なんか、お前とはカレーばかり食べているような気がするよ。捜査の合間の食事には、選択の余地がないことが多いせいかもしれないけれど。
概要
京都の私大、英都大学社会学部助教授(准教授)。誕生日は4月15日。(ダリの繭より)
初登場時32歳、その後33、34と徐々に加齢していたが、34歳からはサザエさん時空に。この辺の事情については『菩提樹荘の殺人』のあとがきで触れられている。
専門は犯罪社会学で、フィールドワークと称して殺人事件の現場に乗り込んでは事件を解決する。過去の実績から近隣警察と友好関係を結ぶことに成功しており、難解な殺人事件が起こると、警察の要請を受けて現場に赴く。
その類を見ない研究スタイルから、親友の有栖川有栖(通称アリス)に、「臨床犯罪学者」と名付けられた。
人物
- 定番の紹介は「犯罪学者で名探偵、法律、法医学、心理学にまで造詣が深い。(中略)語学に堪能で、喧嘩まで強く、天体観測、登山、ボトルシップ作りと猫の調教、変態性欲の権威。」
- これは、アリスが言い出し二人が共有する冗談の様なもの。火村がボクシング経験者であること、猫好きで拾って保護した子を数匹飼っていることなど、一応事実を元にはしている。
- 北海道札幌生まれ(六歳まで)で日本全国アチコチ(広島・大阪・京都・金沢・東京)育ち(父親が転勤族だった)
- バリトン・ヴォイス。穏やかであるがゆえに力強い声(乱鴉の島)。
- 語学は英語が一番堪能で、本人曰くドイツ語フランス語は道を尋ねられる程度。
- 助教授(准教授)になったのは31歳の時。
- 両親が相次いで亡くなったのは30~31歳の時(現在身寄り無し)。
- プロファイリングの有効性について懐疑的。
- ヘビースモーカーで愛飲煙草は、キャメル。コンパクトに似た携帯灰皿使用。
- 口笛が上手い。
- 自分の腕の付け根から伸ばした中指の先までの長さを知っている(ので物差しになる)。
- 猫舌なため珈琲は冷ましてから飲む(ラーメンを食べるのも遅い)。(ちなみにアリスが猫舌の反対語あるのか?と疑問に思った(朱色の研究)が、猫舌の反対の俗な言い方は『ゴリラ舌という』)
- 手で熱いもの(淹れたての珈琲のコップなど)を持つのも苦手。
- 好きな音楽はバッハ、特に『ゴールドベルク変奏曲』(グレン・グールドによるピアノ)、70年代のブリティッシュ・ロック
- 一番嫌いな言葉は『完全犯罪』、『分際』という言葉も嫌い。
- 運転免許は院生の時に取得し、国際運転免許証も持っている。
- 愛車は同僚から二束三文で譲ってもらったオンボロのベンツ(走る名刺)。自動車修理工の親父さんの腕のおかげで延命している。(懐中電灯常備/ダッシュボードに眠気ざまし用ガム)
- 警察からの連絡ですぐ駆け付けられるように、下宿先と大学は近いが車で通勤。
- 北白川にある元下宿屋に、学生時代から一貫して住んでいる(六畳ふた間だが、空いている他の部屋も婆ちゃんの許可の元、書庫として使わせてもらっている。二階の奥は納戸)
- 火村が唯一にして最後の店子で、のびのびと根を降ろし、大家の婆ちゃんを気遣い、世話を焼かれながら猫3匹(瓜太郎、小次郎、桃)と暮らしている。
- 寝息は小さい。
- 近所の寺は慈照寺(銀閣寺)
- 紀伊本線に乗ったら駅弁は『鯛寿司』
- 大阪南港のレストラン&バーの女性店主に『ゲオルグ』と名付けられたが、ドイツ語読みのゲオルグは英語読みだと『ジョージ』なので同僚のイギリス人英語講師と同じ名前になる。
- お婆ちゃんキラー(高齢女性への接し方はマイルド)
- 事件で出会ったお婆ちゃんに(火村とアリスが独身と知って)『思いやりにあふれた優しい人をお選びなさい。にこにことよう笑う人がええよ。しっかり探してください。』とアドバイスを貰った。
外見・服装
