概要
石の表面などの基体にくっつける水生動物。昔は貝のような見た目で軟体動物と誤解されたが、実はエビやミジンコなどと同様れっきとした甲殻類(節足動物)である。
日本語で「フジツボ」と名付けられるものは、鞘甲類蔓脚類のうち「Balanomorpha」(一般に「フジツボ亜目」と表記されるが、2020年代以降から目に昇格)に分類される種類だけである。しかし海外(英語:barnacle、中国語:藤壺)や広い意味では蔓脚類そのものの総称であり、エボシガイやカメノテ、フクロムシなどもフジツボに内包され、1,990種ほど知られている。
特徴
漢字表記「藤壺」と「富士壺」の通り、火山ないし壺と似た殻の開口部から、蔓(藤蔓)と似た肢が出てくるような姿をしている。この肢は「蔓脚(まんきゃく)」という脚であり、それを使って水流のプランクトンを濾過し、中身に運んで食べている。
外からは想像しにくいが、中身の本体は仰向けの姿勢で頭部を固定され、殻から出てくる部分は蔓脚とそれを備えた下半身である。
成体の場合、いわゆる普通のフジツボは殻を持つ本体部でそのまんま基体に張り付いているが、系統が原始的な仲間であるエボシガイやカメノテなどは柔らかい柄で基体にくっつける。普通のフジツボは、その柄部が退化した姿と言える。
一部の種類は岩石などではなく、便乗するように他の海洋生物(クジラ、ウミガメ、カニ、カブトガニ、貝など)の体表にくっつけて共生する。その延長に寄生性に進化した種類もあり、中でもフクロムシは寄生生活を極めてほとんどの器官が退化し、フジツボどころか節足動物の面影もない肉塊の姿となっている。
生活環
殻のあるフジツボは雌雄同体であるが、繁殖には別の個体との交尾が必要である。フジツボの成体は自由に移動できず、代わりに長いペニスで付近の個体と交尾する。このペニスは体長の何倍よりも長く伸ばし、体の割に動物界最長のペニスと言われている。しかもこのペニスは、水流の強さに応じて太さを変化することも可能である。
卵は殻の中で保護され、幼生が孵化すると殻から出てくる。幼生は微小なプランクトンとして自由生活を送り、星型のノープリウス幼生から楕円形のキプリス幼生に成長すると、触角で合適な表面に付着し、殻を構成する成分を分泌してフジツボの姿に変態する。
一方、寄生性のフクロムシは雌雄異体で著しい性的二形を示し、メスのキプリス幼生のみ宿主を見つけて肉袋状の生殖器兼孵化器に変態する。オスのキプリス幼生は肉袋状のメスの体内に住み込んでは、メスに精子を提供するだけの細胞塊と化す。
人間との関わり
真ん中の穴(特に死んだ個体は空いている)に加えて高密度で集まることが多く、そこから蓮コラに連想させ、不気味を感じさせることも少なくない。
加えてその外殻部分はかなり固く部位によっては鋭くなっている箇所もあるので、素肌を晒した人間が足場を歩く際に怪我をする危険性もある。
船底に付着し、水の抵抗を増やして航速を落とすという害もあるため、船底に薬品を塗ってフジツボの固着を防いでいる所も多い。
また、一部の種類(カメノテなど)は魚介類として食用とされることもある。
このフジツボで身体を切る怪我をした人間がその後に身体の不調を感じて医者に診てもらうと、その人間の体内でフジツボが生育していたという怪談もとい都市伝説があるが、寄生虫ならまだしもフジツボは体液では生育しようもない。しかし寄生虫なりバイ菌が入って化膿したり感染症に罹ったりする危険はあるので、フジツボで斬った場合はよく消毒したり洗ったりして処置しておくように。
フィクション・創作関連
バーナクルオルフェノク:フジツボのオルフェノク。
バケガニ(魔化魍):甲羅に溶解液を吹き出すフジツボを持つ魔化魍。
ヨクバリード:トランプのダイヤに見立てたフジツボの意匠の有る行動隊長。
ダークブルームーン:吸着した相手のエネルギーを吸うフジツボを持つスタンド。
ツボツボ:モチーフにしたポケモン。
フジツモン:『デジタルモンスター』の一種。タコのようなデジモン・オクタモンと共生関係にある。
秋山澪:くだんの怪談・都市伝説に怯えるシーンがアニメ1期「けいおん!」第4話と第9話で描かれている。
鷺宮しおり:フジツボ図鑑が愛読書。「女子高生の無駄づかい」第8話で斜め上を行く都市伝説が描かれる。