概要
監督:野長瀬三摩地
脚本:南川竜(野長瀬氏のペンネーム)
特技監督:高野宏一
STORY
木星開発用に6個の原子爆弾を搭載したロケット「ML-1」が発射直後、太平洋に墜落した。
積まれていた6個の原子爆弾のうち1個は日本海溝5千mで爆発、爆心地に近い南洋の島々は津波に飲み込まれた。残りのうち4個は回収されたものの、最後の1個は見つからないままだ。
科学特捜隊本部で事件についてブリーフィングが行われていたころ、洋上で原爆を捜索していた海上保安庁の巡視船が沈没するという事件が発生した。
ハヤタ隊員が生存者の事情聴取に赴いたところ、錯乱状態の乗員は「白い航跡」「怪物」、そして「原爆があった」と叫び続けていた。
ハヤタが一連の証言をムラマツキャップへ状況を報告していたのと時を同じくして、旅客機が海上に「白い航跡」を発見したとの報告が入った。航跡の進行方向から千葉の野島崎に向かうと判断したハヤタは一路野島崎へ向かった。
同じころ、休暇で三浦半島葉山マリーナを訪れていたフジ隊員とホシノ少年は食事をとっていたが、ホシノ少年が「白い航跡」らしきものを発見する。フジから報告を受けたムラマツはアラシ隊員にジェットビートルで出撃を、フジ達には葉山マリーナの避難誘導を、そしてハヤタへは千葉から葉山マリーナへの移動を指示する。
そして「白い航跡」の中から大波と共に姿を現したのは、
全長30mにもなる巨大なラゴンの姿だった
ラゴンは元々全長2mと人類より少し大きいほどの海底原人であったが、太平洋で爆発した原爆の影響で突然変異を起こしてしまった。
精神も異常をきたしているらしく、危害を加えなければおとなしかった性格も狂暴なものとなり、口からは放射能を帯びた光線を吐いて暴れ回るようになった。
そして一番厄介なことは、「未発見だった原爆を左腕のヒレにつけている」ということである。
アラシのジェットビートルも到着。いよいよ攻撃にかかるところだがラゴンの左腕には原爆がついている。うかつに攻撃できず許可が下りない。
とうとう放射能光線で反撃されジェットビートルは撃墜されてしまった。
打開策を考えていたイデ隊員たちは「ラゴンは音楽が好き」であることを思い出し、海上自衛隊の護衛艦から音楽を流し海上へ誘導する作戦をとったが、逆に暴れてしまい作戦は失敗してしまった。原爆の影響で本能すらも狂ってしまっていたようだ。
窮地に立たされたハヤタはウルトラマンへ変身。ラゴンとの戦闘に入るが、ジェットビートルに反撃したころからずり落ち始めていたラゴンの左腕の原爆が地表に落下。起爆装置であるパイロットランプが点灯してしまう。
ラゴンはウルトラマンのスペシウム光線で倒されたが、もはや時間はない。
ウルトラマンは決死の覚悟で宇宙へ飛び、そして大爆発が起きた。
誰もがウルトラマンの死を予感する中でハヤタが帰還する。
ハヤタは「ウルトラマンは不死身だよ」と皆をなだめたのだった。
余談
野長瀬監督初登板
監督・脚本を務めた野長瀬は、ラゴンの初登場作である『ウルトラQ』第20話「海底原人ラゴン」でも監督・脚本を担当している。
ただし『ウルトラQ』第20話は山浦弘靖と大伴昌司が執筆したものを手直ししたものであり、単独執筆は本話が初である。
初めてひとりで手掛けた脚本だったため野長瀬も思い入れが深かったという。
脚本は当初「ラゴンの復襲」というタイトルでラゴンの再登場であることが強調されていた。『レッドマン』時代の脚本でヒーローの名前がレッドマンである点以外にも以下の点が異なる。
- フジ隊員とホシノ少年の休暇の旅行先は湘南。
- ただし完成作品における葉山を含む三浦地区の相模湾沿いも古くは「湘南」と呼ばれており、湘南の名を冠する施設が存在する。
- フジ隊員がプールで泳ぐシーンがあった。
- 完成作品ではバドミントンに差し替えられている。
- ふたりと一緒に行動している少女ミチコはホシノ少年の妹。
- 眠ったミチコをフジ隊員がおんぶして、ホシノ少年とともに別荘に連れて行く。
- ラゴンは音楽好きのままで、ホテルのスピーカーから流れる音楽やミチコの持っている人形に興味を示す場面があった。
古谷敏対古谷敏?
『ウルトラQ』でラゴンのスーツアクターを務めていたのはウルトラマンのスーツアクターを務める古谷敏である。
つまり本話は新旧古谷敏キャラ同士の対決という形になる。
本話のラゴンのスーツアクターは後にガメラのスーツアクターも務める泉梅之助が務めた。
ゲスト出演
ラゴンに襲われた巡視船の乗員を演じているのは大塚周夫。
流用映像
冒頭の原爆搭載ロケット「ML-1」の発射描写は、東宝の特撮映画『地球防衛軍』のマーカライトジャイロの流用。
墜落描写は新撮しているが、よく見ると機首部分のみが使用されている。
このほかにも『世界大戦争』や『モスラ対ゴジラ』の映像も一部流用されている。
平和的核爆発
現代の目線では核兵器で土地開発なんてできるのだろうかと思われるかもしれないが、放送当時の60年代から70年代にかけて「平和的核爆発」が模索されたことがあった。
一例として、
が挙げられる。放射能などのデメリットが大きすぎるという理由で大部分は中止されているが、ソ連での事例のように実行されたこともある。
音楽
ラゴンを誘導するために流していた音楽は、ショパンの「華麗なる大ポロネーズ 作品ナンバー22」。
ちなみに音楽を流していた護衛艦はラゴンに沈められる巡視船と同型で、いずれも戦争映画で使用していた陽炎型駆逐艦を流用したものと思われる。