概要
天才科学者・芹沢大助によって開発された科学物質であり、またそれを散布する装置を指す。
別名「水中酸素破壊剤」。
その名の通り、水中で使用すると周囲の酸素を徹底的に破壊する作用を持つ。この結果、一定範囲内の水中の生物は酸素を取り込むことができなくなるどころか、細胞中の酸素さえも破壊されて肉体が崩壊する。(ただし、酸素がない環境でも生存可能な宇宙怪獣などには効果はない)
そして影響を受けた範囲の海中の生態系は完全に破壊されて死の海と化し、この影響は長期間にわたって残る。
実は地上や空中でも使用でき、その場合はもっと恐ろしいことが起きるという(後述)
人間側の道具の中で、ゴジラを完全抹殺できた数少ない存在の1つでもある(戦闘機のミサイルでやられたアメリカ版ゴジラはもちろん除く。また、後の作品でGフォースのスーパーメカゴジラやGグラスパーのディメンション・タイド、潜水艦「さつま」等ゴジラを倒した兵器や戦法などはいくつかあるが、いずれも劇中復活を許したりラストで生存を予見させる描写があったりとトドメをさしきれておらず、ゴジラの生命活動を完全に停止しきれたものは殆ど存在しない)。
劇中では容器に入った実験用のあめ玉サイズの物とゴジラに使用した容器に入った物が使われたが、砲丸玉ぐらいの量でも東京湾を死の海に変えられる程の威力を持つ。
オキシジェン・デストロイヤーは「兵器」として開発されたものではなく、酸素の利用法・性質などを専門に研究を進めていた芹沢が、その途上で偶然作りあげてしまった副産物である。
芹沢本人もその効力に戦慄したらしく、「初めて実験をしてから二、三日は食事も喉を通らなかった」と回想している。彼は何とか平和的な利用法を見つけようと研究していたようで、それが可能になるまでこの薬品の存在を誰にも明かすつもりはなかったが、かつての許婚・山根恵美子に打ち明けたことから、その恋人である尾形秀人にも存在が知られることとなった。
芹沢は彼らからゴジラに対抗できる唯一の手段として使用を求められるが、当初は何としても攻撃的な使い方は許さない構えだった。それはこの薬品が兵器として知られれば間違いなく、原爆や水爆を超える最悪の大量破壊兵器と化すであろうという確信があったからである(後年同様の研究に携わった科学者たちも同じ懸念を抱いており、後述の伊集院は「水中で使用したからまだ被害は東京湾だけで済んだ」「地上で使用していたら東京が死の町と化していただろう」とコメントしている)。
しかし被災者達の悲惨な現状を見て、彼もついに使用を決断。2度の東京襲撃を経て東京湾海底に潜んでいたゴジラは、至近距離で水中にばら撒かれたオキシジェン・デストロイヤーによって完全に溶解・消滅させられることとなった。
芹沢は使うと決めたその時、この危険極まりない発明をただ1度きりの装置として、世に出すことなく葬り去る決意もまた固めていた。尾形達の目の前で一切の研究資料を焼き捨てたばかりか、拷問などによってその知識を引き出される可能性さえ残さぬように、オキシジェン・デストロイヤーは海底で直接彼自身の手によって起動され、その直後に潜水服のロープと送気管を切断することで、ゴジラ共々その秘密は完全に抹消されるのであった。
芹沢の犠牲によって製造法は失われたが、文献として残らずとも『水中で使用すると、周囲の酸素を破壊してその場にいる生物を死滅させ、液状化させてしまう』という効果と使用法は初代ゴジラ討伐に立ち会った人々の記憶に強く刻み込まれており、後述するように後のシリーズ作品においても多大な影響を与えている。
