概要
文字通り飛行可能な自動車。しかし、飛行と地上走行に求められる機能は相反したものがあり、大きな主翼は地上走行には無駄になる、運転には自動車と飛行機の両方の免許が必要になるなどの問題が山積しており、実用化に至ったものは少ない。
現在多くの企業で「次世代の乗り物」として開発が進められている、「車感覚で扱えるVTOL機」(eVTOL)は「空飛ぶクルマ」を参照。
各種のスカイカー
テラフージア・トランジション
DARPAのVTOLプロジェクトなどに参加してきた米国テラフージア社が開発したスカイカー。
一言で言うなら「変形して飛行機になる車」である。エンジンは航空機用ガソリンレシプロエンジンを採用し、走行時にはモーターを併用するハイブリッドカーとなる。飛行時の最高速度185km/h、地上走行時は105km/h。
約30秒程で主翼(先端にティルトローターが取り付けられている)が展開して飛行モードとなる。離着陸時にはティルトローターを使用し、空中での巡航には後部のダクテッドファンを使用する。
2009年に初飛行、2010年に米国当局から軽量スポーツ用航空機の認証(通常、軽量スポーツ用航空機の最大離陸重量は600kgに制限されており、本機はこれをオーバーしているが特例で認められた)を得て試験を繰り返していたが、テラフージア社は2017年11月に、中国の吉利汽車の親会社の浙江吉利控股集団に買収され、十分な資金を得たことから2018年10月に世界初の量産型スカイカーとして注文開始した。
現在同社は垂直離着陸(VTOL)タイプの次世代機「TF-X」の開発を進めている。
モラー・M400
かつて空飛ぶ円盤型エアカーM200G Volantorで話題をさらったことで知られるカナダ人の発明家、ポール・モラーが開発したスカイカー。
車体(機体?)の側面に4発のダクテッドファンを装備し、垂直に離着陸をする(VTOL)。飛行中の最高速度は560km/h程だとか。
外見はレーシングカーのようなスタイルだが、車輪が自動車としては極めて貧弱で航空機の降着装置(脚)に近い形状をしていることから、地上走行機能はかなり限定的なものと推測され、使用形態としてはeVTOLに近いものを想定していたと思われる。ただし、動力源はeVTOLのような電動ではなく、ロータリーエンジン(ヴァンケルエンジン)で動く。
2013年段階で最も市販化が近いと言われていたが、結局まともに飛ぶことができず、開発元のモラー・インターナショナルは2019年以降活動を休止しており、計画倒れで終わった模様。
フライング・マルチ
インドの技術者、A.K.ヴィシュワナートが開発したスカイカー。マルチ・スズキ・インディアの「マルチ・800」(アルトの海外版)を改造し飛行可能にした実験機。
パラジェット・スカイカー
英国パラジェット社が開発したスカイカー。
・・・信頼と実績の英国発と聞いて様々な予感がしたあなた、正解です。
こいつは乱暴に言えばモーターパラグライダー付きの車。
バギーのような形状の車に推進用のプロペラとパラグライダーを付けて飛べるようにした車である。ちなみに量産車ではヤマハ製3気筒エンジンを採用するとか。
簡素な形状の車にパラグライダーとプロペラがついて飛んでいる姿は多少間抜けに見えるが、一方でこのある意味非常にストレートな発想が功を奏し、離陸時の滑走距離は200m程で済むとか、離陸速度は56km/h程度という低速で十分とか、よく考えて見れば結構実用的なところが多い。
バイオ燃料が使えるのもポイント。
ちなみにロンドンからアフリカ・マリ共和国までの飛行を成功させている。
Klein Vision AirCar
スロバキアのKleinVisonによる。2021年に初飛行成功。
これまでより車っぽさが増しており、オープンカーよろしく変形して公道も走れるという優れもの。
エアカーと何が違うの?
SF作品で「エアカー」という乗り物が出てくるが、エアカーはホバークラフト同様に「空気圧や反重力で浮いて走る車」に過ぎず、空高く飛ぶことはできないのに対し、スカイカーは航空機同様に高く飛ぶことができる。ただし、一部の作品では飛行可能なエアカーも出てくるので、微妙といえば微妙である。