解雇された暗黒兵士(30代)のスローなセカンドライフ
かいこされたあんこくへいしさんじゅうだいのすろーなせかんどらいふ
2018年11月から2020年7月にかけて、オンライン小説投稿サイト『小説家になろう』にて連載され、web版は完結済。作者は岡沢六十四氏。
後にKラノベブックスから書籍化。既刊3巻。
イラストはsage・ジョー氏が担当。
書籍版はweb版の途中で止まっており(一応、キリの良いところまではいっているが)、web小説の書籍版は『商業的事情』があり、続巻の情報がないため事実上打ち切りとなっている。
魔王軍に所属する主人公の暗黒兵士が魔王軍から解雇され、失意のうちに偶然着いた村でスローライフ(?)を満喫するコミカルあり、シリアスありなファンタジー物語。
コミカライズ版
月刊ヤングマガジン及びニコニコ漫画で漫画版が連載中。既刊14巻。
るれくちぇ氏が作画を担当。
漫画版は原作の設定を踏襲しつつも、コメディ要素の強化が図られている(一方で、一部のレギュラー陣はヒロインの怪力化や主人公の舎弟・親友キャラのメス堕ち、もう一度言う、主人公の舎弟(♂)・親友キャラ(♂)のメス堕ち、といった具合に、漫画の表現ならではの強烈な個性が付加された)。
また、一部キャラクターの苛烈な性格や敵役の結末などに改変が加えられ、原作web版や書籍版でどうしようもない悪役として描かれたキャラの大半に何らかの救いが与えられている(それほど救いようのない性格として描かれない、最終的に和解して生存するなど実質名前を借りただけの別人と化した人物が多数存在している。そしてメス堕ちしている。)。
こちらは上記のようなアレンジを加えながら、書籍版3巻終了以降の話も描いている。
魔王軍の四天王補佐である暗黒兵士・ダリエルは、新しい四天王達に魔族なのに魔法が使えないという理由で突然魔王軍を解雇される。失意のまま当てもなく彷徨っていた時、魔物に襲われていたマリーカを助ける。そのままマリーカの住むラクス村にたどり着いたダリエルは、そこで自分が魔族ではなく、本当は人間であったことを知る。
冒険者となったダリエルは平穏な暮らしを求めて村に腰を落ち着け、トラブルがあったりすぐ解決したりするスローライフを送っていく。
主要人物はラクス村を参照。
魔王軍
※この物語の魔族は人間族と外見や身体能力に違いはなく、唯一の違いは人間は『オーラ』を、魔族は『魔法』が使えることのみである。
先代四天王であり、『業火』の二つ名を持つ魔族の老将。
歴代最強と謳われた四天王の筆頭であり、最大の功績を残した魔族の英雄。
新四天王のリーダー格で、グランバーザの息子。『絢火』の二つ名を持つ。
ダリエルを解雇処分に追い込んだ張本人。
新四天王の一人で『華風』の二つ名を持つ。派手で露出度の高い服(書籍版イラストでは水着同然)を着た女性魔族。
新四天王の一人で『沃地』の二つ名を持つ。地属性魔法を自在に使いこなし才媛と讃えられる女性魔族。
新四天王の一人で『濁水』の二つ名を持つ。ねちっこい嫌味たらしい口調で話す男性魔族。
- リゼート(CV:立花慎之介)
魔王軍の暗黒魔導師。ダリエルと同期。モノクルを掛けている。
ダリエルとは仲が良く、魔法が使えなくとも彼の組織運営に関する実力を認めている。
反乱を起こしたミスリル鉱山のノッカー達の説得に訪れた時にダリエルと再会。彼の提案でミスリルを割高ではあるが流通してもらう取引をする(人間側に対しては、「最低限の供給が保たれれば、魔族が積極的に攻める理由はなくなる」とダリエルが説得した)。
その功績で魔王直々に特務官(四天王が本来遂行すべき職務を代行する役職。四天王と同等の地位)に任命される。意外と子供好きで、ダリエルが結婚したことを知り、自分が未だ未婚であることに焦りを抱いている(魔王が任命する特務官は魔王にとって無能と判断された四天王陣営と同等の権力を持ち対立する仕組みになっているので四天王陣営と敵対してまでその彼と結婚しようとする命知らずな魔王軍派閥がいない)。
漫画版では、ダリエルが魔王軍から去る前に会っている(1話目で登場)。再会後はよくダリエルの元に来てはグランを可愛がっている。そして、ガシタと同じく時折ダリエルと怪しい雰囲気になることも…。グランに懐かれていることで、グランバーザとアランツィルに激しく嫉妬されており、二人に取り調べ同然にグランの好みを聞き出されて憔悴していた。
- ノッカー
ミスリル鉱山で鉱石採掘を行っている亜人種たちで、外見は全員同じ見た目の小人。個々の名前は不明(漫画版では「ザザ(CV:宮島えみ)」「アドニス(CV:鳥越まあや)」など個人名が出ている)。
