プロフィール
名前 | 中川夏紀 |
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誕生日 | 6月23日 |
身長 | 156cm |
星座 | 蟹座 |
血液型 | A型 |
担当楽器 | ユーフォニアム |
好きな色 | 紫、黒 |
趣味 | ギター、カラオケ |
特技 | 計算がめちゃくちゃ早い、ただし数学は苦手 |
好きなもの | クマ!、からい食べ物 |
嫌いなもの | 抹茶、あんこ |
CV | 藤村鼓乃美 |
概要
北宇治高校の2年生で、吹奏楽部に所属。低音パートでユーフォニアムを担当している。
普段から斜に構えたような態度をとっている不真面目な雰囲気の女子生徒で、へらりとした皮肉っぽい笑みを浮かべて本心をはぐらかすことを常としている。
元々は高校に進学してから吹奏楽部を始めた初心者であり、入部した当初はサックスを希望していたものの、希望者の定員オーバーによってユーフォニアムを任されることになる(短編集1巻、129ページ、夏紀編、64ページ)。しかし、だらけきった部内の練習環境や、そのような環境に耐えかねた傘木希美たち同級生の集団退部などの要因が重なったことで、入部してからの1年間はまともに練習に打ち込むことはなく、部活の時間中に平然とサボるような日々を送っていた。
2年生に進級した当初も、夏紀は従来のだらけた雰囲気を引きずっていたものの、新しく入ってきた1年生の黄前久美子の腕前や新任顧問の滝昇の指導などに刺激を受け、次第に上達への意欲に目覚めるようになる。以降は、激変する部活のなかで自分なりの上達の道を模索するかたわら、内に秘めた優しさを垣間見せながら部の仲間たちを力強く支えている。
人物
容姿
ツンと上向きに吊り上がった両目とまばらに散らばる前髪、かき集めるようにして束ねられた茶髪のポニーテールが特徴的な、どことなくアンニュイ(物憂げ)な雰囲気を漂わせる女子生徒(第二楽章前編、173ページ、207ページ、第二楽章後編、260ページ、短編集2巻、13ページ)。その容貌から、TVアニメ版の一部の視聴者たちからは「ポニテ先輩」の通称で呼ばれている。
気の強さを感じさせる鋭い目つきや短い制服のスカート、へらりとした皮肉っぽい笑みなどで構成される彼女の要素は、同じパートのメンバーである長瀬梨子が初見で「この子、不良だ」と確信するほどの攻撃的な印象を形作っている(原作2巻、74ページ、短編集1巻、124ページ、129ページ)。また、普段の学生生活から離れた際に着ている私服などの趣味についても、黒や紫、グレーといった落ち着いた色調でまとめられており、ボーイッシュ的なカッコよさを追求したものになっている。(原作2巻、170ページ、第二楽章後編、125ページ、短編集2巻、133ページ、最終楽章後編、41ページ、79ページ、夏紀編、14ページ、31ページ、171ページ)
なお、原作小説では目つきの悪いショートヘアという記述があり(原作1巻、121ページ、原作3巻、178ページ)、コミカライズ版でもその描写を踏襲したショートヘアの姿で描かれている(原作小説の久美子2年生編「波乱の第二楽章」以降は、髪を伸ばしたという設定により後述のTVアニメ版の容姿に寄せた記述がなされている)。一方、TVアニメ版では当初はデザイン案のひとつとして原作に準拠したショートヘアのものもあったが、そののち茶髪のロングヘアーにポニーテールというデザインに変更され、ショートヘア版の構想はホルンパートの沢田樹里に転用される形となっている。
性格
”楽にテキトーに”を生きるうえでのコンセプトに挙げ、表面上は飄々(ひょうひょう)とした不真面目な振る舞いを見せている彼女であるが(原作2巻、71ページ、234ページ、第二楽章後編、262ページ)、その裏には他者を思いやる優しさや物事を俯瞰(ふかん)して見つめる聡明(そうめい)さを隠している。とりわけ、義理人情に篤(あつ)い彼女は、時として自身の心ごと他者に捧げることも厭(いと)わないような、不器用さゆえの優しさと脆(もろ)さも併せ持っている。(原作2巻、233~234ページ、TVアニメ『響け!ユーフォニアム2』コンプリートブック、16ページ)
他者に対して素直になれないがゆえに、語られる台詞の端々に毒が混じることもしばしばあるものの、それも元来の不器用さからくる彼女なりの照れ隠しによるものである(原作2巻、232ページ、原作3巻、148ページ)。また、口は悪いが基本的には他者に対して寛容であり、誰かに対して本気で腹を立てている姿はほとんど見せることはない。(第二楽章前編、363ページ)
自身が天才にも変人にもなりきれない「凡人」であることをうすうす自覚している夏紀は、自身が他者に向けている優しさや逆に他者から寄せられている「いい人」という好評について、才能や技量の差からくる諦めや他者へのそもそもの無関心、そして誰かの一生懸命を馬鹿にしていたかつての自分自身を許せない想いからくる罪滅ぼしの意識がそうさせているのだと捉えている。惨めで凡庸な自身の本当の姿を知りつつも、表面上だけの寛大な振る舞いで他者とのコミュニケーションを取り続けてきた彼女は、そのような自分自身を「中川夏紀は、めちゃくちゃ身勝手な人間やねん」という自嘲(じちょう)的な想いのもとに見つめている。(夏紀編、188ページ、258~259ページ、283~286ページ、289ページ)
家庭環境
2階建ての一軒家に共働きの両親と3人で暮らしており、夏紀本人をして「平凡を絵に描いたような」生活を送っている。その家の2階にある西日がまぶしい六畳間が彼女の自室となっており、白や黒、グレーといったモノトーンの調度品で室内を彩っている。(夏紀編、28ページ、208~209ページ、261ページ、266ページ)
勉強や部活、後述する予備校といった多忙な生活のためにアルバイトは行っておらず、母親からの小遣いが主な金銭の収入源となっている。そのため、喫茶店でコーヒーや紅茶などを気軽に頼むのをためらったり、遊園地に友達と遊びに出かけるために母親と小遣いの交渉を行うなど、貧乏学生としての気苦労を推し量ることのできる様子がしばしば登場している。(原作1巻、239ページ、夏紀編、30ページ、137ページ)
その他
- 普段の学生生活では進学クラスに属しており、高校での勉強に加えて予備校にも通うなど勉学に精を出している。また、学科の成績が振るわない低音パートの1年生トリオを気にかけて忠告する様子も見せている。(原作1巻、190ページ、原作2巻、225ページ、原作3巻、102ページ、106ページ、短編集1巻、182ページ)
