松本美知恵
まつもとみちえ
北宇治高校の女性教師で、担当科目は音楽。1年3組の担任教師を受け持っているほか、吹奏楽部の副顧問も担当している。
年齢は43歳(原作公式ガイドブック、230ページ)。常に規律を重んじる毅然(きぜん)とした性格の持ち主であり、その厳しい言動によって生徒たちからは「軍曹先生」という二つ名のもとに恐れられている。その一方で、教師として生徒一人ひとりの行く末を見守ろうとする優しさもしっかりと備えており、そのベテラン教師ならではの人間味によって黄前久美子や加藤葉月、川島緑輝をはじめとする多くの生徒たちから高い人気と信頼を集めている。
また、吹奏楽部の副顧問も担当している美知恵は、自身よりもずっと若い正顧問の滝昇による指導を陰日向に支えたり、彼の手が回らないような部内の規律などを率先して取り仕切っている。そのような正顧問と部員たちのあいだを取り持つ彼女の「叩き上げの下士官」のような立ち位置は、北宇治高校吹奏楽部が万全の構えで活動するためにはなくてはならないものとなっている。
容姿
相対する者をすくませる鋭い眼光と威勢のある声色が印象的な、年季の入った険しい面持ちの女性教師(原作1巻、15ページ、第二楽章前編、22ページ)。ところどころに白髪が交じった黒髪や、皺(しわ)の刻まれた骨ばった手などが、彼女が確かな経験を積み重ねてきたベテラン教師であることを物語っている。(原作1巻、249ページ、251ページ、最終楽章前編、21ページ、340ページ)
生徒や部員たちの前に立つ際には徹底した無表情と迫力ある語り口調を貫いているほか、時には指導者という立場をより明確にするために両腕を組んで仁王立ちするような一幕も見せている。(第二楽章前編、219ページ、最終楽章前編、20ページ、323ページ)
性格
生徒を導く教師として自ら率先して規範を示そうとする、毅然とした態度の持ち主。風紀や規律を何よりも重んじるその気質によって、生徒たちからは「軍曹先生」の二つ名のもとに恐れられている(原作1巻、16ページ、33ページ、80ページ、原作3巻、18ページ)。とりわけ、サンライズフェスティバルをはじめとする大きな大会の演奏前には、部員たちの浮かれた気分を正したり緊張による萎縮(いしゅく)を吹き飛ばすために、彼らを前にして「気合いを入れろ! 声が小さい!」「お前ら気持ちで負けたら承知しないからな!」などといった激励を行なうことを常としている。(原作1巻、132ページ、第二楽章前編、220ページ、TVアニメ版1期5話、1期13話)
しかしながら、彼女のそれらの厳しい態度の裏には、生徒一人ひとりの成長や行く末を見守る優しさがしっかりと存在しており、それぞれの生徒ごとの特質を見極めながら親身になって相談対応やアドバイスに乗り出している。そして、この厳しさと優しさを切り替えることができる教師としての人柄から、彼女は生徒や部員たちから恐れられながらも高い人気を集めるようになっている。(原作1巻、249〜251ページ、原作3巻、362ページ、第二楽章前編、15〜16ページ、最終楽章後編、52〜53ページ、TVアニメ版3期7話)
加えて、美知恵は年齢を重ねたことによって涙もろさが如実に表れ出るようになっており、吹奏楽コンクールの結果発表や卒業式といった部員たちの節目に際して、ティッシュを片手に号泣する姿がしばしば目撃されている。(原作2巻、302ページ、原作3巻、345ページ、原作公式ガイドブック、136ページ、最終楽章後編、15ページ)
余談だが、TVシリーズで美知恵の声を担当している久川綾は、ベテラン教師として正顧問の滝を支える美知恵の姿について「なんていい先生なんだ、この人は!」と感心するとともに、「私はこんなにできた人ではないです。正反対(汗)」などと自身のことをへりくだっている。(『響け!ユーフォニアム2 コンプリートブック』、82ページ)