- 若白髪の混じる黒髪に、端正な顔立ち、スラリとした体躯。長い脚。当然女性にモテるが、当人は女嫌い(酒の席で寄りかかられても押し返す。が、場面に応じた女性のあしらいが上手い一面もある)。(『若白髪が似合う渋い学者』と女性が知人男性に火村のことを話している場面がある(比類のない神々しいような瞬間より)ので、若白髪が外見的評価のマイナスにはなっていない。)
- 服装に無頓着で、白いジャケット(暑い季節は白っぽい麻のジャケットか、ジャケット無しの半袖シャツ)に、白や濃い色(黒や濃紺など)のスラックス、シャツの色はその日による(黒系だけでなく辛子色なども)。細い首に細いネクタイ(ナロータイ?)をだらしなくぶらさげているのが基本スタイル。アリスから、「碁石みたい」と評されるファッションセンス(犯罪学界のファッションリーダーとからかったことも)。
- 殺人現場に白いジャケットで参上するのに、休暇になると地味。黒っぽいジャケットにパール・ホワイトのシャツ(乱鴉の島)
- 秋冬は革のジャケット(朱色の研究/探偵・青の時代)、黒革のコート(46番目の密室/ロシア紅茶の謎/スウェーデン館の謎/人喰いの滝/蝶々がはばたく)、ダークスーツの上に黒いトレンチコート(鍵の掛かった男)/濃紺のオータム・コート(インド俱楽部の謎)/
- ショルダーバッグ(トロッコの行方)
- 事件捜査中は、黒い絹の手袋を着用する。
- ジャケットのポケットに、ペン型の懐中電灯、万年筆。スラックスのポケットにハンカチ。
- 考え事をしている時下唇を撫でる癖がある。
- 顔に微かな翳(かげ)がある。
- 身長の正確な表記は無いが、(座った状態で)『火村は私(アリス)の肩を肘で強く突いた』(ダリの繭)、柳井警部が『火村より頭一つ分身長差がある小柄な体格』で『160cm(赤い稲妻)』の記述がある。男性の平均的な顔の長さは23.19cmだそうなので、160cm+23cmで最低でも183cmはあることにはなる。が、作家アリスシリーズは180cmを超える人物にはその記述があるが火村にはないので、小顔基準で180cmも無い可能性もある。またアリスは「火村に遅れないようについて行くには、速足にならねばならない(インド俱楽部の謎)」と言っており(火村が脚が長くて運動神経が良く、アリスは作家生活で運動不足だとはいえ)身長差があるから歩幅にも差が出てしまうと考えるのが自然。かと思えば英国庭園の謎で登場した詩人の身長が『私たちの鼻くらいの高さ』と、アリスと火村にさほど身長差が無いような表記もある。
犯人目線の火村の印象
- どこか冷たい感じのする男。切った張ったが日常の外科医のような雰囲気(シャイロックの密室)
- あれは食えない男だ。落ち着いた紳士的な物腰をしていたが、それが信用できない。知性で獣性を隠しているような危険な気配がある。(中略)裏がありそうで友達にはなりたくない。(比類のない神々しいような瞬間)
- 鼻筋の通ったシャープな顔立ちは理知的な印象を与える。ただ、堅く結ばれた口許は、どこか癇が強そうで、目にもあまり穏やかならぬ光がよぎったりする。(中略)身を持ち崩したインテリのギャンブラー(完璧な遺書)
- 引き締まった顔つきにクールな目は、何かの勝負師を連想させた(ショーウィンドウを砕く)
- 鼻筋が通ったシャープな顔立ちをしていて、目の光が独特で頭が切れそう(カナダ金貨の謎)
- どことなく危なっかしい。そして、犯人の目からみたら、無気味で怖い(インド俱楽部の謎)
被害者の関係者からの印象
- 目付きが刑事より刑事らしくて頼もしい(『トロッコの行方』の被害者の恋人)。
性格
- シニカルな現実主義者で、徹底した無神論者(死者への哀悼の意を表わす時はしばし瞑目する)。口が悪く女嫌いだが、社会人としての礼儀は備えている(日常生活で自分から女性に話しかけるのは稀)。
- 外面はクールで如才ないが、近しい者にはおどけた面やだらしない面も見せる。その近しい者がアリスと婆ちゃんと猫しかいないのが問題といえば問題。
