木の間隠れの月光を浴びて、狂ったように走る南夕子
意外、夕子に隠された恐るべき秘密が暴かれる時、それはあなたと夕子の別れの時なのだ…
放送日
1972年10月13日
登場怪獣
あらすじ
それは、秋の満月が綺麗な夜だった。パトロールしているTACの面々も美しい月を前に話が弾んでいた。
そんな中、タックパンサーでパトロールをしていた北斗と南。だが、突如南が車を止めてと叫ぶ。
車を止めて走り出し、月の光を目にした夕子は何かを呟く。
「わかりました。今夜こそルナチクスが姿を現すんですね。やります! 必ず」
一方、箱根では地熱の異常が観測されていた。地震が発生し、温泉は沸騰として熱湯となり入浴客達が慌てて飛び出していく。
基地に残っていた美川隊員が、超獣が出現したと通告する。ウサギに似た超獣ルナチクスが現れたのだ。
攻撃を始めるTAC。しかし夕子は妙に焦っていた。眼球爆弾でタックアローを撃墜するルナチクスは地底に消えた。地底の溶岩の中でルナチクスはエネルギーを回復する。
星司と夕子も現場に到着した。
「すぐみんなに合流しよう。」
北斗はそういうが、無言で走り去る夕子。北斗は後を追う。
「勝手な行動は規律違反だぞ!」
追い付いた北斗は夕子にどうしたのか問いかける。
「変身するのよ!」
「何を言うんだ。それはあの超獣の正体をつかんでから…」
「超獣は年に一度地球の真ん中から表面に近づいてくるのよ。10月の満月の夜に!」
「君はあの超獣の正体を知っているのか?」
「放っておけば地球のマグマはあの超獣にみんな吸い尽くされ、遠からず月のようになるわ。この地球を月のようにしちゃいけないわ!」
「ようしっ!」
夕子に諭され、北斗はウルトラマンエースへと変身。地底に潜りルナチクスを追いかけていく。地中で戦うエースとルナチクス。
堪らず地上に逃げるルナチクス。
エースも地上では攻勢で最後は必殺のエースリフターでルナチクスを溶岩の中に放り込んで倒したのだった。
溶岩の中へ沈んでいくルナチクス。変身を解いた夕子は別れの時が来たと泣き出し、北斗に真実を伝える。
「私、本当は宇宙人なの。地球に一番近い星である月に住む宇宙人」
「君は月星人!?」
月はルナチクスに襲われ月星人のほとんどが死に絶えた。今はほんの一握りの月星人が冥王星に逃れて生きていた。
ルナチクスを倒すという使命を負って地球にやって来た夕子はウルトラマンエースとなって使命を果たすことができたのだ。
「さようなら。もう二度と会うこともないわ……」
夕子はウルトラリングを外し北斗に託す。自分はこれからひとりでエースに変身し、戦えるのかと不安な表情を浮かべる北斗。
白い衣裳に身を包んだ夕子が駆け下りてくる。
「今夜限り、私は月に帰らせていただきます」
水面に立つ夕子。
夕子はTACの隊員一人ひとりに別れの言葉を告げる。TACも彼女が宇宙人であることを知ったのだった。
宇宙へと旅立っていく夕子。敬礼する竜隊長。夕子の隊員服は宇宙に旅立った彼女へ届くようにと燃やされ、全員で彼女を送り出すべくTACの歌が合唱されるのだった……
「TAC隊員・北斗星司は、これからは一人でウルトラマンエースになる。いや、ならなければならないのだ……」
余談
ウルトラシリーズはこれまで数多くの路線変更が行われてきたが、この夕子の降板もまた路線変更の一つである。こうなった理由としては、「男女による合体変身ではヒーローとして弱弱しい」「子供がまねできない」といった番組の評判としての意見もさることながら、ストーリーを展開する上で北斗と南二人分のドラマを演出しなければならないという脚本側の要求もあったといわれている。脚本に参加した上原正三もまた男女合体変身設定はウルトラマンと主人公の関係を考えるうえで複雑化しており息切れを感じたことを理由に22話で降板している。
結果的に夕子はヤプールを倒し、一度はウルトラ兄弟を全滅させたヒッポリト星人をも打倒した矢先のエピソードである今話で降板することとなった。
ちなみに夕子役の星光子は降板を知らされたのは台本を渡された時点で書かれていたサブタイトルを見た時だったとコメントしている。しかしその後も次回作である『ウルトラマンタロウ』にも出演し、『ウルトラマンメビウス』では北斗と再会を果たし、『ウルトラゾーン』にも出演するなどウルトラシリーズとは深い縁を持っている。
なお夕子が降板した後のエピソードでも主題歌の歌詞は2番になるとかそういう措置はなく、「北斗と南」が歌詞にある1番が使われた。
関連タグ
かぐや姫:この話の元ネタと思しき童話