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第27回ドバイワールドカップ

いまいっとうせいのかがやき

またしても、中東を侍ジャパンが席巻した。勝負とは「負けないため」「負かせるため」ではなく「勝つため」の戦いをするからこそ勝利という"星"を掴めるのだ。
目次 [非表示]

栄光まで残り400!先頭はベンドゥーグ、並びかけて1番のイギリス6歳アルジールス、鞍上ドイル。

前は3頭外国勢。後ろをチラッと見たカントリーグラマーだ!パンサラッサは苦しい後退していく!

外からさあウシュバテソーロやってくる!川田将雅、ウシュバテソーロ現在3番手!2番手に上がる!

アルジールスをとらえるか!日本のリーディングジョッキー川田の鞭が飛ぶ!

先頭、先頭ウシュバテソーロだ!外からは6番のエンブレムロード突っ込んでくるが、

ウシュバテソーロ!今一等星の輝き!日本馬やりました!

12年ぶり史上2頭目の快挙なる!日本馬6歳、ウシュバテソーロやりました!


概要編集

2023年ドバイワールドカップデーのメインたるドバイワールドカップ

この年は日本からはサウジからの転戦となるパンサラッサジオグリフジュンライトボルトカフェファラオクラウンプライドと、川崎記念1・2着馬ウシュバテソーロテーオーケインズ、久々ダート戦のヴェラアズールの合計8頭が参戦。全15頭中半数以上が日本馬で占められる異例の事態となった。

他国は前年覇者カントリーグラマーを中心に前年サウジC勝ち馬エンブレムロード、イギリスのアルジールスなど5か国の15頭で争われた。


出馬表編集

性齢騎手調教師
113アルジールス(IRE)セ6J.ドイル(GB)(GB)
27ベンドゥーグ(USA)牡4C.スミヨン(FR)(UAE)
310カフェファラオ(USA)牡6J.モレイラ(BRZ)堀宣行(JPN)
414カントリーグラマー(USA)牡6L.デットーリ(GB)B.バファート(USA)
512クラウンプライド(JPN)牡4D.レーン(AUS)新谷功一(JPN)
62エンブレムロード(USA)牡5A.アル・ファランディ(KSA)
79ジオグリフ(JPN)牡4C.ルメール(JPN)木村哲也(JPN)
83ジュンライトボルト(JPN)牡6R.ムーア(IRE)友道康夫(JPN)
915パンサラッサ(JPN)牡6吉田豊(JPN)矢作芳人(JPN)
101リモース(IRE)セ6T.オシェアB.シーマー(IRE)
114サルートザソルジャー(GER)セ8A.デフリースF.ナス(BHR)
1211スーパーコリント(ARG)牡4H.ベリオスA.サンチェス(USA)
136テーオーケインズ(JPN)牡6O.マーフィー(GB)高柳大輔(JPN)
148ウシュバテソーロ(JPN)牡6川田将雅(JPN)高木登(JPN)
155ヴェラアズール(JPN)牡6C.デムーロ(FR)渡辺薫彦(JPN)

レース前の状況編集


国内オッズ

海外オッズ


1番人気はウィリアムヒル・JRAともにカントリーグラマー。前年覇者の実績、そしてサウジで厳しい展開になりながらもパンサラッサにあと一歩まで食らいついた事が評価されたものと思われる。

2番人気は日本国内と海外で分かれており、国内ではパンサラッサ、海外ではアルジールスが2番人気に。前者はサウジカップ勝利の実績と世界賞金王の座を賭けた大一番への期待、後者は年明け以降メイダン競技場現地の重賞を連勝している実績からの票が集まったものと思われる。


展開編集

大外枠から出たパンサラッサに対しリモースが競りかけ先頭争いで並走する形に。他馬も二頭を追いかけてペースを上げたため最初の1000mラップ59.0秒という芝のレースばりのハイペースに。

出足が遅れた上に道中で先頭を奪われたため取り返そうと無理をしたパンサラッサは勿論、ペースを引っ張ったリモースやそれを追いかけた先団の多くが3~4コーナーで失速する中でアルジールスとベントゥーグが生き残って先頭争いを展開。中団から後ろで構えたカントリーグラマーらが脚を伸ばそうとするが、道中最後方待機からコーナーを大外からまくったウシュバテソーロが一気に突き抜ける。

スタートから出遅れたかのようにポツンと最後方に控え、前半はカメラにも一頭だけ映らなかったウシュバテソーロ。しかしトラッキングによる順位をみると最終コーナー半ばから一気に順位を上げ、コーナーを抜けたころには4位にまで上がって来るというワープしたのかと言わんばかりの追い上げである。

最終直線ではテーオーケインズがウシュバに並ばれたとみるやスパートを掛け直して併せ馬を披露するが残り200m地点でウシュバにちぎられる。そのままウシュバテソーロがベントゥーグ、そして前残りで先頭にいたアルジールスをあっという間に差し切り、さらには余裕を持って突き放し1着でゴール板を駆け抜けた。


「ウシュバテソーロ、今一等星の輝き!!」

(フジテレビ 倉田大誠アナウンサーによる実況)


一方でテーオーケインズはウシュバにちぎられたもののベントゥーグを差し切るが、そこで脚が止まりさらに後方から猛追をかけてきたエンブレムロードに抜かれ4着。

エンブレムロードはアルジールスにあと一歩というところまで食らいつくが、アルジールスはギリギリ2着に粘り込んだ。


着順タイム・着差
1ウシュバテソーロ2:03:25
2アルジールス2+3/4
3エンブレムロード短アタマ
4テーオーケインズ3/4
5クラウンプライド4

結果編集

全体の流れをみるとリモースを筆頭にパンサラッサへの警戒が目立ち、そのパンサラッサは大外枠に加えて課題の完一歩目の遅さと言う弱点が露呈して自分の走りを徹底的に潰される形となった。