現在、初代『ゴジラ』を継承する平成シリーズ、及び分岐するいずれの時系列においてオキシジェン・デストロイヤーの完全再現は成されていないが、四十年以上経過した事による科学技術の発展により、平成シリーズでは製造工程の途中経過にあたる『ミクロオキシゲン』の生成に成功した。
開発当時よりもすぐれた実験器具・コンピューターの導入により『克服しがたい技術的な関門』(後述)をクリアする環境がより整えられた事による結果だが、芹沢の元許婚でオキシジェン・デストロイヤー使用に直面した山根恵美子はミクロオキシゲンについてオキシジェン・デストロイヤーの再来ではないかと危惧しており、さらに義理の甥(山根博士の養子となった山田新吉の息子)である健吉の「核エネルギーの暴走したゴジラに対する兵器として使用する」という意見に対して「芹沢が自らの命を絶った意味がなくなってしまう」と恐れ、強く反対していた。
彼女が危惧した恐れが現実化するのかどうかは、未だわからないままである。
ミクロオキシゲン(『ゴジラVSデストロイア(1995年)』)
伊集院研作博士によって開発された、酸素を極限まで微小化させる化学物質。
劇中では美容・家畜分野などに転化される技術として紹介されたが、転化内容を軍事観点に置き換えた結果、他の分子の隙間に入り込んで崩壊させてしまう(=物質を溶解させる)という、オキシジェン・デストロイヤーと非常によく似た効力を持つ。
伊集院によれば「オキシジェン・デストロイヤーを意識しての開発」であり、ミクロオキシゲンがオキシジェン・デストロイヤー開発のために必要な技術であることは確からしい(芹沢も、自らの研究の過程でミクロオキシゲン生成を経ていた可能性が高い)。
しかし、ミクロオキシゲンの開発からオキシジェン・デストロイヤーの開発に至るまでには容易には克服しがたい技術的な関門があるらしく、伊集院はオキシジェン・デストロイヤーを開発するに至らなかった。
また、ミクロオキシゲンは零下187℃の超低温下においては効果を失うことが判明しており、そのままデストロイアの弱点として直結している。
なお、劇中では平和的利用法として「酸素ボンベの小型化」「家畜に与えてより大きな身体への成長を促し、食糧問題の改善につなげることができる(劇中では魚の巨大化に成功している)」等の方法が語られていたが、元々はオゾン層修復のために作られたという裏設定が存在する。
ミクロオキシゲン使用による対ゴジラ戦
1954年のオキシジェン・デストロイヤー使用は東京湾一帯を一時的に無酸素の死の海とせしめ、海底の土の中に眠っていたデストロイアを復活させてしまう。これはデストロイアが先カンブリア時代=地球上が無酸素であった時代の生物だからであった為、一時的に酸素が消滅した生存区域が発生したからである(これらの事から、実証する手段こそないものの、先カンブリア時代の微生物にはオキシジェン・デストロイヤーは通用しない可能性が存在する)。
やがてこのデストロイアは40年後の東京湾海底トンネル開発に伴って酸素に触れ、適応反応によって異常進化を起こし、平成ゴジラ史上最大最後の敵怪獣となった。
復活したデストロイアは進化過程でオキシジェン・デストロイヤーに直接触れた事が理由なのか、体内でミクロオキシゲンを生成する能力を得ている。
微小体であった頃は、ガラスの容器を破壊したり、水族館の魚を白骨化するなどの活動をしていたが、やがて幼体と呼ばれる2m程度の形態へ成長すると、口からミクロオキシゲンをビーム状に発射し、対峙していた機動隊員の体を溶かして殺害することができるまでに至る。
