CV:平川大輔
人物像
エレボニア帝国を収める貴族たちの最大の派閥である「四大名門」の一角「アルバレア公爵家」の長子。弟のユーシスにとっては自身に無関心な父に代わって様々なことを教授してくれた尊敬すべき兄である。
オリヴァルト皇子と社交界の話題を二分する貴族派きっての貴公子で、効率的、合理的な思考に富んだ明晰な頭脳を持つ他、騎士剣を用いた宮廷剣術も弟子のユーシス含む周囲が達人と認めるほど。
さらにトールズ士官学院の常任理事も務めており、Ⅶ組の特別実習のカリキュラムも担当していた。
それだけの才覚を持ちながらそれを鼻にかけることもなく、気さくに領民と接する人格者である。
しかし一方で貴族派の中心的思想を持つため、革新派からは要注意人物として危険視されていた。
続編の「閃の軌跡Ⅱ」では「貴族による平民の支配」という帝国のあるべき姿を取り戻すため、貴族連合の首魁カイエン公爵とともに『参謀総長』として軍を率いて帝国全土の掌握に乗り出す。その一方、時には貴族連合の思惑とは異なる方向にリィンたちを誘導したりと不自然な行動がたびたび見られるほか、父・ヘルムート・アルバレア当代公爵のケルディック焼き討ちの蛮行には、ユーシスたちⅦ組に逮捕を委ねる一面も。
そして最終決戦となった煌魔城にて、最後にⅦ組やヴィータに追い詰められたカイエン公爵が皇太子セドリックを人質にとったところで参上。カイエン公は助けに来てくれたのかと心躍るが、ルーファスは
「平民の言葉を借りるが、『寝言は寝てから言うがいい』」
の一言の後、たびたびリィンやユーシスの前に現れて妨害していたアルティナの戦術殻・「クラウ=ソラス」の鉄拳をカイエン公に食らわせ、身柄を拘束した。
その正体は宰相ギリアス・オズボーンの配下である「鉄血の子供たち」の筆頭《翡翠の城将(ルーク・オブ・ジェイド)》であり、貴族連合に協力していたのも、オズボーンの課した「宿題」である「貴族側の勢力をなるべく穏便かつ確実に削ぐ」を果たすための表面上のものだった。
(これが物語中初めてのカミングアウトで、他の「鉄血の子供たち」も筆頭となる人物が存在するのは知っていたが誰なのかは直前まで知らされていなかった)。
これにより、皇族への不敬および帝国への反逆罪でカイエン候を失脚させ、自らは内乱の早期解決へ尽力した功績で貴族派のトップに収まった。
内戦終了後はオズボーン主導のもと、軍を率いて大統領の暴挙や「碧の大樹」で混乱状態になっていたクロスベルを数日で占拠、そのままエレボニア領となったクロスベル総督となった。
「閃の軌跡Ⅲ」では故郷バリアハートに帰ることなくそのままクロスベル総督として辣腕を振るい、帝国の反乱分子を取り締まるため「鳥篭作戦」を発動。特務支援課やその関係者たちを次々とミシュラム方面へ拘束していく。
終盤ではオズボーンの協力のために帝都ヘイムダルに戻り《大いなる黄昏》の発動のために「鉄血の子供たち」と共にⅦ組と対峙する。
そもそも何故大貴族の御曹司である彼が貴族と敵対関係である「鉄血の子供たち」になったのか?
約束された地位と権力を持ちながらオズボーンの下に就くのか?
