矢部「俺は、怒っている…… そして俺の中の矢部は、その百倍、怒っている」
「恒川だな」
恒川「ほう、この私を闇討ちか……」
「さあ、この私と死合をしよう。ルールは一つ、命を取った方が勝ちだ」
恒川「空手の関係者か。この私相手に無謀の極み……身の程を教えよう」
「かかってくるがいい。戦闘とは何かを教えてやる」
恒川「殺人術の本質を知らぬ馬鹿が。では壮絶に死ぬがいい」
「地雷だよ。通る道がバレてんだ、当然だろうが」
「もう一本いっとけよ」
「どうした立てよ…… 殺人術の本質とやらを見せてくれるんだろ?」
恒川「うぁあ……(なんだ、この凍ったような目は……)」
「ほぉ、足がないのに根性はあるじゃないか」
「腕も要らんな」
「わかったか、このクソ野郎」
「テメェは空手家にテメェのルールを押し付けただけだろうが。そんなモン、ただの不意打ちなんだよ」
「私にとっての殺し合いはこれだ。つまり、お前はとことん偽物だ」
恒川「(なにこれ…… こんな殺し合い知らない…… 無茶苦茶だぁ)」
「セイヤァア!」
「女子供を殺せる外道の血が、何で赤ぇんだよ……」
「私の正拳突きはキツイぞ。ダルマのまま全ての臓器が破裂するまでやろう」
「空手の怒りを思い知り、地獄に行くといい」
標的
現代の空手を「日本舞踊」と嘲笑い、卑劣な道場破りと空手家狩り、更には被害者の家族を取り巻きに人質を取らせ、強盗殺人を繰り返した古流空手の使い手にして武道家気取りの卑劣漢「恒川幸道」に執行。
不意打ち上等の「死合い」を「武術」だとほざいていた為、これでもかと言わんばかりに伊集院の「殺し合い」を炸裂させられた。
概要
罪人が行なってきた愚行の意趣返しとして、「伊集院の土俵で」死合いをするという極めて単純な拷問。というか今回はいつぞやの人間針山地獄と同じく手の込んだ処刑といった趣きの内容。
裏社会におけるルール無用の無味乾燥な殺し合いを熟知する伊集院の土俵なので、罪人は一切何も出来ず伊集院に嬲り殺しにされる。
経過
去年の年末の一件の礼として天羽組本部に招かれ、澤崎の酒を馳走になっていた伊集院。
そんな中、この日に天羽組で空手の指導を行う筈だった空手家の安藤が時間になっても来ないというイレギュラーが発生。幸いにも伊集院の帰路に安藤の道場がある為、伊集院は速水泰輝を伴って安藤の道場へ赴いた。すると道場の入り口は開け放たれており、更に中から血臭がした。血相を変えた伊集院達は即座に突入。致命傷を負った安藤と娘・美久を緊急隊員を呼んで病院へ搬送した。
しばらくして意識を取り戻した安藤から伊集院は恨みを託され、天羽組はそれに全面協力。今回の罪人である恒川の情報を提供し、奴の手下を殲滅すべく空手家である矢部光晴を派遣した。しばらく後、恒川の手下は矢部によって一方的に惨殺された。
一方、当の恒川は伊集院が捕捉。伊集院は真っ向から死合いを申し込み、恒川は伊集院を「殺しの本質を知らぬ馬鹿」と罵り飛びかかった。が、それはまさに恒川の事であり、伊集院が経路を計算して事前に仕掛けておいた地雷を踏み抜き、左足が吹き飛んだ。悶絶する恒川に「行動経路がバレてんのにセットされねぇとでも思ったか」と伊集院は罵倒を返し、手斧で残った方の右足も切断した。続けて伊集院は絶対零度の眼差しで両脚を失い這い蹲る恒川を見下ろし、「立てよ。殺人術の本質とやらを見せてみるがいい」と言い放った。恒川はこの瞬間、自らの立ち位置を思い知ったが、それでもかなり根性があったようで、失った両脚で立とうとした。しかし次の瞬間伊集院は2発の銃声にしか聞こえない神速の8連射で恒川の両腕を吹き飛ばし、ダルマにした。
そして伊集院はダルマになった恒川の髪を引っ掴んで持ち上げ、ゼロ距離で「テメェは空手家に身勝手なルールを押し付け、それを死合いだなどと宣っているだけだ。そんなモン不意打ちでしかねぇんだよ」「俺にとって『死合い』ってのはこういう事だ。即ちテメェはただの偽モンでしかねぇ。理解したかコノ野郎」と言い放った。恒川は恐慌状態に陥り、「こんなの無茶苦茶だ」と脳内で宣った。しかしそれは顔に出ていた模様で、伊集院はそれを察知。甲冑すら一撃で粉砕する正拳突きを容赦なく恒川の腹に叩き込んだ。
