(余は 一体 何の為に 生まれて来た…?)
CV:内山昂輝
概要
女王から生まれたキメラアントの王。身長はゴンと同程度の小柄な体格で、一人称は「余」。
討伐時の年齢は生後40日である(ゴンがトリタテンに憑りつかれた日に誕生→30日後解除された時点で決戦日の国民大会まで10日)。
自らが種の全てを託された王であるという自覚と自負を、生まれながらにして持っている。非常にプライドが高く、自身の発言・命令への拒否、偽り、誤魔化しは断じて許さない。口癖は「二度言わすな」。
自分以外の全ての生物を「餌」として認識しており、同種である兵隊蟻を平然と殺し、喰らう。護衛軍の三体にだけはある程度の仲間意識を持ってはいるが、意に沿わない行動を取った場合には自らの手で殺害する事に些かの躊躇いも抱かない。
身体能力は他のキメラアントを遥かに凌駕しており、一挙手一投足は常人には視認すらできず、師団長クラスの蟻でも時間潰しにすらならない。長く伸びた尾をムチのように振るい、相手を叩き潰すことを得意としている。
何気ない殴打であっても、殴られた生物は基本的にバラバラに吹き飛ぶ。ピトーがその一撃を耐えた事には驚いていた。
身体もキメラアントの中でトップクラスに硬く、百式観音の100を超える打撃を喰らい続けてもほとんどダメージが無い。
NGLで母親であるキメラアントの女王の腹を自ら突き破って誕生した後直ちに、己のみに属する護衛軍と共に念能力者(レアモノ)を喰う為にキメラの巣から旅立つ。その後、独裁国家東ゴルトー共和国に進出、マサドルデイーゴ総帥を殺害し国ごと乗っ取る。全国民500万人の人間に号令をかけ、オーラを込めた暴力を用いる「選別」計画を実行し、念能力者の軍隊を得ようと目論む。
その最終目的は地球上の全ての生物を「統一」し、キメラアントを更なる次元へと進化させること。
念能力
放出系能力者
劇中で系統は明かされていなかったものの、その高いカリスマ性と他の系統には当てはまらない能力から、読者には特質系である可能性が高いと思われていたが……?
獲物のオーラを食うことで自分のものにできる能力(仮称)
食えば食うほどに自らを強くすることができる。体の傷を癒したり、欠損した部位を再生させることも可能。
貧者の薔薇による爆撃を受け瀕死の重傷を負った際にプフとユピーを摂取したことで、メルエムと二人との間に精神の共有が生じている。このことから吸収というよりはむしろ同化に近い能力だといえる。
ユピーを口にしたことでユピーの能力も使用できるようになり、変形(翼を生やす)と砲撃(超巨大な岩山を丸ごと消し飛ばす破壊力を誇るビームを掌から発射する)が可能になった(しかも初披露でユピーよりもはるかに上手く能力を使いこなしている)。
プフ・ユピーを吸収した後は基礎能力も桁違いに上昇しており、宮殿全体に加えその周囲数キロを覆い尽くすほどの超広範囲の「円」を一瞬で展開可能になる。
この「円」にプフから吸収した「麟粉乃愛泉」の要素がミックスされた結果、「円」そのものが光子のような物質を拡散する特性を兼ね備え、円内部にいるものの姿形だけでなく感情をも読み取る能力、および光子は円の終了後も相手に付着し追跡を可能にする特性を得た。
念系統について
2022年に開催された「冨樫展」で公表された冨樫先生の設定メモによると、メルエムは念系統的には「放出系」ということが示された。
言われてみれば確かに、薔薇の爆撃から蘇生した後に披露してみせた「ビームを発射する」「円の性質を持つ光子を拡散させ、その光子はしばらく相手に付着する」という能力は「オーラを体から離して留めることが得意」という放出系の特徴そのものである。オリジナルのユピーとプフにはこのような芸当が出来ていないので、「ユピーとプフの能力を、メルエム自身が得意とする「放出系」の形として昇華させた」という見方ができるだろう。
またメルエム個人の短気な気性も放出系の性格診断に合致していると言える。
