概要
ブラウザゲーム『艦これ』のプレイヤー、もしくはそれに基づく二次創作上のキャラクターとしての提督は提督(艦隊これくしょん)の記事を参照。
アニメ『艦隊これくしょん -艦これ-』の舞台となる鎮守府の「提督」。主人公の吹雪の前任地や、第7話での別艦隊所属先など鎮守府はそこ以外にも存在している。
作中では秘書艦の長門に作戦の指揮を一任しており、約15時間の入渠時間を誇る赤城に対し高速修復材(バケツ)を投入するなどは提督の命令。
この人物がアニメに登場する時は視聴者視点や画面外、艦娘の後ろ、影として登場し、作中では姿どころかセリフすらない。
そのため性別・年齢、そもそも人間であるかさえも不明(影の形は一応人のように見えるが)。
作中での扱い
第1話
赴任した吹雪を執務室で出迎えたが、この場面で姿を現さない姿勢が明らかになった。
赴任間もなく航行することも危うい吹雪に初陣を与え、第三水雷戦隊として泊地棲姫との戦いに参加させる。吹雪のいきなりの初陣には夕立も「いい加減っぽい……」と提督に対して愚痴をもらした。
その後に花畑で落ち込む吹雪に提督は言葉をかけ、吹雪を元気付けた。
その言葉の衝撃的な内容は10話で明らかとなる。
第2話
訓練がなかなか上手くいかない吹雪に周囲は「何故提督は吹雪を鎮守府に招いたか?」という疑問を起こしていた。これについて長門は、提督が吹雪に目をかける理由について「特型駆逐艦はこれからの戦いに必ず必要となる艦隊型駆逐艦であり、提督が期待するのも分かる」と推察している。
またこの時、W島攻略の人選を長門に一任していたことが3話で明らかになっている。
第3話
「W島攻略作戦!」が開始され、艦娘たちは出撃し、作戦そのものは何とか成功したが、この作戦で如月が轟沈。提督は長門よりその報告を受けていた。 → 如月ショック
第4話
この回で初めて登場した金剛が提督に飛びついた、と思ったら大淀だった、という場面を見せ、金剛はブラウザ版と同様に「提督LOVE」という設定が採用されていることが分かる。
第5話
艦娘に対して、艦隊の総入れ替えが長門を通じて命じられた。艦娘一人一人を面接形式で執務室に招き、新たな艦隊編成を命じた。それによって吹雪は「第五遊撃部隊」に配属された。が、配属メンバーは性格が合わない者ばかりで、作戦遂行どころか旗艦も決まらず、一時は瑞鶴が再編成を申請しようとしたほど。それでも最後には、吹雪が指揮官としての隠れた才能を発揮し、彼女が旗艦に決まった。
第7話
第五遊撃部隊旗艦として経験を積む吹雪を呼び寄せて、「深海棲艦に暗号を察知されている事」を伝える。
なお、この回以後は時々「別の鎮守府」の存在も示唆されているが、こちらに提督が居るかは不明である。
第9話
FS作戦の準備が進む中、吹雪は第五遊撃隊の旗艦の任を解いて鎮守府に戻るよう命令が下され、吹雪は提督が自分に失望したのではないかと大きなショックを受けた。
吹雪は睦月と最上ともに鎮守府へ戻るが、その直後に作戦中止が長門たちに伝えられ、さらに手薄になった鎮守府が深海棲艦の機動部隊の攻撃を受け壊滅。長門はこの攻撃を考えて作戦中止を判断したと推察した。鎮守府の艦娘たちは提督の指示で脱出して彼女らに被害はなかったが、提督は執務室に最後まで残り、行方不明となってしまう。
長門は鎮守府再建に勤しむ艦娘たちに、提督が残した指令書を元に新たなMI作戦を準備すると宣言。そして吹雪は指令書の指示により、改になるよう告げられた。
第10話
吹雪は提督の意志を胸に訓練に励んでいたが、吹雪を鎮守府に呼び戻したのはそのためであったことが明らかになった。
吹雪は睦月に第1話で言葉をかけてくれた提督が、なぜ吹雪を選んだかについて話をしてくれたことを打ち明けた。それは、夢で晴れ着姿の吹雪が提督に微笑んで話しかけたからだという。また赤城も提督から自分の護衛艦は自分が選ぶよう言われたことを加賀に打ち明けた。
そして、指令書には吹雪が作戦によって重要な存在になると記されていた。
第12話
MI作戦が続く中、指令書では「全ては見せかけ」というキーワードを出し、各艦隊が敵を欺くような動きをさせた。さらに大淀からの無線で提督の生存が明らかになり、再着任したことが前線に伝えられ、これによって奮起した吹雪たちは作戦を成功させる。そして、大淀が涙を流して帰還を喜び、鎮守府に戻った吹雪が「おかえりなさい、司令官」と笑顔で出迎えている。
劇場版
今回の舞台のショートランド泊地には赴かず、何度か存在が語られるのみ。
評価
提督とは一体何だったのか?
