【注意】この記事には『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』のネタバレを含んでいます。
「絶望と希望の槍が互いにトリガーと贄となり、虚構と現実が溶け合い、すべてが同一の情報と化す。」
「これで自分の認識、すなわち、世界を書き換えるアディショナルインパクトが始まる。」
「私の願いが叶う、唯一の方法だ。」
概要
碇ゲンドウが自身の目的のために起こそうとしている最終インパクトの名称。
ゲンドウの目的は旧作同様、エヴァンゲリオン初号機とのシンクロ実験中に初号機に取り込まれ消滅した妻・碇ユイとの再会にある。
今作においてはセカンドインパクト(海の浄化)、サードインパクト(大地の浄化)、フォースインパクト(魂の浄化)を起こすことで人類補完計画を完成させ、全ての生物を1つに融合させ新たな生命体へと進化させるべく行動。
それによって魂が溶け合って一つの生命体となった存在の中で、ユイを探し出して再会を果たし、一切の争いや格差のない理想の世界でユイとともに永遠に生き続けることを目論んでいた。
アディショナルとは、「付加的な、追加の、さらなる」文脈によっては、「さらに~、その上に~」という意味も持つ。
目的、方法
かつてのゲンドウは碇シンジと同じく孤独であり、シンジに渡したラジカセ(S-DAT)のイヤホンで耳を塞いで外界をシャットアウトし、ひたすら勉強とピアノに明け暮れる少年だった。
ひとつだけ息子と違う点を挙げるなら、彼はその孤独に安らぎを得ていたこと。ゲンドウは元より頭脳明晰で聡明だった故に、世の中は他人の言葉通りに受け取ってもうまくいかないことを早々に理解しており、なるべく誰とも関わらず一人でいることで『自分だけの世界』というアイデンティティーを確立していたのだった。
しかし大学時代。ありのままの自分を愛してくれたユイと出会ったことで、初めて人といる幸せと心地良さを知ることができた。
だが、ユイは初号機とのシンクロ実験によりエヴァに取り込まれる形で帰らぬ人になる。深い悲しみに沈んだゲンドウは初めて「孤独の寂しさ」を思い知ることとなった。そこで彼は、ユイともう一度逢うために人類補完計画を実行することを決めた。
死海文書を元にしたゼーレの作戦に従い、最初にセカンドインパクトによる「海の浄化」、サードインパクトによる「陸の浄化」を引き起こし、最後にフォースインパクトを起こし「魂の浄化」を行う。
ここまではゼーレのシナリオ通りなのだが、ゲンドウの目的は人類補完計画が実行される直前に、ネブカドネザルの鍵を使って自分が器(人間の姿を捨てた神)となってユイともう一度逢うためのアディショナルインパクトを起こすことにあった。
実行のためには過去の人類補完計画と比べて、数多くの手順を踏む必要がある。
トリガーとなるエヴァンゲリオン第13号機、13号機と融合ができる使徒、ロンギヌスの槍、ネブカドネザルの鍵を用意する。
さらに、新たなる槍の原料となる「黒き月」、4隻の軍艦NHG及び中核となる4機のアダムスの器(エヴァオップファータイプ)、虚構の世界「マイナス宇宙」にアクセスするための「ゴルゴダオブジェクト」、そしてそこに存在する「エヴァンゲリオンイマジナリー」が必要になる。
顛末
すでに黒き月と南極のカルヴァリーベース(セカンドインパクト爆心地)を抑え、ネブカドネザルの鍵によって人であることを捨てたゲンドウは、ヴィレが自分を止めに来る事を予測し、黒き月とネルフ本部、第13号機を南極に移送。
予測通りやって来たヴィレの戦艦AAAヴンダーに対し、大量のエヴァンゲリオンとNHGで疲弊させ、さらには第13号機を封印する為に出撃した式波・アスカ・ラングレーを、左目に封印されていた、唯一他者と融合ができる「第9の使徒」を覚醒させた上で2号機ごと13号機に吸収。
