概要
GA文庫刊行のライトノベル。作者は『のうりん』などで知られる白鳥士郎。
イラストはしらび(pixivアカウント)。監修は西遊棋(関西将棋会館所属の若手・女性棋士からなるユニット、豊島将之九段などタイトル保持経験者も所属している)。
GA文庫10周年記念プロジェクトの第6弾として、文庫の発売と同時に漫画化、ドラマCD化、WEBラジオ化がされている。
既刊は、2022年12月時点で原作小説が17巻。また外伝が「X.5巻」かつ電子書籍限定の形で2巻でている。
漫画版の作画はこげたおこげ。原作小説の5巻までの範囲で、全10巻で完結。ガンガンONLINEでも配信されていた。
また、テレビアニメ化もされた。詳細は別途後述。
題名の「りゅうおう」とは勇者に世界の半分を与えることがお仕事(?)な竜のことではなく、成り飛車及びプロ将棋の大タイトルの一つである竜王。ライトノベルとしては珍しい将棋をテーマとした作品で、作中には現実の棋士をモデルにしたと思われるキャラクターが多数登場する。2016年には第28回将棋ペンクラブ大賞で文芸部門優秀賞、『このライトノベルがすごい』においては2017年の文庫部門一位を獲得している。
あらすじ
16歳の若さで、棋界の二大タイトルの一つである「竜王」を奪取したものの、その後大スランプに陥っていた主人公の九頭竜八一。そんな彼が3月のある日自宅に帰ると、なぜか女子小学生の出迎えを受ける。
その小学生・雛鶴あいは内弟子としての弟子入りを希望していた。
「まあ一度対局してあげれば帰るだろう」と思い気楽に対局してみたところ、あいの将棋の才能が非常に高いことに気づき、弟子として彼女を育てようということになるのだが、周囲からはロリコン扱いされるわ、当然ながら両親があいを連れ戻しにやってくるわといったドタバタが続き、八一はその騒動に翻弄されることになる…。(Wikipediaより一部抜粋)
主な登場人物
主人公。関西の清滝一門所属。第一巻時点で16歳。物語開始時点で八段、その後5巻で九段に昇格。
史上4人目の中学生棋士としてプロ入り、16歳で竜王位を奪取した若き天才棋士。しかし竜王奪取後はプレッシャーから連敗を重ね、世間では「クズ竜王」などと馬鹿にされていた。その矢先にあいと出会い、紆余曲折を経て内弟子に迎えることになる。
棋士としては居飛車党であり、先手番相掛かりや後手番一手損角換わりといった力戦調の泥臭い戦型が得意。将棋に関しては天才的な閃きを発揮するが、周りの女性が寄せる好意には極めて鈍感。最近はJSと何かと縁があるせいでロリコン扱いされることもしばしば。
なお、アニメ第1話で竜王を奪取した対戦棋士のモデルは、2017年に竜王位についていた渡辺明竜王だと思われる。
ヒロイン。第1巻では9歳の小学三年生。第6巻以降はプロとして活動し、16巻で女流名跡のタイトルホルダーとなる。
実家は石川県和倉温泉の老舗旅館「ひな鶴」。竜王戦の最終局がその旅館で行われたことがきっかけで八一に憧れ、長期休暇を利用して単身八一の家に押し掛ける。母親のしつけで家事全般が得意。
独学で、わずか3カ月の内に将棋図巧という全問解ければプロになれるレベルの問題を全問クリアしてしまうほどの才能の持ち主。特に中盤から終盤にかけての読みの速さ、深さは現役の竜王である八一すら凌駕するほど。得意戦法は相掛かり。
八一のことは男性としても好意を寄せており、他の女性に気を向けた八一に「だら(「バカ」を意味する方言)」というのはお約束。
もう一人のヒロイン。八一の姉弟子であり10年来の幼馴染。第一巻時点で14歳。女流ながら奨励会二段に所属しており、14巻までは女王、女流玉座の二冠保持者であった。6巻で奨励会三段に昇段。9巻で女王の5期連続防衛を果たして15歳にして永世女王の資格獲得。12巻で奨励会四段に昇段し、女性初のプロ入りを果たす。居飛車党。
女流棋士との戦いでは公式戦50戦負け無しという圧倒的な強さを誇り、銀髪碧眼の美しい容姿もあって世間では『浪速の白雪姫』と呼ばれ人気がある。
八一に対して好意を持っており、12巻で交際関係に至ったが、それまでは相手の鈍感さや本人の口下手さゆえにほとんど伝わってはいなかった。あいとは恋敵同士ということもあり会えば口喧嘩する間柄。