内蔵が損傷した恒川は盛大に吐血。その血が伊集院に降りかかる。しかし伊集院はそれを見て「女性や子供を平気で殺せる外道の血が、何で普通に赤ぇんだ」と激昂。そして伊集院は憤怒を湛えた狂気の表情で「俺の正拳突きをテメェの内蔵が全て破裂するまで叩き込んでやる」「テメェが冒涜した空手の怒りを思い知り、地獄に落ちるがいい」と言い放って恒川を完全に絶望させた。最終的に恒川は伊集院の正拳突きを腹に90発も叩き込まれ、その末に目玉が飛び出して無様に死に果てた。
依頼完遂後、安藤の娘の美久が奇跡的に意識を取り戻した。
今回の登場人物
- 恒川幸道(つねかわ ゆきみち)
今回の拷問対象。古流空手の家元。
自分の流派が時代に乗り遅れて衰退した事を、近代空手が広まったせいだとお門違いな逆恨みをし、空手道場に闇討ちを仕掛けるようになった。ルールや人格形成を重視する「武道」を「日本舞踊」だと侮辱し、どんな卑劣な手段を使っても相手を殺す事こそが真の武術だと自己陶酔している武道家気取りの下劣な連続殺人鬼である。
袈裟斬りの吉岡や田宮道三と同じく「本気の殺しに卑怯もない」という考えの持ち主であり、田宮やその弟子の我妻京也と同じく古流武術による搦め手が得意。しかし、それは初見殺しの騙し技ばかりであり今回の依頼人である安藤氏との対決でも最初は騙し討ちで有利に立ったものの、初見で仕留め損ねて手の内を知られると、あっさり攻撃を見切られて片目と片足のハンデがある安藤氏からカウンターを攻撃を受けるなど、空手家としての基礎的な実力は大した事はない模様(事実、胴当てを身につけた胴体への誘いの為に胴に隙を見せていたのではなく、普通に構えていたにもかかわらず胴がガラ空きだった)。
胴着の下に甲冑を身に付ける、喉突や金的といった禁じ手ばかり繰り出すなど「反則」としか言えない闘い方をし、「武の本質」と宣いながら取り巻きに被害者の家族を人質に取らせて被害者を一方的に嬲り殺そうとするなど、卑怯を通り越して悪趣味かつサディスティックな面を持ち、性格と合わせてかつて伊集院が葬った宮沢永徳・山田康生・岸辺克治にも通じる。
しかし己の流派に驕り、禁じ手など姑息な戦法しかできない傲慢な恒川が、本物の戦闘者である伊集院に搦め手で勝てるはずもなく、意趣返しとばかりに最初の踏み込みで、地雷により左足を吹き飛ばされ、斧で残った右足を叩き切られる羽目に。更には拳銃で腕を吹き飛ばされダルマとなった恒川は戦意喪失。
「何コレ、こんな戦い方知らない、無茶苦茶だぁ」と都合の良い事をほざくが、それは奴に蹂躙された被害者全ての意でもあった為、伊集院は激昂。そのまま無抵抗のサンドバッグになって無残に死んだ。
優越感に浸って「死合い」などと自惚れていた奴だったが、本当に何でもありの殺し合いでは伊集院には触れる事すら敵わず、結局はルールを正々堂々と守る相手に自分だけルールを平然と破り、騙し討ちしていただけの単なる小者に過ぎない事が露呈。ルールに縛られた空手家をさんざん見下していた彼も、実はルールに守られていたというなんとも皮肉な末路となったのであった。
声を担当するのは畑耕平氏。畑氏が外道を担当するのは今回で6回目。
- 恒川の取り巻き
恒川のポリシーに賛同し、被害者の家族を人質に取り、強盗を繰り返す武道家の風上にもおけぬ悪辣なクズ共。矢部の殺人空手の前に、成す術もなく鏖殺された。
- 安藤(あんどう)
今回の依頼人。伊集院とも顔見知りであり、天羽組にも空手の稽古をつけていた元・日本空手代表選手にして「比羽館 安藤道場」の空手師範代。現役を引退した後は道場を開き、妻の梓との間に娘の美久を儲け幸せに生きていた。
天羽組の稽古を約束していた夜に、恒川の道場破り及び空手家狩りのターゲットにされ妻子を人質に取られ勝負するも禁じ手など卑怯な手を使われた挙句に片目を潰され、ボロボロにされた後に目の前で人質にされた梓と美久を目の前で刺殺される姿を見せつけられ、自分も刺されてしまう。速水が呼んだ救急車によって一命を取り留め意識を取り戻した後、妻と娘を守れなかった無念と恒川に対する怒りと慟哭を伊集院に吐露し、伊集院はこれを依頼と捉えて動くことを決めた。
依頼完了後は意識を取り戻した娘と病室で再会。自らの命を犠牲にし、美久を守ってくれた梓に涙ながらに感謝した。
- 安藤梓(あんどう あずさ)
今回の被害者その1、安藤の妻。