その一方で無理に速すぎる流れに参加せず後方に待機していたウシュバテソーロはしっかり脚を溜めてスパートを掛けた事で勝利を挙げた。

逃げ馬の極めて少ない欧州においては、日本と違い勝利を捨てる事前提で同陣営の有力馬を勝たせるための走りを行う「ラビット」と呼ばれる馬が逃げてペースを握り、有力馬にとって理想的な流れを作る事があり得る。だが日本では逃げ馬に無理についていかずに足を溜める展開は珍しくなく、また公にラビットが認められていないため最初から勝つ気が無い走りにはペナルティが課される事もある。

パンサラッサ、ウシュバテソーロ、テーオーケインズの3頭はいずれも20世代だが、こういった国内のレース事情やそれぞれ別陣営であることからチームプレーなど意識すらしていなかったにもかかわらず「パンサラッサが注意をひきつけつつペースを作り、後方からウシュバテソーロが、中団からテーオーケインズが狙う」というまるでチームプレーが成立したかのような展開は非常に興味深い。


ただし、ラビットは基本的に欧州で採られる戦術であり、ダートの本場であるアメリカではダートレースは後方の不利が大きいため(これほどのハイペースは珍しいにせよ)ハイペースからの前残りサバイバル展開が普通とされる。

前走サウジカップでは中団で競馬をしていたリモースが敢えてパンサラッサに競りかけ中盤には先頭に立つという消耗戦を仕掛けたのは同じB・シーマー厩舎所属であるベンドゥーグの勝ちを狙ったラビットになった可能性もあり得るが、それぞれ馬主が違うことや双方で海外オッズ最下位人気を争っていたことからすれば、あくまでリモースは勝つために前走の勝ち馬であるパンサラッサを徹底マークしたと見る方が自然ではある。

結果としてはベンドゥーグは6着、リモースはさらに遅れて9着と着外での敗北であり、その後ろ10着に沈んだパンサラッサ潰せたがウシュバテソーロら他の馬には完敗、という形になった。


またそもそもウシュバテソーロは前年まで芝の条件馬だったにもかかわらずダート転向後毎回上がり最速を叩き出して快進撃を続け、東京大賞典で帝王賞馬メイショウハリオを、川崎記念でテーオーケインズを破りG1(級)2連勝で一気に国内ダート中距離最強に君臨した強豪であり、海外オッズではカントリーグラマーとアルジールスに次いで日本勢トップとなる3番人気であった。

加えて最後方からの追い込みでこのレースを勝利した例といえばあのテイエムオペラオーを抜いて世界最高賞金記録(当時)を塗り替えたアメリカの名馬アロゲートくらいのもので、並の馬ではそうそうお目にかかることはできないものであった。

実績・評価・パフォーマンスいずれも十分勝てる実力の馬のものであったことは間違いなく、この勝利をパンサラッサのおかげのように語るのは、ウシュバテソーロの名誉を傷つけることになるので注意が必要である。


1番人気カントリーグラマーは伸びきれず7着大敗、3着は実績馬ながら人気落ちしていたエンブレムロードが入り、3連単配当26万6850円の波乱含み決着となった。

ウシュバテソーロの勝利により、ドバイワールドカップはヴィクトワールピサ以来の12年ぶり、それもアメリカ式の赤土ダート開催としては初の日本馬勝利となった(ヴィクトワールピサの時はAW)。また管理する高木登調教師(美浦)は海外重賞初勝利が超ビッグタイトルとなった。

騎乗した川田将雅騎手は21年・22年とチュウワウィザードで複勝圏内に好走。テン乗りながらコースや展開を把握した騎乗で日本人騎手初の同レース勝ちとなった。同騎手は21年にラヴズオンリーユーBCフィリー&メアターフ香港カップも制しており、日本のトップジョッキーの技を世界に見せつける格好となった。

オルフェーヴル産駒はマルシュロレーヌBCディスタフに続く海外G1勝ちとなった。


余談編集

  • ウシュバテソーロは前走が川崎記念だが、この川崎記念勝利後にドバイワールドカップへ向かうローテーションはかつて川崎記念勝利後このレースに出走し、レース中の事故で予後不良となったホクトベガが行ったものである。来年から川崎記念は開催月が変更となるためこのローテーションが不可能になる。偶然にもウシュバテソーロの勝利はホクトベガの雪辱を果たす最後のチャンスで偉業を達成する形となった。ゴール時の実況の「一等星の輝き」もホクトベガを意識したものであろう。奇しくもこの日はホクトベガの誕生日でもあった。
  • 川田騎手が勝利インタビューに応じているとウシュバテソーロが暴れて振り落とそうとした。これに対しグリーンチャンネルの中継に出演していた合田直弘氏は「オルフェーヴル(産駒)だなあ」と苦笑混じりのコメントを残している。
  • パンサラッサ陣営の矢作調教師はリモースがパンサラッサ潰しを狙った立ち回りについて「考えられたことではあるけれども、厳しい流れとなりました。それも競馬ですから仕方がない」と現状のパンサラッサの状況だからこそあり得る事とコメントを残している。しかし「クレイジーな競り方をしてきたよね(出典:yahooニュース)」と、怒りと歯がゆさを隠しきれない様子も見せている。

動画編集


日本語実況 グリーンCH版 実況:大関隼


フジテレビ系列版 実況:倉田大誠


現地実況 実況:L.コルムス(USA)



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