原作のブラウザゲーム『艦隊これくしょん』においては艦娘を指揮する提督=プレイヤーであり、ゲームの構造として艦娘は秘書艦としてプレイヤー(提督)と一対一で会話することでキャラ性を把握する流れになっており、提督像については二次創作やアンソロジーなどでも多種多様である。
公式インタビューでも「提督の存在については、原作ゲームのプレイヤーであり、視聴者自身がアニメに登場する提督である」という旨の発言がなされている。
だが、プレイヤーへの配慮から個性を出さない様にした弊害と作品の描写不足により、独立したキャラクターとして見ると、技量や人格面に疑問符が付くような不可解な存在になってしまったとする意見が見られる。
アニメ提督への批判
第1話で水上移動もままならない吹雪をいきなり実戦投入したのを皮切りに、第3話の如月轟沈で悲しむ等のリアクションやショックを受けた面々に対する慰安等の行動も無かったため(姿や声がない以上描写のしようがないというのはあるが、脚本上一切のフォローも説明もなかった)、視聴者からは「艦娘の安否には無関心で、作戦の効率や自身の功績にしか目がないクソ提督」と受け止められ、非難を浴びた。これ以降この提督やアニメそのものへの賛否両論の嵐が吹き荒れた。
また、第7話から8話にかけての加賀や五航戦の長時間入渠の際も、重要な作戦を前に高速修復材を完全に枯渇させておきながら、そのまま作戦を強行させるなど、提督として「奇行」ともとれる作戦指揮を執っている。(ちなみに、高速修復材枯渇の原因としては、作中第7話において、「勢力範囲拡大に伴い補給線が伸びたことに加えて出撃も増えたこと」にあると説明されていた。)一応、ゲームと違って高速修復材が安定して支給されるわけではなく、その一方で広範に渡って作戦も進めなければならないという事情があるとはいえ、そうしたバックヤードや鎮守府外の上層部などに関する事情も詳細は明かされなかったため、そうした邪推やゲーム版を基準とした考察をせざるを得ない実情もあった。
更に、10話でのこれまで吹雪を優遇していた理由が明かされたシーンは、非常に理解しがたい流れから視聴者から強い批判を受けた(続編の劇場版での描写により、提督の吹雪への優遇に筋の通った解釈も可能となったが、本放送時点では「理解不能な理由で優遇」だった)。
こういった経緯からアニメ提督への強烈な反感が生じてしまった。そして、こういった問題点を覆すような好意的な人物背景も作中では描写されず、また前述の「視聴者自身がアニメ提督」という発言に対し、アンソロジーコミックや二次創作でよくあるような「艦娘たちとの会話や交流」など、視聴者が期待していたような描写も少なく、むしろ同一視されたら不快感を煽るような作中の行動が、「コレジャナイ」感を与えてしまい、「こんな描写ならそもそも提督を登場させる必要はなかった」とアニメ提督の存在そのものを否定する様な意見も噴出した。
概して提督に関する描写が決定的に不足していたため、脚本上奇妙と言える部分は無理な解釈で飲み込む視聴者もいる一方、いくらでも邪推できてしまう作品に出来上がってしまった。
なぜ提督は登場しなかったのか?
艦これの様に主人公が「プレイヤーの分身であるため、キャラ性がない」と言う作品の場合、二次創作では多種多様の提督像が作り出されている。公式の派生作品でも、独立したオリジナルキャラクターとしての提督が登場する作品も多い。
アニメ化に際して提督が登場しなかったのは、二次創作への影響を懸念したのではないかという説や、男性キャラクターを登場させると激怒する視聴者に配慮したためという説もある。
アニメでは基本的に提督と艦娘との関係が欠落しているため、明確に積極的な好意を示す提督LOVE勢は金剛のみとなっている。
10話において提督が見たという吹雪の夢についての描写も、提督の意図や吹雪との関係性の掘り下げといった描写が薄いということもあり、何の脈絡もない理由付けに見えたことから批判を受ける一因となった。
別ジャンルだが艦これアニメと同時期に放映していたソーシャルゲーム出身アイドルアニメの『オリジナル男性キャラ』である彼と引き合いにされることもある。
劇場版では…
劇場版では中部海域・北方海域の作戦指揮を執るためとの理由で終始不在だった。
しかし一方で、吹雪の特異性や繰り返されるループが明かされた事により、(視聴者の推測に委ねる形ではあるものの)提督が吹雪を優遇していた理由は概ね整合性が取れるようになった。
余談
その演出や行動原理に不可解な点が多いアニメ提督であるが、監督を務める草川啓造氏によって、提督の行動の意図については少しばかり言及されたことがある。
〈以下引用部分〉【出典:アニメージュ2015年5月号】
Q.”抗えない大きな流れ”というのは、第11話において赤城が言っていた、「私たちをある方向へと常にいざなう何か」ですね。これは実際のところ、どういったものだったのでしょうか?
