言いがかりを付けてきたのよ!!」
「今、俺の悪口を言っただろうって、あの人に近づいてきて……あの人を……!!」
- 丸眼鏡の文化人
CV:田中亮一
多くの文化人有志を連れて句楽の家に行き、日本は法治国家であり私的制裁は禁止されていると説得したが、追い返される。
原作ではそのまま退場したが、アニメ版ではこの後テレビの討論番組にも出演。句楽の特集が取り上げられた時に句楽を堂々と批判したものの、運悪くその一部始終はテレビを通じて句楽に見られ、テレビ局に乱入してきた彼によって壁に強く叩きつけられてしまった。
「彼はもはや正義の味方ではありません!」
『カイケツ小池さん』の登場人物
『カイケツ小池さん』の主人公。
句楽と同様、平凡な小市民でありながら、腐敗する社会に正義の怒りを燃やす男。
ある日、唐突にスーパーマンのような超能力を手に入れ、世にはびこる悪を断罪していく。
……と書けば聞こえはいいが、彼の社会に対する怒りは「東京都のマークが卑猥」「深夜番組の内容が破廉恥」と、一般の人々に比べて神経質すぎるきらいがあり、彼自身「正義屋」というあだ名で周囲に後ろ指を指されている。
またその一方で、句楽同様、実際には抗議の投書を新聞社やテレビ局に送るのが精一杯の臆病な男でもあった。
超能力を手に入れてからもそれは変わらず、ある日、勢い余って痴漢を惨殺してしまい、その精神的負担に耐え切れずに「こんな奴が死んだところで社会に損害はない」と自らを正当化し、後述の会社の上司やタバコ屋のお婆さんを念力で殺害して以降、ラーメンを値上げした近所の店主や、嫌いな番組に出演した芸能人、さらには自分に噛みついてきた犬までをも、独善的に粛清するようになる。
挙句の果てには、「バレなければ悪くない」として、普段から好意を持っていた女性の私生活をX線眼で覗くまでに至った。
しかし、最終的に、その女性・富士野雪子に愛人がいた事を知ってしまい、自分の思い通りにならない世界に逆上。空をやみくもに飛び回った末、怒りをぶちまける。
その際、
「その気になれば世界を破滅させることだってできるんだぞォ!!」
と叫ぶ。
そんな彼に向かって、どこからか野球の球が勢いよく飛んできて、彼のエゴがいよいよ爆発するのを予感させる……というのが『カイケツ小池さん』のオチであった。
- 富士野雪子
小池さんの憧れの女性だが、実は愛人がいた。
小池さんの彼女に対する想いは全くの片思いだが、このおかげで、小池さんは一方的に逆上する。
- 会社の上司
日頃から仕事そっちのけで投書に精を出す小池さんを叱ったり嫌味を言ったりする。
正論を述べているにもかかわらず、小池さんはこれをパワハラとしか受け取っていない。
最終的には、小池さんが辞表を出した時に吐いた「くたばれ!!」の一言と共に発せられた念力によって殺された。死因は心臓麻痺である。
- タバコ屋のお婆さん
本人としては真剣に怒っている小池さんをいつも冷やかすお婆さんで、最終的にやはり小池さんの「くたばれ」の一言から発せられた念力で殺害された。
直接死亡する描写はなく、「くたばれ」と呟いた次のコマでタバコ屋の前に葬式用の花輪がかかっているという、地味ながら怖い演出が使われた。
余談
- 似たようなテーマを扱った藤子・F・不二雄作品に、『わが子・スーパーマン』というものがある。こちらは、様々な状況証拠から「自分の子供が超能力を手に入れ、行使するようになってしまったのではないか」という疑念にかられたその父親が苦悩するという内容。
- 一方、超能力者の苦悩と哀愁により重きを置いた『中年スーパーマン左江内氏』という作品もある。内容は日常のトラブルと戦うものだが、こちらは最終回で社会正義に失望していたところを『パーマン』に登場するパーマン4号と出会い、彼と友情を結ぶというハッピーエンドだった。
- そして『ドラえもん』にも『どくさいスイッチ』という似たようなエピソードがある。こちらは叱られるのが嫌になったのび太が自分を叱る人間を次々と消していくうちに孤独になってしまうお話である。
- 強大な力とエゴが組み合わさって暴走する様を描いている、という点では、夜神月や市立戦隊ダイテンジン、『仮面ライダーOOO』に登場したバッタヤミーにも通じている。「正義のためなら人はどこまでも残酷になれる」のだ。
- 現実に於いても、現代のインターネット社会の負の側面として特定の個人や団体に対する誹謗中傷被害が問題となっており、皮肉にもその有様は句楽と重なってしまっている(それをテーマにした代表作として、このドラマが挙げられる)。
- 本作以外にも、『ワンパンマン』や『斉木楠雄のΨ難』、『ジョジョの奇妙な冒険』、『X-men』シリーズ、『シャイニング』(及び続編の『ドクター・スリープ』)といった、超能力者の苦悩を描いた作品が存在する。しかしこれらの作品の主人公たちは良き理解者に巡り会えた為に、力を使って暴走せずに本当の意味で他者の救済に使っている。一方で中には、彼らとの対比として理解者に巡り会えなかった故に句楽や小池さんのように強大な力とエゴが組み合わさって悪事を働く者も存在する。
関連項目
表記ゆれ:ウルトラ・スーパー・デラックスマン
スプレンディド・・・こちらもスーパーマンのパロディ。こちらは作品の性質上、一般人を故意に殺したり、助けようとしても失敗して殺してしまったりするなどウルトラスーパーデラックスマン以上に始末が悪い。
ウルトラスーパーデラックス:タイトルから「マン」を抜き取ると全く無関係のゲームになる。略称「ウルデラ」。
エスカルゴン:上記ゲームと同シリーズのアニメ版で句楽兼人の中の人が演じるアニメオリジナルキャラ。後に同シリーズの別作品ゲームで再登場。
獅子神皓・・・人外の存在となって私刑行為を行なった事が原因で世界中から孤立したキャラ繋がり。