- 好きなものはクマ(なお、原作小説のキャラクタープロフィールでは「クマ!」と強調がなされている)。学校の備品である自身のユーフォニアムの楽器ケースをほかのものと判別しやすくするために、ケースの取っ手にやや色あせた黄色い熊のストラップをぶら下げている。そのほか、部活を引退した際に後輩たちからもらった写真立てのフレームにも、同じく熊のマスコットキャラクターが描かれている。(原作1巻、68~69ページ、第二楽章前編、95ページ、夏紀編、29ページ)
- 好きな食べ物は辛いもののほか、コーラやレモンスカッシュ、ジンジャーエール、シナモンといった刺激物も含まれる。対して、優子が好んで食べているような甘いものに関しては「甘すぎ」などと敬遠する様子を見せている。(短編集1巻、123ページ、133ページ、夏紀編、30~31ページ、190ページ、193ページ、211ページ)
- 好きな音楽はジャズ(原作公式ガイドブック、31ページ、50ページ)。また、ロックやパンクをはじめとする洋楽も好んでよく聴いており、その影響によって流暢(りゅうちょう)な発音で英語の歌詞を口ずさめるまでになっている。なお、この才能はあくまで歌のみであり、英語の授業のリスニングなどではほとんど応用できていない。(第二楽章前編、159ページ、夏紀編、26ページ)
- 洋楽のほか、『アントワープブルー』をはじめとする国内のバンドもいくつか聴いているが、彼女の好きなバンドの歌詞はたいてい、希美や優子をして「刺激が強すぎる」「ピー音入るような過激な歌」と答えるようなものである。(短編集2巻、144ページ、夏紀編、138ページ、148~149ページ)
演奏技術
ユーフォニアム
高校に進学してから楽器を始めたため、担当楽器であるユーフォニアムの経験年数は1年程度と、先輩の田中あすかや後輩の黄前久美子たちと比べるとかなりの隔たりがある。
「みんなで楽しく吹ければそれでいい」という入部当時の吹奏楽部の方針や、それに反発して退部した希美たち同級生の大量退部、そして直属の先輩であるあすかの放任主義などが重なり、入部して2年生に進級するまでは練習に対して真面目に打ち込むことはなく、楽器の実力も横ばい同然の状態であった。(夏紀編、79ページ、139ページ)
しかし、2年生への進級と時を同じくして就任した新任顧問、滝昇の示した新たな指導方針により一変した部内の空気や、新しく入部した後輩である久美子の演奏技術に刺激を受けて、これまでとは一転して熱心に楽器と向き合うようになる。吹奏楽コンクールA編成部門のメンバーには実力差の関係から選ばれなかったものの、その後も地道に努力を続けて着実に演奏技術を向上させている。(原作3巻、176ページ)
高校から楽器を始め、まともな研鑽(けんさん)もせずに1年間を過ごしたために、ソルフェージュ(歌唱練習)などの音楽用語がわからなかったり、マウスピースのみで正確な音程を狙うことができなかったりと、知識の浅さを露呈してしまう様子がたびたび見受けられる(原作1巻、96ページ、111~112ページ)。また、楽器演奏の技術においても、オクターブの跳躍で音を外しかけたり、低い音から高い音に移行するフレーズを苦手とするなど、基本基礎の不足からくる未熟さを見て取ることができる(原作3巻、273~274ページ、第二楽章前編、292~294ページ、第二楽章後編、14ページ、154ページ)。それらの技術不足を自覚している夏紀は、自身の後輩でありながら優れた腕前を持つ久美子や新1年生の久石奏たちに対しても臆面(おくめん)なく教えを乞うており、割り切った性格のもとに知識と技巧を習得するよう努めている。(原作3巻、274ページ、第二楽章後編、354~355ページ)
彼女の担当しているユーフォニアムのモデル(型番)は、YAMAHA YEP-321(クリアラッカー仕上げ)。一般に「細管」(※)と呼ばれるモデルで、4本あるピストンすべてを右手の指で操作する。
(※管の円周部分の直径のことをいい、久美子やあすかの使用モデルは「太管」に分類されている。「太管」は音量・音色ともに豊かで華やかであり、「細管」は明るく軽い吹奏感が特徴とされている)
エレキギター
吹奏楽部で演奏しているユーフォニアムのほかにも趣味でエレキギターを嗜(たしな)んでおり、新入生歓迎演奏などでポップス曲を演奏する際に持ち替える姿を見ることができる。(劇場版『誓いのフィナーレ』)
元々は夏紀が中学2年生のとき、当時大学でバンドを組んでいた年上の従姉からそれまで使っていたギターを譲ってもらったのがきっかけであり、以降は動画サイトを見あさって参考にするなどして自主的な上達を楽しんでいた(夏紀編、113ページ、252ページ)。ギターの演奏に関してはあくまで自己満足の範疇(はんちゅう)であり、誰かに聞かせるつもりも誰かのために弾くつもりも一切ないという姿勢を決めているものの(夏紀編、83ページ、116ページ)、それでも自身のものとなったギターに愛着を抱いたり、ピックスクラッチのけたたましいサウンドなどによって演奏のたびに胸がすくような高揚感を実感するなどしている。(夏紀編、165~166ページ、251~252ページ)
彼女の所持しているエレキギターのモデルは、YAMAHA PACIFICA112V OVS(オールド・バイオリン・サンバースト)。縁に近づくほど黒みを増す艶やかなダークブラウンが特徴的な、優れた演奏性と高品質なサウンドを兼ね備えた一品である。(夏紀編、112ページ、劇場版『誓いのフィナーレ』)
経歴
中学生時代
南中学校に通っていた当時はどの部活にも属さない帰宅部であり、同じ帰宅部や軽音楽部の生徒たち数名との交友を持ちつつ自分のための時間を過ごすことを常としていた。同時に、「熱血」や「根性」といった言葉やそれを基にした統制や束縛を強く毛嫌いし、そのような意識のもとに部活に熱心に取り組むような人間を時代遅れなやつだと嘲(あざけ)っていた。(夏紀編、27ページ、35~40ページ、44ページ)
そのような中学3年生の冬のある日、クラス対抗の大縄跳びの練習をサボっていた夏紀は、吹奏楽部の部長として活躍していた傘木希美に話しかけられる。練習をサボっていたところを注意されたのだと察した夏紀は警戒心をあらわにしながら彼女と応対するが、そのなかで夏紀は希美の言葉のなかに部活経験者としての矜持(きょうじ)の存在を見いだし、自身のものとは明らかに異なるその考え方を気に留めている。(夏紀編、36~42ページ)