A.艦娘たちは、在りし日の艦艇の魂を宿した存在ですが、その艦艇が辿ったであろう歴史の流れみたいなものが、アニメで描かれていた世界でも再現されようとしていたんです。
Q.提督は、それを断ち切ろうとしていた?
A.はい、そうです。
Q.そのために吹雪を育ててきた、ということでしょうか?
A.そうですね。そのために提督は吹雪を呼び寄せ、鍛え上げていました。そして、第9話で姿を消したあとは、”抗えない大きな流れ”の集結地点である棲地MI攻略作戦のために鎮守府外より大鳳を呼び寄せたり、トラック島から大和を出撃させたり、AL陽動作戦を仕掛けていたりしたんでしょうね。
Q.その結果、第12話は大量の艦娘が登場したわけですが、当初からここまで出す予定だったのですか?
A.最初から、全勢力を一箇所に集めて敵本拠を撃破する流れは考えていました。ただ、本当に全員登場させると決まったのは、シナリオ作成の中盤あたりです。逆に大鳳の参加は序盤の段階で決まっていました。棲地MI攻略作戦、つまり史実におけるミッドウェー海戦の時、大鳳は未就役でしたから、”抗えない大きな流れ”を覆すのに適した艦娘でもありました。
〈引用おわり〉
このことから、アニメ制作側の考え方として、アニメ提督は、艦娘の悲劇的な運命を断ち切るため、そして鎮守府の勝利のために存在する人物として位置付けられていたようである。
3話で死んだメインキャラ繋がりで某魔法少女アニメの彼らを連想するものも多い。彼らは後にぶちギレた悪魔によって叛逆され、首切られた先輩も実質復活するのだが、しかし「魔法少女達が死んで魔女になっても何か思う感情がない」という事が視聴者と劇中キャラのヘイトを意識的に集めていた。
なお8号氏のシリーズのような、「アニメ提督は死亡し、終盤の展開は代役の貢献によるもの」とするように、終盤の展開について二次創作で様々な解釈がなされている。
関連イラスト
「人物設定が非常に不可解」「本人の画が存在しない」という性質上イラストは少ないが、アニメ提督に対する批判的な創作が散見される。
関連タグ
艦隊これくしょん 艦隊これくしょん(アニメ) 提督(艦隊これくしょん)
他作品における似た立場の人物
アニメ審神者(刀剣乱舞):こちらも破天荒な作戦を決行したが、『花丸』の性質上さほど問題にはされていない。
その後に放送されたシリアスな「活撃/刀剣乱舞」の審神者は、容姿・声付きのいちキャラクターとして登場。
赤羽根P:ゲーム『アイドルマスター』におけるプレイヤーの分身。こちらもゲームでは「声・姿なし」だったが、本作とは逆にアニメで声と姿がつけられ、独自の性格なども肉付けされた。
武内P:ゲーム『アイドルマスターシンデレラガールズ』におけるプレイヤーの分身。こちらも赤羽根Pと同様のアプローチが取られたが、よりインパクトの強いキャラクター設定がされ、大きな話題となった。
結城理・鳴上悠:ゲーム『ペルソナ』シリーズ『3』『4』における主人公。こちらはゲーム版の時点でキャラ絵、音声(戦闘時の掛け声など)ともに存在するが、シナリオ進行上における台詞は選択肢以外存在しない。しかし、アニメ版で登場人物としてきちんと性格付けがなされ、前述の赤羽根P、武内Pと同様にプレイヤーの分身でなくなった事への反発と、独立した一キャラとしての人気を獲得した。
アーマード・コアシリーズ:主人公は「声・姿なし」だが、それ以外のキャラも作中では声のみで全く容姿が出ない。そのためプレイヤーは想像力を駆使してキャラの容姿や作中語られていないバックストーリーを構築していくのが恒例となっている。
北郷一刀:ゲーム『恋姫†無双』シリーズの主人公だが、本作とは逆にアニメ版では存在を抹消された。しかしヒロインの中でも人気の高い関羽(愛沙)を主人公に据え、それ以外にも出番や活躍を増やすために時系列やヒロイン達の設定を一部改変した結果、それはそれで成功と言える成果を出している(しかし一刀の代わりとして登場し原作にも登場した劉備や戦国無双主人公の扱いについては…もはや言うまい)
火星年代記:アニメ提督を連想させるエピソードがある。
ピーナッツ:全編を通して登場する大人キャラ全員が姿を見せず、バルタン星人の声に似た文字化不能な謎の言語を発しており、視聴者は子供キャラのリアクションや相槌がなければ彼等が何を喋っているのか判断出来ない。