※ネタバレ注意
「———簡単なことさ。私が父の実の息子ではないからだ。
ヘルムート・アルバレア公爵のね。」
なんと彼はヘルムート公爵の実子ではなく、公爵の正妻と、実弟の間にできた不義の子であった。そのためユーシスとは本来兄弟ではなく、従兄弟の間柄になる。
しかし公爵はそれを知りつつ、家の体面のために彼を実子として迎え入れ、逆に本当の実子であるユーシスを「平民の血が流れている」と言う理由だけで遠ざけてルーファスを次期公爵に選んだ。
家族の絆を、血筋さえも歪めてしまうその有り様から、彼はいつしか「貴族」そのものに疑問を感じ、深い嫌悪を抱くようになった。
そんな折、当時「百日戦役」を解決して、平民でありながら四大名門貴族を押しのけて宰相に登りつめたオズボーンに興味を持ち、彼と初めて邂逅してその器に心酔する。
そしてオズボーンを精神的な「父」と見なし、最初の「鉄血の子供」として彼に仕えることになったのである。
「閃の軌跡Ⅳ」では完全に新旧Ⅷ組と対立。
己の大望である「父であるオズボーンを超えることで、偽りに彩られた人生と決別し、己の存在意義を見出す」ため、本格的な行動に乗り出す。
まず、クロスベル総督の権限を活用し、エベル湖南岸で最後の騎神である金の騎神エル・プラトーの起動者となることに成功。
次に起動者の一人として《七の相克》に参加。第三相克でリィン&灰の機神ヴァリマールに破れた聖女リアンヌ&銀の機神・アルグレオンを、疲弊し、リィン達と和解したことで気の緩んだリアンヌを背後から不意打ちするという卑劣な手段で殺害し、銀の騎神の力のほとんどを奪い取った。
そして遂に、幻想機動要塞トゥアハー=デ=ダナーン内部で黒のアルベリヒと共に弟・ユーシスらⅦ組と対峙。リィン&ヴァリマールとクロウ&蒼の機神オルディーネを相手に第五相克の戦いを開始する。
これで6体の機神の力と不死者の身体を得て、偉大なる父オズボーン(&黒の機神イシュメルガ)へ挑むことができる・・・と目論んでいたが、力及ばず敗北。
愕然としながら問うた己の敗因に、ユーシスから「人に、仲間に頼らなかったこと」と告げられる。
虚ろな公爵家の中でも兄と慕ってくれていたユーシスにも、同じ鉄血の兄弟であったレクター、クレア、ミリアムにも、他にも周囲に仕える大勢の部下たちにも頼らず、全てを己の才覚のみで押し進めていった。
それは一見完璧のようで様々な歪みが潜み、故にその場は凌げても、先の未来には決して続かない・・・
完璧な才を持つが故の孤独の道を、多くの仲間たちと支え合いながら歩んできたⅦ組に超えられたことを理解し、憑き物が落ちたかのようになった中・・・
「後は任せて休んでください、兄上。
ですがその前に一発、殴らせてもらいます。」
と弟のユーシスに鉄拳制裁を食らい眠りについた。
不義の子として「父」と自らの存在意義を求めた男は、こうして相克の舞台を降りたのであった。
イシュメルガ打倒後は、オズボーンと共に戦争に加担した罪で極刑を覚悟するレクターとクレアに、それぞれ所属する帝国軍情報局と鉄道憲兵隊で後の混乱の収拾に尽力することを説き、二人の代わりに咎を引き受けて逮捕された。
創の軌跡
ところが、逮捕されたにもかかわらず、黒の衛士隊を率いクロスベルを再占領、自らをクロスベル統一国総統と名乗り再び特務支援課達に立ち塞がった。しかし彼のあまりに唐突な行動は弟ユーシスはもちろん、レクターも不信感と同時に違和感を抱いている。
※この先、「創の軌跡」のネタバレ注意!
ルーファスがクロスベル統一国の総統として現れたのと同時期に、3人目の主人公にして「新生帝国解放戦線」のリーダー・《C》を名乗る人物が統一国に異論を表明し、導力映像を帝国に送信。
そこにはオリヴァルト皇子とシェラザード妃の夫妻を自身が誘拐した事、更に帝都ヘイムダルで何らかの行動を起こす事が表明されていた。
嘗て敵対した「帝国解放戦線」のリーダーと同じ名前を名乗っていた為、リィン達は念の為に物語中盤の差し掛かり始めで調査に乗り出す事になり、《C》側の巧みな誘導により、ヒンメル霊園で両者は激突。その戦いのさなか、クロウ、ミリアム、ユーシスの連携で《C》は仮面を破壊される。
「———やれやれ、
こうも早くバレてしまうとはね。」
「また成長したな、ユーシス。
リィン君たちも。」
……その下の素顔は、なんとクロスベルにいる筈のルーファス・アルバレアその人であった。
クロスベルにいる方とは違い、髪は短く切っている。