そして、中学生活の最後の日である卒業式において、夏紀は大した感慨も抱かないまま参列するなか、ふと卒業に際して涙を流す希美の姿を見つける。式が終わってからも後輩たちからたくさんの寄せ書きや贈り物を貰ったり、苦楽を共にした仲間たちと泣き合っていた彼女の様子を遠巻きに眺めていた夏紀は、「なんで?」という疑問とともに自分のためだけに費やしてきたこれまでの生き方に寂しさを覚え、同時に充実した学生生活を送っていた希美の姿に「彼女のような人生を送ってみたいと少しだけ思う。夏紀だって一度はなってみたい、学校が好きな人間に」と憧れを募らせるようになっている。(原作2巻、230~231ページ、夏紀編、43~44ページ)
高校1年生時
北宇治高校への進学後、夏紀は偶然同じクラスになった希美から突発的に吹奏楽部への入部を勧められる。当初は彼女の無自覚な明るさをまぶしく思っていた夏紀だったが、最終的には「振り回されるのも悪くないかもしれない」という根負けと、「見てみたかった、あの子と同じ世界を」というかねてからの憧れに押される形で入部を決めている(夏紀編、45~53ページ、90ページ、272ページ)。もっとも、入部前から北宇治高校の吹奏楽部を「人数が多い割には練習が少なくて楽」と聞いていた夏紀は、入部当初の雰囲気についても元々の自身の嗜好(しこう)に適っていたため、まあまあ居心地よかったと答えている(原作2巻、228ページ、231ページ、夏紀編、53ページ)。久美子をはじめとする低音パートの1年生3人に対して1年前の部内の状況を語った際にも、同じパートの梨子とともに当時の3年生(現在の卒業生)と一緒になって練習をサボってお菓子を食べているシーンが登場している。(TVアニメ版1期7話)
そのような環境下で過ごしていたあるとき、希美や優子、サックス担当の若井菫をはじめとする「やる気のある1年生グループ」が当時の3年生部員たちと衝突を起こし、次々と退部するという事件が起こる。どちらかといえば当時の3年生部員たちのスタンスに近かった夏紀は、馬鹿正直に3年生にぶつかっていく1年生たちに対して「聞く耳持ってへん相手に労力割くとかめっちゃ時間の無駄やん?」などと、波風立てずに代替わりの時期が来るまで待てばいいのにという現状維持の思いを抱いていた。したがって、衝突の結果ほかの1年生たちが次々と辞めていったことについても、3年生と1年生のあいだに生じていた熱意の隔たりを挙げて「こだわるかこだわらないかの話ではなく、耐えられるか耐えられないかの話なのだ」と冷静に状況を見極めたり、先輩たちの露骨な仕打ちを例に出しながら「そりゃあこんな部活いたないよなあって、普通に思った。あの子らが辞めても、べつになんとも思わなかった」と、仕方ないという思いを明かしている。(原作2巻、231ページ、夏紀編、66~68ページ、75ページ、88ページ)
しかしながら、夏紀が吹奏楽部に入部するきっかけであった希美が3年生部員との衝突に苦しんでいたことについては耐えられなかったために、苛立(いらだ)った夏紀は希美と対立している3年生部員に対して「言っても無駄だよ、そいつら性格ブスだから!」と言い放ってしまう。この一言が「やる気のある1年生グループ」と3年生部員たちの衝突の余波を低音パートに招く事態となってしまい、先輩から傷つけられた梨子や彼女をかばって先輩たちに怒りの声を上げた後藤卓也、そして上手く立ち回って事態を収束させてくれたあすかたちに対して「迷惑をかけた」と負い目を抱え込むことになる。(原作2巻、232ページ、TVアニメ版2期2話)
(なお、夏紀編『飛び立つ君の背を見上げる』では、希美の退部後に彼女の陰口を叩いていた3年生の先輩たちの様子を偶然目にした夏紀が衝動的に割り入って上述の台詞を言い放ち、窮地に陥ったところをあすかに助けてもらうという流れになっている。※同、92~101ページ)
なお、希美をはじめとする同級生が一斉に退部しても夏紀が部に残り続けた理由は、「希美の影響を受けた自分をなくしたくない」という、かつての憧れに対する見栄と負い目がない交ぜになった個人的な感情と、彼女と同じく部に残った優子からの「ギター教えてよ」という頼みを引き受けてしまったことによるものである。(夏紀編、105~106ページ、110~111ページ)
高校2年生時~吹奏楽コンクール京都大会
2年生に進級した当初も、従来のだらけた雰囲気に呑まれているためか練習にはあまり熱心ではなく、個人練習の時間に机に突っ伏して居眠りする、窓からぼんやり外を眺める、イヤホンで音楽を聴くなど平然と練習をサボっており、しまいには「5時を過ぎたから」という理由で部活を早退したりもしている(原作1巻、74ページ)。結果として楽器の腕前はあまり伸びているとは言えず、同じパートの同級生である卓也からは「(基礎的能力である)バズィングが全然できていない」とも評されている。(原作1巻、111ページ)
しかし、新しく入ってきた後輩である久美子から「一緒に練習しませんか?」と聞かれたことや、新任顧問の滝昇の指導によって上達が実感できたこと、そしてその成功体験を部員全員が共有したことから起こった部内の雰囲気の刷新などによって、変化への戸惑いとともに徐々にやる気を身につけていく(夏紀編、121~122ページ、140ページ、285ページ、TVアニメ版1期4話)。普段の練習以外にも、ソフトケースに楽器をしまって自宅に持ち帰るなど、まさしくこれまで「ドブに捨てていた」時間を有効に活用しようとする姿勢がうかがえるようになる(TVアニメ版1期7話)。その後の成長には目覚ましいものがあり、吹奏楽コンクール京都大会に向けて行われたオーディションでは努力相応の実力を見せた。しかし、より高い実力を持つあすかと久美子のふたりには及ばず、A編成部門のメンバーを決めるオーディションには不合格となってしまった。(TVアニメ版1期9話)
吹奏楽コンクール関西大会以降
吹奏楽部が本格的にコンクールシーズンに入ると、夏紀はオーディションの落選組で構成されたサポートチーム「チームもなか」のメンバーとして、コンクールに出場するメンバーたちのサポートに励んでいる(なお、原作小説では吹奏楽コンクールB編成部門に出場し、以降は副顧問の松本美知恵の指導を受けながらひと足早く文化祭の練習に取り組む形となっている。※原作2巻、25ページ、63ページ)。それと並行させる形で、吹奏楽コンクール京都大会(府大会)における躍進を目の当たりにして吹奏楽部への復帰を志した傘木希美のために、彼女が承認を得たいあすかとの調整役(橋渡し)を受け持っている。