「安定した職に就きたい」という思いがきっかけになって教師を志した若き日の美知恵は、実際に北宇治高校の音楽教師として働くなかで理想と現実との違いを実感したり、外からでは見えなかった新しいやりがいを見いだしている。彼女はそれらの経験によって「人生なんてものは、設計図どおりにはいかないものだ」や「机上で考えるよりも実際に足を踏み出したほうが得るものが多いこともある」というような教訓を得ており、生徒との面談に際してアドバイスの一環として自身のエピソードを紹介している。(最終楽章前編、340~341ページ、TVアニメ版3期5話)
教師としての美知恵は、自身の担当科目である音楽を教えるかたわらクラスの担任も受け持っており、年度ごとに若干の生徒の入れ替えはあるものの、同じ代の生徒たちを3年間続けて見守っている(原作1巻、15ページ、第二楽章前編、22ページ、39ページ、最終楽章前編、21ページ)。彼女はそのなかで、学年の進級に伴って生徒たちに「こうあるべき」という姿を示したり、模擬試験や面談を通して生徒一人ひとりに適した助言を行なっており、結果として北宇治高校の多くの生徒たちから畏敬(いけい)の念とともに高い信頼を寄せられるようになっている。(最終楽章前編、25ページ、344ページ、夏紀編、11ページ、299ページ)
(なお、美知恵が久美子たちの代の3年目の担任を受け持った際には、偶然にも同クラスのなかに低音パートの3人組のほか数人の吹奏楽部部員が集まっていたことから、久美子たち低音パートの3人から「美知恵は職権をもって顔見知りの吹奏楽部部員を集めたのではないか」というような根拠のない推測を抱かれている。※最終楽章前編、22~23ページ、TVアニメ版3期1話)
また、美知恵は教師としての仕事と並行して吹奏楽部の顧問も任せられており、自身の家庭の事情もあることから一貫して副顧問の座に就き続けている(原作1巻、51ページ、原作2巻、147ページ、夏紀編、56ページ)。彼女の北宇治高校吹奏楽部の副顧問としての籍は長く、これまでに滝昇の父親である滝透(たき とおる)や、その後任である梨香子といったさまざまな正顧問たちと関わっている。滝透が在籍していたころには彼の手による同部の黄金時代を目にしたほか、「音楽は嘘をつけない。いい音はいい音と言わざるを得ない」というような彼からの影響も少なからず受けている(TVアニメ版1期10話)。滝透が北宇治高校を去り、その後任として梨香子が吹奏楽部の正顧問に就くようになると、美知恵は彼女の「みんなで楽しく吹ければそれでいい」という運営方針を快く思わなかったり、自身が口出しすることで彼女が萎縮してしまうことから、副顧問として吹奏楽部に介入することはほとんどなかった。(原作2巻、215ページ、夏紀編、56〜57ページ)
梨香子が産休に入り、彼女の後任として新たに滝昇が北宇治高校に赴任(ふにん)してくると、美知恵は彼に吹奏楽部の正顧問の職を任せ、副顧問という立場から部活の運営を支えることになる。正顧問の滝が部員たちへの演奏指導に取り組むなか、副顧問である美知恵は部内の規律や士気を取り仕切ったり、部員たちの移動のための貸し切りバスを手配するなど、吹奏楽部が円滑に活動できるようにするための管理面に徹している(原作1巻、300ページ、最終楽章前編、104ページ、139ページ)。吹奏楽部がコンクールシーズンに入ってからは、A編成部門のメンバーから外れた部員たちをまとめて練習の指導にあたり、彼らの腕前を向上させているほか、コンクールの本番当日にはパーカッション(打楽器)の準備をするための別働隊を指揮するといったさまざまな仕事をこなしている。(原作2巻、63ページ、303ページ、第二楽章後編、309ページ、最終楽章後編、252ページ)
滝昇
北宇治高校吹奏楽部の正顧問。
美知恵は滝から「松本先生」と呼ばれている。
