『死ぬわけにはいかない 王を産むためにも』
概要
CV:池田昌子
キメラアントは大別して以下の三種に分かれる。
女王蟻は後述する摂食交配により交尾を経ずに無数の子を産むことを可能としており、糞や泥で建設した城に永住し、一定の周期で王を産む。
「この」女王蟻もそんな女王の一匹であり、元はキメラアント原産地(と思われる)暗黒大陸で生まれ、漂流した末に瀕死の重傷を負いながらもNGLの浜辺に漂着し、洞窟で傷を癒しながら昆虫や魚介類、蝙蝠などを貪り食って次々に兵を増やしていた。
本来キメラアントは掌に載る程度の大きさしかないはずだが、「この」女王は人間に匹敵するほどの巨体を有し、二足歩行をし、人語を解するなど高い知性を有していた。このことに関しては、本人(?)も「私の体の中に流れる人間の血のせいか」と語っており、先祖である王が何らかの方法で人間と交配して生まれた子孫であることが示唆されている。
作中では以前に大勢の人間が暗黒大陸に渡り多くの犠牲を出ながらも帰還したことが最低5回あると明かされているため、その際の犠牲者の一人と先祖の王が「交配」した可能性がある。
身体的特徴
原種であるアリに似た姿をしているが、口元は横に裂ける昆虫型の牙に加え、哺乳類に似た上下に裂ける顎を有している。
中脚は存在せず、手は3本の指と6個の鉤爪が生え、物を掴み取ることができる(空中を飛ぶ蝙蝠を瞬時に捕まえるなど、動体視力も優れている)。
王や護衛軍、幹部級の蟻達は声帯を用いて音声通信ができるが、この女王蟻は「聞く」事は出来ても声帯が無いため声を出すことはできない(意思疎通は電波通信で行う)。
摂食交配
キメラアントの女王蟻のみが保有する特殊な繁殖方法。
女王が食った生物の遺伝子を取り込み、ミツツボアリのような小蟻を産むというもので、月が満ちる(ものの数日もかからないと思われる)と小蟻の腹が破け、子供が生まれる。生まれた子供はそれぞれベースとなる遺伝子をバラバラに受け継いでいるため、一人として似ていない。この女王は人間を食いまくったため、生まれてきた子供の大半は人語を解する知能を有しており、王を守護するための「護衛軍」は特に人間に近い姿をしている。また、師団長などの上級蟻の一部は、生前の記憶を取り戻したりしている(メレオロンなど)。
しかし王だけは卵(小蟻)ではなく女王がそのまま分娩出産するようで、王は生まれた瞬間から女王蟻のことを一切気にかけることなく交配相手を探しに行く…らしい。
蟻物像
昆虫なので基本的に合理的な思考を取る。そのため、兵たちが「名前」を欲しがることに疑念を抱いてはいたが、本人もそれを楽しみ拒絶することはないなど、「人間」らしい思考パターンを取ることもある。
基本的に兵に関してはさして執着しないものの、「王」に対してだけは心血を注ぎ、生まれた瞬間から重傷を負わされたにもかかわらず、微塵の怒りも持たなかった。
来歴
3月18日…ゴンとキルアがグリードアイランドから抜け出したその日に、女王はNGLに漂着した。
彼女は海辺の洞窟に身を隠しながら傷を癒し、片っ端から小動物を貪り喰らいつつ、手駒となる兵を産み始める。着々と兵力を増す中、3月末に兵が捕まえてきた人間(師団長コルトの元になったクルト少年とその妹)の味を覚え、洞窟を出払ってからは兵たちを総動員して人間狩りを行う。
NGLの閉鎖的な風土も伴ってキメラアントは着々と人間を捕まえては女王に献上し、女王は「王」と「護衛軍」を産むべく栄養を蓄えることを宣言。1日当たり人間50人分の人肉団子を提供するよう部下たちに命じながらも子を産み続けた。そして最初の護衛軍であるネフェルピトーを産み、以降は兵たちの統率は彼女(?)に一任される。
しかし、ピトーや後発の護衛軍たちは女王蟻ではなくいずれ生まれる「王」に対しての忠誠心しか持ち合わせていなかった。気づかぬうちに亀裂が深まる中、6月ごろに女王は「王」を懐妊。女王は食事の量を5倍に増やし、「王」が生まれるのを待った。
そして遂に運命の日が訪れようとしていた…のだが、「王」は出産日を待たず、自力で女王の腹を突き破って出生。女王に一瞥をくれることもなく「王」は護衛軍の三匹を連れて出奔、女王は繁殖能力を失い、瀕死のまま取り残される。
危機を感じた師団長コルトは白旗を持ってキメラアント討伐隊の元へ飛び、二度と人間を襲わない代わりに女王の助命を乞う。ネテロはこの条件を呑んでキメラアントの城へと向かうが、治療も及ばず、女王は命を落とす。
王に与える「全てを照らす光」を表す名『メルエム』と、ちっぽけな小蟻の赤ん坊を遺して。
余談
メルエムにとってただの女としてか認識しなかった女王であるが、コムギとの出会いと護衛軍との関係から人格が大きく変化し、「母」と呼称され一定尊敬を得るようになった。