また、吹奏楽コンクール全国大会に向けた練習のなかで先輩であるあすかが退部の危機に直面するようになると、最悪の事態を想定したあすかと顧問の滝から「代役としてコンクールに参加する可能性がある」ことを伝えられ、秘密裏にコンクール曲の練習に励むことになる(原作3巻、102~103ページ、161ページ、169ページ、176ページ、236ページ)。そののち、全国大会の本番まで3週間を切り、あすかの復帰を待つ余裕がなくなったことを受けて、夏紀は1週間の猶予(ゆうよ)付きという形でA編成部門のメンバーに組み入れられている。
期せずして栄えあるメンバーのひとりに選ばれた夏紀だったが、先輩であるあすかに有終の美を飾ってもらいたいという個人的な想いとあすかの復帰を望む部員たちの総意を受けて、1週間の猶予のうちにあすかの復帰を果たそうと動きを見せるようになる(原作3巻、183~184ページ)。そのために3年生の先輩である中世古香織たちとともに『あすか先輩を連れ戻すぞ大作戦』に関わった夏紀は、後輩の久美子をあすかの自宅へと差し向け、彼女の母親を懐柔するとともにあすかを元気づけるといった具体的な構想を明かすなどしており、作戦の実行者となった久美子の意志を力強く支えている。(原作3巻、181~183ページ、216ページ、266ページ)
副部長就任~高校3年生時
コンクールシーズンの終了に合わせてあすかたちの代の部員(3年生)が引退すると、夏紀や優子たちの代(2年生)は新体制を決めるための役職会議を開く。そしてその会議において、夏紀は部長に就任した優子に続く形で自身が副部長に選ばれたことを明かし、皆の同意を得て同職に就くことになる。(短編集1巻、221ページ、TVアニメ版2期13話)
夏紀の副部長への選出は、前任の副部長であるあすかの指名によるものであり、低音パートの同級生である梨子の口からも、あすかのたっての要望であることが明らかにされている(なお、あすかが夏紀を選んだ表向きの理由は「面白そうだから」というものであるものの、実際には突っ走りがちな優子を押さえることのできる「緩衝材」としての適性を見いだされた上での指名となっている。※短編集1巻、222ページ、短編集2巻、96~97ページ、夏紀編、138~146ページ)。夏紀の副部長選出に対して、優子は当初いつものように彼女に反発を示していたものの、結局新体制は優子と夏紀をツートップとして発足することになった。
新体制の発足から間もなくして行われた定期演奏会では、第3部の『日本おとぎ話ラプソディー』(編曲:小島里美)を中心とした演目のなかでパフォーマンスを行うにあたり、浦島太郎のコスチュームを着ることになる。乙姫の衣装を着た優子とともに第3部の司会進行を任せられた夏紀は、ほかの2年生たちの強引な提案によって司会とあわせて優子とのデュエットも披露することになり、本番までの練習期間中にふたりで喧嘩しながら歌の練習にあたる様子がたびたび目撃されるようになっている。(原作公式ガイドブック、89~91ページ)
4月になって新年度を迎えてからは、プリントや楽譜といった資料を部員たちに配布したり、ほかの役職持ちの3年生や各パートのリーダーたちとともにミーティングに参加するなどして、部の運営の一助を担っている(第二楽章前編、158ページ、268ページ、第二楽章後編、269ページ)。そのような多忙な業務を着実にこなす幹部としての手腕と、部員たちへの気配りを欠かさない人情味にあふれた振る舞いは、久美子や新1年生の剣崎梨々花をはじめとする多くの後輩たちから高い信頼を寄せられるものとなっている。(第二楽章前編、300ページ、349ページ、第二楽章後編、262~263ページ、短編集2巻、127ページ)
コンクールシーズンでは自身もA編成部門の出場メンバーとして練習に取り組むかたわら、部の目標である「全国大会金賞」を成し遂げるためにたったひとりで頑張ろうとする部長の優子を献身的に支えている。とりわけ、関西大会(支部大会)に向けた夏合宿の練習では、課題のすべてをひとりで抱え込もうとするあまり体調を崩してしまった優子に「全部自分の手でやらんと気が済まん? そんなにうちらは信用できひん?」というきつい制止の言葉を投げかけている。そして、それでもなお優子が意地を張って仕事を継続しようとした際には、「アンタの言う部長って、何? しんどい体引きずり回して無茶することを部長って呼ぶなら、そんな役職、今日で廃止すれば。一人に押しつけへんようにしよって、去年のあすか先輩見て決めたんとちゃうかった?」と本気の怒りをあらわにし、強硬的な態度のもとに優子を床(とこ)に就かせている。(第二楽章後編、208~211ページ)
引退後
コンクールシーズンが関西大会で終わり、植物園での演奏会を最後に吹奏楽部を引退した夏紀は、「なんか、心にぽっかり穴があいた感じがする」というようなバーンアウト(燃え尽き)を実感しながら卒業までの日々を漫然と過ごしている。(短編集2巻、12ページ、138ページ、140~141ページ、夏紀編、7ページ、27ページ、115ページ)
将来の進路である大学に一般受験組より早く合格したこともあり(短編集2巻、231ページ、234~235ページ)、卒業までの余白時間については映画観賞や希美との談笑、優子とのカラオケなどに費やしている(短編集2巻、133~134ページ、137~138ページ、143ページ、夏紀編、20ページ、31ページ、112ページ、127ページ)。あわせて、軽音楽部に移ったかつての吹奏楽部同期、菫からの頼みを引き受ける形でツインギターのツーピースバンド『さよならアントワープブルー』を優子とともに結成し、菫たちのバンドの前座として3月に行われるライブに出演するためにふたりでギターの練習に取り組んでいる。(夏紀編、119~123ページ、137ページ、206ページ、213~215ページ)
北宇治高校を卒業してからは、優子と希美のふたりと同じ私立大学に進み、それぞれ別の学科で学んでいる(最終楽章前編、264ページ)。それと並行して、かねてから「面白そう」と興味を抱いていたバンド活動を本格的に始めており、優子がギターとボーカルを務める4人組のガールズバンドのなかでベースを弾きつつ、バンドの方向性が真逆な優子としょっちゅう衝突するような日々を送っている。(短編集2巻、139ページ、最終楽章後編、78~79ページ)
吉川優子との関係
トランペットパートに所属している同級生。2年生。
夏紀と優子は普段は互いに「アンタ」「アイツ(コイツ)」などと呼び合っているものの、面と向かい合わなければならないような場面では「優子」「夏紀」と名前呼びを用いている。
