概要
『棺守』と呼ばれる異形と人間の戦いを描いたSFファンタジー。膨大な伏線と日常での人間群像、そしてその中での非日常から織りなされる重厚感のあるストーリー展開が成される作品。『嘘』をキーワードの一つとして置いており、人間関係における軽い嘘から、自身すら無意識に騙していた苦い『嘘』に至るまで、物語の人物描写において重要な意味を成している。なお、本編中で虚偽の台詞には「」が付属される。
全13巻。
クロノクルセイドの作者である森山先生だけに、画風・キャラクター造詣については折り紙つき。少々年上のお姉さんの登場比率が大きいが、そこは先生の性癖なのでお察しください(笑)。
シナリオはシリアスだが、隙間に挟むギャグシーンやコミックの表紙カバー裏のオマケなど、思わずクスリと来る細かい芸もなされている。また、コミックの帯には著名な漫画家やイラストレーターらが軒を連ねて寄稿しており、森山先生もコミック発売日決定まで明かされずにいるらしい。
10&11巻特装版にて、ドラマCDが付属されることとなった。
ストーリー
2年前に行方不明になった姉から突如として写メールを受信した主人公・天海陸(リク)は、写真の背景になっていた廃病院に潜入し、その行方を捜していた。途中、ヤンキーたちの強姦現場(未遂)に乱入してしまうが、絡まれていたところを武部洋平と有栖川レナによって助けられる。しかし、そこに人外の異刑・『棺守』がまぎれ込み、リクは命の危機にさらされる。その中で、彼は「謎の卵らしきもの」を発見し……。
それが、世界を包む大きな『嘘』の始まりであった――。
刊行数
ドラマCD
- 原作:森山太輔
- 脚本:黒田洋介
登場人物
天海陸(Amami Riku/リク)
cv:皆川純子
私立八坂台高校に通う16歳の少年。元剣道部。眼鏡をかけた地味な容姿だが『嘘吐き』であり、日常においても嘘で人間関係の距離を図って生活していた。性格は控えめでようであるが、その実、非常に人間臭く熱い部分を持っている。同時に、嘘吐きとしての計算高さも持ち合わせる不均衡な精神の持ち主。なお【ある事件】以降、一部の同年代からは侮蔑の対象にされている。高校一年の冬に笹森天音からメールを受信し、かつて自分が入院していた風間病院に潜入する。そこでネーネの『繭』を拾ったことで、大きく運命が変わっていくことになる。終盤で一つだけ優しい嘘を吐く「物語の主人公」。
ネーネ(Nehne)
cv:斎藤千和
リクの拾った『繭』から誕生した少女。作者曰く「赤子のメインヒロイン」。笹森天音の幼少期の姿に酷似しており、耳とは別に頭部にネコ耳のような謎の機関を持つ。性格は幼児そのもので、天真爛漫で活発的。成長が非常に速く、特に棺守との戦闘に関わった時には2〜4歳ほど一気に成長してしまう。また、頭部の機関を展開することで不思議な力を行使することも可能。リクを父親と認識し、『パーパ』と呼んでいる。
武部洋平(Takebe Youhei/洋平・洋兄)
cv:森久保祥太郎
リクの幼馴染であり、2歳上の兄貴的存在。作者曰く「前作の主人公ポジション」。通信企業NEFT(ネフト)が有する対棺守用特別部隊『F・L・A・G』の特別調査分室と呼ばれる出先機関の戦闘員であり、棺守に唯一対抗できる武器刃旗(ジンキ)の使い手である『刃旗使い』の一人。リクとは年少期に、風間病院で入院した際に知り合い、彼からは洋兄(ようにい)と呼ばれている。大雑把だが、陽気で面倒見の良い人物であり、分室組の精神的なよりどころでもある。使用する刃旗は、衝撃波を発生できるナイフ形の刃旗「空断(カラタチ)」。のちにリクに受け継がれることになる。
有栖川レナ(Arisugawa Rena/レナ)
cv:阿澄佳奈
