概要
ピシュタコ(Pishtaco)とは、現在のペルーやボリビアなど、かつてインカ帝国が栄えたアンデス地方で伝承されている、先住民を襲って生命の源である脂肪を吸い尽くして殺してしまう、あえて表現すれば吸脂鬼とでもいうべき魔物。
この名はケチュア語で「断頭する」「喉を掻っ切る」「切り刻む」などを意味する「ピシュタイ」が語源で、地域によってはニャカク(Ñakaq)、アイマラ語ではカリシリ(Kharisiri)やリキチリ(Lik'ichiri)とも呼ばれており、現在においても非常に恐れられている。
この魔物は青白い白人や外国人男性のような姿をしているといわれ、現在では自動車や様々な機械装置などの最新技術の産物を操り、先住民を捕らえて脂肪を絞り出し、残りかすはチチャロン(南米の肉料理)として食べてしまうとされているが、この伝承の成立にはスペイン人による侵略が大きな影響を与えたといわれている。
先住民の信仰の中で、脂肪は生命だけではなく健康や強さ、美しさの象徴として重要な意味を持っており、創造神であるビラコチャの名の意味は「脂肪の海」と解釈もされるといわれていた。
しかし、そこへ現れた侵略者たちはこの地いない家畜のものの代替として、病症の治療やマスケット銃や大砲などの金属製品のメンテナンスにも、死者由来の脂肪を用いたのである。
この行為は先住民たちに拭い去れない恐怖を与え、宣教師はピシュタコと呼ばれ、教会の鐘に死者の脂肪を塗っているというデマが広がったとの記録も残っている。
現在においても、白人資本の建設会社を隠れ蓑にしたピシュタコが、先住民の脂肪を橋梁や高層建築に塗っているというという話や、手先であるCIAが子供をつれさり、行方不明となった軍人の遺体が安値で取引されているなどの様々な都市伝説が広まっているという。
また「ピシュタコス」と呼ばれるギャングが、誘拐した人々から搾り取った脂肪を、ヨーロッパの研究施設に化粧品の原料にするために売っているという都市伝説もある。
エンタメとしてのゴシップだけであればよいが、この伝承が先進国の食料援助が「自分たちを太らせて食べるつもりだろう」とする迷信となって、拒否されているという不幸な行き違いも起きているのだといわれる。
創作での扱い
第9シーズンに普段は人間の姿だが、脂肪を吸う際に口の中から管を出す存在として登場。
ニャルラトホテプの化身の一つとして登場。
『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』に登場。
- アンデスに死す
マリオ・バルガス・リョサの小説で、失踪事件の原因がゲリラとこの魔物どちらの仕業かが論点となる。