「私は…ここにいる…… 無惨様が…御見えだ…」
「私の…言いたいことは…わかったか…」
プロフィール
人間時の名前 | ????(ネタバレ注意!) |
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身長 | 190cm |
体重 | 93kg |
趣味 | 囲碁 |
数字 | 十二鬼月 上弦の壱 |
血鬼術 | 全集中 月の呼吸 |
一人称 | 私/俺 |
初登場話 | 原作単行本12巻 第98話「上弦集結」 |
公式人気投票 | 第2回:14位(2938票) |
CV. | 置鮎龍太郎 |
概要
かつては鬼殺隊に所属していた元鬼狩りでもあり、鬼となった現在も全集中の呼吸を扱える。
また経歴ゆえに鬼殺隊の内部事情にもある程度精通している。
元々は戦国時代に武家の長男として生まれており、それは同時に室町、安土桃山、江戸、そして明治を経て大正に至る約四百年もの間、“最強”の座に君臨していた事を意味する。
容姿
侍のような出で立ちをしており、服装は紫色の上着に黒い袴、長髪を一つに束ねている。
また額や首元から頰にかけて炎のような痣があり、金色の瞳の赤い六つ目を持つ。
席位に従い刻まれた右目の「壱」、左目の「上弦」の文字は真ん中の二つにある。
また、戦国時代の人物にも拘らず身長が190cmと非常に高い。
初登場
刀鍛冶の里編の原作98話にて。
“上弦の陸”である妓夫太郎・堕姫兄妹の敗死により、上弦の百十三年もの無敗の記録が破られ、上弦全員が無惨によって無限城に召集された際にその姿を現す。無惨に産屋敷を見つけられていない事を指摘された際には「返す言葉もない……産屋敷…巧妙に姿を隠している。」と真摯に答えた。
十二鬼月の序列を厳格に重んじており、“上弦の参”猗窩座が“上弦の弍”童磨に煽られ攻撃し、頭を殴り飛ばした際には、その左腕を猗窩座も気づかない内に斬り飛ばして「猗窩座……お前は度が過ぎる」「猗窩座よ……気に食わぬのならば入れ替わりの血戦を申し込むことだ」と彼を窘め、笑って気に留めない童磨にも「お前の為に言っているのではない。序列の乱れ……ひいては従属関係に罅が入ることを…憂いているのだ」と返して、また自分を必ず殺すと宣言した猗窩座には「そうか……励むことだ」と激励し音もなく去っていった。
次に登場したのは最終章・無限城決戦編。
本人の再登場に先駆けて、新たに“上弦の陸”の座に就いた獪岳の回想の中で、土下座して命乞いをする彼に無惨の血を与えて鬼へと変えたことが描かれた。
人物
常に冷静沈着かつ理知的に振る舞い忠誠心も厚く、配下を殆ど信用しない無惨さえも一定の信頼を置いている程。
また喋る際に言葉の節々に「…」と間を空ける癖があり、会話の間合いが長く丁寧に発声している。
その寡黙で強烈な威圧感は、既に上弦の鬼と戦い勝利していた霞柱時透無一郎も「他の上弦とは比べ物にならない」「重厚な様 威厳すらある」「怖気が止まらない」「体が戦闘を拒否している」「こんなことは生まれて初めてだ」と動揺し、獪岳は「あの体中の細胞が 絶叫して泣き出すような恐怖」と回想するなど、劇中で対峙した鬼殺隊士もすさまじい恐怖を感じている様子。まして獪岳は「圧倒的強者に跪くことは恥じゃない。生きてさえいれば何とかなる、死ぬまでは負けじゃない」と恐れをなしていた。
敵である鬼殺隊にも、弱者は切り捨てる一方柱に対してはその実力や研鑽を素直に認めて賞賛する姿勢を示す。
特に「痣」を持つ者は劇的なパワーアップと引き換えに25歳までに必ず死ぬため、「せっかく鍛え上げた肉体・研鑽し極められた技が失われるのは惜しい。鬼となれば生き永らえて短命を克服できるし、更なる鍛練を積むこともできる」という考えから鬼となる事を強く推奨しているが、「人として生き人として死ぬことを矜持としている」悲鳴嶼行冥とは完全に対となっており、真っ向から反発しあっている。
