板前
いたまえ
料理人がまな板を使い、料理する事に由来し、料理人、主に和食の料理人を指す言葉。「板さん」と呼ばれることもある。現代では、日本料理店やレストラン、割烹、旅館(ホテル)、居酒屋など、和食を専門にする店で調理作業に従事する人と定義される。
和食の業界では調理スペース(調理場、厨房やカウンターなど)は「板場」と呼ばれ、客前のカウンター(晒し場)と調理場(仕込み場)が完全に分かれている場合はカウンターを「板場」と呼ぶ。このため、一般的な板前は「板場で作業をする料理人」といえる。
一つの店に修行を兼ねて勤務し、一定のレベルに到達したら独立、という形がよく知られているが、修行を経て「フリーの板前」として飲食店などに出向いて調理したり、和食以外の料理を学ぶため別のレストランに移ったりと、さまざまな働き方がある。
なお、調理師免許を取得していなくても板前になること自体は可能である。(家族の店を継ぎ、学校に通わず修行した場合など)ただし、正規雇用の条件に調理師免許の所持および取得見込みが挙げられている店が多く、働きながら免許取得する人も少なくない。
西洋料理におけるコック・シェフに相当する職業である。また、シェフ制度のいわゆる「階級制」と共通する職分が存在し、厳しい修行に耐えた実力者が段階的に調理に関わっていくという形が現在でも取られている。
親方(親父、板長、花板などとも呼ばれる)を筆頭に、調理場や調理過程に応じて細かく仕事が分かれている。なお、店舗や地域によって呼び名に多少差異があるため、以下に紹介するのは一般的な呼び方と分類である。
- 親方…板場の総責任者。ホテルなどの総料理長に相当。現場の総指揮を執り、カウンターで客の相手を行う。個人経営の店では経営者がこのように呼ばれることもある。
- 二番…板場の副責任者。親方が経営に専念している場合、こちらが総指揮を執ることもある。カウンターで接客する。
- 煮方…煮物・鍋物担当。ダシ取りとタレ作りも担当し、店の味を決める大切な役割を担っている。
- 椀方…椀物担当。椀物(汁物)は料理の初めに出されることが多く、料理の印象を左右する重要な存在である。
- 焼方…焼き物担当。焼き魚などを手がける。
- 向板…包丁捌きによる切り付け担当。晒し場の「向こう側」の裏方包丁という意味。
- 揚げ場…揚げ物担当。天ぷらなどを手がける。
- 蒸し場…蒸し料理を担当する。
- 八寸場…八寸、先付け(前菜)の盛り付け担当。
- 洗い方…魚介類などの下ごしらえ担当。
- 追い回し…見習い。ありとあらゆる雑用を行う。
追い回しからさまざまな場を経て、最終的には板場に辿り着くことが板前修行の目標とされる。
なお、寿司職人は和食の中でも「寿司」に特化した料理人であるため、広義の「板前」に含まれる。寿司職人も一人前になるまでに長い修行期間があり、普通の板前と同様に仕事が分かれている。
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