概要
全編の区切りの1つ『断罪編』に密接に関わり、以後の世界の変化の発端を知る唯一の人物。
来歴
堅固な岩山の頂に建つアルビオン修道院のはるか麓に形成された難民キャンプで暮らし、年端も行かぬ若い娼婦4名(ニーナ、ペペ、フーケ、リューシー)をまとめつつ自らも体を売って食い扶持を稼ぐ日々を過ごす中、半ば職務放棄に近い形で足繁く訪ねるようになった騎士ジェロームと浅からぬ関係を育んでいたが、リッケルトたちの保護から離れて徘徊の末にアルビオンに辿り着いたキャスカとその行方を追って同じくアルビオンに足を踏み入れたガッツ、即ち『蝕』(降魔の儀)から奇跡的に生還した生贄両名と深く関わった事で未曾有の怪異に直面する身となった。
ところが、ふとした一件で髑髏の騎士に命を救われ、加えて謎の存在「完璧な世界の卵」との邂逅によって図らずも新たな世界の秘密を知る唯一の存在となり、修道院で繰り広げられた絶望の一夜を持ち前の度胸と機転で辛くも生き延びた。
その後、気弱な青年ヨアヒムと駆け落ちしたニーナを除く娼婦3名と共にジェロームに身請けされる形でアルビオンを離れたが、本国で暮らすジェロームの本妻を知ってその関係を壊さないように静かに身を引き、再び妹分3名と長旅を経た末に城塞都市ファルコニアに落ち着いて難民受け入れ宿の管理人として働くようになった。
人物
大人の色気を存分に醸す健康的な美貌、曲がった事が嫌いな姉御肌で人を惹き付けるカリスマ、多少の事態でも物怖じしない大胆な気性、見も知らぬ他者にすら気遣う穏やかな心を併せ持ち、人間の真理を突く数々の名言を披露する反面でギャグリリーフもこなし、物語の中核に位置する重要人物の多くと関係を築くなど『断罪編』の実質的ヒロインと言っても過言ではない。
後ろ暗く寄る辺も無い娼婦の立場を充分に理解した上で相手が誰であろうと求められれば体を差し出し、どれだけ稼ぎが良くても「稼ぎに関係無くアガリ(=売上)はみんなで分け合う」「アガリの半分はご近所にお裾分け」の約束を守り続け、年下の娼婦たちへの配慮も怠らない母親的存在。一介の娼婦として動乱の世を逞しく生き抜いてきただけに「自分より持っていれば妬み、持っていなければ蔑む」という人間の浅ましさを達観した節があり、そのような醜い心に蝕まれないためにも率先して行動に移し、まだ見識の狭い妹分の娼婦たちに処世術の一環としてそれを実践させていた。
自分の身に降り掛かった災厄の原因がキャスカにあると薄々勘付いていながらもその身を案じ、心の弱さから迷いに取り憑かれて愚行に走ったニーナを自分の命を懸けてでも守り通した一方、髑髏の騎士を「死神さん」、暗殺集団『バーキラカ』頭目のシラットを「クシャーンの兄さん」と呼んで気軽に会話を交わすなど、何者に対しても分け隔て無くありのままに接する豪胆、且つ平等な心の持ち主。
ただし、修道院の一夜で理解の範疇を超える数々の異形を目にしてもさほど動じなかったにもかかわらず、シラットの側近を務める屈強の戦士集団『ターパサ』を目にした際には一転して「町中にオークが紛れ込んでる」と慌てふためくお茶目な一面も垣間見せた。