BASTARD!!
ばすたーど
概要
正式名称は『BASTARD!!-暗黒の破壊神-』(バスタード あんこくのはかいしん)
主なメディアミックス展開にOVA、小説、カセットブック、ドラマCD、ゲームなど。
『ウルトラジャンプ』2010年6月号の掲載を最後に中断中(一応は不定期連載という扱い)。
ジャンプ黄金期真っ盛りに連載が始まったことから、
主人公であるダーク・シュナイダー(D.S.)が、強力な魔法使いや戦士たち、果ては天使や悪魔と戦いを繰り広げるダークファンタジーである。
D&Dやウィザードリィに影響を受けた本格的なファンタジー要素がヒロイックファンタジー作品に馴染みのなかった多くのライトユーザー層に受けた(日本ではファンタジーの草分け的存在の『ロードス島戦記』と同時期)。1980年代後半のジャンプ黄金期真っ盛りに連載が始まったこともあり、後のファンタジー作品群にも多大な影響を与えた作品として知られる。
緻密かつ美麗な作画は、かの冨樫義博に「絵では絶対に敵わない」と言わしめるほどであった(同人誌『よしリンでポン!』で述懐)。
基本的なストーリーラインは超シリアスだが、楽屋オチ系の悪ノリを含むギャグ・パロディ・エロも満載で、要するになんでもあり。
連載当時の少年ジャンプは、桂正和も限界に挑んだようにエロ規制もなかなか厳しかったのだが、ものともしないギリギリ描写を多数残している(「寸前」や「事後」、『本番』とも受け取れるシーンも多数掲載された)。
作中に登場するほとんどの人名・国名・魔法名・およびその詠唱などの用語は主に洋楽のハードロック・へヴィーメタルバンドやそのメンバー名を元にしている。
よく休載することでとても有名な作品でもある。
実際、80年代後半から連載が始まったにもかかわらず、終わる気配すらない。
この漫画の連載開始から10年後に始まり、休載することで有名なHUNTER×HUNTERにすら巻数で負けていると書けば、いかに刊行ペースが遅いか分かるだろう。
この辺りの詳しい事情は後述の「連載状況」「完全版」を参照。
主な登場人物
主人公
メタ=リカーナ王国
鬼道三人衆
ア=イアン=メイデ
イダ・ディースナ(召喚士)
イングヴェイ・フォン・マルムスティーン(騎士(光速の剣))
サイクス・フォン・スノーホワイト(魔導師(時空系))
ザック・ワルダー(格闘家)
シェラ・イー・リー(吟遊詩人)
ジオン・ゾル・ヴァンデンヴァーグ(暗黒騎士)
バ・ソリー(蟲使い)
ブラド・キルス(騎士)
ボル・ギル・ボル(影使い)
マカパイン・トーニ・シュトラウス(鋼糸使い)
ロス・ザボス・フリードリッヒ(魔法剣士)
天使
悪魔
7大悪魔王
バエル(ポクチン)
魔神
連載状況
連載期間が長すぎて、初期とは絵柄や世界観が大幅に変わっており、現在は完結が危ぶまれるほどの遅筆および、あまりにも風呂敷を広げすぎたがゆえの迷走が続いている。あまりにも混沌な不安定要素を次から次へと放り込んだため、作者ですらフラグや世界観が把握できなくなっているのだろう。
週刊少年ジャンプで連載していた四天王との戦いを描いた「闇の反逆軍団編」から元々作画は凄かったが、書き込み量と週刊連載のペースが合わず、原稿を落とすことが度々あり問題視されていた(時には大きな吹き出しに大きく文字を入れてセリフの勢いで誤魔化していた。主に作画量の多い見開きなどで使用された。単行本で没カットとして掲載)。
結局、次章の「地獄の鎮魂歌編」の序盤で週刊連載は打ち切られる事となり、続きは季刊誌「少年ジャンプ」へと移った。週刊連載では成し得なかった時間と手間をかけたトーンワークは非常に美麗であり、当時の漫画の最高峰といっても過言ではなかった。
当初は破壊神アンスラサクスとの戦いを描いた「地獄の鎮魂歌編」で作品を終わらせる予定だったらしいが、大人の事情により連載は継続することになった。ここが本作品と作者のターニングポイントとなる。
続く「罪と罰編」における天使や悪魔との戦いからインフレが激化し、話の規模も比べ物にならないほど壮大な物と化していく。話の内容に比例し、作画の書き込みも凄まじくなったが、結局、話を畳みきれずに一時中断となる。
「背徳の掟編」では週刊少年ジャンプにカムバックを果たす。当時のジャンプは暗黒期と言われており、連載ペースなどで問題を抱えつつも一定の人気があった本作を呼び込むほど必死だったと言われている。
しかし、この章では敵と味方の再生能力が凄まじく向上し、相手を破壊してもすぐさま再生するというような高次元のバトル(と見せかけた単調な殴り合い)が延々と繰り返され、評価を大きく落とすことになった。