能力
壮絶な内輪揉めの絶えない十二鬼月、上弦の鬼の中で、"上弦の壱"の座を数百年もの間守り続けているまさに「別格」の存在。
基本的な戦闘スタイルは刀を使った肉弾戦だが、特徴として鬼殺隊と同様の全集中の呼吸を会得している点が挙げられる。
人間時代から全集中の呼吸を極め、「痣」や「透き通る世界」に辿りつく現代の柱をも越える剣士だった彼が、上弦の鬼としての絶大な身体能力で刀を振るうことで、
その実力は百戦錬磨の柱複数人を相手にしてもなお圧倒するというまさに人の手の及ぶ領域を逸脱した災厄そのものとなっている。
さらに鬼としての数百年に渡る戦闘経験からか単純な剣術のみならず洞察力・判断力も極めて高く、不意打ちや初見の技に対しても冷静に分析し、即座に対処を行う。
上弦の鬼としての肉体の高速再生も持っており、右胸を潰されても次のコマでは元通りになっているなど、再生能力も極めて高い。しかし、猗窩座のように再生任せのゴリ押しはせず刀で受け流したり普通に避けたりと油断もない。
最強の鬼であると同時に最強の剣士である黒死牟が辿り着いた、“血鬼術”と“全集中の呼吸”という対極を合一して至った技。
血鬼術が「体得した呼吸を強化する」性質を持っている点は獪岳と同じだが、その実態は似て非なるものである。
型の数は拾陸に達し、全ての呼吸の中でもっとも多い。(さらに多い可能性もある)そのためどのような戦況にも即座に対応することが可能で、黒死牟に攻撃を与えることすら困難を極める。
詳しくは当該項目を参照。
虚哭神去(きょこくかむさり)
黒死牟が装備している刀。
外観は通常の日本刀だが、その刀身や鍔には血管の様な模様が走り、さらに刀全体に眼が無数に付いている。この眼から後述の三日月状の斬撃が出ている。
拵については彼が人間だった頃に使っていた刀に似ており、同様の四ツ木瓜型の鍔、黒い柄巻といった仕様になっている。
特徴として、黒死牟の血肉を用いて作られている。
そのため鬼のもつ変形能力と再生能力を備えており、相手に応じて刀の形を変えたり、破壊されても即座に復元・作り直しができる。
これにより、剣士の弱点である武器の破損を気にせず戦闘することができる。
欠点として鬼の肉体が素材のため、高純度の「猩々緋砂鉄」で作られた日輪刀と打ち合うと受け止めらずに溶けてしまう。
しかし前述のように直ぐに再生成できるので際立った弱点にはなっていない。
強さを認めた剣士の前では、三本の枝分かれした刃を持つ長大な大太刀に変形する。この形状は普段の刀の2倍以上に大きくなっており、単純に三日月状の斬撃の数も2倍に増えるため、これまでとは比較にならないほどの攻撃範囲、威力を見せる。
この形状を見せてからが真の地獄である。
なおこの武器生成能力は鬼が一般的に持つ肉体操作能力の延長線上にあるもので、他の上弦を始めとした上位の鬼達も有している。
また、この刀は自身の血肉から生成されているため、その気になれば全身から刀を生やすこともできる。こうなると全身から大量の三日月状の斬撃が飛び出るため、危機に陥った際の強力なカウンタートラップとして非常に有効。
三日月状の斬撃
黒死牟の血鬼術と推定される能力。
斬撃を衝撃波として飛ばす他、剣の軌跡による斬撃に付随する自立した三日月状の細かな斬撃を発生させて、斬撃を形成する。この斬撃は触れると体を容易く切断し、三日月は大きさや形が不規則で常に変化する。そのため直接の斬撃は避ける事ができても、この三日月を回避するのは至難の業である。
人間の頃から優秀な剣士であった彼が、この血鬼術を自身の剣術と融合させた結果、上記の戦技へと至った。
詳しくは当該項目を参照。
全集中の呼吸を極めた者に稀に発現する特異能力。
