概要
早川書房から発売されている雑誌『SFマガジン』2015年8月号に掲載された小説。同社から発売されている短編集『ウルトラ怪獣アンソロジー』『多々良島ふたたび』などにも収録されている。
『ウルトラセブン』第17話から26年後の世界が描かれているがパラレル世界上の出来事であるらしく、ウルトラセブンが未だ地球で戦い続けている、本編に登場していない本作独自の怪獣・宇宙人が登場するといったオリジナルの展開を含んでいるが、第17話「地底GO!GO!GO!」の後日談としての側面も持っているのも特徴。
セブンに倒されたと思われていた宇宙人たちが母星の技術で回復し、地球でひっそり暮らしているという衝撃の展開が描かれている。
ちなみに、セブン第17話(1968年)から26年後というと平成ウルトラセブンの第一作が公開された1994年であることから、平成セブンのサイドストーリーと解釈することが出来なくもない内容にもなっている。
あらすじ
モロボシ・ダンは変身能力を喪失してしまう。妻の勧めから精神科を受診するのだが…
登場人物
ご存じ恒天観測員304号。どうやらパンドンとゴース星人を倒した後も地球に残り続けていたようで、アンヌではない別の女性と結婚。「百合子」という名の娘を設けている。年頃の娘を持つ父親となっているが、いつものダンとはどこか違和感を感じさせられる発言が目立つ。
ウルトラセブンとして地球を守っていたが、一月ほど前から突然セブンに戻れなくなってしまい、そこである精神科クリニックを訪れて、かつて対峙してきた宇宙人たちと再会することになる。
星人
かつてセブンやウルトラ警備隊に撃退された敵性存在。それぞれの事情から地球に落ち着きつつある。かつての侵略行動では人命含め洒落にならない被害をもたらしたが「行きがかり上仕方ないこと」と称し、人命等の被害などは顧みないという地球人とは隔絶した精神性を覗かせる。
ある勢力との矢面にセブンを立たせたいとの思惑から『変身障害』の解消に向けてモロボシ・ダンに協力する。
- 米瀞/メトロン星人
- かつてタバコの中の赤い結晶体で人間を狂わせ、旅客機墜落や殺人犯を多数世に送り出したメトロン星人その人。奇特な老人に体を縫い合わされ一命をとりとめ、怪我の治療後は人類への恩返しもかねて米瀞メンタルクリニックの60歳過ぎの院長米瀞として精神病院を営んでいる。その一方で、かつてウルトラセブンに敗北するも一命を取り留めた後に静かに地球で暮らしていた宇宙人達と連絡を取り合ってお互い手を貸しあっていた。
- 斑鳩/イカルス星人
- かつて四次元空間を使って地球への攻撃を実行したイカルス星人その人。怪我の治療後は斑鳩というキツネ目に眼鏡をかけた40歳前後の男に化けている。
- 後藤/ゴドラ星人
- かつて船舶を多数宇宙空間へ放り出し、防衛軍の原子力船マックス号をも乗っ取ったゴドラ星人その人。怪我の治療後は後藤という40代半ばの熟女に化けている。巨乳。
- 江笠/ペガッサ星人
- かつて宇宙都市ペガッサ市から地球に送り込まれ、爆弾で地球を破壊しようとしたペガッサ星人その人。怪我の治療後は江笠という、折に触れては地球人への恨み節を口走る陰気な50歳前後の男に化けている。
- 千頭/チブル星人
- かつてアンドロイド0指令を企て、子供たちを操り尖兵に仕立てようとしたチブル星人その人。普段は千頭という口ひげを生やした饒舌な白髪の老人に化けている。
???
- 巨大ロボット
- かつて地球防衛軍のミサイルによって破壊された地底都市の防衛ロボユートムに似た巨大ロボット。変身出来なくなったセブンの窮地に合わせるかのように、茨城県のM市やT市に突如出現、破壊活動を開始する。
他
- サイゴードン星人(セゴドン星人)
- 半年ほど前、上野に飼育が面倒になったペットの宇宙怪獣を捨てた無責任な宇宙人。スカイツリーに怪獣を繋いで放置した結果、周囲に甚大な被害をもたらしたが、侵略の意図はなかったようである。尚、この怪獣は攻防共に強力ななかなかの強豪怪獣。
関連項目
- 薩摩次郎
- かつて登山中に仲間を救うために身を投げ、その行いに感動したセブンに姿をコピーされた地球人。
わけあって自分のことをモロボシ・ダンと思い込んでおり、作中に登場していたダンの正体が実は薩摩次郎その人であったことが終盤に判明する。