罵倒や照れ隠しの際に「ぶち殺すぞワレ」というのが口癖。
清滝鋼介(きよたき・こうすけ)(CV:関俊彦)
八一の師匠。第一巻時点で50歳。九段の段位を持ち、名人戦にも二度挑戦経験のあるベテラン棋士(アニメOPでは月光とタイトル戦を戦っている)。
普段は常識人だが、「弟子に負けた腹いせに将棋会館の窓から放尿」「弟子の竜王奪取記念に旅館で裸踊り」など奇行も目立つ。あいのことは孫のように可愛がっている。
アニメでは奇行のシーンが全面カット、好人物であることが強調されている。
清滝鋼介の一人娘。第一巻時点で25歳。研修会C2所属。
八一と銀子にとっては姉のような存在だが、父への弟子入りが遅かったため棋士としては妹弟子にあたる。女流棋士資格取得の年齢制限が迫っていることに焦りを覚えている。
しかしメンタル面の弱さを克服し、仮免許である女流3級への昇級を果たした。
作者自ら「私の全てを背負ってもらいました」と語るほど思い入れの深いキャラ。
第2巻より登場する「もう一人のあい」。雛鶴あいとの呼び分けから「天ちゃん」というあだ名で呼ばれる。初登場時点では9歳。
実家は神戸市の豪邸。父親は元アマチュア名人、母親も元将棋部という将棋一家に育つ。両親とは幼少期に事故で死別し、現在は祖父と暮らしている。得意戦法は一手損角換わり。
元は日本将棋連盟会長である月光の門下だったが、当の月光から八一に預けられ、最終的に八一自ら弟子に取ることを決意する。終盤の寄せを得意とするあいとは対照的に、優れた大局観と緻密な序盤戦術による受け将棋が持ち味。
両親を早くに亡くし、祖父に甘やかされて育ったため、性格は負けず嫌いに加え、傲岸不遜で高飛車。一方で八一や清滝一門への思いやりのこもった発言も多い。
あいに若干遅れて、6巻以降はプロとして活動。9巻でタイトル挑戦を決めて一気に女流二段へ昇段。その後16巻で銀子が保持していたが休場で返上となった女王・女流玉座のタイトルを立て続けに獲得し、女流二冠に。他に複数冠者がいないため、女流棋士序列一位となる。
女流玉将のタイトルホルダー。八一より2歳上。小学生名人戦決勝で八一に敗北を喫した悔しさに彼を殴ったことがある。
銀子とのタイトル戦で対局時間を多く残したまま午前中で瞬殺され、放心状態の写真をネットに公開されてしまう。
八一の幼少時からのライバルでB級2組、六段。18歳。普段の対局からマントを着用しカラコンをオッドアイのようにつけ「ゴッドコルドレン」「貴族」を自称する中二病棋士。八一とは対照的に順位戦全勝中で、他の棋戦の成績も抜群である。
第3巻より登場するA級棋士、38歳。九段の段位を持ち「玉将」のタイトルを持つ。
振飛車党総裁。攻防一体の豪快な捌きが特徴の棋風で「捌きの巨匠(マエストロ)」と称される。将棋道場を併設した銭湯「ゴキゲンの湯」を経営している。
第3巻より登場する棋士、38歳。八段の段位を持ち、名人の研究パートナーを務める。
居飛車・振り飛車両方指す「両刀使い」。中性的な容姿と言動でオネエ疑惑がささやかれるが、努力で順位戦A級に上り詰めた。粘り強い、負けない将棋に定評がある。
タイトル獲得99期・永世六冠を誇り、棋士から「神」と呼ばれるほどの最強棋士。
作中では名前は明かされずただ名人とだけ表記される。
経歴や棋風(アニメでは風貌も)などから羽生善治永世七冠がモデルと誰からも思われていたが、2018年8月に作者が羽生がモデルであると公式に認めた。
日本将棋連盟会長、50歳。病により失明しながら九段の段位をもつ。竜王戦1組以上22期、名人戦挑戦者リーグA級在位32期、タイトル獲得総数27を誇る天才棋士。
八一に2人目の内弟子(天衣)を取ることを勧めた張本人。
若干11歳で奨励会三段の天才少年。八一に懐いてる(?)。おそらくモデルはこの人物。
TVアニメ
2017年7月11日に、アニメ化決定を発表。と同時に、公式サイトも開設された。
キャストはドラマCDからの続投。
制作会社は「ロウきゅーぶ!」や「天使の3P!」といった『男子高校生の師匠と女子小学生の弟子』を描くことに定評のある『projectNo.9』が担当。
2018年1月期作品として放送された(放送時期については2017年10月14日に発表)。全12話。