発動すると肉体に痣が浮かび、身体能力が圧倒的に上昇する。ただし代償に寿命を削り、発現者は例外なく25歳までには死亡する。
黒死牟も発現者だが、鬼となって寿命で死ぬことが無くなった結果、ノーリスクで使用可能となり常に痣が浮かんでいる。
詳しくは当該項目を参照。
全集中の呼吸を極め、さらに凄まじい鍛練を積んだ者に発現する能力。相手の身体が透けて見えるようになり、骨や筋肉の動きから相手の動きを読む事ができる。さらに殺気を消すことも出来るが黒死牟が殺気を消せていたかどうかは不明。猗窩座が言うところの「至高の領域」。限られた者しか辿り着けない境地である。
余談
無惨との関係
公式ファンブックでの無惨からの評価は「ビジネスパートナー」。その強さだけでなく油断せず相手を分析する姿勢を評価され、信頼が厚かったとされている。主とは気が合い、心を読まれても気にならなかった。裏切るつもりは一切無く、寧ろ感情を取り繕わなくてもいいので気が楽だったとのこと。
無惨は呼吸の剣士に興味を持ち、痣により寿命が僅かとなった黒死牟を勧誘し鬼にした。それから間もなく縁壱に敗れた為に、無惨は縁壱が死ぬまで表に姿を現さず、日の呼吸の剣士を根絶やしにする命を黒死牟に下している。
黒死牟の方は無惨のことを「あの御方」と呼び、無惨の血を「一滴たりとも零すこと罷り成らぬ有り難き血」と語るなど、明確に無惨を主、己を配下とする形を崩さずに仕えている。
他の鬼との関係
無惨を頂点とし彼に仕える十二鬼月の“上弦の壱”として、他の上弦の鬼達が諍いを起こした際には、激昂こそしないが寡黙かつ威圧的なその佇まいと制裁で彼らを窘めている。黒死牟に言わせると、これも無惨を頂点とする集団の序列のけじめをつける為である。
鬼殺隊士であった獪岳と相対した時には、命乞いをする彼を殺さずに無惨の血を分け与えた。その後獪岳を上弦に推薦したのも黒死牟であり、どちらも自らの肉体から造られた刀を用いている。
十二鬼月の中でも元から武人肌で“上弦の参”まで昇ってきた猗窩座を気に入っており、同じ武人として期待もしていたようで、過去に入れ替わりの血戦を申し込まれた時には嬉しかったらしく、勝利しているが喰わずに生かしておいた。入れ替わりの血戦を申し込まれたのは猗窩座を含めて数百年で三回のみ。猗窩座の「俺は必ずお前を殺す」と挑発的な態度を取られた際には、「そうか…励む…ことだ…」と成長を楽しみにする素振りを見せ、無限城決戦で彼が敗死した事を知った際は、「敗北するとは…」「私に勝つのでは…なかったか…」「軟弱千万」と珍しく強い怒りと失望を見せた。
上弦の鬼の中でも比較的新参者の“上弦の弐“童磨に対しては、猗窩座を叱責した際に「ちょっとした戯れさ~こういう風にして仲良くなっていくものだよ。上に立つものは下の者にそう目くじら立てずゆとりを持って~」という童磨の言葉をガン無視しており、この言葉は黒死牟にとって地雷だったようである。
序列に厳しい理由
公式ファンブックによると、戦国時代の武家の長男に生まれた為に、上下関係には厳しいとの事である。この時代は下克上など誰もが上を狙って天下をとれる時代であり、自分もいつ殺されるか分からない状態であった為に、周りの動向には常に目を光らせていた。
単行本21巻の「戦国コソコソ話」によると、鬼殺隊を裏切って無惨の配下になった際には、当時の産屋敷家の当主を殺害して、首を持って行った事が語られている。
岩の呼吸への感想
公式ファンブック鬼殺隊最終見聞録・弐では地獄にて他の鬼達と、岩の呼吸で斬られた感覚や悲鳴嶼自身の事を「仁王像を彷彿とさせる……」とコメントしている。
また本編では悲鳴嶼を「極限まで練り上げられた、肉体の完成形」と評しており、人間であるが故にそれがいずれ失われてしまう事を嘆いていた。
担当声優
