概要
水木しげるの漫画作品。水木らしいユーモアを交えつつ冷徹な目線で人間・ヒットラーの実像を描いた。
ヒトラーがいかにして若き画家志望から独裁者となり破滅へと至ったかを描く。ここでは「ヒトラー」ではなく「ヒットラー」と表記される。
『週刊漫画サンデー』の企画「革命家シリーズ」の第2弾(第1弾は藤子不二雄Aの『劇画毛沢東伝』である)として5月8日号から8月28日号まで連載された。『劇画毛沢東伝』と同じく、背景は写真を元に写実的に描かれている。本書で描かれるエピソード等は、先行の研究書などを参考に描かれたもので、概ね史実に忠実である。
原題は『20世紀の狂気 ヒットラー』で、講談社水木しげる大全集でも同タイトルで収録された。
物語
蒼褪めたる馬あり、それに乗る者の名を死という・・・
第二次世界大戦末期ドイツで。屋根裏部屋に隠れるユダヤ人たちはホロコーストに怯えていた。反体制派の青年は彼を匿う父親と最期の問答をしていた。フランスのパリでレジスタンスは侵略者への抵抗をするも、恐怖と不安に苦しんでいた。
ドイツ人を熱狂させた独裁者、アドルフ・ヒットラー。どんな人物だったのか。何故彼はドイツを支配者となり、世界大戦を引き起こしたのか。その生涯を描く。
登場人物
人名 | 詳細 |
---|---|
アドルフ・ヒトラー | 本作の主人公。口笛が得意。 |
アウグスト・クビツェック | ヒットラーの親友である幼馴染で音楽家。 |
エルンスト・レーム | ヒットラーの元上官でSA(突撃隊)幕僚長。ホモ(本当はバイ)。 |
ヘルマン・ゲーリング | 元パイロットで後に帝国元帥となる。 |
ルドルフ・ヘス | ヒットラーの私設秘書で後に副総統となる。 |
エーリッヒ・ルーデンドルフ | WW1の英雄とされるドイツ軍将校。ヒットラーのミュンヘン一揆に協力。 |
カール、フォン・ロッソウ、フォン・ザイサー | バイエルン州の指導者3人。ヒットラーにミュンヘン一揆協力を命じられる。 |
パウル・ヨゼフ・ゲッベルス | ナチス政権の宣伝相。 |
ハインリッヒ・ヒムラー | ヒットラーの秘書で、後のSS(親衛隊)長官。 |
グレゴール・シュトラッサー | ナチス党の実力者。ヒットラーと対立。 |
ゲリ・ラバウル | ヒットラーに寵愛される姪。 |
フランツ・フォン・パーペン | 国家人民党党首でナチスと連立政権を組む。 |
クルト・フォン・シュライヒャー | 国防軍出身の首相で、策略でナチス分断を図る。 |
パウル・フォン・ヒンデンブルク | ワイマール体制最後の大統領。 |
モレル | ヒットラー付きのヤブ医者。 |
ヨアヒム・フォン・リッペンドロップ | ナチス政権の外務大臣。 |
フリードリッヒ・パウルス | スターリングラードの戦いでドイツ軍の指揮を取る。 |
マルチン・ボルマン | 政権末期のヒットラーの側近。 |
アルベルト・シュペーア | 元建築家の軍需大臣。 |
エバ・ブラウン | ヒットラーの愛人。 |
ベニート・ムッソリーニ | イタリアの指導者「親方」。 |
ヨセフ・スターリン | ソ連の指導者。 |
ニキータ・フルシチョフ | スターリングラードの戦いでソ連軍の指揮を取る。 |
モロトフ | スターリンの側近で外務大臣。 |
アーサー・ネヴィル・チェンバレン | イギリス首相。対独外交で宥和路線を進める。 |
ウィンストン・チャーチル | WW2におけるイギリス首相。対独戦で強力に望む。 |
フランシスコ・フランコ | スペインの指導者。 |
松岡洋右 | 日本の外務大臣。 |
余談
前述の通り水木はヒトラーを英雄とも狂人とも決めず、あくまで一介の人間として捉えていた。初稿から30余年を経て発行された復刻版には、その心情を示すあとがきが記されている。
「いずれにしても当時のヒットラーさんは格好が良かったネ。やたら右手を上げては戦争に勝っていたが、無理な戦争だったとみえて最後は自決だった。人間あまり無理をしちゃあいかんネ。」
関連タグ
水木しげるのノストラダムス大予言:悪役として本作のヒトラーが出演、さらにエバとの息子ダニエル・ヒトラーが後半の巨悪として出てくる。