放送局はTOKYOMX、三重テレビ、KBS京都、サンテレビ、AT-XおよびBSフジ。なお、放送曜日は全て月曜日に合わせている。
本編の放送終了後、5分枠の番組として「かんそうせん」がTOKYOMXとAT-Xで放送された。なお、AT-Xではリピート放送のおまけという形での放送だった。
制作スタッフ
監督 | 柳伸亮 |
---|---|
シリーズ構成 | 志茂文彦 |
キャラクターデザイン | 矢野茜 |
音楽 | 川井憲次 |
制作会社 | projectNo.9 |
余談
作品自体は言うまでもなくフィクションであるが、実際のプロ将棋界の人物や出来事などをモデルにして、それを誇張する形でストーリーにしている形である。プロ棋士達からなる西遊棋が監修に参加していることで、作品内で出てくる棋譜などにもリアリティがあったりする。
……はずだったのだが、近年の実際の将棋界は作者等が想定していた以上のドラマチックな出来事が続出しており、「ぼくがかんがえた、さいきょうのしょうぎラノベ」の設定を現実が上回っている、と作者自身が嘆いている状況である。
いわく、以前は「16歳で竜王などあり得ない」とリアリティーの無さを糾弾されたが、昨今は逆に現実に追いつけてないことを糾弾され、一方で予言者扱いされたこともあって作者曰く「イエス・キリストも真っ青の手のひら返しをされた」とのこと。
ほとんどが名前を出してはいけない人物達のせいではあるが、原作ではそれまでの公式戦最長手数(389手)を上回る402手で終局としたシーンを入れたところ、その後実際の公式戦で420手で終局(しかも持将棋で引き分け再対局)した事例や、順位戦A級リーグで4人による名人戦挑戦プレーオフ(77期終了時点で過去3回発生している)を新刊の構想として書き入れようとした矢先に、2018年3月の76期順位戦A級リーグ最終戦の結果、前代未聞の6人プレーオフが成立してしまい、この構想を没にする羽目になっている。しかもこの2例、両方共アニメ放映中だったうえ、後者は名人のモデルであるあのお方が名人戦の挑戦者に勝ち上がってしまうというおまけまでついた。つまり、作中状況と逆の「竜王がタイトル100期をかけて名人に挑戦する」となってしまったのである。作者はこの現実に某有名漫画に登場するフランス人のようになってしまった(証拠ツイート)。ただし奪取は成らずであった。
なお、作者は後に名前を出せないかの人物へのインタビューをすることになり、その記事の序盤でこう述べている。
「もう『りゅうおうのおしごと!』どころではない」
「完全にラノベを超えてしまった」
そして13巻の帯でも
「現実に、負けるな。」
「いま一番、現実に追い抜かれそうな将棋ラノベ最新刊!」
2021年9月13日には、15巻が14日に発売されるタイミングで藤井三冠が誕生。これは電子書籍版の配信6時間前の出来事であった。作者曰く「フィクションを殺しにかかるとか…」と。ここまでくると、もはや神がかっているというレベルは超えているのかもしれない。
そしてついに。
2021年11月13日、藤井聡太三冠が豊島将之竜王に4連勝とし、ストレートで竜王奪取を決めた。
リアル「りゅうおう(四冠)のおしごと!」がここに成就した。
更に、2022年2月12日に藤井聡太竜王(四冠)が渡辺明王将(名人・棋王)に4連勝、竜王戦と同じくストレートで王将奪取達成。
前代未聞、史上初の10代での五冠達成に作者は「ここまで強すぎると将棋は本当にフィクションの題材にしづらくなるのでは…」と頭を抱えていた。
なお、四番手直りに改められて以降は3例目となる、名人在位者に指し込みが記録されるという珍事も発生した。
2023年1月8日には王将戦第1局初日に羽生善治王将が藤井聡太王将に出した「一手損角換わり」の戦型が「再現の一手出た」「予言書」と主催紙のスポニチに掲載された。作者がインタビューを受けるも、オロオロしちゃいましたよと苦笑いで返している。
ちなみにファンから一番のフィクション扱いを受けているのは姉弟子。その次にあい(とある理由から八一の家を出ていき、八一自身も引っ越さざるを得なくなった)。
関連動画
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