光が苦手で洞窟に好んで住まう習性から、魔族主導で大量にミスリル鉱山に送られ、ミスリルの採掘作業を勤しんでいる。当時、ここを管理していたダリエルのことを非常に慕っている(漫画版1巻のおまけ漫画によると、就任して間がないのに自分たちを顔のわずかな違いでダリエルが見分けられたことがきっかけの模様)。
四天王交代後、バシュバーザに突然ミスリルの徴収量が四倍となったことで酷使され、警備兵も節約の名目で引き上げたことで夜逃げする者が出る始末。
偵察に訪れたダリエルに現状の酷さを訴えて泣き付き、その後に現れた担当官の横暴さに耐えかねてついに反乱を起こし、ダリエルの手を借りて担当官達を追い出す。
その後はダリエルに従い(というよりも、ダリエル以外に従おうとしない)、ミスリル鉱山ごと人間達の管理下になることに同意し、引き続き鉱山で働いている。
あくまで亜人であり魔族ではないことに加えて、ベストフレッドからも鉱山の運用には彼らが必要だと重用されている。ベストフレッドは数年をかけてノッカー達と仲良くなった。
- マサリ
ゼビアンテスお抱えの錬金術師の女性魔族。
- セルメト
ダリエルが四天王補佐時代に人間領に放った暗黒密偵の一人である女性魔族で、彼らの元締めでもある。人間領内に潜伏する暗黒密偵全員の居場所を掌握し、入手した情報を魔王軍へ送るという仕事をしている。
元々、セルメトの魔力はかなり低く、魔王軍では雑兵以下の扱いを受けており、退役も迫られていた。当時、魔力が無い自分以下のダリエルを見下していたが、魔王に課題を出されたダルエルは機能停止状態だった諜報機関を復活させ、暗黒密偵にセルメトら魔力がかなり低い者達を抜擢。魔力が低いことで人間に気付かれにくいため、容易に人間領に潜入して諜報活動を行え、多くの重要情報を入手したことで魔王軍に大いに貢献する。
セルメト達は自分達に価値を見出してくれたダリエルを深く心酔しており、セルメトに至っては好意を抱いている。
ダリエルの追放後、組織がバシュバーザによって解散させられてしまったのと自分達を使う能力が無いので現四天王を非常に嫌っている。特にゼビアンテスを毛嫌いしており、彼女のいる場所で大声で悪口を言っている(本国に愛想を尽かしているので無礼討ちの類を恐れていない)。だが、自分の批判を真摯に受け止めて謝罪したドロイエには少し態度を軟化させている。
漫画版ではダリエルに想いを寄せていたらしく、マリーカと張り合うが彼女の圧倒的な主婦力(?)に完敗。素直に負けを認めた。
先代四天王の一人で、『泥水』の二つ名を持つ。故人。
魔王軍及び魔族の頂点。
勇者
人族組織センターギルドに選ばれた魔王を討伐する為の存在。
先代の勇者でグランバーザのライバル。
現在の勇者をしている少女。
勇者レーディのパーティメンバー。
サトメはレーディより年下の少女で、天性のガード(守)適性を持つパーティの壁役。レーディとは幼い頃からの古馴染み。年相応の天真爛漫な性格で、パーティのムードメーカー的存在。書き下ろし番外編では、敵であるゼビアンテスと仲良くなってしまったレーディに頭を抱えており、苦労人の気もある。
セッシャはレーディ達より一世代ほど年上の痩身の男性で、スラッシュ(斬)とスティング(突)のオーラ特性に秀でたA級冒険者の槍使い。実直な性格で、古風な話し方をする。
センターギルドに新たに選抜された『剣』の勇者。
- ゼスター
センターギルドに新たに選抜された『鎚』の勇者。アランツィルに心酔している。
- アルタミル
センターギルドに新たに選抜された『弓』の勇者。レーディと仲が良く、彼女と対等な存在でありたいという想いで勇者になった。同じ弓使いとしてガシタに惚れ込んでラクス村に移住し、彼の妻となる。
- エステリカ
先々代の勇者で現在は故人。
アランツィルの妻であり、ダリエルの母親でもある。
グランバーザが四天王補佐だった時、当時の四天王を倒す程の実力者だったが、グランバーザと戦って敗北している(この時の功績でグランバーザは四天王に昇進している)。その後、敗北した勇者は即座に引退という慣習で勇者を引退するが、歴史に名前を遺したいという功名心から自身に想いを寄せるアランツィルに勇者となる事を要求、勇者となった彼と結婚している。上記の様に不純な動機でアランツィルと結婚し、次代の勇者とする目的でダリエルを産んだが、彼らへの愛情は本物である。だが、上記の過去に後ろめたさを感じており、とある経緯でダリエルと出会った際、彼に母親である事を告げなかった。
冒険者・他
- ベストフレッド(CV:篠原孝太郎)
ミスリル鉱山の監督官として派遣されたギルド幹部。
鉱山の運営にノッカーたちと協力したり、ダリエルからの魔族であるリゼートとの取引の提案を受け入れるなど、柔軟な思考の持ち主。元A級冒険者でヒット(打)とガード(守)のオーラ特性に秀でた拳闘士でもある。武器はナックルガードを兼ねた小盾。
ダリエルに全幅の信頼を寄せている。
- フィットビタン(CV:大泊貴揮)
