プロフィール
所属 | ジオン公国 |
役職 | ジオン公国総帥 |
階級 | 大将 |
年齢 | 35歳(TV・劇場版)/45歳(THE ORIGIN) |
身長 | 190cm |
CV | 銀河万丈 |
人物
デギン公王の長男にして、ジオン公国総帥であり、実質的最高指導者。
IQ240の天才で、沈着冷静であるが、非情かつ高慢な性格。
「ジオン国民は選ばれた優良人種である」とする選民思想の持ち主であり、政治家としては裏工作のような策謀戦よりも、演説での熱弁による扇動を始めとする正攻法を得意としている(このため、父デギンに「腹芸を身につけろ」と注意を受けている)。
政治的手腕とわかりやすいカリスマ性の高さからか、ジオン国内での支持は絶大で、国民だけでなく軍部の支持も相当に高く、親衛隊長のエギーユ・デラーズ大佐(当時)を始め、多くの将校や士官から熱狂的な支持を受けていた。反面、その扇動的な方策を嫌って冷ややかな目で見る者も少なくなかったという。
その思想はジオン・ズム・ダイクンのジオニズム思想から大きな影響を受けているが、ニュータイプ論については妹のキシリアほど入れ込んではおらず、どちらかといえば自身の選民思想を裏付け、ジオン公国のナショナリズムを補強して国内の反連邦の気運を高めるための政治的方便としては使える程度の認識であり、キシリアの提言したニュータイプ部隊の設置にも消極的で、一年戦争中に確認されたニュータイプの存在についても軽視していたことが伺える。
ただ、「戦争に勝利した後で人類のニュータイプへの覚醒をゆっくり待つつもり」とも語っているため、ギレンはニュータイプ論を信じていなかったわけではなく、キシリアらニュータイプ信奉者達が発見した「ニュータイプ」(感応波と呼ばれる特殊な脳波を持ち、直感力・認識力に優れた人間)が、ダイクンがジオニズムの中で提示した「ニュータイプ」(宇宙に適応進化した新人類)とは異なる存在であると捉えていたとも取れる。
ダイクンとはまた別ベクトルのカリスマであり、宇宙世紀において彼の唱えた政治思想や世界観は巨大な影響力を持ち、次世代にまで波及していくことになる。
本編におけるいわゆる敵方の大将(ラスボス)であるが、主人公アムロ・レイとは直接の接点や対峙がまったくないまま終わるという、当時のロボットアニメにおいてきわめて珍しい敵役であった(当初の予定では、直接アムロに追い詰められて倒される結末だった)。しかし、皮肉にもこのことが「たとえ主人公であっても、戦争の中ではただの一兵士に過ぎない」という本作の持つリアリティを強調する結果となった。
家族関係
家庭内では父・デギンのことを軽視・軽蔑しており、政治の表舞台から去って隠居状態となった後も無視できない影響力を持つデギンを疎ましく思っていた。一方、ギレンも一年戦争中の己を省みぬままのあまりの急進ぶりを危惧した父から「ヒットラーの尻尾」と酷評されている(その際、小説版やテレビ版などでは超然とした態度で軽く受け流しているが、『THE ORIGIN』では顔が引きつり、書類を持つ手が震えるほどの激しい怒りを露わにしている)。
妹キシリアとは互いに政治的に競合する立場にあり、何かと反目し合っているが、ギレンは自らの才能と政治思想に絶対の自信を持っていたため、彼女のことなど歯牙にもかけずに彼女が裏であれこれ画策するのを半ば放置していた。
次弟ドズルについては、ギレンだけがソロモン攻防戦前から援軍を派遣しているが、ドズルの希望する大量のリック・ドムではなくビグ・ザムのみだったことから、「戦いは数だよ兄貴!」と苦言を呈され、さらには戦局が不利に傾いた際には、ア・バオア・クーからの増援を渋るという非情な判断を下した。ただ、冷徹ではあるが合理的判断に過ぎないともとれ、ドズルの死を聞いても冷淡なデギンに対して憤りを見せたり、小説版ではドズルがザクで飛び出した噂を聞いて苦笑して窘めるなど、ギレンがドズルを気にかけていたような描写も見受けられるため、彼なりの情はあったのかもしれない。
末弟ガルマに対しては父の希望を汲んで開戦後も可能な限り安全な参謀本部等に置こうと配慮(前線への配置は武功に逸る本人の意志と、キシリアの策略によるもの)しており、ガルマ自身は恋人イセリナに対し「ギレン総帥は皆が思っているような恐ろしい人ではない」「僕たちのことはいずれわかってくれる」と語る程度にはギレンに対し親愛感を抱いていたが、ガルマの死後、ギレンは国民の戦意高揚のために彼の国葬をプロパガンダに利用した。
来歴
少年時代の頃から政治活動に身を投じており、青年時代には父・デギンと共にジオン・ズム・ダイクンの指導するスペースノイドの独立運動に参加、自ら銃をとって運動の最前線に立って青春時代を過ごした。