この事実と「「新総統」の称号を持つのは自分ではない」との台詞にリィン一行は驚愕と大混乱に包まれる。リィン達は色々問いただしてみるも、すぐその場を去った彼から得られた情報は、オリヴァルト皇子夫妻誘拐についてはそれをリィン達と会う為の餌にしただけで彼の犯行ではない事、夫妻の行方の手掛かりはノルド高原にある事、彼にはやらねばならない「宿題」がある事だけであった。
更に後の調査で、クロスベル総統である方のルーファスはこの事実が判明した時間帯、クロスベルを一歩も出ていない事が判明。同じ時間の2つの場所にルーファスがいた事になり、一連の事件は新たな謎が生まれるのであった。
視点は切り替わり、ルーファス一行の乗るナインヴァリの輸送飛行艇(操縦はジンゴ)。
ここで、ルーファスは多額のミラで雇った同行者のスウィンとナーディアに真実を語る。
彼は、オーロックス砦に拘置されていた際、嘗ての部下であった黒の衛士隊になぜか抹殺されかけるもこれを返り討ちにし、彼らが自身の名を名乗る者の下に集い、クロスベル再占領を図っている事と、その為にスウィンとナーディアが運んでいたトランクを狙っている事を断片的ながら知る。
そこで、彼は自身の偽物をどうにかする事、そして自身の総督時代から生じたクロスベルの歪みを「鉄血の子供たち」筆頭として正す為、すぐに黒の衛士隊の脱獄に乗じて脱獄。仮面を着けて素性を隠すと同時に、「新生帝国解放戦線のリーダー《C》」を名乗る事で、リィン達を一連の事件に関わらせる事を狙い成功。その後、黒の衛士隊からトランクの中に入っていたラピスを守り抜き、3人を仲間としたのであった。
話を終え、甲板で夜風に当たっていたルーファスは星を見に来たラピスと二人きりになる。
ラピスとの会話の中で、「人間とは何か」という問いに至り、ラピスが「善も悪も、出自も生い立ちも、何をしてもしなくても、何を持っていても持っていなくても、その人はその人だよ。理由なんていらないし、誰が認めても認めなくてもそこは変わらない」と答えた後、彼は己のこれまでを一人振り返る。
不義の子として生まれながら公爵家の体面の為に実子とされた自分、それに対して平民の妾腹というだけで父に関心を向けられなかった弟。そこに自分自身の存在はなく、否定しようとしても、そうすると今度は公爵家の記号としての存在意義すらなくなってしまう矛盾。
そんな時に彼はオズボーンと出会い、オズボーンに「真の父」を見出した彼は最初の「鉄血の子供」となる。その中で、「父」オズボーンを超えてこそ存在意義が見出せると考えた彼は、がむしゃらに突き進み、何を利用してでもどんな手段を講じてでもそれを果たそうとしたが、結果は「閃IV」で明らかになったように敗北。敗因は弟と違い、彼には信頼し、いざという時に頼れる大切な仲間がいなかったからであった。多くの仲間に囲まれた弟の姿に羨望を覚えたルーファス。
それは超人といっても過言ではない程に底知れぬ力を持つとされる彼が、心の奥底に抱えていた偽らざる本音であり、彼もまた一人の悩み苦しむ普通の人間だったのだ。
そして、今も己の存在意義を見つけられていないルーファス。「自分は何の為に生まれ、何者として在るのか」、彼がそれを見つけられる日は来るのだろうか。
このように、「創」の3人目の主人公はルーファスだと判明。嘗てのボスキャラが主人公に抜擢される展開は「空」のリシャールを超える出世ぶりである。
ちなみに「創」時点では彼は29又は30歳であり、軌跡シリーズはおろかこれまでの英雄伝説シリーズを含めても歴代最年長の主人公となるのである。
ちなみに軌跡シリーズ主人公の中では唯一釣りをしない(代わりにスウィンとナーディアが担当)。
存在意義と過去の自分
その後は、ラピスの記憶とその裏に隠された真実を求めて、ローゼンベルク工房やクロスベル警察学校等を巡る。
旅路の中で、ルーファスはラピスと共に、己の存在意義とは何かを見つめ直し、着実に、しかし持ち前の知略と効率重視の性格で素早く旅路を突き進んでいく。
そして知った真実、それは「ラピスの正体は未来演算をも可能とする超高性能機械知性「エリュシオン」が生み出したエリュシオン自身の管理人格が、人形師ヨルグ・ローゼンベルクに作成を依頼したローゼンベルク人形に転移した存在」、「ある日突然、エリュシオンが何者かに乗っ取られ、その乗っ取った存在が一連の事態の黒幕」、「ラピスがルーファスに自分を届けるように依頼したのは、エリュシオンに対抗する為には自分を最短ルートで真実に導いてくれる人間でなければならず、オルキスタワーのターミナル端末からルーファスの総督時代の統治を見ていたラピスが、エリュシオンから排除される直前に未来演算で対策を練った際、彼ならそれができると探知して依頼を出した」というものであった。