部内の誰しもが認める”犬猿の仲”の間柄であり(原作2巻、172ページ、第二楽章前編、27ページ)、元々は高校1年生当時の春、購買のコロッケサンドを取り合ったことがきっかけで仲違いを始めている(短編集1巻、132ページ、夏紀編、62ページ)。その後も「やる気のあるグループ」と「現体制派のグループ」に別れたり、目玉焼きの上にソースとマスタードのどちらをかけるかで張り合ったりと、事あるごとに騒々しいいがみ合いを見せている。(短編集1巻、123ページ)
夏紀はちょっかいを出したあとの優子の反応を楽しんでいる節があり、逆に優子はそのような彼女の存在を煙たがっている。しかし、あがた祭りやお盆休みのプールでは一緒に遊びに出かけたり、優子からの頼みを受けてギターを教えるかたわらカラオケに入り浸ったりするなど、互いにいがみ合いつつも親交がある様子もうかがえる(夏紀編、23~24ページ、31ページ、110~111ページ、TVアニメ版1期8話、2期2話)。また、夏紀の直属の先輩であるあすかや低音パートの同級生である梨子は、熱くて突っ走りがちな優子に対して夏紀を「クールな性格で緩衝材として優秀」と評しており、吉川・中川の新体制が発足する際に「このコンビならうまく部活を回していけそう」と期待と信頼を寄せている。(短編集1巻、225~226ページ、短編集2巻、96~97ページ、夏紀編、138ページ、141~142ページ、144ページ)
互いに部長と副部長に就任してからも、喧嘩腰で部の運営に携わるふたりの姿をしばしば見て取ることができる。先代の副部長であるあすかの見込みどおり、夏紀はひとりでなんでも抱えてしまいがちな優子の舵取りを随所で行っており、「アンタ一人でムリしすぎ」「頭のねじ、どっかに落っことしてきたんとちゃう?」などといった毒舌混じりの説教や、「ただの嫌がらせ」と称したちょっかいのもとに優子の頭を幾度となく冷やしている(第二楽章前編、282ページ、夏紀編、238~239ページ、244~250ページ)。また、吹奏楽コンクールへの挑戦が関西大会で断たれてしまい、優子が泣き崩れてしまった際にも、わめく彼女のそばを片時も離れることなく寄り添うなど、長年顔を突き合わせてきた者同士としての親愛ぶりを見せている。(第二楽章後編、334ページ、短編集2巻、296ページ)
総じて”喧嘩するほど仲がいい”関係であるふたりは、表面上は互いにそりが合わないと断言しているものの、内心ではどちらとも互いのことを認めている。そして、両者とも相手に対して素直に向き合えない”天邪鬼”であるために、喧嘩腰の騒々しい会話で親愛ぶりを確かめることを常としている。(第二楽章後編、308~309ページ、短編集2巻、16ページ、136ページ、夏紀編、250ページ、296ページ)
その他の主要キャラクターとの関係
黄前久美子
低音パートでユーフォニアムを担当しているひとつ下の後輩。1年生。
夏紀は久美子のことを「久美子」(TVアニメ版では「黄前ちゃん」)と呼んでおり、対する久美子は「夏紀先輩」と呼んでいる。
久美子が入部した当初、先輩である夏紀は無関心を装っていたが、顧問の滝の酷評を見返してやろうと練習に奮起するなかで久美子から声をかけられたことを契機として、次第に交流を深めていくことになる(TVアニメ版1期4話)。彼女と親しくなって以降は、先輩のあすかが部長就任を断った話や1年前に起こった当時の1年生(現2年生)の大量退部とその概要、同じパートの同級生である卓也と梨子が付き合っていることなど、数々の部内の逸話を明かしている。また、夏紀を差し置いて久美子が吹奏楽コンクールのメンバーに選ばれた際には、過去の「中学時代と同じように先輩にいじめられるのではないか」というトラウマを呼び起こして震える久美子の様子を見かねて元気づけたり(原作1巻、240~242ページ、夏紀編、258~259ページ、TVアニメ版1期10話)、吹奏楽コンクール京都大会の当日には本番演奏を控える久美子とグータッチを交わして彼女を勇気づけている。(TVアニメ版1期13話)
その後も希美の復帰やあすかの退部危機といったさまざまなトラブルを乗り越えていくなかで、夏紀は久美子の持つ「そこにいるだけで力になる」という特質を理解するとともに、一歩引いた視点から物事を見て行動する彼女のスタンスに信頼を置くようになる(原作3巻、182~183ページ、第二楽章後編、242~243ページ)。演奏面と人間面の双方で久美子に信頼を預けている夏紀は、不意にしょうもない企みを思いついて彼女をからかったり、彼女の髪や肩口に触れながら労(いた)わったりするなど、遠慮のない気安い雰囲気のもとに接している。(原作3巻、181~182ページ、短編集1巻、185~187ページ、原作公式ガイドブック、153~154ページ、短編集2巻、244ページ、最終楽章後編、47ページ)
田中あすか
低音パートでユーフォニアムを担当しているひとつ上の先輩。3年生。
夏紀はあすかのことを「あすか先輩」と呼んでおり、対するあすかは「夏紀」と呼んでいる。
入部した当初は、夏紀は斜に構えたような態度であすかと接していたものの(短編集1巻、129~130ページ)、その後の活動を通して彼女の卓越した演奏力や「極悪人」とも思えるような非凡なカリスマ性、そしてどの派閥にも与(くみ)しない徹底した中立の姿勢などを目の当たりにして、次第に彼女を「特別」な存在であると意識するようになる(夏紀編、63ページ、73ページ、80ページ、98ページ、139ページ)。あすかと1年間をともに過ごして彼女の徹底的な合理性と底の知れなさに際した夏紀は、時として人間味さえも排する彼女の振る舞いに畏怖(いふ)を覚え、「あの人は、最初からああいう人やで」というような自嘲じみた思いを抱くようになっている。(原作1巻、209~211ページ、244~245ページ、原作2巻、97ページ、227ページ)
吹奏楽コンクール全国大会に向けた練習期間のなかであすかが退部の危機に直面した際には、彼女の代役としてコンクールの本番に出場する可能性を伝えられるとともに、これまでのコンクール練習を通して指示された事項についても余すところなく教えられている(原作3巻、175~177ページ)。これを受けた夏紀はコンクールの出場に向けた練習に全力を注いだが、それでも直属の先輩であるあすかに最後の晴れ舞台に立ってほしいという応援の気持ちを拭いきれず、これまでの個人練習がすべて無駄になることを承知の上で『あすか先輩を連れ戻すぞ大作戦』の実行に関わっている。そののち、久美子の努力とあすかの機転によって彼女の部活復帰に希望が持てるようになると、「あすか先輩は、絶対来る。うち、信じてるから」という人一倍強い信念のもとに彼女の帰りを最後まで待ち望み、そしてその末にあすかが復帰を果たして姿を現すと、これまでの迷惑を詫びる彼女を強く制して「うち、ずっとあすか先輩のこと待ってたんですから」と純粋な祝福の言葉で迎え入れている。(原作3巻、280~281ページ、283~284ページ)
