ロード・ジブリール「さあ奏でてやろうデュランダル!お前たちのためのレクイエムを!!」
概要
地球連合軍月面ダイダロス基地に設置された巨大ビーム砲と、月の周辺に配置された複数の廃棄コロニーで構成される軌道間全方位戦略砲。
レクイエムとは鎮魂歌を意味する言葉。
廃棄コロニーは「中継コロニー」と呼ばれ、その内部にはかつてフォビドゥンに搭載されていたエネルギー偏向装甲「ゲシュマイディッヒパンツァー」が配備されており、位置を調整することによって月の裏側にいながら遠隔操作によって好きな場所へとビームを発射する事が出来る。
小説版によると、本来地球連合軍の前線拠点であるアルザッヘル基地ではなく裏側のダイダロス基地に配備されたのは、プラントから見て正面に位置するアルザッヘル基地の反対側に位置しているため警戒されにくい事やダイダロス基地は資源基地であるため、既に大規模な地下空洞のスペースが確保できること等が挙げられる。
位置の関係上、プラント方面からダイダロスの直接攻撃には膨大な戦力を有するアルザッヘルの月艦隊を突破する必要もあるため、ザフトとしては非常に攻めにくい場所にあるとも言える。
その利便性を生かし、ロード・ジブリールがオーブ連合首長国から宇宙へ脱出した時には、アルザッヘル基地に行かずにダイダロス基地からレクイエムをプラントに向けて発射した。その威力は1発で複数のプラントのコロニーをまるで刃物で切断するかのように崩壊させられる絶大なものであり、アスラン・ザラはあのジェネシスに匹敵するとまで畏怖している。
一方で兵器システムとしての性質上、本体であるビーム砲の射角は極めて狭いため、目標に対して正確に照準して発射するためには中継コロニー、特にビーム砲の真上にある第一次中継点に中継コロニーを配する必要がある。これは逆に言えば第一次中継点の中継コロニーに不備が生じれば事実上目標への発射が不可能となることも意味しており、レクイエムの弱点となっている。もっとも中継コロニー自体攻撃に脆弱であり、防衛戦力がしっかり配備されている。
他にも発射には莫大な電力を必要とするため、連射は出来ず1発ごとにチャージする必要がある。
ちなみに中継コロニーには「フォーレ」「チェルニー」「グノー」という名称が付けられているが、これはそれぞれ現実で鎮魂歌を手掛けたことで有名な作曲家の名前(ガブリアル・フォーレ、カール・チェルニー、シャルル・グノー)に由来している。ちなみに作中で具体的に呼称された廃棄コロニーはこの3つだけだが、設定上は他にも「ヴェルディ」「マルタン」(それぞれジュゼッペ・ヴェルディ、フランク・マルタンに由来)などが存在したらしい。
劇中では
オーブ連合首長国からダイダロス基地へと逃亡したジブリールの手により、プラントの首都であるアプリリウス市に向かって発射。イザーク・ジュールやディアッカ・エルスマンを中心とした部隊の尽力によって最終中継コロニーを破壊されアプリリウスへの直撃は免れたものの、ヤヌアリウス・ワンからフォーに直撃し、その崩壊に巻き込まれる形でディセンベル・セブン、エイトの合計6つのプラントを破壊する大被害を与えた。
血のバレンタイン以来のプラントそのものの被害にアークエンジェル組は唖然茫然、ギルバート・デュランダルも怒りをあらわにした。ちなみにデュランダルに関しては演技であり、後述の行動を考えるとむしろレクイエムの攻撃は好都合であった。
第二射の発射を阻止すべくミネルバ隊が急遽宇宙へ上がり、宇宙のザフト軍と連携し全戦力を挙げて尽力。発射直前に内部に潜入したルナマリア・ホークの駆るブラストインパルスによってコントロール施設を破壊され、発射は失敗。ガーティ・ルーで脱出を図ったジブリールもレジェンドのドラグーンによって乗艦ごと爆破され死亡した。
その後、ダイダロス基地はザフトによって接収されたが、デュランダルの密命によって密かに修復。陽電子リフレクターを装備するなど防御面に手を加え(合わせて中継コロニーは全体的に「ステーション」と呼ばれるようになり、例えば第一次中継点は「ステーション・ワン」と呼ばれている)、デュランダルが発表したデスティニープランに反対を表明した地球連合軍の艦隊とアルザッヘル基地に向けて発射。これを壊滅させた。
この、6つものプラントを破壊し数多くの犠牲者を出した大量殺戮兵器を破棄せず裏で修復し、そして自身の反対勢力に躊躇なく使用したデュランダルの姿勢は、ザフト内部からですら彼に対する大きな不信感を招かせる事にも繋がり、後にイザークらの離反へとつながった。