- 親友と呼べるほどの友人はアリスだけだが、同僚や懇意にしている刑事達と信頼関係は築いているし、旧友(天農仁・衛大龍)の誘いも受ける。
- 子供と無縁の生活をしている割に子供の扱いがうまい。
- フェチは嫌い。
- 柳井警部曰く『(火村先生は)大胆なようで慎重』
- 過去に何かあるらしく、扱いの難しい人物。
「人を殺したいと思った事があるから」罪刑法定主義が『代価として刑罰を払えば罪を犯しても良い』制度であるとして「代金を(略)払い忘れたふりをして食い逃げしようとするとぼけた野郎は、俺の力が及ぶ限りはたき落としてやる」(スウェーデン館文庫版162P)として殺人者の罪を暴く。「犯罪だけが友」とうそぶき、己の闇と殺人者に向き合い続け、「誰かを惨殺する」悪夢を見てはうなされ苦しむ。
- 自分が関与した事件の犯人たちの顔写真はすべてアルバムに貼ってあるが、誰にも絶対に見せない。
- 既に亡くなった両親の話を一切しない(転勤族だったということくらいで職業も謎)。
アリスとの出会い・関係
- アリスとは英都大学2回生の頃からの親友。講義中にアリスが執筆していた応募作の推理小説を、隣に座った火村が勝手に読み、「その続きはどうなるんだ?」と訊いたことが、長い友情の始まりだった。
- 現在も互いの家に出入りし、何かにつけて共に呑み、二人で旅行に出かける仲。しかしそのアリスにも壁を作り、何処か突き放した態度を取る事がままある。
- 自室の本棚(婆ちゃんの許可の元書庫にしている他の部屋でなく)にアリスの著書を置いている(ルーンの導き)が、アリスがそれを見て『友人の本を蔵書してくれているのはありがたい』と思っているので、アリスから進呈ではなく火村が自分で買ってくれている模様。研究室の書架にもアリスの著作が並んでいる(朱色の研究)ようなので、自室と研究室と両方にアリスの本を置いていることになる。また、本屋に寄った時アリスが寄稿していることが多い雑誌はチェックしている模様(「夢のあるミステリが書きたいってどっかの雑誌のアンケートに答えてたじゃないか」(朱色の研究)「生まれ変わったら何になりたい、なんてアンケートも真面目に考えたのか、有栖川先生?」「本屋に寄ったらお前がよく寄稿している雑誌が積んであった。また何か書いてないかと開いてみると『もし生まれ変われるのなら』とかいうアンケートが特集されていた」(インド俱楽部の謎))
- 有栖川有栖を『アリス』と愛称で呼ぶのは彼だけ。(『46番目の密室』ではアリスのミステリ作家仲間も『アリス』と呼んでいたが、新装版ではアリスと呼ぶのは火村だけになっている)
大学の先生としての火村
- 水曜日は講義が無い。11月25日は創立記念日で23~25日は学園祭だが参加せず、自分の用事(溜まった仕事だったりフィールドワークだったり)を済ませる。2月の頭から10日頃までは英都大学の入試期間の為、試験監督業務を最優先(警察からの要請も断る)。
- 講義中に緊張感があって採点が厳しく(なので聴講するだけの者が多い)、愛想が乏しい。強面の先生枠に入れられている。授業中の私語が大嫌いでなので私語をするような生徒は退室させる(ので真面目に授業受けたい生徒からは好評)。
- 自分で何も考えぬまま暇つぶしのように安易に質問を投げつける生徒には失望する。
- 講義:逸脱行動論(トロッコの行方)
生徒もしくは事件関係者に読んだことがあるか問うた、もしくはレポート課題として指定した本
- 西村寿行『血の翳り』
- チェーザレ・ベッカリーア『犯罪と刑罰』
- アルベール・カミュ『シーシュポスの神話』
散歩コース
- 大学裏の名刹相国寺
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斎藤工:ドラマ版キャスト
- ドラマ版では謎が解けると「この犯罪は美しくない」と呟くのが恒例。(これはドラマによくある決め台詞の様なもの。原作の火村に決め台詞は無い。)