概要
メラネシアなどに見られる招神信仰で、カーゴ・カルトとも表記される。
カーゴ(cargo)はそのまま積み荷を意味しており、先祖の霊や神々が輸送船や飛行機に文明の利器を満載して、自分たちの元へ届けてくれるという現世利益を求めるものである。
現地の人々は西洋人との接触により、便利な文明の利器は元々は先祖の霊や神々が自分たちのために創造してくれたものであるとし、それを持っている白人は先祖の霊の化身であると考えた。
もしくは白人によって不当に奪われたものであるという思想を伴い、儀式をおこなうことで自分たちに届けさせるという行動に結びついた。
儀式として知られるのは滑走路や空港、事務所を模倣した構造物を用意し、ココナッツと藁を材料に竹のアンテナがあるラジオ、銃のような枝、木を削って造られたヘッドホンなどを身につける。
そして軍人や船乗り、航空兵の訓練や行進、飛行場での管制などを模倣した振る舞い(管制塔を模した施設に座り、滑走路もどきに松明と狼煙が焚かれた)を行ったのだという。
太平洋戦争以降は、アメリカ軍の補給物資が運ばれてきた様子を再現するために、身体に階級章やUSAという文字のボディペイントも行われた。
さらに藁と木でメスの飛行機の模型(※メイン画像)を制作し、荷物を積んだオスの飛行機を呼び出そうとすることまで行われた。
積み荷がどこに届くかは予知夢によって予言され、痙攣や踊りを伴い告知された。
しかし、この信仰により本来の生業である農耕や漁業を投げ出し、今までの財産を放棄するなどの行動に走る者まで現われ、従来の精霊信仰を含めて先住民の生活は一変してしまったとされる。
余談
この信仰は21世紀までには消滅したが、バヌアツのヘンナ島にはジョン・フラムという名のアメリカの工業製品の神を信仰する新宗教が残されており、こちらは古くからの伝統を守り続けることが重要視されるという、かつてのものとは真逆の思想を伴う。
またイギリス王家のエディンバラ公爵フィリップ王配(2021年没)は山の精霊の息子であり、ジョン・フラムの兄弟であると1950~1960年頃から信仰されている。
カーゴカルトは異文化との接触における人類普遍の反応であり、メラネシア固有の文化であるというのは欧米人の偏見が作り出したものであるという意見もある。
現在では「cargo cult」という英熟語は、劣化コピー品などの表層だけを模倣したものや、模倣している人々、役に立たないコードを必須であると信じて組み込んだプログラム、成功者の真似をして失敗したソフトウェア開発集団のことなどを指す。
2023年4月24日に放映されたTV番組『クレイジージャーニー』において、佐藤健寿によってカーゴカルトおよびジョン・フラム運動についてが紹介された。