あすかが部活から引退したのち、夏紀は彼女から直接新たな副部長に指名されるが、夏紀はその際に自身にしか任せられない使命があることをあすかから告げられて嬉しさを覚える反面、そのような人心掌握術で巧みに人を操る彼女の手腕に「ズルい人だ」と反抗心をのぞかせている。そして、この副部長への指名によって自身が1年生のときに窮地から助けてくれた「恩返し」ができるとして、就任への思いを新たにしている。(夏紀編、145~146ページ、283ページ)
その後の新体制においても、新たな部長となった優子の振る舞いにあすかの姿を重ね合わせて過去を懐かしんだり、優子とのツートップ体制によって部活が上手く運営されていることに際して「こうした流れになることを見越してのことだろう」とあすかの慧眼(けいがん)に感心する様子が登場している(短編集1巻、223ページ、夏紀編、244ページ)。また、3月中旬に行われた合同演奏会に向けた練習のなかでは、卒業生となったあすかがドラムメジャーとして参加するという秘密の情報を前もって入手し、ソロの練習に行き詰まる久美子を彼女のもとへと向かわせたり、自身の演奏を彼女に指導してもらうなどといった関わりを見ることができる。(原作公式ガイドブック、160ページ、164ページ、167ページ)
久石奏
低音パートでユーフォニアムを担当しているふたつ下の後輩。新1年生。
夏紀は奏のことを「奏」と呼んでおり、対する奏は「中川先輩」と呼んでいる。
演奏技術と楽器の経験年数で奏に劣る夏紀は、4月の入部以降一貫して彼女から演奏に関する助言を請われることはなく、先輩・後輩のつながりも久美子のそれと比べて希薄なものであった(第二楽章前編、132ページ、236ページ、274ページ)。夏紀は奏と自身とのあいだにある実力差を理解し、時には自ら進んで彼女にアドバイスを求めたりするなど、後輩としてのみならず奏者としても奏を評価する一幕を見せている。(第二楽章前編、340~342ページ)
しかし、吹奏楽コンクールに向けたA編成部門のオーディションの際に、奏が夏紀をメンバーに入れるためにわざと下手な演奏を披露したのを耳にした夏紀は、オーディション実施中の奏を無理やり音楽室の外に引きずり出し、先輩としての威信のもとに奏を激しく問いただしている。「本気を出したらうちより上手くなるから、だからわざわざあそこで手を抜いた。それがどんくらい失礼なことか、アンタはほんまにわかってるんか!」と奏に対する苛立ちをあらわにした夏紀は、コンクールメンバーの座をも辞する覚悟をもって奏の真意を問おうとする。そして、夏紀はそこで初めて、奏が「下手な先輩は、存在自体が罪ですよ」という意識のもとに、敵を作らないように立ち回ろうとしていたことを知ることになる。(第二楽章前編、359~368ページ)
久美子の助けのもとに奏が改心を見せて以降は、かつてのジレンマから解き放たれた彼女から「夏紀先輩」という名前呼びのもとに親しく言い寄られるようになる(第二楽章後編、20~21ページ)。互いに遠慮することがなくなったこともあり、奏は夏紀に対して構ってほしさゆえにストレートな挑発をかけることも増え、夏紀もまたまんざらでもない様子でそれに応戦する様子を見せている。(第二楽章後編、156ページ、354~355ページ、短編集2巻、240~242ページ)
また、奏と久美子のやり取りについても、ふたりのあいだで主導権がしょっちゅう入れ替わることを指して「どちらが振り回してどちらが振り回されているのかたまにわからなくなるのが面白い」という思いを抱きながら彼女たちの様子を見守っている。(夏紀編、257ページ)
長瀬梨子
低音パートでチューバを担当している同級生。2年生。
夏紀は梨子のことを「梨子」と呼んでおり、対する梨子は「夏紀」と呼んでいる。
吹奏楽部に入部した初日に親睦を深める名目で購買まで昼食を買いに行った際に、優子とのコロッケサンドの取り合いを仲裁してくれたことがきっかけとなり、夏紀にとってのストッパー(周囲からの梨子の呼ばれ方は「お母さん」)として交友を始めることになる(短編集1巻、129~130ページ、134ページ)。以降は、部活の際の昼食時間に一緒に食事をしたり、卓也とのカップルぶりを茶化したりするようになるものの、普段の学生生活においてはそれぞれ別々に過ごす間柄となっている。(短編集1巻、69~70ページ、124ページ)
3年間の活動を通して梨子と親しい関係を築いてきた夏紀は、彼女の温厚な人柄についても理解を示しており、彼女から慈愛に満ちた言葉で日頃の副部長としての頑張りを労(ねぎら)われた際には、「あー、梨子のそれは反則!」と顔を赤く染め上げながら勢いよく机に突っ伏している。(第二楽章後編、263ページ)
後藤卓也
低音パートでチューバを担当している同級生。2年生。同パートの副パートリーダーも兼ねている。
夏紀は卓也のことを「後藤」と呼んでおり、対する卓也は「中川」と呼んでいる。
互いに1年生だった当時、やる気のある1年生の一派が現体制と衝突を起こしていたころに夏紀が上級生に暴言を吐いてしまい、それがきっかけで梨子がいじめられたために卓也は夏紀に対して険悪な思いをあらわにし、夏紀もまた自責の念を覚えるようになっている(原作2巻、231~232ページ)。2年生に進級してもその影響は色濃く残り、互いに交わす言葉のなかには依然としてギスギスした空気感が漂っている。(原作1巻、65~66ページ、原作2巻、79ページ、96~97ページ)
しかし、同じパートでの活動を通して卓也の真面目な人柄に幾度となく接してきた夏紀は、内心「根はいいやつ」と彼のことを認めるようになっており、普段の照れ隠しや冷やかしのなかにその本心を少しだけ含めながら接している(原作2巻、232ページ、短編集1巻、74ページ)。また、吹奏楽コンクール全国大会の当日を迎えた朝、コンクールメンバーとして舞台に立つ卓也から「来年は、お前もAで出ろよ」と声をかけてもらった際には、予想もしていなかったことも相まって、ぐっと息を呑みながら震えるほどの嬉しさを噛みしめている。(原作3巻、319~320ページ)
加藤葉月
低音パートでチューバを担当しているひとつ下の後輩。1年生。
夏紀は葉月のことを「葉月」と呼んでおり、対する葉月は「夏紀先輩」と呼んでいる。