さらに成長が進んで集合体や完全体と化した際には生成するミクロオキシゲンの濃度が極限にまで高まったことで、威力においてはオキシジェン・デストロイヤーと互角となっており、「オキシジェンデストロイヤー・レイ」と呼称されるようになった(名称から誤解されやすいが、実際にオキシジェン・デストロイヤーと化したかについては劇中でもはっきりとは言及されておらず(「ミクロオキシゲンでは実現し得ない威力」と言われた程度)、あくまで「オキシジェン・デストロイヤーに比肩するまでに超高濃度化されたミクロオキシゲン」であると思われる)。
後の作品への影響
複数の時系列が存在するゴジラシリーズの中で、初代『ゴジラ』はそれらの全ての源となっており、オキシジェン・デストロイヤーもまた後の複数の作品に影響を与えている。
『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃(2001年)』
直接その名前が明示されたわけではないが、かつてゴジラを葬ったという“未知の毒化合物”を用いた兵器としてその存在が仄めかされている。ただし、オキシジェン・デストロイヤーの存在が物語のキーワードとなったわけではなく、「太平洋戦争の犠牲者の怨念が宿った怪物であるゴジラに対して、防衛軍の兵器が全くダメージを与えられなかった」ことを示すための例示の意味合いが強い。
『ゴジラ×メカゴジラ(2002年)』
オキシジェン・デストロイヤーによって白骨と化した初代ゴジラの遺体がメカゴジラ(3式機龍)開発に使用された。ちなみに本作でも本編中にはオキシジェン・デストロイヤーという名称は明示されておらず「芹沢博士の作った特殊兵器」と呼ばれている。
初代『ゴジラ』ではゴジラが白骨と化した後、それさえも溶け去っていく様子が描かれているのだが、本作では骨は残ったと変更されており、そのシーンは新たに新規で撮影されている。
また手塚昌明監督のこだわりから、オキシジェン・デストロイヤーが使用された場所が東京湾から房総半島沖の海底に変更されている。
これは『ゴジラ』におけるオキシジェン・デストロイヤー使用シーンが「周囲に水平線しか見当たらない海上」であった事から、当時の東京湾の光景ではありえないという考察に基づいたものである(『ゴジラ』本編では東京湾で使用したと明言されていなかったことからこの考察を基に変更している。なお、映像作品内で東京湾で使用したと明言されたのは『ゴジラの逆襲』からとなる)。
結果的にこれがゴジラの骨だけが残ったり、機龍二部作の世界でデストロイアが誕生していない理由になっている……のかもしれない。
『プロジェクト・メカゴジラ』
ゴジラを一度抹殺した謎の秘密兵器としてその存在が噂された。
噂によれば「ゴジラはセリザワ博士なる人物が開発した新兵器オキシジェン・デストロイヤーで一度抹殺されており、妖星ゴラスを撃墜したりメカゴジラ開発工場を破壊したゴジラは二匹目の個体。セリザワ博士は自らの開発が人型種族同士の争いに利用されることを恐れて命を絶ったが、その研究成果あるいはオキシジェン・デストロイヤーそのものが地球のどこかに隠されており、それを使えばゴジラを再び抹殺することも不可能ではない」と言うのだ。
当然ながら噂の正体はゴジラの脅威に心折られた人々へ希望を与えるためにケイン・ヒルター博士とその仲間達が広めたデマであり、そんな荒唐無稽な兵器など実在するわけは無かった。
しかし、ヒルターの同士・イジュウインはその噂に影響を受け、かつてヘドラを研究していた施設を拠点としてゴジラを倒しうる生物兵器「J-MO-7」の研究を再開する。ヒルターも研究に加わったが、研究施設はある日「赤い骨格を持ち、金属を溶解する能力を持ったガニメの亜種らしき群体」の襲撃によって壊滅してしまう。彼らを襲ったのは本当にガニメだったのか、それとも……?
