概要
ゾウと言えば、まず一番に長い鼻と大きな耳を思い付く。そこで、この仲間を長鼻目(ゾウ目)と呼んでいる。長生きで知能が高いことでも知られている陸上最大の哺乳類。現在は、アジアとアフリカに代表的な2種類とピグミーゾウ(マルミミゾウとも。アフリカに生息)の計3種が生息するのみだが(スリランカやボルネオなどの周辺の島にも、その3種に属するいくつかの亜種が生息)、数万年前までは、もっと広い範囲に何種類も棲んでいた。結果として、形態的にも多様化が進み、同じ系統だけをとりあげてもこんなに差がでた。立派な牙を目当てに密猟され、特にアフリカゾウは近年数が減りつつある。遺伝系統的に近いのは、ハイラックスや海牛類、そしてツチブタなど。
起源と歴史
その祖先は5000万年程前、当時は孤立した大陸だったアフリカ大陸に住む比較的小型(犬から豚程度の大きさ)の植物食動物で、半水生のカバに似た生活と姿の動物だった。海牛類はこの同じ祖先から完全な水中生活に特化する進化を遂げた兄弟グループである。
やがて、その一部が鼻を伸ばしつつ体躯を巨大化させていくことでゾウ類が生まれ、現在のような姿になっていった。この長い鼻は採食や水を飲む際に便利で効率がよく(首を伸ばさずとも餌の植物や水を採ることが出来る)、祖先集団が環境変化で比較的早くに絶滅した後もゾウ類は長く生き残ることが出来た。
約2000万年前にアフリカ大陸がユーラシア大陸に繋がったことで、ゾウ類はアフリカの外にも生息域を広げ、やがて当時、温暖だった地球の各地に進出。全盛期にはアフリカ、ユーラシア、南北アメリカ、それらの周辺諸島で多様な種が大いに繁栄したが、地球環境全体が寒冷化と乾燥化に向かう中、次第に衰退していった(巨大化を極める進化をした哺乳類は、妊娠と成長に非常に時間がかかり繁殖能力が低いため、絶滅しやすいというリスクがある)。
マンモスのように寒冷地に適応する種も幾らか現れたが、氷河期の終結もあいまって、それらも姿を消した。更に、ここ数万年ほどの幾つかの種の絶滅では現生人類の影響も大きかったと考えられる。
200種近い化石種が知られるゾウ類も、上述のように現生種は僅かに3種のみである。「かつての温暖な地球環境に適応し繁栄していた植物食の大型哺乳類」「地球の寒冷化で大幅に衰退し現生人類の影響も相まって現在は絶滅の危機にある」という点で奇蹄目と同様である。