メルエムが放出系であるというのは「食って強くなる」能力と矛盾しているように見えるが、「獲物のオーラを食うことで自分のものにできる能力」は「キメラアントの王としての特性(特質系)」で、放出系を得意とするのは「メルエム個人の特性」という解釈も可能である。
また王位継承編において徴収型と呼ばれる他人の念を奪うことを得意とする放出系の能力が登場した為、「食って強くなる」能力自体も放出系の範疇であることも考えられる。
変化(ネタバレ注意)
「選別」が終わるまでの余興として、将棋や囲碁の各種盤上競技の名人と対局し、次々と打ち負かしていく。
当然ながら人間の遊戯のルールは知らないため、ルールブック等を読んでルールを覚えてからの対局だが、いずれもルールを覚えて数時間のうちに東ゴルドーのチャンピオンを完膚なきまでに打ち負かすほどの学習速度を見せつけた。
最初のうちは敗北しながらも学習を続けていったが、それまでの人間と違い、いくら学習し強くなっても勝てる気配が全く見えてこない。
焦れた王は精神を揺さぶるために「賭けをしよう」と提案し、「お前が勝ったらなんでもくれてやる、ただし負けたら左腕を貰う」と言うと、コムギは散々悩んだあげく「腕じゃなくて命で良いですか?」と返した。
理由を聞くと「盲目である自分は軍儀以外何もできることがなく、ゴミ同然」だと返答し、一度でも負けたら自殺するつもりでずっと勝ち続けてきたことを語った(直後に「ただそうなるとゴミを渡すことになってしまう、それは失礼じゃないか」と見当違いの事で悩み始める)。彼女の答えに、王は自身が覚悟と精神においてコムギに劣っていた事を自覚。
「賭けを提案し、なんでもくれてやるとしていながら『自身の命を欲された』時のことを想定していなかった」ことに自責の念に駆られ、自身への罰としてその場で自ら左腕をもぎ取った。
この一件を境に、自身よりも遥かな高みにいるコムギとの対局を続けていくうちに自らの価値観に変化が生じ始め戸惑いを抱く。
その後、人間の中にも極少数ながら価値を認めるに値する存在がいると認識し、己の力を暴力による抑圧ではなく、現在の不平等な社会を破壊し、弱者を庇護することで理不尽な格差の無い世界を創設するために使うことを決意する(王なりの正義感ではあるが、「与える」という上から目線であることは変わっていない)。
そしてついに討伐隊による襲撃が開始される。
初手ゼノの「龍星群」後すぐ自身の居た王の間からコムギの居る部屋へと向かうも「龍星群」の巻き添えになったコムギは既に重傷を負っていた。
ゼノとネテロが王のもとにたどり着いた時はこの重傷のコムギを抱きかかえている所であり、聞いていた話とまるで違う、一個の生命として慈愛溢れる振る舞いをする王の姿にゼノとネテロは戸惑う。
駆け付けたピトーにコムギの治療を任せ、王は戸惑っているゼノとネテロに対して自ら場所の変更を提案する。ゼノは役割終了ということで離脱したためネテロのみがそれについていき離れた場所にある兵器実験場跡にてネテロと一対一となる。
この場に及んでも王は上述の理想を語ってあくまで話し合おうとし戦う意思を見せなかったが、ネテロの「負けを認めさせることが出来たら名を教えてやる」と言う提案に乗って腰を上げる。
戦いは序盤こそネテロの百式観音で王が翻弄されているように見えたが、与えた打撃は皮を傷つけてるにすぎず、ネテロが攻撃を加えれば加える程に喰らいながらそのパターンを各種盤上遊戯のように喩えて王は急速に学習を続け、ついにはネテロのほんの僅かな「癖」を見切って攻撃を潜り抜け、ネテロに痛打を与える事に成功。
そこからは形勢が逆転し、ネテロは片手片足を失い「零の手」までも使うが王は大したダメージを受けない。ネテロは「勝負での敗北」を認め、王に「メルエム」という名を教えるが、そこで最後の手段として自身の体内に仕込んであった核爆弾「貧者の薔薇」を起動。
爆心地で被爆したメルエムは消し炭寸前まで焼け焦げ両手両足も失う大ダメージを受けたが辛うじて生存しており、駆け付けたプフとユピーの献身によって傷を全快し復活を遂げる。この時、あの女と言っていた「女王」を「母」と呼称を変化させている。