余談
アニメ「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」には「バイオデストロイヤー(BD)」と言うあらゆる生命体の分子結合を分解、超人をも消滅させる特殊な化学薬剤が登場しており、オキシジェン・デストロイヤーと類似点を持つ。
本作は随所に昭和の特撮やアニメへのオマージュがなされているのが特徴であり、これもその一つと思われる(ちなみに、主人公の人吉爾朗自体がゴジラのオマージュ要素を含むキャラクターでもある)。
ニトロプラスのアダルトゲーム「竜†恋」では、「1954年に突如として現れた神話の生物ドラゴンは既存兵器が一切通じず、ある天才科学者の開発した超兵器で葬り去られた」という芹沢博士とオキシジェン・デストロイヤーと思わしき存在について語られており、以来ドラゴンと人類の戦いが始まったとされている。
本作は基本的にはラブコメディだが、「竜は英雄でなければ殺せない」「竜は英雄に殺されなければならない」という神話要素が重要なテーマとなっており、初代「ゴジラ」から連なる「竜殺しの神話」へのオマージュとなっている。
アニメ『クレヨンしんちゃん』のゴジラとの共演回「しんのすけ対シン・ゴジラだゾ」には野原ひろしの三日間履き続けた靴の匂いを基にした、気持ちも体も大きくなる巨大化アイテム「オヤジジェンオオキクナルヤー」と一週間履き続けた靴の匂いを基にしたあらゆるものを萎えさせる超兵器「オヤジジェンデストロイヤー」が登場。砲丸部分がぶりぶりざえもんの顔になっており、デストロイヤーをゴジラに打ち込み、オオキクナルヤーで巨大化したしんのすけの尻で口に栓をして撃退。小さなトカゲサイズにまで縮小し海へと放したが、水に長時間浸かると匂いが取れてしまうという弱点があり、ラストでは再びゴジラが巨大化したことが示唆された。
『ゴジラ対エヴァンゲリオン』が参戦したソーシャルゲーム『スーパーロボット大戦X-Ω』では碇ゲンドウの口から完成すればマジンガーZやエヴァンゲリオン以上の脅威となると開発者である芹沢博士の名前と共に語られている。
関連タグ
ゴジラ 初代ゴジラ 芹沢大助 ゴジラVSデストロイア デストロイア
『キング・オブ・モンスターズ』にて(ネタバレ注意)
本作においては米軍が開発した新兵器として登場。
ミサイルの弾頭に搭載されての登場ではあるが、形状もオリジナルのそれに準じた形状そのままである。
初代における「水中の酸素破壊剤」ではなく気化爆弾を始めとする非核性の大量破壊兵器として描写されており、原理は説明されなかったが半径3キロメートル圏内の生物を死滅させる大量殺戮兵器とされている。
モナークの目前で繰り広げられた惨劇の解決策として、米軍が長距離ミサイルに搭載して使用。
オリジナルと同様水中で炸裂、核爆弾にも匹敵する強烈な爆発と共に、ゴジラに致命的なダメージを与えることとなった。
オリジナルとは異なり生物を分解する効能はなく、使用後は心停止したゴジラと共に大量の魚の死骸が浮かび上がった。動作原理が不明の為、この魚の大量死が酸欠や毒性によるものか、単に爆発の衝撃でやられたのかは不明。(周辺地域の漁獲量が激減したことがポストクレジットにて語られており、使用されれば一帯を死の海に変える悪魔の兵器であることはオリジナルと同様である。)
日本版シリーズでは悲劇的メッセージ性の強い禁忌の発明として扱われることが多いオキシジェンデストロイヤーだったが、KOMでは単なる大量破壊兵器としての登場であり、一部のファンのあいだでは批判の声もある。
ただし使用後の描写やゴジラに対する効能にも若干の差異があるため、KOM本作のオキシジェンデストロイヤーは形状や威力が似ているだけで初代ゴジラのそれとは別物である可能性が高い。特に威力は原作ならば魚の死体どころか骨すら浮かび上がらないはずである。
(東京湾より深度があり、より薬剤の効力が拡散しやすいであろう房総半島沖で使用されたという設定の『機龍二部作』の場合でも、ゴジラは骨になってしまっている)。
脚本や演出上の都合も吟味して、生態系に与える多大な影響やゴジラを一時的にでも死(心停止)に至らしめる威力を持ち、かつ宇宙生物であるキングギドラに効かないという今作の展開に説得力を持たせられる既存の対G兵器では、オキシジェン・デストロイヤー以外に存在しない、という意見もある。
マイケル・ドハティ監督は今作のオキシジェン・デストロイヤーについて「核兵器と同じような存在であり、自然を否定する脅威。使うと恐ろしいことが起きる」と語っている。
また演出の意図としては「かつて核兵器によって無理やり目覚めさせられたゴジラと、それをオキシジェン・デストロイヤーによって葬り去った芹沢博士」に対し、「オキシジェン・デストロイヤーによって傷ついたゴジラを、原爆で家族を失った芹沢博士が核兵器で癒やす」という構図で、人類とゴジラの和解を描く上で、人間の原罪を背負ってゴルゴダの丘を登り、神へ許しを乞い願うキリストと重ねる目的があったと監督は語っており、オキシジェン・デストロイヤーの登場は必然であったとも言える。