ひとつ下の後輩たち3人のなかでもひときわ気勢のいい葉月に対して、夏紀はしばしば暇潰しがてら肩に肘をついたり腕を回したりと、気安いスキンシップを見せている(原作1巻、121~122ページ、短編集1巻、75ページ)。また、あがた祭りの際に失恋した葉月が練習時間中まで引きずって放心している様子を見た際には、ときおり漏れる彼女のため息に呆れながらも事情を理解してパートリーダーのあすかに報告している(原作1巻、206~208ページ)。なお、TVアニメ版ではその後のエピソードとして、葉月の失恋の真相を察した夏紀が下校途中に彼女を抱きしめ、元気づけるシーンが追加されている。(TVアニメ版1期番外編)
コンクールシーズンでは互いにオーディションに落選したこともあり、コンクールメンバーのサポートチーム「チームもなか」のメンバーとしてともに支援活動にあたっている(原作小説では吹奏楽コンクールB編成部門にともに出場)。それらの活動を通して交わりを深めたこともあり、代替わりを経て新体制を迎えるころには「頑張っておいで」と笑顔で応援するような親しみを覚えるようになっている。(原作公式ガイドブック、69ページ)
川島緑輝
低音パートでコントラバスを担当しているひとつ下の後輩。1年生。
夏紀は緑輝のことを「緑」と呼んでおり、対する緑輝は「夏紀先輩」と呼んでいる。
吹奏楽強豪校の出身で、演奏技術も人間性も突出している緑輝のことを、夏紀は彼女の入部当初から一目置いており、彼女が喜んだりしょぼくれたりするたびに労いや励ましの言葉を投げかけている(原作2巻、168ページ、原作3巻、247ページ)。また、演奏会などで緑輝がギターに持ち替え、難度の高い譜面を平然と弾きこなしている様子を見た際には、「こういうのを才能と呼ぶのだ」とそのすさまじさに圧倒され、凡人である自身と比較していたたまれない思いを実感している。(夏紀編、116~117ページ)
傘木希美
フルートパートに所属している同級生。2年生。
夏紀は希美のことを「希美」と呼んでおり、対する希美は「夏紀」と呼んでいる。
まだ中学生だった当時、帰宅部として暇な日々を過ごしていた夏紀は、多くの仲間とともに大きな目標を目指して進んでいた希美に対して強い「憧れ」を抱いていた(原作2巻、229~231ページ)。そののち北宇治高校に進学し、彼女の勧誘とかねてからの憧れによって同校の吹奏楽部で活動を始めた夏紀だったが、そのきっかけとなった希美は当時の部のだらけた雰囲気に耐え切れずに上級生たちと衝突し、その末に上級生たちに打ち負かされて部活を続ける意志を失ってしまう。そんな彼女から今後の身の振り方を相談された夏紀は、「いまこの瞬間に希美が笑ってくれるなら、それだけでいいと思った」という衝動のもとに、彼女の退部を後押ししてしまう。その結果として、夏紀は自身の憧れであった希美が苦しんでいたときに何もしてやれなかったことに不甲斐なさを感じ、彼女が退部してからも強い自責の念に苛(さいな)まれることになる。(原作1巻、246ページ、原作2巻、73ページ、231~234ページ、夏紀編、84~91ページ、122ページ)
2年生に進級して顧問が代わり、部が吹奏楽コンクール京都大会で快進撃を見せると、その変革ぶりを目の当たりにした希美がもう一度部に戻りたいと望むようになる。それを知った夏紀は、かつての憧れに報いるのはいましかないと思い立ち、「罪滅ぼし」という名目のもとに希美とあすかの調整役(橋渡し)を進んで担うとともに、事態が解決するまでのあいだ希美のことを献身的に支えている。彼女が正式に部への復帰を果たしてからは、あすかの代役としてコンクールに出場するための練習を見てもらうなどの音楽的な関わりのほか(原作3巻、102~103ページ)、楽しげな彼女の振る舞いに呆れをあらわにする様子なども見せている(原作3巻、105ページ)。また、希美が復帰を果たしてからも夏紀にとっての彼女は依然として「憧れ」や「過去の出来事の象徴」というべきものであり、吉川・中川体制の年度において希美が鎧塚みぞれに対して演奏面で見栄を張り、結果として力量の差を見せつけられて絶望した際にも、「うちはあの子を甘やかしてしまう」として彼女の愚かな行為を断罪することを頑なに拒(こば)んでいる。(第二楽章後編、241~245ページ、248ページ)
中学時代の卒業間際や高校生活の3年間の関わりを通して、夏紀は希美の持つ天性の明るさや周囲を無自覚に振り回す屈託のない振る舞いなどを指して「アンタ、ほんまそういうとこ……」といった呆れを見せることもしばしばあるものの(夏紀編、52~53ページ)、同時にそれこそが彼女らしさであると理解を示して、「そういうところも好きだったり」と好意的に捉えながら接している。(夏紀編、124ページ)
鎧塚みぞれ
ダブルリードパートでオーボエを担当している同級生。2年生。
夏紀はみぞれのことを「みぞれ」と呼んでおり、対するみぞれは「夏紀」と呼んでいる。
出身中学は同じであるものの、知り合ったのは北宇治高校の吹奏楽部に入部して以降になる。夏紀が希美や優子といった南中出身者のグループと一緒に行動するなかで顔を合わせたのがきっかけであり、当初は彼女の返事の素っ気なさから「不思議な子だ」といった印象を抱いていた。(夏紀編、12ページ、35ページ、57~60ページ)
また、その当時からみぞれが希美に対して抱いていた執着心の大きさを垣間見ており、友達に向ける感情としてはあまりに重すぎる彼女の熱量に言葉を失う一方で、希美の明るさに引き寄せられて部活を始めたのは自身もまた同じであることから「みぞれと自分は似たようなものかもしれない」などと思い至る様子も見せている。(夏紀編、60~61ページ、107~108ページ、156ページ)
2年生の夏に希美が部に復帰し、ふたたび南中出身者の4人組で行動することが増えてからも、夏紀はみぞれに対して若干の苦手意識を抱いていた。そこには彼女が希美に対して秘めている執着心の大きさはもちろんのこと、その感情をつぎ込んで生み出されるオーボエの演奏の圧倒的な才能、そして自身の才能に無自覚であるとともに卑下(ひげ)によって周囲からの助けを求めようとする彼女の生き方そのものといった要素が内在しており、それらを秘めているみぞれの存在が希美を縛る枷(かせ)のように思えてしまうために進んで彼女を助けるようなことはできなかった。(夏紀編、33~34ページ、158ページ、160ページ、179~181ページ)