洋平と同じく、特別調査分室に属する刃旗使い。作者曰く「もう一人の主人公+α」。黒い長髪と真っ赤なトレンチコートが目印の美少女だが、性格は生真面目過ぎるせいで少々きつい。また絶望的なまな板であり、その事をコンプレックスにしている。分室の任務以外の私生活では非常に冷静だが消極的であり、リクの通う高校では『アイス』というあだ名をつけられている。なお、学校では眼鏡&ツインテールスタイルで地味な雰囲気作りに徹している。使用刃旗は、巨大四方手裏剣の形状をした奇形のダガー「シンゲツ」。
ネーネからはリクと同じくらいに好かれ、リクのそれに対応するように『マーマ』と呼ばれている。
笹森天音(Sasamori Amane/天音姉)
物語開始から二年前に謎の失踪を遂げた、リクの3歳上の叔母。中学の大会で優勝するほどの剣道の実力者だが、高校進学以降はきっぱりとやめてしまった。リクにとっては憧れの女性であり、一番の心のよりどころでもあった。
その他の人物
月代隼人(Tshukishiro Hayato/隼人)
cv:前野智昭
未成年の刃旗使いたちが集う『F・L・A・G』特別調査分室の室長を勤める青年。かつては洋平のパートナーとして第一線に出ていらようだが、現在はとある後遺症から歩行機能を失い、車椅子生活を余儀なくされている。電子機器やプログラミングに強く、それらを用いた冷静なバックアップで分室を支える。なお、刃旗使いとしての能力は失っていない。
霧島譲(Kirishima Jou/ジョー)
cv:小西克幸
特別調査分室所属の刃旗使い。一時期、何かしらの任務で分室を離れていたが、27話時点で分室組に復帰を果たす。ロックファッションに身を包んだヤンキー風のクォーターで、大きなサングラスと胡散臭い外国人口調が特徴。洋平と隼人とは同期であり、自称『洋平のライバル』。暑苦しいまでの熱血漢であり、つねにテンションは高め。しかし、年長者としての責任感はしっかりとしており、いざという時には決めてくれる。使用刃旗は、鏃のような刃を射出するクロスボウ型の刃旗「トライエッジ・バーニングアロー」。
霧島鞍螺(Kirishima Kurara/クララ)
cv:高垣彩陽
ジョーの年の離れた妹であり、ジョーと同様に27話時点で復帰した分室組の刃旗使い。ゴスパンクファンションを好み、「〜マスわ」「〜デスわ」「アラアラマアマア」など、お嬢様口調が特徴的な美少女。おしゃべりでテンション高めではあるが、他人の心理を見抜く技能を有しているらしく、当人曰く『嘘には敏感』とのこと。ジョーを「兄様」、レナのことを姓からもじって「アリスさん」と呼んでいる。使用刃旗は、人形のような形状をしたフレイル型の大型刃旗「スターライト・グローリー」。
風間冬悟(Kazama Tougo)
風間病院の院長の弟であり、中学時代のリクの同級生。元々地元でも知られた悪ガキ集団の一員であり、中学卒業後は地元のヤンキー集団の使いパシリをさせられていた。リクの黒歴史に深くかかわる人物の一人。のちに刃旗使いに覚醒するが、タカオに刃旗核を傷つけられて不完全な覚醒しかできなくなった。過去に囚われてパシリになっているより、どうしようもない現状を打開したいという思いから『F・L・A・G』の一員となって戦う決意をする。
天海静流(Amami Shizuru/静流さん)
cv:大原さやか
リクの継母で、天音の姉。獣医として動物病院に勤務しているおっとりとした美人。見た目こそ完璧であるが、性格の方はけっこうだらし無い上にかなりの天然ボケがかかっている。リクに『母親』として認知してもらえていないことを気にする一方、リクやネーネを保護者として、つねに正しい道を判断できるように気遣っている。
リクのクラスメイトたち
- 真崎小牧(Masaki Komaki) ―― 一年生からのクラスメイト。リクたちクラスメイト組の中ではお姉さん的存在。陸上部所属。