連載ペースは月1の予定だったが、当初から原稿を度々落としていた。途中からは連載が未完にも関わらず、完全版を出版し、その修正作業に没頭するようになる。
数年して「ウルトラジャンプ」へ移籍。そこでも休載を何度も繰り返して、10年がかりで背徳の掟編をようやく完結させる。
これで話が前に進むと思われたが、未完に終わっていた罪と罰編の補足(魔力の刻印篇)に入ってしまい、多数の読者を愕然とさせた(「背徳の掟編」でD・Sが6人の魔王から「ユダの痛み」を奪ったと明かされているが、中断時には魔王に劣る悪魔大元帥に苦戦している状態。また方舟の戦いも全く片付いていない。これまでの刊行ペースと照らし合わせ、完結が絶望視された瞬間でもあった)。
このため、ファンの間では「アンスラ(地獄の鎮魂歌編)で終わったら名作だった」などとよく語られる(「方舟(罪と罰編)もいいよね」派などもある)。
「魔力の刻印篇」はD・Sがポルノ・ディアノ相手に善戦し始めると言う内容。導入部分は作者が「罪と罰編」の直後に出した同人誌「未使用・改訂版」から原稿を流用している。新しく描かれた戦闘場面では、合間にサービスカットが過剰に挟まれ、大した展開も見せないまま連載休止となった。本誌の連載は2010年、単行本の発売は2012年を最後に過去最大級の休止期間となっている。
休止以降、作者の萩原一至が何をしていたかというと、他のアニメやゲームのキャラクター原案やデザイン、画集の出版、セルフパロディとなる本作の成人向け同人誌の制作などをしていたようである。
ゲーム『デモンゲイズ2』発売を記念した2016年のベニー松山との会談では「絵だと何日も描かなければいけないページが、文章だと数十秒で書ける。連載を3年やって一つのお話ができるという3年がかりの仕事が文章だとひと月もかからない」とノベル制作に意欲を見せている。また「漫画の原稿だと完結するのは無理なんですよ」とも零していた。
編集に文章での制作を伝えたところ、難色を示していたそうだが、萩原の方は「挿絵も自分で描くからラノベでやらせて欲しい」と引き下がらなかったという。
2017年の同人誌「桑」で作者が語った今後の展望は「地獄編はプロットが溜まっているが、本編より何百年か前の四天王の話を作っており、書き上げたら集英社で出してもらえるかも」とのことであった。
結局のところ、小説版の発行も長年滞っており、完結自体が難しいのかも知れない。仮に製作中の本が出たとしても、どちらも過去の話である。
完全版
2000年から2009年にかけて発行された書籍。通常のWJコミックスと異なり、本のサイズが大きく装丁も豪華だが、定価は3000円ほどと値が張る。
ちょうど当時の漫画業界が完全版ブームであり、それに便乗したものと思われる。
『BASTARD!!』の場合は本編にも大幅な加筆が加えられているのが特徴。
1巻はデッサンの狂いなどを細かく修正する程度だったが、「全面的に改稿」と宣伝していたせいか、「違いが分からない」と読者からの批判が殺到する。
これに対して作者本人も「シロい(素人)読者には分からない」と自身のホームページに設置していた掲示板でブチ切れる騒ぎとなった。
そのせいか、2巻では本編をまるごと書き換えるレベルでの修正を行っている。連載初期から画風が大きく変わっているが、連載初期の画風に寄せつつ修正されている。
カイ・ハーンとの濡れ場は、作者曰く「調子に乗ってエロにしすぎた」せいで中断。続きは「EXPANSION」(拡張版)と題した同人誌で展開されることとなった。D・Sが解毒と称してカイを抱くという話であり、一応読まなくてもストーリー上の進行に影響はない。
このような大幅な修正作業の影響を受け、当時連載していた「背徳の掟編」の執筆はストップ。「連載をほったらかしにして過去のエピソードの修正に没頭する」という作者の執筆スタンスに多くの批判が寄せられた。そもそも「完全版」とは「連載が完結した作品を復刻して発売するもの」がほとんどであり、本作のように連載中にも関わらず完全版を出版したケースは非常に珍しかった。
結局、2巻のような修正はやめる事になり、大きく修正された2巻までとそれ以降と、統一性のない構成となった。また、通常版のコミックスが27巻で中断しているように、完全版も2009年に発売された9巻を最後に刊行が止まっている。話は「罪と罰編」までであり、おそらくここから「魔力の刻印篇」へと繋げ、時系列順に掲載する算段であったと思われる。
後に出版された「文庫版」も、「完全版」同様9巻で刊行停止となっている。
もしもこの色んな意味で不完全な完全版を出さなければ連載状況ももう少しマシになっていたかも知れない。