概要
イングランドの作家マイケル・モーパーゴが執筆した児童小説。
第一次世界大戦が舞台となっており、馬のジョーイが戦地を転々とする様が描かれる。
ニック・スタフォードが2007年に戯曲『ウォー・ホース 〜戦火の馬〜』として世に出し、さらに2011年にスティーブン・スピルバーグが映画化した。
馬好きなら絶対見るべき映画である。
背景
本作はモーパーゴが住んでいたイングランド・デヴォンのイズリー (Iddesleigh) という村の、第一次世界大戦の退役軍人たちの話が基になっている。
デヴォンのヨーマン (自作農民)として馬と共に働いて、イズリー村のパブで酔っ払っていた、第一次世界大戦退役軍人のウィルフレッド・エリスと出会い、モーパーゴは「大戦により世界中が困難に陥っている様子」を馬の視点で描こうとしたが、最初はうまくいくかどうか自信がなかった。
モーパーゴは第一次世界大戦で騎兵隊に属していた他の村民のバジェット大尉、軍が村に軍需用の馬を買いに来たことを覚えていたアルバート・ウイークスに出会った。
騎兵隊とともに戦ったバジェット大尉は、モーパーゴに、いかにすべての希望と恐怖を彼の馬に託したかを語った。
エリスとバジェット大尉は、モーパーゴに、大戦における悲惨な状況と人間と動物の生命の喪失を話した。
モーパーゴはこれらを研究した結果、イギリス側だけで100万頭の馬が死んだことがわかった。
イギリスから海外へ送られた100万頭の馬のうち、帰ってきたのはわずか6万2000頭で、残りの馬たちは戦死したかフランスで食肉処理された。大戦はイギリスの男性人口に多大な影響を及ぼした。88万6000人の男性が死に、これは戦争に行ったうちの8人に1人、国全体の人口の2%に当たる。
モーパーゴは上記の3名のおかげで本作を書き上げることができた。
またビリーという吃音症の少年と、馬のヘービーが会話している様子を見て、それが本作に取り入られている。モーパーゴは「あの日の農場で私は少年が話すのをずっと聞いていて、もちろん馬が全てを理解する訳ではないが、私は馬がその子供のためにそこに留まっていることが重要であることを理解していたのだと確信した」と振り返っている。
ジョーイが有刺鉄線に絡まっている挿し絵も、史実を元にしたものであり、モーパーゴの妻クレアが油彩画に描いて残していたものである。
ストーリー
初めはテッド・ナラコットという飲んだくれの男が馬を15ポンドで買うところから始まる。
テッドの息子・アルバートは馬好きであったので「僕が育てる」と言い、馬にジョーイと名付け調教していく。
しかし第一次世界大戦がはじまり、テッドはジョーイをイギリス軍へ売ってしまう。
アルバートはなんとか馬を買ったニコルズ大尉を説得してジョーイを取り戻そうとするが、既に買い取られた後であり、手遅れであった。しかしニコルズ大尉はアルバートの熱意に感服し「男と男の約束だ」とジョーイを大切にすることを誓う。
以降ジョーイは戦地を転々とする運命を辿る。
アルバート
↓
イギリスのニコルズ大尉
↓
ドイツのギュンターとミヒャエル兄弟
↓
フランスのエミリー
↓
ドイツ兵フリードリヒ
↓
イギリス兵コリン&ドイツ兵ペーター
↓
再びアルバート
↓
競売でエミリーの祖父の元へ
↓
三度アルバートの元へ
ざっと書けばこんな感じだが、ぜひ本編を見て感動してほしい。
登場人物
ナラコット家
- アルバート・ナラコット
⋯主人公。馬好き。インディアンの口笛を覚え、それを合図にしてジョーイを呼ぶ。
- ジョーイ(イラスト左)
⋯鹿毛馬。額にダイヤの白斑、脚にスパッツのような柄がある。
- テッド・ナラコット
⋯退役軍人。いまは農家の飲んだくれ親父。酒を飲まないと目を見て話せない。
- ・ナラコット
⋯アルバートの母。夫のテッドを厳しく叱るが、優しい母ちゃん。
イギリス
- ニコルズ大尉
⋯アルバートからジョーイを預かった。絵が上手く、アルバートへの手紙にジョーイをスケッチして贈っていた。ドイツ軍への奇襲作戦で裏をかかれ戦死。
⋯ジョーイと仲の良い、ニコルズ大尉の馬。青鹿毛。ドイツ軍の奇襲でジョーイと共に捕虜になり、のち足を悪くして衰弱死する。
ドイツ
- ギュンター&ミヒャエル
⋯馬の扱いに長けた兄弟。ジョーイとトップソーンを任され、のちに2頭を連れて故郷に帰ろうとした。しかし風車小屋で休んでいたところを拿捕され、敵前逃亡の罪で銃殺刑になる。
- ドイツ兵フリードリヒ
⋯上官からジョーイとトップソーンを任された。彼も馬好きであり、脚を痛めて大砲を引けないトップソーンは荷駄には使えないと上官に打診するも、聞き入れて貰えなかった。原作では戦死する。
フランス
⋯ジャム農家を営む祖父と二人暮らし。骨が弱く、乗馬をすることさえ危ぶまれていた。原作では15歳で亡くなる設定だが、映画版ではその後の動向は不明。
- エミリーの祖父
⋯いつもホラを吹く老人。この人も臆病な性格。エミリーの両親がなにで亡くなったのかを、ひた隠しにしている。
戯曲
当初モーパーゴが「演劇は難しい」としたが、ニック・スタフォード脚本によりロンドンで初上映されると、予想に反して大成功を収める。
さすがに馬をステージに上げることはできないため、三人の人形使いが操る等身大の馬の人形を用いている。
映画
スティーブン・スピルバーグが映画化。原作から脚色が加えられており、一部キャラに救いがあったりする。
本作の騎兵突撃シーンは一見の価値アリ。
関連タグ
- 戦火のウマ娘⋯本作を元ネタとしたウマ娘×ミリタリーコラボタグ。
参考・リンク
- 公式サイト
- ウィキペディア