- 吾妻結衣(Agatsuma Yui) ―― cv:名塚香織。二年生に昇進した際に加わった新たなクラスメイト。おっとりとした性格の小牧の親友で、サンドウィッチなどの軽食が好物。その割にはけっこうなバストサイズを誇る。とある人物の熱狂的ファンであり、その事が遠因となってある悲劇が生まれることになる。
- 木島孝太(Kijima Kouta) ―― 小牧同様、リクとは一年生からの付き合い。小牧と幼馴染だったり、ラッキースケベだったりと、何気にエロゲー主人公体質。
- 田代純(Tashiro Jun) ―― 小牧・木島同様に、一年生からのクラスメイト。陽気な性格だが、木島のエロゲー主人公体質に嫉妬する場面も多い。
時路佐和子(Tokiji Sawako/室長)
対棺守特別対策機関『F・L・A・G』の最高責任者。大企業「時路グループ」の会長の孫であり、その辣腕で『F・L・A・G』をまとめるエリート美女。優しげな顔でかなりえげつない権謀術数を打てる策士であるが、突発的なトラブルには弱い一面がある。先代室長への強いこだわりと、そこから来る棺守への憎悪は人一倍強い。なお、大の猫好きであり、自宅には十数匹もの猫を飼っている。
タカオ(TAKAO)
2年前に『血の終業式』と呼ばれる虐殺事件を起こした凶悪な少年犯罪者。通称"怪物"。反則じみた強さの持ち主であり、刃旗使いが束になっても全く歯が立たない。何かしらの目的で刃旗核を収集しており、『F・L・A・G』からは「刃旗狩り」の異名で恐れられている。理由は不明だが、当人も刃旗使いを忌み嫌っている。すべての元凶である「感染源」を追いながら、『F・L・A・G』と壮絶な戦いを繰り広げる。
感染源(Kansengen/???)
cv:関俊彦(※ドラマCDでは別名義)
すべての悲劇の元凶と呼ばれる存在。棺守を統制し、棺守化ウィルスをばら撒いて人間に仇を成すもの。リクだけ接触経験があり、一度目はフードを被った白髪の少年、二度目以降は狐の面を被ったスーツの男として登場している。その手口や口調は愉快犯じみており、懸命に戦うリクたちを嘲笑うようでもある。
用語
棺守(Kanshu)
夜の闇にうごめく謎の異形種。その正体は、棺守から携帯電話に送信される怪電波からのウィルスに感染した人間の成れの果て。棺守化するとその時点で人物は死亡し、棺守になった人物の記憶はこの世から抹消されてしまう。また棺守化した人物に特に強い思いを寄せいた人物は、搾失反動症候群(ロストリバウンド)と呼ばれる精神疾患を患ってしまう。予防策として、ケータイを2機以上同時に持つことが挙げられる。これは、棺守が発する電波が一定区域に無差別に発せられることを逆手に取ったもの。また、普段は日中の市街に出現することはない。一度ウィルスに感染すると一瞬で棺守化するうえ、一度棺守化してしまうと元の人間には戻れない。
刃旗(Jinki)
棺守を唯一倒しうる謎の武器。刃旗核を宿した者『刃旗使い』によって発現される。刃旗使いは意識圏(ケイジ【Cage】)と呼ばれるバリアを発現でき、それによる感覚の飛躍的向上と身体能力の上昇を利用して戦う。ただし、どれほどレベルの高い刃旗を所持していても、最終的な実力は使い手の素質や鍛錬による部分が大きい。
NEFT(ネフト)
携帯電話シェア第二位を誇る大手通信サービス企業。元は時路グループの傘下であり、そこから『F・L・A・G』の隠れ蓑として白羽の矢を立てられた。
F・L・A・G(フラッグ)
対棺守特別対策部隊。政府との連携も噛んでおり、構成員の大部分は防衛省から賄われている。普段はNEFTとして活動し、棺守が出現すればその権限を最大活用して棺守との戦いに挑む。