クシクラゲ
くしくらげ
学名「Ctenophora」、有櫛動物(ゆうしつどうぶつ)ともいう。和名「クシクラゲ」(櫛水母)は同じ意味の英語名「comb jelly」に由来する。100種ほど知られていた海洋生物。大きさは数mmから触手含めて1m以上のものがいる。
名前の通り外見はクラゲと似ているが、クラゲ(刺胞動物門)とは全く別(有櫛動物門)である。触手もクラゲのような刺胞(毒針)がないので、刺すことはない。一見して放射対称のクラゲのような体も、実は二放射相称な構造をしている(2つの相称面で4等分される構造)。
分類学上の名前(古代ギリシャ語 κτείς 櫛 + φέρω 持つ = Ctenophora 有櫛動物)の通り、体の側面にある8列の「櫛板(くしいた)」が特徴的で、これを波打たせて、ゆっくり、滑るように移動する。櫛板は虹色に光るが、発光しているわけではなく、光を反射する際に虹色に見えている。
現生のクシクラゲは全身が柔らかいが、5億年前のカンブリア紀に生息した一部の化石種は硬質な内骨格を持ってた。
動物の中では海綿と並んで最も系統が古い門の一つであるが、海綿と比べて対称性や消化器、神経系があると比較的複雑。ただし消化器は刺胞動物と同様肛門を持たず行き止まり(かつて両門が「腔腸動物」としてまとめられた所以)…と考えられていたが、少なくとも一部の種類は排泄の時だけ肛門を形成し、普段は跡なく癒合するという不思議な仕組みを持つことが2010年代の研究で判明した。
30度の熱帯から氷点下の極地、水面付近から7,000m以上の深海まで、世界中の海に生息する。
プランクトン生活で海中を浮遊するものが多いが、海底の石などの基体にくっつける種類もいる。昭和天皇陛下が御発見あそばしたので有名なコトクラゲは、海底でうさみみ状の器官(をリラていうハープ系の竪琴に見立てて命名)を揺らしながら生活している。
多くが2本の長い触手に触れた小さなプランクトンや有機物を餌にしているが、触手を持たず、他の動物を丸呑みする捕食者もいる。
雌雄同体で卵生、幼体は成体を小型にしただけのような姿(劇的な変態を経ていない)。体の縁からクローンを無性生殖するものもいる。