この頃はダイクンの思想に傾倒しており、彼を支援するデギンを心の底から尊敬していたという。しかし、ダイクンの本質が実はカリスマ性に優れていただけの「単なる扇動家」に過ぎないことに気づいてしまい、父ともども幻滅。
ダイクンの暗殺後、宇宙世紀0069年にデギンの下でジオン公国が成立し、デギンが政治の表舞台から退くとともにその権力を受け継ぎ、事実上の最高指導者となる。
だが、父と同様にジオン公国がザビ家によって排除されたダイクンの名を冠し続けている事には不満を抱いており、連邦打倒後には『ギレン公国』に改称する野望を持っていたようである(なお、キシリアからは「ジオンの名を排しては人心の統一など無理な話」と断じられている)。
0071年、ギレンはジオニズムを基に自らの選民思想を加えて拡大解釈した著書『優性人類生存説』を発表。これは「スペースノイドは選ばれた民であり、その中で最も優れた人種たるジオン公国民こそが地球圏を統治するべき資格を持つ」と言うかなり危ない内容で、アースノイドのみならず他の大多数のスペースノイドからも猛反発を受けるが、ジオン公国民からは熱狂的な支持を得ることに成功する。
そして0079年1月3日、ジオン公国は一方的な独立を宣言し、地球連邦政府に独立戦争を挑む。一年戦争の始まりである。
元々デギンにとってこの戦争の目的はあくまでジオン公国を地球連邦と対等な関係の完全な独立国家としての主権を連邦に認めさせることにあり、ギレンも当初はそれを認めていた。しかし、ギレンはやがて完全に地球連邦を征服・排除したうえでの、ジオン公国による全人類の管理・運営を目的とするようになり、地球環境の保全のためには増えすぎた人口を調節しなければならないという自らの思想に基づき、サイド3以外のスペースコロニーに対する毒ガス攻撃を行い、さらにそのコロニー自体を質量兵器として地上に落下させる「ブリティッシュ作戦」を敢行、地球圏総人口の半数を死に追いやった。
一年戦争末期、ガルマが北米大陸でのホワイトベース隊との戦いで戦死すると、デギンの反対を押し切り、ジオン国民にとってアイドル的存在であった彼の国葬を反連邦感情を煽る為のプロパガンダに利用、国民の戦意高揚を行った。
0079年12月24日のソロモン攻略戦での敗北とドズルの死を経た後、ギレンはア・バオア・クーにおいて連邦軍との最終決戦を目論むが、デギンは独断でグレート・デギンに座乗して連邦軍との和平交渉に赴く。
自らの戦略に従わない老いた父を完全に見限ったギレンは、グレート・デギンの進路こそレビル将軍率いる連邦軍の主力・第一艦隊の進攻コースと読み、和平交渉が始まる前に事を決しようと、予定を大幅に前倒ししてソーラ・レイを「ゲル・ドルバ照準」に最終設定し作戦時間21:05に発射を指令、レビル将軍もろともデギンまでも謀殺した。
しかし、ゲル・ドルバ線上からグレート・デギンの識別信号が確認されたとの報告を受けたキシリアは、ギレンが父を殺したと察知。
宇宙世紀0079年12月31日、最終決戦となったア・バオア・クー攻防戦の作戦指揮中、ギレンは「父殺しの男」としてキシリアに射殺された。この際もキシリアに無防備に背中を見せ、銃口を向けられても「冗談はよせ」と一笑に付すが、その余裕の姿勢が仇となった。
さらにギレンの突然の死によりア・バオア・クーの指揮系統が一時停止したことで、連邦軍に致命的な隙を与えてしまっており、これらの「お家騒動」はジオン敗戦の要因の一つとなった。
死後もその思想は反連邦を掲げる組織を中心に絶大な影響を与えた。特に彼の親衛隊隊長であった、エギーユ・デラーズ大佐は、宇宙世紀0081年に地球圏最大の残党軍勢力デラーズ・フリートを結成し、0083年に『星の屑作戦』を決行している。
さらに0088年の第一次ネオ・ジオン抗争においては、ネオ・ジオンの士官グレミー・トトが彼のクローンを名乗り、ハマーン・カーンに反旗を翻している。
また、「地球圏は選ばれた民により支配されなければならない」とする考えは、後のティターンズ指導者ジャミトフ・ハイマンといった連邦内の一部勢力にまでも影響を及ぼした。
総帥語録
「我々は、一人の英雄を失った! しかし、これは敗北を意味するのか!? 否! 始まりなのだ!」
「地球連邦に比べ、我がジオンの国力は三十分の一以下である。にもかかわらず、今日まで闘い抜いてこられたのは何故か!?」
「諸君!! 我がジオン公国の戦争目的が正義だからだ!」
「これは諸君らが一番知っている。我々は地球を追われ、宇宙移民者にさせられた!」
「そして一握りのエリートが、宇宙にまで膨れ上がった地球連邦を支配して五十余年! 宇宙に住む我々が、自由を要求して、何度、連邦に踏みにじられたか!」
「ジオン公国の掲げる、人類一人ひとりの自由の為の戦いを、神が見捨てるわけはない!」