しかし、それでも夏紀は高校での3年間の活動を通してみぞれの放つ才能の高みやそれの裏返しともいうべき視野の狭さを憧れや嫉妬といったさまざまな視点から見つめており、平凡な存在に過ぎない自身と比較しながら「それこそが彼女の彼女たる理由」と評している。(夏紀編、163ページ、188ページ、201ページ、285~286ページ、289ページ)
加部友恵
トランペットパートに所属している同級生。2年生。
夏紀は友恵のことを「友恵」と呼んでおり、対する友恵は「夏紀」と呼んでいる。
夏紀と同様に高校から吹奏楽部を始めた初心者であり、TVアニメ版ではあがた祭りなどで一緒に遊びに出かける様子などが登場している(TVアニメ版1期8話)。コンクールシーズンでは互いに「チームもなか」(原作小説ではB編成部門の出場メンバー)のメンバーとして活動し、ともに次年度におけるコンクールメンバーへの選出を目指している。
吉川・中川体制の新年度において、友恵がコンクールシーズン前に顎関節症を発症して辞退を余儀なくされ、新たにマネージャーへの転向を表明した際には、夏紀は「めっちゃ助かる。そう思う自分に腹立つわ」と、かつての誓いが反故(ほご)にされたことへの憤りと、部の運営の新たな一助になってくれることの喜びがない交ぜになった複雑な胸中を明かしている(第二楽章前編、332~333ページ)。また、コンクールへの挑戦が関西大会で断たれたことで意気消沈していた部に対し、友恵がマネージャーとしての素直な感謝を述べた際についても、自分たちの演奏が大切な人の心を動かしたという事実を実感して嬉し涙を浮かべている。(第二楽章後編、366~368ページ)
小笠原晴香
サックスパートに所属しているひとつ上の先輩。3年生。
夏紀は晴香のことを「晴香先輩」と呼んでおり、対する晴香は「夏紀ちゃん」と呼んでいる。
学年もパートも異なるため直接の絡みは見られないが、作中では晴香の部長就任がもともと部員に望まれたものではなかったことや(原作1巻、121ページ、TVアニメ版1期5話)、1年前の部内で当時の1年生(現2年生)の大量退部を止められずにいたことを悔やんでいる先輩のひとりであることなど(TVアニメ版1期7話)、彼女にまつわるさまざまなエピソードを語っている。
中世古香織
トランペットパートに所属しているひとつ上の先輩。3年生。
夏紀は香織のことを「香織先輩」と呼んでおり、対する香織は「中川さん(入部当初)」「夏紀ちゃん」と呼んでいる。
圧倒的な自己肯定感のもとに無条件の優しさを与えてくる香織の存在は、元から悪い人間であるという自負を持つ夏紀にとって「あまりに清廉で、どう扱っていいかわからない」というような、いたたまれない苦手意識を覚えるようなものであった(夏紀編、69ページ、72ページ、74ページ)。また、彼女が夏紀の直属の先輩であるあすかと仲がいいことにも触れて、「香織のような善良な人間がなぜいつもあすかのような極悪人と一緒にいるのか」などと疑問を浮かべるような一幕も登場している。(夏紀編、73ページ)
夏紀が1年生だった当時、現体制に反発する1年生とそれを押さえ込もうとする3年生との対立に際して、同じく同級生の斎藤葵とともに部内の環境調整に奔走しており、その翌年に当時の状況を久美子たち後輩に明かした際には彼女の名前を挙げている(夏紀編、79~80ページ、TVアニメ版1期7話)。また、あすかの退部騒動が起こった際には夏紀は香織たちとともに『あすか先輩を取り戻すぞ大作戦』に関わっており、その折に夏紀は香織からもらったアドバイスを実行者である久美子に伝えている。(原作3巻、181~182ページ、TVアニメ版2期9話)
若井菫
かつてサックスパートに所属していた同級生。2年生。
夏紀は菫のことを「菫」と呼んでおり、対する菫は「夏紀」と呼んでいる。
中学時代は互いに帰宅部と吹奏楽部ということもあって接点はあまりなかったものの、1年生のときにクラスが同じだったため、派手な白縁眼鏡をかけていた印象だけは覚えていた(夏紀編、46ページ)。そののち、夏紀が北宇治高校に進学して吹奏楽部に入部するようになってからは、同じ中学校出身のよしみで一緒のグループで行動するようになっている。(夏紀編、55~56ページ)
菫が希美とともに部内の改革に乗り出し、結果として3年生たちに打ち負かされて退部を余儀なくされた際には、彼女たちが先輩から受けた仕打ちのひどさを思い返しながら「時間の問題だとはうすうす察していた」と認めると同時に、新たに軽音楽部でインストバンドを始めようと思いつく彼女の姿を見て「そういえば立ち止まることを何よりも嫌うやつらだった」と自嘲交じりの笑みを浮かべている。なお、夏紀もこのとき菫から一緒に退部してインストバンドにギターで加わらないかと誘われているものの、自身のギターに対する思い入れからその申し出を断っている。(夏紀編、79~84ページ)
それから2年が経った高校3年生の冬、卒業前のモラトリアム期間を過ごしていた夏紀は、偶然インストバンドの卒業記念イベントのための会場下見をしていた菫と再会する。彼女と対話するなかで、夏紀は彼女たちのライブイベントのオープニングアクト(前座)としての出演を勧められることになり、彼女との分岐点となった2年前の出来事の感傷に浸りながら「いいかもね、バンド」と申し出を受け入れている(夏紀編、118~123ページ)。以降は、3月に予定されているライブイベントに向けてギターの練習を重ねるなかで、菫たちのバンド名の由来を聞いて「いいセンスだ」と感心したり、彼女のライブ衣装の趣味に思いを馳(は)せる様子がしばしば登場している。(夏紀編、177~178ページ、209~210ページ)
関連イラスト
冬制服
夏制服
パレード衣装(サンライズフェスティバル)
私服姿(あがた祭り)
メイド服(北宇治高校文化祭)
体操服&ビブス
関連タグ
黄前久美子 - 新しく低音パートに入ってきたユーフォニアムのひとつ下の後輩。1年生。
久石奏 - 新しく低音パートに入ってきたユーフォニアムのふたつ下の後輩。新1年生。
加藤葉月 川島緑輝 - 新しく低音パートに入ってきたひとつ下の後輩。1年生。
後藤卓也 長瀬梨子 - チューバを担当している低音パートの同級生。2年生。
田中あすか - 低音パートのリーダーで、ユーフォニアムの先輩。3年生。
吉川優子 - トランペットパートに所属している、犬猿の仲の同級生。2年生。
鎧塚みぞれ - ダブルリードパートでオーボエを担当している同級生。2年生。
傘木希美 - かつてフルートパートに所属していた同級生。2年生。
なかよし川 - 吉川優子とのコンビ(カップリング)タグ。
南中カルテット - 吉川優子、鎧塚みぞれ、傘木希美とのカルテット(グループ)タグ。