しかしその衝撃からか一時的な記憶喪失の状態に陥り、コムギの存在を忘れてしまった事に加え、コムギによる影響を良しとしないプフの誘導によって以前の王の価値観に戻りかけていたが、宮殿に帰還して出遭ったウェルフィンを問い詰めた際に零れた「コムギ」と言う単語に反応して全てを思い出した。
全てを思い出した王はコムギの居場所を捜索する。
討伐隊によって人質とされ隠されていたコムギを探し、討伐隊のメンバーを見つけて問い詰めるが、同時に爆発の直接のダメージからは復活したものの、「貧者の薔薇」が撒き散らす遅効性の毒に侵されている事を自覚。
どう足掻こうと自身の命が長くない事を悟ったメルエムは最後の時間をコムギと過ごす事を決意し、半分キメラアントになっているパームに土下座をしてでもコムギの居場所を教えてくれるよう懇願(流石に王に土下座をさせる事の意味に耐えられなかったパームの方が先に折れ、実際は土下座をする前にパームに制止されたが…)。
ようやくコムギに再会したメルエムは早速軍儀を開始する。
軍儀を打ちながら、コムギに自身が毒に侵され残り僅かな命である事を打ち明ける。
毒は他者にも感染するため、巻き添えになる前に自身から立ち去るよう告げるが、コムギはメルエムに添い遂げて死ぬことを選んだ。
ここでメルエムはようやく自身の生まれてきた意味を確信した。
コムギと出会うために、コムギと添い遂げるこの瞬間のために生まれてきたのだと。
(また、このシーンはメルエムとコムギが新手、逆新手、更に逆新手返しと次々と新しい一手を産み出し続けており、コムギが自ら産み出した手を以前に「私の子」と称していたことから「メルエムとコムギが子を為している」と例えられている)
やがて衰弱し目も見えなくなり、コムギの居場所を言葉で確認しながら(この時、「二度言わすな」が口癖のはずのメルエムが何度も何度もコムギに呼び掛けそこにコムギが居る事を確認するのが印象的)軍儀を続けようとするが、疲れ果て「少し眠る」と言い残し、コムギに抱かれながら、メルエムは死んだ……。
「おやすみなさい… メルエム… ワタすもすぐ いきますから…」
名前
最初は名前を持つという考え自体がなかったが、コムギに名前を聞き返されたことで自身の名前がないことに疑問を持つ。その後ネテロとの戦いを経て、今わの際に母親(女王)が自分に「メルエム」("全てを照らす光"という意味)という名前を付けていたことを知る。この名前だけは記憶喪失後も覚えていた。
本来、蟻という習性は「個」という感情は持ち合わせておらず、遺伝子に組み込まれたプログラムされた行動しか行わない生き物である。例えば現実世界においてはパナマ運河のハキリアリは衰弱したり死んだ仲間はすぐさまゴミと一緒に遺棄したり、アマゾンのグンタイアリは獲物を殺すのに一切躊躇しない。行動原理において一切の感情を持ち合わせておらず、死ぬまで決められた通りの行動しか行わないのが蟻本来の姿である。
メルエムがコムギに名前を問われた当初もそこまで名前に拘らなかったが、先述したようにコムギやネテロのような人間と接するにつれて王自身に変化が訪れる。それは蟻本来の遺伝子にはない人の遺伝子が組み込まれて生まれたが故であり、蟻としても人としても生物として綻びが生じているという意味でもある。(劇中でもこの点を指摘されている)
メルエムがコムギに対して最期に「王」ではなく「名」を呼ぶよう懇願したのは蟻という種から完全に脱却した事の証左でもある。皮肉にもネテロが人と蟻は相容れないと指摘していたが、メルエムは最後の最期でそれを否定してみせたのである。
関連イラスト
関連タグ
キメラアント ネフェルピトー シャウアプフ モントゥトゥユピー
セル:色々似てる。
雷禅:作者の前々作に登場する妖怪。人間を捕食出来る性質と圧倒的な強さを持った人外が人間の女性と出会い、その強さに惹かれ、生き方に強い影響を受けるという部分が似ている。
漢羅漢:メルエム同様、鳳仙との出会いがボードゲームだったり出会いから内面に変化が訪れたり、また知能が高いなど色々似通った部分がある。