概要
スタジオジブリ作品として制作された初の作品で、当時隆盛を極めていたロボット・SFアニメに対するアンチテーゼとして「子供向けのマンガ映画の復活」を掲げて企画された。宮崎駿らしい爽快な空中描写やスチームパンク的な世界観が高い評価を誇り、前期宮崎駿の集大成的作品となっている。
しかしアニメブーム全盛の1980年代中期においては、単なる「古臭いアニメ」と思われ、興行時はあまり良い成績ではなかったらしい。ちなみに当時は映画用に再編集されたテレビアニメ「名探偵ホームズ」が同時上映されていた。
宮崎が国民的映像作家の地位を固め、レトロフューチャーの世界観がブームになるのは1980年代末のことであり、本作が大衆に受け止められるのは公開後約3年を要した。
プロデューサーは高畑勲、音楽は久石譲。金田伊功・近藤勝也・名倉靖博らが原画として参加している。
内容
炭鉱で働く少年パズーは、ひょんなことから空から降りてきた少女シータを助け出し匿う。彼女は北の地で暮らしていたが、謎の男達によって連れ去られてきたのだという。
パズーには夢があり、かつて父が見た伝説の浮遊島・ラピュタを見つけ出そうとしていた。
しかし、シータを狙って空賊・ドーラ一家や軍隊、特務機関のムスカが現れる。
彼女は不思議な石・飛行石を持っており、ラピュタの秘密を握っていた。
パズーとシータはドーラ一家とともにラピュタへ向け旅立つ。
ポムじいさん、モウロ将軍、ドーラを首領とする空中海賊といった個性的な面々が多く登場するが、pixivにおいては本作の悪役ムスカ大佐への歪んだ一途な愛情を垣間見ることができる。
主人公であるパズーやシータの活躍以上に脇役たちの印象が強く残る作品であり、
「親方ッ!空から女の子が!」(パズー)
「40秒で支度しな!」「竜の巣だぁ」(ドーラ)
などの台詞はpixivでも様々なネタに活用されている。
人気
ムスカを筆頭に個性的なキャラクターや特徴的な台詞が多く、ネット上を中心にカルト的な人気を誇っている。「好きなジブリ作品は?」というアンケートでも上位に食い込むことが多く、テレビ放送時の視聴率も高い。
殊更インターネットの実況行為においては、各々の掲示板やSNS(2ちゃんねるやTwitterなど)での書き込み数が毎度かなりの規模となる。
特に終盤の台詞(主にムスカのもの)や決定打となる呪文のシーンなど瞬間書き込み数が爆発的に上昇し、それがニュース化することもあった。人によっては、ムスカの台詞をタイミング含め全暗記していたり、冒頭のシーンから終盤の著名なシーンに至るまで、果ては挿入CMの予想タイミングまでピタリと予測するとんでもない人もいる。何がそこまで引き付けるんだ
しかし、公開された当時の興行成績は観客動員数77万人、配給収入5.8億円と、ジブリ作品の中ではワースト記録である。
また、1988年4月2日に金曜ロードショーにて初の地上波放送された際の視聴率も12.2%と、当時の人気アニメが当たり前のように視聴率20%以上を記録していたことを考慮すれば、これもあまりいい記録とはいえなかった。
もっとも、スタジオジブリ自身、本作を「まずまずの成功を修めた」と評価しており、トトロをはじめとする後続作品の制作を決めるには十分な成績であったとされる。
配給した東映による観客満足度調査は97.7%と非常に高く、少年少女から高齢層にまで支持を受けていた点は、当時のアニメとしては他に例をみないものだった。ジブリの「万人向け」路線はこの『ラピュタ』で既に定まっていたと言えよう(宮崎の前作品『風の谷のナウシカ』の支持者は青年層が中心だった)。
ちなみに…
「ラピュタのエンディング映像には続きがある」という噂があり、シータの故郷(ゴンドア)に降り立った二人が握手をして別れるという内容というもの。
ビデオ・DVDには一切収録されておらず、TVの初回放送と劇場版・LDのみの映像とも言われているが、後にジブリの関係者から正式に否定されている。しかし、実際に見たという人もあり、アニメの都市伝説と化している。
仮説としては、TV放映時に(恐らく)一度だけ「本来のものではない別のエンディングが流れた」事があり、その内容は「作品中のカット(あるいはスタジオジブリ作品関連資料集の一枚。この1枚がパズーがシータを迎えに行く絵)にスタッフロールを重ねる」というものであった為、それを年月の経過で誤解してしまったものと考えられる(証拠付きでまとめているサイトもいくつかあり、間違いのない情報と思われる)。
ちなみに、設定資料集には上記の噂の内容に類似したイラスト(本編未使用)が掲載されており、恐らくはこの絵を見た人が本編の絵と勘違いしたからではないかと言われている。
徳間書店から出た小説版では、映画で描かれなかった部分が書かれている。飛行船襲撃前の、シータがムスカ達に連れ去られる場面と、シータとパズーが各々の故郷に戻ったエピローグ部分である。そのエピローグでシータがパズーからの手紙を読むシーンがあり、ゴリアテは事故で大破して修復中とし、ラピュタについては全く触れられずに軍から公式発表されている。
なお、日本テレビの「金曜ロードショー」()では「ノーカット」を謳いながら時間の関係で一部シーンがカットされていたり、2011年12月9日・2013年8月2日放送分ではパズーの台詞の色はあろう事かそれぞれ青(水色)で誤表記され、シータの台詞の色はそれぞれ黄色で誤表記されていた事で、一部の視聴者達からひんしゅくを買っている(ほとんどの字幕放送では司会者や主人公の台詞を黄色で表記するのが半ば常態化しており、前者に関しては前時間枠に実写ドラマ版「らんま1/2」が放送されており、こちらでは「ドラマ版では主人公が乱馬ではなくあかねになっている」という理由からか、天道あかねの台詞は黄色、早乙女乱馬の台詞は男女共に水色で表記されており、前者だけに限定するなら「技術的なミス」という理由で解釈は可能だが、後者では該当番組の放送がなかったうえ、そもそも本作では最初から最後まで一貫して主人公はパズーであるため「シータのファンである字幕担当のスタッフによって恣意的に変えられたのではないか」と推測するファン達もいるが、詳細は不明)。なお、2016年1月15日放送分ではパズーは黄色、シータは青色(と、ドーラは緑)で表記された。
余談
海外販売の際のタイトルは意訳である「Castle in the Sky」。これは原作(ガリバー旅行記)で意味するところのLa putaがスペイン語で「売春婦」であり、圧政と荒廃の象徴であるため。
関連イラスト
関連タグ
スタジオジブリ 宮崎駿 天空城 浮遊島 空中島 ガリバー旅行記
バルテュス_ティアの輝き…本作のパクリと思われるアニメ。
ロックマンDASH…主演キャラ2人の声優が同じ、未知の秘宝を探す冒険ストーリー、憎めない空族一家など似た要素が多い
未来少年コナン…本作は元々NHKに提出した『未来少年コナン2』とでもいうべき没企画を母体に作られたとされており、初期設定ではムスカが同作の悪役レプカの祖先として設定されていた等の繋がりがある。
ふしぎの海のナディア…その『コナン2』の企画をもとに製作されたNHKのテレビアニメ。同一の企画をベースとしているため、設定やストーリー展開が類似している。