概要
サーモン海域のとある孤島にて、侵攻してきた深海棲艦達が島に唯一取り残されていた少年と出逢い、保護したことから交流が始まって・・・という話。
序盤こそ作者の得意とするギャグ展開だが、折り返しと共に艦娘との戦いが始まり、話は一気にシリアス方向へと舵を切るので、いつものカペラ氏の作品と同じと思って読んでいると(良い意味で)見事に裏切られることになる。
常ならば人間を襲う側である深海棲艦達が少年を守るために戦い、次々に散っていく姿、特にクライマックスは涙腺崩壊必至。
後に続編(正確には続編の体裁をとったパラレル作品。カペラ氏曰く「外伝か後日談か、捉え方は自由です」とのこと)として「平和の海」が執筆された。
登場人物
サーモン海域泊地
・マヒト/北マヒト
深海棲艦達が上陸した島に取り残されていた少年。「飼う」と言い出した北方棲姫の主張が多数決によって通ったことで彼女達に育てられることになる。
「マヒト」という名は本名ではなく、空母棲姫が「ヒト→人間→間人→まひと」という連想によって名付けたもの。
「家族」達の死後、北提督に引き取られる。月日は流れ、母との思い出と共に提督となった彼はある目的のために幼き日を過ごした島に帰ってくる。
・空母棲姫
深海棲艦サイドの中心人物(編成上も旗艦を務める)にして実質的なメインヒロイン。
深海棲艦達の中でも中心となってマヒトの世話を焼き、後に母性本能・・・を通り越して親バカに目覚める。
最も長くマヒトに接していたためか、人間の死生観を学習するのも一番早かった。
また感性も非常に人間寄りで、無線傍受の際に偶然受信した人間の歌を口ずさんだり、タイムボカンシリーズに出てきそうなデザインに仕上がった泊地の有様にひとりだけついて来れない等の一幕も。
名付け親であることもあって事実上マヒトの「母親」であり、本人もそれを自認。そのため仲間達もマヒトのみならず彼女も共に生き残らせようと奮戦していた。しかし、仲間たちは皆戦死。自身も重傷を負ってしまう。
死期を悟った彼女は、残される「息子」が人間や艦娘を恨むことのないよう、「母親」として最期の約束を交わす……。
・戦艦タ級
艦隊のメンバーにして実質的なナンバー2。
真面目かつ深海棲艦の使命に忠実で、当初はマヒトの保護に最後まで反対していた他、彼の世話に夢中で仕事を放り出す他の艦隊メンバーに頭を痛めていたが、さりげなく人間の子供について調べていたりマヒトから贈られた花輪をこっそり被ってみたりと次第にツンデレ枠の地位を確立していく。
・戦艦レ級
艦隊のメンバー。
(言葉そのままの意味での)肉食系で、当初はマヒトを食べようとしていた(実際一度頭からかじりつき、空母棲姫から火力180のゲンコツを落とされた)。
そうした性格もあり、マヒトとは主に「食」を通じて交流していく。
普段の言動からいわゆる「アホの子」かと思いきや、進軍ルートから艦娘側の作戦意図を読み解くなど参謀としても活躍。また補給に立ち寄った他部隊の深海棲艦達からマヒトを守るための言い訳をひねり出したり、鹵獲物資の中から高速修復材を見つけたことから泊地に大浴場を設置することを思いつくなどアイデアマンな一面も。
・北方棲姫
艦隊のメンバー。
ペットを飼いたいお年頃らしく、彼女がマヒトを「飼う」と言い出したことが彼が保護されるきっかけとなる。ちなみにその前に飼っていたのはマグロの「まぐ郎」。首輪でつながれてしまったために泳ぐことができず窒息死した模様。
マヒトとは年の近い姉弟のような関係を築き、よく一緒に遊んでいた。後にタ級に贈られることになる花輪の作り方をマヒトに教えたのも彼女と思われる。
また彼女は人の死に対する価値観の変化が明確に描かれており、漂着したコンテナに残されていた腐乱死体を当初は「死ンダラ飼エナイカラツマラナイ」と一顧だにしなかったのが後に墓を造ることをレ級に提案。マヒトを守るために出撃した際には「自分達は死んだらどこに還るのか」と考えるまでに至っていた。
・空母ヲ級
艦隊のメンバー。
人語を話すことができず、「ヲッ」の一言にたくさんの意味を込めてくる。
「写真を撮られると魂を吸い取られる」という前時代的な迷信を信じていたかと思えばエヴァネタを知っていたりとその感性は艦隊の中でも一際独特。
迷信を克服しみんなで撮った写真を気に入り、哨戒任務の先でもその写真に夢中になっていたが、それが仇となって――
艦隊の一番の下っ端。
体格が体格なためマヒトとの絡みは少ないが、彼を雨から守ったり集合写真にも参加するなど、他の面々共々マヒトの世話に加わっていた。エピローグでのマヒトの回想によれば彼を背中に乗せて島を闊歩していた模様。
その他の深海棲艦
・港湾棲姫
北方棲姫の姉。
同方面に展開している深海棲艦達の本隊に所属しており、空母棲姫らの隊に補給線維持を目的とした待機を指示し・・・ついでに北方棲姫を心配する追伸を本文よりも長く垂れ流した。
空母棲姫曰く「巨乳棲姫」(しかもタ級にもこの呼び方で通じた)。
補給のために立ち寄る形で登場。
マヒトの存在に気づいて一触即発になるものの、レ級がとっさにひねり出した「戦艦ス級の幼体」という嘘にだまされ本気で震え上がっていた。
鎮守府サイド
・北提督
サーモン海域に建設された深海棲艦の補給泊地(空母棲姫らの泊地)に侵攻してきた艦隊の提督。龍田を秘書艦にしている。
カペラ氏の他の艦これ漫画に登場する北提督にそっくりだがこちらはシリアス一辺倒。カペラ氏によればパラレル的な存在らしく、曰く「変態じゃないよ。仮に変態だとしても、変態と言う名の提督だよ」とのこと。