次にはオーブへと発射しようとしていたが、メサイア攻防戦にて「陽電子リフレクターは耐ビームコーティング化された物体は防げない」という弱点を突いたインフィニットジャスティスにはビームシールドとVPS装甲の重ね掛け装備である「MX2002 ビームキャリーシールド」を使用され、更に全身がビームコーティングそのものであるアカツキに対しては全く効果が無く、2機にリフレクターを突破される。インフィニットジャスティスからはファトゥム-01が砲口を突撃、アカツキのドラグーンで追撃を受けて発射寸前で破壊された。
関連項目
DEW:「指向性エネルギー兵器」の略称であり、ある意味リアルレクイエム。
反射衛星砲、エクスキャリバー、バベルの塔:他作品(それぞれ宇宙戦艦ヤマト、エースコンバットZERO、ふしぎの海のナディア)に登場する兵器。それぞれ「本体から発射したビームを、複数の中継機器によって偏向させて目標に命中させる」という点で共通している。
ネタバレ注意
劇場版『SEED FREEDOM』でも登場。
メサイア戦後は解体されたことになっていたが、実際にはファウンデーション王国、あるいはその思想に恭順していたザフトの強硬派によって秘密裏に修復されていた。
基本的に『DESTINY』の時と(欠点も含め)あまり変わっていないが、最大の相違点としてビームの中継に中継コロニーではなく巨大な偏向リング(恐らく艦艇による移動式)を使用している。しかもそのリングはミラージュコロイドで秘匿されているため、発射直前まで発射経路を特定・阻止されないようになっている。阻止するには、構造上必ず砲口の上空にある第一次中継点の偏向リングを狙うしかない。
劇中では宇宙要塞アルテミスと共にアウラ・マハ・ハイバルらファウンデーションによって占拠され、自国への核攻撃(実際はブラックナイトスコードによる自作自演だった)の報復としてユーラシア連邦の首都モスクワを攻撃して壊滅させる。アウラたちは地球圏の国家に対しデスティニープランの導入を強要し、従わない場合はレクイエムを発射して軍民問わない無差別攻撃を行うという恫喝を行った。この後、ファウンデーション軍及びザフト反乱軍と交戦していたアガメムノン級宇宙母艦「ベオウルフ」を中心とした連合軍宇宙艦隊に対して発射され、これを壊滅に追いやっている。この時犠牲になったモスクワの人々や艦隊の乗組員達は、ビームが着弾するよりも前に全身が炎に包まれて一瞬で消し炭と化している。それほどまで発する熱エネルギーが凄まじかったのか道を歩いていた幼い少女やカフェでお茶をしていた客たちが一瞬で火だるまになり灰となって消滅していく様はサイクロプスやジェネシス程ではないにせよえげつない描写である。
その後、レクイエム破壊とアルテミスに捕えられたラクス・クラインの救出を目的にオーブから発進したミレニアムを口実にオーブ首都オロファトにその照準を向けるが、ミレニアムに座乗したキラ・ヤマトが自らの生存の事実を国際救難チャンネルを使って知らせたため、「大量殺人犯」との煽りに激怒したアウラの命令でミレニアムに目標を変更して発射されるが、マリュー・ラミアスらミレニアムのクルー、主にアーノルド・ノイマンによる的確な回避運動で回避されオーブ近海に着弾しただけで終わった。1発無駄撃ちしてしまったことが致命的ミスであるとも知らず…。
最終決戦では再びオロファトにその照準が合わせられるが、発射直前にミラージュコロイドを解除して突如出現したアカツキのゼウスシルエットによって第一次中継点の偏向リングを破壊されると同時に砲撃もヤタノカガミで分散反射されてしまい、反射されたビームで一部を破損し修理と再充填を余儀なくされる。
最終的に修復を終え再度砲撃しようとしたところ、アカツキから託されたゼウスシルエットを装備したデスティニーSpecⅡによってビーム発射のために陽電子リフレクターを一瞬解除した隙を突かれて本体のビーム砲を狙撃され暴発を起こし、今度こそ破壊・無力化された。
かつて曲がりなりにも世界平和を目指していたデュランダルが構想していたデスティニープランの要となるはずだったデスティニーによって、アウラが目論む偽りのデスティニープランが完全に打ち砕かれる皮肉な形で最悪のレクイエムは流れること無く今度こそ消え去るのであった。