夫が現役引退後も支えてきた良き妻であり、娘の美久とともに新しい道着をプレゼントしてお守りを道着に縫い付けをするなど夫婦仲は良好だった。恒川に人質として捕らえられ、夫がボロボロにされて倒れた後、娘の助命を懇願したものの見せしめのように背中を刺され、殺されてしまう。
しかし、彼女が縫い付けてくれたお守りのおかげで夫は致命傷を免れ、娘を庇うように覆い被さったことが幸いして娘の命を繋ぐなど、彼女の妻として母としての優しさが夫と娘を生き残らせるカギとなった。
- 安藤美久(あんどう みく)
今回の被害者その2、安藤の娘。
母である梓共々恒川に人質として捕らえられ、母共々見せしめのように背中を刺され危篤状態になってしまう。しかし母が彼女を庇うように覆い被さってくれたことが幸いして一命を取り留め、目を覚ました病室で父と再会した。
天羽組の組長。伊集院シリーズ三度目の登場。2024年3月4日の小峠シリーズの花見の回で須永も交えて酒を酌み交わしているが当シリーズで伊集院と直接話をするのは今回が初めてである。須永を組まで運んでくれたお礼として後日、伊集院を招いて一杯交わしていたが速水から空手の稽古をつけてくれている安藤が来ないという報告から不審に思い、速水に彼の家に訪問するよう命じる。
病室で目覚めた安藤本人から彼の身に起きた悲劇を伊集院と共に聞かされ、怒りに震え伊集院に全面的に協力を約束し、矢部を派遣した。
天羽組の舎弟。伊集院シリーズどころか他シリーズへの客演自体が初めてである。
空手の稽古を取り付けていた安藤が約束の時間になっても来ないことを報告。彼の家に訪問して様子を見ることを天羽に命じられ、伊集院と同行して訪問するが、家から漂う血の匂いと家のドアが開いている事を不審に思い伊集院と中に入ると惨状を目にし、救急車を呼び寄せた。その後情報収集に奔走し、恒川の情報を天羽と伊集院に共有した。
なお伊集院と同行中、厄災と呼ばれている伊集院には当然ビビっており「なんて話せばいいか分からない」と悩んでいた。
天羽組の武闘派構成員。通り名は「殺人空手の矢部」。伊集院シリーズ二度目の登場。天羽の命令で伊集院に同行。
伊集院とは別行動を取り、恒川の組織の構成員を壊滅に追いやった。
恒川の弟子達も鎧を身に付けていたが、矢部の規格外の「鉄拳」によって粉砕され、力の差を思い知らせた上で大鉈で全員叩き斬った。
天羽組の構成員。共に伊集院の回想で登場。
余談
- 伊集院茂夫と利平による昆虫毒責めとルカワマンの後日談となる。故に、冒頭は面識のある天羽組事務所で組長の天羽と飲み交わす形で始まると言う、かなり珍しく新鮮な始まり方となっている。
- 今回天羽組からのゲストで速水が伊集院シリーズに初出演となったことで、伊集院と面識がある天羽組の舎弟は、飯豊朔太郎(イメチェン前及び岸本隆太郎戦以前)・宇佐美純平(伊集院・小峠シリーズで1回ずつ)・茂木功志郎(小峠シリーズのみ)に続いて4人目となった。また工藤亘清は父・清志と同じく伊集院シリーズに登場したことがあるが、父親と違って伊集院との面識はない。
- 流川隆雄が登場しなかった回はシリーズ初。これにより、流川の連続登場記録が途切れた。
- 伊集院茂夫による針山刑と同じく、外道が己の歪んだ流派を証明する為に犠牲者を生み出しており、伊集院が戦闘形式で外道を処刑している。畑氏が外道を演じたのは、年越しを挟んで3回連続。
関連項目
拷問マシンMORIWAKA→ダルマからの正拳突き→似非医療という名の茶番
伊集院茂夫と流川隆雄によるフルボッコ刑:伊集院が外道を殴り殺すエピソード。今回の動画の様子を見て思い出したユーザーは多数いた模様。
伊集院茂夫による釜茹で:断罪対象が武術を殺人技と断じ、それを磨く為に殺人を犯す古流武術家繋がり。本動画では空手家だが、あちらは剣術家であり、そして多少なりとも伊集院をてこずらせるだけの戦闘力の持ち主だった。
伊集院茂夫によるトンカ:冒頭で伊集院と天羽が飲んでいる澤崎の酒が貴重になった原因となった事件。こちらも依頼人が天羽組の知人である事や断罪対象が強盗殺人である事も共通している。
伊集院茂夫による石子詰めと和中蒼一郎によるダルマ斬り:外道がダルマになって地獄に落ちるエピソード。なお、この回は伊集院シリーズにおいて天羽桂司が初登場した回である。
成り行き的に仕事になった回
拷問マシンMORIWAKA→ダルマからの正拳突き→似非医療という名の茶番