そう、計算の先に運命の出会いが待っていたのがルーファスとラピスであった。
真実を知った後は、ロイドとリィン達に連絡を取り、上記の事実を伝えた後合流。クロスベル解放作戦に参加する。
そしてオルキスタワー前で待ち構えていた自身の偽者――ルーファス総統と対峙。
ところが総統は自身が偽者であると把握しているうえで「自分の役目を引き継ぐ気はないか」とルーファスに持ち掛ける。衝撃を受けるルーファス一行。畳み掛けるように
「誰にもなしえていない『ゼムリア大陸統一』という偉業を成し遂げれば『父』オズボーンを超えて自身の存在意義を手にできる。いずれにしろ大陸統一は「この手で」成し遂げられると確信している、私は君で――君は私なのだから」
その言葉に逡巡するルーファス。その時脳裏によぎったのはラピスの言葉であった。
「善も悪も、出自も生い立ちも、何をしても何をしなくても、何を持っていても何を持っていなくても、その人はその人だよ。理由なんていらないし、誰が認めても、誰が認めなくてもそこは変わらない。だって、それが人間でしょう?だから、ルーファスはルーファスだよ。」
そうして彼の選んだ答えは―――
「"私"は"私"だ。――断じて"君"とは違う。いまだあの幻想要塞以前に立ち止まり続ける君などとはな。」
ルーファス総統を――過去の自分を否定しての拒否であった。
弟から受けた鉄拳制裁、オズボーンの所業の真実、そして不思議な仲間達との旅路で大きく変わった彼は過去の自分を超えるべく一騎打ちに臨む。剣戟の果てに
「さらばだ――」
戦いは『本物』のルーファスの勝利に終わり、彼はルーファス総統――過去の自分に別れを告げて一閃し、過去の自分を超えて見せた。
だが、それすらも想定していたエリュシオンは最終兵器「逆しまのバベル」を密かに製造。世界各地の軍事基地を狙い、「天の雷」で破壊し始める。これを放置して大国、特に共和国の介入を許すとクロスベル再独立の望みが絶たれてしまう為、一行は「逆しまのバベル」を無力化する為の作戦「創(はじまり)の翼」作戦に参加し、バベル内部に突入した。
その直前、作戦準備でクロスベルを回った際、そこの住民や仲間達とルーファスは話をしているが、その節々になぜか他人事のような雰囲気が漂っていた。ラピスはそれを疑問に思っていたが……
独りじゃない
バベル最上階で遂に黒幕と対峙する一行。
戦いは機甲兵を使った騎神戦に突入。ルーファスもこの事態に備えて市街戦で無傷だった新型魔煌機兵ヘルモードを自分用に金色に塗装して出撃。不安そうにするラピスにこう告げる。
「私は私の使命を果たすのみ。――この場は任せた。」
嘗て誰にも頼らないがゆえに敗北した男は、この旅路で「他人を頼る」事ができるようになっていた。
この時の作戦は、黒幕が機甲兵に気を取られている隙に、ラピスをはじめとする一行の一部をステルス化してエリュシオンに向かわせ、黒幕とエリュシオンを切り離し、削除するものだったが、エリュシオン切断直前で気づかれる。
黒幕の攻撃を庇ったのはルーファスのヘルモード。これも嘗ての彼からは考えられない行動であった。これにより、ラピスはエリュシオン切断に成功。一行は黒幕を見事撃破した。
ところが、黒幕の悪あがきにより、「天の雷」が「人間の憎悪が最も集まる地を標的とし、人間が滅ぶまで作動し続ける」に変更されていた事が判明。一行はとりあえず外に出るが、ルーファスは直前に転移陣を外れ、バベルに残る。それは、「自分が総統のフリをして自身に憎悪が集まるように演説を行い、標的がバベルになるようにする事でバベルを破壊し、世界を救う」及び「世界大戦開戦の罪を償う為の死に場所にする」為であった。クロスベルを巡る際にラピスが彼の言動に違和感を覚えたのはこれが原因である。
それをエリュシオンが削除前に見せた最後の未来演算で知った一行は、ロイド、ユーシス、スウィン、ナーディア、ラピスをツァイトの力でバベル内部に転移させ、彼を連れ戻しに向かう。
その頃、バベル最奥部でルーファスは死の瞬間を待っていた。
「……フフ……可笑しなものだ。結局"父"を越えられず、何事をも成せず…………最後まで空虚な人生だったというのに……」
「……ああ………悪い気分では、ない…………」
……一人で最期を迎えようとしていた彼は自分を「孤独で空虚な存在」だと自嘲していた。
彼はここにきても、まだ自分は仲間を信頼しているが仲間の方は利害関係で動いており自分を心から信頼していないと勘違いしていたのである。
その時彼の耳に聞こえたのはラピスとユーシスの声。ルーファスはロイド達を見て自分を連れ戻しに来たのかと驚く。