AAAヴンダーに封印されていたエヴァ初号機を回収し、全ての手はずを整えてインパクトを発動できる状態にまで持ち込んだ。
しかし、シンジが初号機に搭乗し、第13号機と組み合った状態でインパクトを起こしたため、シンジの意思も一部反映された状態で発動してしまう。
絶望の象徴たる「ロンギヌスの槍」を持ったゲンドウの第13号機と、希望の象徴たる「カシウスの槍」を持ったシンジの初号機による、碇父子の記憶がベースとなった虚構の世界での壮絶な戦いが繰り広げられる。
戦況はゲンドウが有利だが決着がつかず、二人は必要なのは戦いではなく対話だということに気づき、シンジはゲンドウと対話を行い父の過去と目的を知る。
ゲンドウは過去作のシンジと違い「全てが一つになった世界」を望み、マイナス宇宙最深部「ゴルゴダオブジェクト」内に存在していた概念存在「エヴァンゲリオンイマジナリー」に接触。
「エヴァンゲリオンイマジナリー」は「ロンギヌスの槍」と「カシウスの槍」を取り込んだことで具現化し、巨大な綾波レイの姿となって現実世界へと現出する。
虚構と現実を等しくするために、生命のコモディティ化、エヴァインフィニティーの津波と光の十字架が地球を覆っていく。ゲンドウはかつての目論み通りに全ての魂が入り混じった世界に入る事が出来た。しかし、そこでいくら探してもユイを見つけることができずに意気消沈する。
ちょうどその頃、ヴィレのメンバーがAAAヴンダーの部品を流用して生成した新たなる3本目の槍「ガイウスの槍(ヴィレの槍)」が完成し、葛城ミサトの特攻により「エヴァンゲリオンイマジナリー」を突き破る形でシンジに届けられた。
ゲンドウは、それを受け取ったシンジを見て、自分の息子が他人の死と想いを受け取れる程に大人になっていたことを悟った。
そして、シンジに「すまなかった」と謝罪し、ユイと再会を果たすのであった。
こうして、碇ゲンドウという一人の父親は「エヴァンゲリオン」という物語から降りた。
すべてはシンジの手に委ねられることとなる。
シンジはアディショナルインパクトを止め、新たな創生「新世紀(ネオンジェネシス)」を目指す。
精神世界でエヴァに捕らわれていたアスカやカヲル、レイと対話してエヴァの呪縛から解放。
そしてシンジはゼーレの計画のように「全てが一つになった世界」にするわけでも、Qの時のように世界を再構築するわけでもなく「エヴァンゲリオンの存在しない世界」を望んだ。
全てのエヴァンゲリオンを消し去るため、エヴァ初号機に自分ごとガイウスの槍を突き刺そうとする。
だが、初号機の中に融けていた母・ユイの魂がシンジを救い出した。この時に第13号機の中にいたゲンドウの魂もまたユイとともにネオンジェネシスを目指し、自らとともに全ての世界からエヴァンゲリオンを消滅させた。
マイナス宇宙に一人取り残されていたシンジは、8号機に乗った真希波・マリ・イラストリアスに迎えに来てもらった。
マリが降りた直後、8+9+10+11+12号機も消滅。
ネオンジェネシスは完遂された。
エヴァのいない世界。
宇部新川駅のホームでシンジは目を覚ます。
目隠しをされ「だーれだ?」と声をかけられる。
それに対し、シンジは「胸の大きいいい女」と答える。
「ご名答〜。」そうして、現れたのはマリだった。
二人ともエヴァの呪縛から解放され、大人になっていた。
向こうのホームにいるエヴァパイロットたちも、大人になっていた。
マリはシンジのDSSチョーカーを外す。そして、手を繋ぎ、二人は駅の外へと出る。
マリ「さぁ、行こう!シンジくん」
シンジ「うん、行こう!」
余談
『シン』の(嘘)予告にて言及された「ファイナルインパクト」はおそらくこれを指していると思われる。