年齢については美知恵のほうが彼よりも上であるものの、美知恵自身の家庭の事情により、正顧問の座については彼に任せる形になっている(原作1巻、51ページ)。また、常に毅然とした態度をとっている美知恵と音楽以外の面では抜けたところがある滝の組み合わせは、部員たちから「相変わらず正反対だね、この二人」などと見られるものとなっている。(TVアニメ版1期13話)
美知恵は滝の卓越した指導によって部の演奏がめきめきと向上するさまを目にしたことで、彼に対して驚きの混じった称賛や指導者としての信頼を寄せるようになっている(TVアニメ版2期1話)。その一方で、美知恵は滝が音楽以外の人間づきあいの面ではまだまだ青いこともしっかりと認識しており、コンクールメンバー選定のためのオーディションによって生じた部内の不和を悩む彼のために、かつての正顧問であった滝透が口にしていた言葉をヒント代わりに告げたり、3年生部員の引退による部の演奏力の減退を「毎年毎年最初から始められる。それは素晴らしいことだと思いますよ?」と肯定的に捉えるように諭(さと)すといった、ベテラン教師ならではのアプローチを発揮することで彼を支えている。(TVアニメ版1期10話、2期13話)
黄前久美子
美知恵が担当するクラスに所属している生徒。
美知恵は久美子のことを「黄前」と呼んでおり、対する久美子は「美知恵先生」と呼んでいる。
美知恵は久美子の担任として日々のクラスでの学生生活のほか、吹奏楽部の副顧問としても彼女の活動を目にしており、文武双方の面において彼女の取り組みを評価している。学業の面では、美知恵は久美子の数学の苦手さを気にかけており、彼女の部活での先輩である田中あすかから勉強を教えてもらったことに期待を寄せたり、将来の進路を選ぶにあたって数学の影響が少ないものを薦めたりしている(原作1巻、250ページ、原作3巻、271〜272ページ、最終楽章前編、342〜343ページ)。また、美知恵はしばしば吹奏楽部の副顧問としても久美子に助言を与えており、吹奏楽コンクールに向けた練習のようなギスギスとした雰囲気のなかに身を置いている彼女のために「部活は余計なことは考えず、コンクールに向けて音楽を楽しめ」といった励ましを贈っている。(TVアニメ版1期10話)
(葉月:先生、行きたい大学が決まってない場合はどうしたらいいですか?)
────そうだな。まだ一年の秋だから、そういう生徒も多いだろう。その場合はわかる範囲で構わない。
国立大学、私立大学、専門学校、就職……選べる道はいくらでもあるが、まずは自分自身が何を目指すかを書いておけ。
大事なのは、将来どんな人間になりたいか、だ。
(原作3巻、209ページ)
────この二年三組の担任となった松本美知恵だ。今日から一年間、責任を持ってお前らの指導を行う。
入学したばかりの一年生と違い学校生活にも慣れ、受験前の三年生と違い進路に対する焦りも少ない。二年生というのはもっとも気が緩みやすい時期だ。
時間は膨大にあるように思えるが、時がたつのは意外に早い。軽率な判断で将来を棒に振らぬよう、これからどう生きるのかをしっかりと自分の頭で考えろ。
悔いのない一年を過ごせ。いいな。
(第二楽章前編、22ページ)
────高校生活、最後の一年だ。これからお前たちは大きな選択を迫られるだろう。
自分が何者か。そして、何者でありたいのか。他者の声も大事だが、まずは自分の本音にきちんと向き合え。
時間は誰にとっても平等で、だからこそ恐ろしい。現実から逃げようが、現実に向き合おうが、どのように生きても一年という時間は過ぎる。私たち教師はお前たちのサポートを全力で行うつもりだが、どう生きるかを決めるのはお前たち自身だ。
悔いのない一年を過ごせ。いいな。
(最終楽章前編、25ページ、TVアニメ版3期1話)
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