そしてロイドによって『脱獄その他諸々及び最後の最後で自分自身が紡いだ絆を甘く見た』容疑で強制連行される事になった。
それを聞いたルーファスは、弟や共に旅をした仲間達の表情を見て、ようやく自分が何よりも求めていた仲間――絆を既に手に入れていた事、そしてそれが死の間際にありながらも悪い気分ではなかった理由である事に気づくのだった。
「そうか、私は…………とっくに手に入れていたのだな……」
その1分後、「天の雷」がバベルに向けて発射。「逆しまのバベル」は崩壊した。
ここに終わり、ここに創まる
1週間後、「天の雷」発射準備による高温環境下での火傷及び機甲兵戦での大量出血から生還し、聖ウルスラ病院で目を覚ましたルーファス。
目を覚ました彼の姿に喜びのあまり抱き着くラピスを構っていると、そこにオリヴァルトが演奏家オリビエとして訪れ、彼の沙汰を告げる。
「生きていれば間違いなく極刑だが、ルーファス・アルバレア新総統は「天の雷」の誤射により、「逆しまのバベル」諸共消滅した。だとすればここにいるのは誰だろうね?」と。
彼への罰とは「ルーファス・アルバレア」が表向き死亡扱いとなった事により、身分、帰る場所、名前も全て失い、帝国で生きていけなくなる事、罪を償う機会も同時に失い、それに後々苛まれるかもしれないという事であった。
それを聞いたラピスは「エリュシオンを生み出したこの世界について知る旅に出たい、でも一人じゃ大変だからあなたも連れて行ってあげる!わたしたちの利害は一致する――ついてこない理由なんてないでしょう?」と彼を誘い、ルーファスも「そういうのも悪くないのかもしれないな」と応じる。ラピスの最後の言葉は、トランクからラピスを見つけた際に《C》として彼女にかけた言葉と同じであった。
それからしばらくして、とある草原――
ラピスが呼ばれて駆け出した先には、スウィン、ナーディア、そしてルーファスの姿が、クロスベル再独立にまつわる旅と同じ面々の姿があった。
今回の旅の果てに、自分を示すものを全て失ってしまったルーファス。だが、その代わりに彼が最も欲していた「属性やこれまでの経験で作られた仮面ではない自分自身を見て肯定してくれる仲間との絆」を手にし、更に「何があろうとなかろうと関係ない、何かの為に在るのでもない、自分こそがルーファス・アルバレア」と自分自身に証明し、己の存在意義の根本を掴んだ。そしてそれらが「父と慕うオズボーンを超える」よりも大切なものであるとも気づいた。
これからの彼は存在意義を求めて迷走し、道を踏み外す事はないだろう。
仮面と欺瞞と虚無に満ちたアルバレア公爵家公子「ルーファス・アルバレア」としての人生の軌跡はここに終わり、大切な仲間と共に歩む一人の只人である「ルーファス・アルバレア」としての人生の軌跡がここに創まったのだ。
――願わくば、新生帝国ピクニック隊(byナーディア)の旅路に女神の加護あれ。
余談
上記の通り『創の軌跡』でロイド、リィンに続く3人目の主人公となり、軌跡シリーズの主人公の一員となった彼だが、当初の3ルート目は、『創の軌跡』が「西ゼムリア大陸編完結編」をコンセプトとする事から、彼でなくエステルらリベール王国出身者を主人公とする予定だった。しかし、リベール王国でやるべき物語は『空』でやり切った為、それ以上の物語を展開すると蛇足になりかねず製作は難航。
そこで若手の製作メンバーが提案したのが、ルーファスに仮面を着用させて《C》と名付け、主人公とするルートだった。この提案に日本ファルコム社長の近藤氏らは驚き、これが採用されて発売に至る。
彼を主人公とするルートは、ルーファスの効率・合理至上主義な性格はそのままに、それをシナリオ及びネタ的な意味でのキャラクターの魅力として描き切り、同時に『閃』における彼の背景の掘り下げが行われ、シナリオ全体のテンポもよい点から評価が高い。
実際、カルバード共和国製の戦術オーブメント「RAMDA(ラムダ)」の使用、自分の偽物に変装して正面から堂々と侵入、大量のラピスと同型の人形からラピスを見つけた方法が「こっそり付けた発信機」、デュバリィとの決闘での不意打ちアーツ(軌跡シリーズにおける魔法の名称)、綺麗な山間の景色を見た際の感想が「無駄な未開発エリアが多い、総督時代に開発すればよかった」etc…と、夢もロマンもへったくれもなく、ほかの軌跡シリーズ主人公であれば心理や立場的に躊躇われる血も涙もない手であっても即座に実行に移して目的を達成する姿は、熱血・正義感の強い歴代の軌跡シリーズ主人公達とは対極に位置し、一周回って新鮮ですらある。