「私の弟、諸君らが愛してくれたガルマ・ザビは死んだ!! 何故だ!?」
「新しい時代の覇権を我ら選ばれた国民が得るのは、歴史の必然である。ならば、我らは襟を正し、この戦局を打開しなければならぬ」
「我々は過酷な宇宙空間を生活の場としながら、共に苦悩し錬磨して今日の文化を築き上げてきた」
「かつてジオン・ダイクンは、人類の革新は宇宙の民たる我々から始まると言った」
「しかしながら地球連邦のモグラどもは、自分たちが人類の支配権を有すると増長し、我々に抗戦をする」
「諸君の父も、子も、その連邦の無思慮な抵抗の前に死んでいったのだ!」
「この悲しみも、怒りも、忘れてはならない!」
「それを………ガルマは、死をもって我々に示してくれた!」
「我々は、この怒りを結集し、連邦軍に叩き付けて、初めて真の勝利を得る事が出来る!」
「この勝利こそ、戦死者全てへの最大の慰めとなる!」
「国民よ! 悲しみを怒りに変えて! 立てよ国民よ!!」
「我らジオン公国国民こそ、選ばれた民である事を忘れないで欲しいのだ! 優良種たる我らこそ、人類を救い得るのである!!」
ガルマ・ザビ国葬における追悼演説。この模様は地球圏全域に放送された。
ガンダムシリーズお馴染みのプロパガンダ演説だが、ギレンのこの演説に勝るものは未だ無いと言っても過言ではないだろう。
富野監督はアフレコの際に銀河万丈氏に「ヒトラーのように喋ってくれ」と注文を付けていたとのこと。現在ではすっかりギレンのトレードマークとなったこの演説だが、「(TVシリーズ本放送時の演説は)自分では気に入らなくて、いろいろ直そうとしたが、結局録り直しにはならなかった」と明かしており、劇場版三部作での再アフレコにおいて手直しがなされた。
「私とて、ジオン・ダイクンの革命に参加したものです。人類がただ数を増やすだけでは、人の軟弱を産み、軟弱は人を滅ぼします」
「地球連邦の絶対民主制が何をもたらしましたか? 官僚の増大と情実の世を作り、あとはひたすら資源を浪費する大衆を育てただけです。今次大戦のような共食いを生んだのも、連邦の軟弱故です。もう人類は限界を超えましたよ…」
「まあ、勝ってみせますよ。その上で、真のニュータイプの開花を待ちましょう。ヒトラーの尻尾の戦いぶりをご覧ください」
「貴公はヒトラーの尻尾だな」と評した父デギンに対する返答。ギレンの思想と自らに対する絶対的な自信が伺える。
直後、デギンは「ヒトラーは失敗したのだぞ(劇場版では「身内に殺されたのだぞ」)」と独白するように言ったが、皮肉にもこの言葉は後にデギンとギレンの両人の最期を言い当てることになる。
「我が忠勇なるジオン軍兵士たちよ、今や地球連邦軍艦隊の半数が、我がソーラ・レイによって宇宙に消えた」
「この輝きこそ、我らジオンの正義の証である!」
「決定的打撃を受けた地球連邦軍に、いかほどの戦力が残っていようとも、それはすでに形骸である」
「あえて言おう、カスであると!」
「それら軟弱の集団が、このア・バオア・クーを抜くことは出来ないと、私は断言する!」
「人類は、我ら選ばれた優良種たるジオン国国民に管理運営されて、初めて永久に生き延びることが出来る!」
「これ以上戦い続けては、人類そのものの存亡に関わるのだ!」
「地球連邦の無能なる者どもに思い知らせ、明日の未来の為に、我がジオン国国民は立たねばならんのである!」
最終決戦となったア・バオア・クー攻防戦の開戦直前の演説。
この演説の中でソーラ・レイの一撃によって大損害を被った地球連邦軍を「烏合の衆」と非難しているのだが、このシーンをよく見ると、ガルマ追悼演説の時と比べて規模も演出も見る影もなくみすぼらしい物になっているのが分かる。演説の対象の違いを差引いても、ジオンが相当追い詰められていた様子が読み取れる。
ちなみに、「あえて言おう、カスであると!」の部分は「あえて言おう、○○であると!」という形でよくネタにされる。
「圧倒的じゃないか、我が軍は…!」
ア・バオア・クー攻防戦において、有利に戦闘を進める自軍の様子を見ての独白。
ギレンらしい強気な台詞であるが、確かにこの戦況自体は優勢にあったとしても、全体的に見ればア・バオア・クーを落とされてしまうともはや本拠地サイド3での本土決戦しか後がないという事態にあり、決して余裕のある状況ではなかった。
「フッ、冗談はよせ」
ア・バオア・クー攻防戦において、キシリアに銃を向けられた際の台詞。
日頃、キシリアを軽視していたことが災いしてか、この言葉を最後にギレンはキシリアに呆気無く暗殺されてしまった。いくら何でもまさか敵との決戦の真っ最中に総司令官である自分を殺害してみすみす混乱を招いたりするような真似をキシリアが犯すようなことは、ギレンにも想像できなかったのかもしれない。あるいは「あんな父親を殺しても俺を殺すほど憎みはすまい」とも考えたのか。