キャンベルの街の冒険者ギルドに所属するB級冒険者。ランクで人を判断している。
キャンベルの街がミスリル鉱山の利益を得るために街から一党を連れてラクス村に派遣される。当初はD級のダリエルを見下していたが、自分達が取り逃がした魔物(ガシタを襲った魔物)をダリエルが討伐したのを知って敵愾心を抱く。
当初は鉱山の警備が任務だったが、ダリエルとリゼートの交渉に当事者でもないのに口を出そうとしてベストフレッドの怒りを買った。漫画版では口を出すどころか、魔族と思われるリゼートに斬り掛かったが、ダリエルに防がれる。
そしたら今度は勝手に鍛冶師達を連れて来て強引にラクス村の鍛冶場に居座り、ダリエルにセンターギルドに歯向かう様に唆すが断られたため、ダリエルに決闘を挑む。鍛冶師達に作らせたミスリルの大剣で挑むが、ダリエルのヘルメス刀に破壊されて敗北。そのまま、村を追い出される。
その後、一介の冒険者に過ぎないにも拘らず度を超えた横暴により、彼はおろか派遣したキャンベルの街にも責任を問われる羽目になる。その後、キャンベルの街はミスリルの販売から完全に外れ、ラクス村の発展と併せてキャンベルの街全体が彼らの敵となっていき、web版終盤に近い段階でリドゲスにラクス村への恨みを利用された。
漫画版では、敗北後にあくまでもキャンベルの街を思っての行動だとダリエルに理解してくれたことに反省する一面を見せる。また、ダリエルの提案で決闘で壊れた家の修繕をお願いされた。その後も街に戻ることなくラクス村に滞在している。
アニメ版OPでは、戦闘中のレーディたちに加勢しようとしたのか建物から出ようとドアを開けたところで火の海となっている外を見てそっ閉じするというある意味で見せ場(?)がある。
- ノルティヤ
勇者候補だった男性。
勇者を決める選抜会でレーディと最後まで競うほどの実力を持つが、とても勇者とは思えないほど自己中心的で非道な性格。しかもレーディを含め周りの人を見下しており、自分がやることは全て正義で、自分に逆らうのは死んで当然と考える危険人物。この性格のせいで選ばれなかったのだが、本人は納得も理解もしておらず、本当は自分が勇者に選ばれるはずだったと本気で思っている。
ダリエルの勧誘の件でセンターギルドの使者としてラクス村に訪れると、レーディの魔王討伐の停滞を不安視するギルド幹部達の後押しを盾にレーディのパーティに無理矢理加わろうと目論む。だが、調子に乗ってダリエルに対し自分の持て成しという名目でマリーカを要求したことでキレたダリエルに完膚なきまで叩きのめされて心を折られる。その後、ダリエルによってセンターギルドに送り返される。
漫画版では、帽子を被った右目が前髪で隠れた優男風の容貌。性格面は原作に比べるとかなりマシに描かれているが、内面は結構腹黒く、レーディの武器にヒビを入れる小細工をして決闘で事故に見せかけて殺そうと目論むが、ダリエルに勇者の技を真似て使った裂空によって阻止される。ダリエルに小細工をしたのを見抜かれて、バラされるのを恐れて口止め料の条件で勇者パーティ加入を辞退する。転んでも只では起きないようで壊してしまった村長の家の修復をするついでにダリエルにさりげなく実家の大工の宣伝をした。
アニメ版では所詮ゲストキャラに過ぎない為登場回ごとカットされた(もっとも、本作に重要でない話をカットする流れは時間的要因や製作費声優の人件費等の節約事情を解決する為よくある話である)。
- センターギルド理事長
マリーカの母方の祖父。
センターギルドのトップであり、人族全体の指揮を執っている。
勇者になりたくないダリエルやミスリル製品販売の中心地であるラクス村の後ろ盾である。
漫画版で『シルヴェンシュタイン』という名前が与えられている。
- ローセルウィ
センターギルドの理事の一人であり、彼らの中では新人である。40代後半の中年男性。自我が増大しており、英雄願望が強い性格をしている。己の功名心から複数の勇者制を導入している。良案と思えた勇者複数育成はセンターギルドに勇者に与える予算が派遣された勇者分、分断されるというリスクとして返ってきてしまった。
本作の“どうしようもない悪役”の一人であり、後に謎の赤マントの怪人インフェルノの悪事の片棒を担ぎ、後戻りできなくなる事になる。
- タルタワローズ
センターギルドの理事の一人であり、レーディの母方の伯母でもある。口喧しく利己的な性格で勇者になった姪を自身の栄達の道具としか思っていない。その為、勇者としてのレーディの後見人だが、同時に彼女の天敵でもある。
- インフェルノ
魔王軍に敵対し、魔王の命を狙う謎の赤マントの男。
中盤で登場し、多重人格者で分裂もできる。
- フェンリル
魔王を滅ぼせる唯一の存在と言われており、魔王に封印されている。
web版では終盤に登場する実質ラスボス的存在。