黒死牟を担当する置鮎龍太郎氏は、数多くのジャンプ作品と縁がある大御所声優の一人である。置鮎氏も半天狗役の古川登志夫と同じくオーディションを経た上でのキャスティングだったらしい。
キメツ学園
公式ファンブック鬼殺隊最終見聞録・弐にて判明した。
鬼舞辻議員の秘書として登場。
本名および年齢は不明で、ガタイがいいのでボディガードと勘違いされる事が多い。
アメリカの特殊部隊にいたとか、居合の達人だとか、素手で人を殺せるなどの噂がある。
「キメツ学園!」でも大声を上げた獪岳を壁が割れるほど叩きつけたりと高い戦闘力は健在。獪岳の提案に乗ってキメツ学園のイベントに参戦し、かまぼこ隊に「コック志望」と名前を間違えられながらも共闘する。
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鬼舞辻無惨 鬼(鬼滅の刃) 十二鬼月 上弦の鬼 上弦トップ3 ビジパ
血鬼術 全集中の呼吸 月の呼吸 痣者 透き通る世界 継国巌勝
上弦の鬼
黒死牟(壱) 童磨(弐) 猗窩座(参) 半天狗(肆) 玉壺(伍) 妓夫太郎・堕姫(陸)
『無限城決戦編』にて
以下ネタバレ注意
“上弦の弐“童磨が倒された直後、“上弦の肆“鳴女によって空間移動させられた時透無一郎と邂逅。
無一郎に凄まじい恐怖を与えつつ、自身は無一郎に懐かしい気配を感じていた。
「お前…名は…何と言う…」
「時透…無一郎」
「なるほど、そうか…絶えたのだな…継国の名は」
黒死牟は無一郎に自分の人間の頃の名は継国巌勝と言い、無一郎は自分が継国家に残してきた子供の末裔、つまりは自分の子孫であると打ち明ける。
この事実に無一郎は取り乱すも動揺を鎮め黒死牟に攻撃する。しかし黒死牟は高速移動でこれを回避し、
「その若さでそこまで練り上げられた剣技…」
「私に怯みはしたもののそれを抑え込み私に斬りかかる胆力…」
「流石は我が末裔だ…」
「例え名が途絶えようと…私の細胞は…増えて…残った」と無一郎を褒める。しかし、無一郎はもう動揺せず、
「もし仮に末裔であったとしても何百年も経ってたらお前の血も細胞も俺の中にはひとつ欠片も残っていないよ」と黒死牟を完全に拒絶、痣を発現させ霞の呼吸漆の型朧を発動する。しかし、“上弦の伍”玉壺を一人で仕留めた際の、敵を撹乱させて頚を落とす必殺技にも拘わらず、黒死牟は瞬く間に技を見破る。
「初見の技だ」
「霞の呼吸の使い手は、このような技を使ったことはない」
「独特の緩急」
「動きが読みずらい」
「撹乱も兼ねた技」
「実に良き技」
「流麗で美しい」
「無一郎が編み出した技なのだろう」
「此方も抜かねば…無作法というもの…」
「月の呼吸 壱の型 闇月・宵の宮」
次の瞬間、黒死牟は抜刀し一瞬で無一郎の左腕を斬り落とした。腕を斬り落とされても尚、戦いを続ける無一郎を素晴らしい!と評価し彼を鬼にするべく、奪い取った彼自身の刀を用いて城の柱に磔にし、拘束する。
“上弦の伍“玉壺を単独で撃ち破った無一郎は、黒死牟を前に一瞬にして破れ去ったのである。
同じく黒死牟のいる空間に転送され、不意を打とうと隠れていた不死川玄弥による銃撃の奇襲も、高速移動で躱しざまに左腕を切り落とし、返す刀で右腕を、そして一瞥する間に胴を両断して戦闘不能に追い込んだ。そして「貴様のような鬼擬き…生かしておく理由は無い…」とその首を切断しようとした刹那、駆け付けた玄弥の兄・不死川実弥によりそれを阻止される。
その実弥との戦いでも嘗て当時の風柱と手合わせした事を懐かしみ、実弥の稀血による酩酊すらも「久しぶりのほろ酔いで愉快」と評しながら余裕を保ったまま戦い、後一歩まで追い詰めるが、今度は悲鳴嶼行冥が現れてそれを阻止。悲鳴嶼に対して痣の実態について話すも、彼からは既に承知及び覚悟の上と返され、悲鳴嶼と実弥との戦いに突入する。
柱二人を相手にしても圧倒する程の戦闘能力を見せつけるが、二人も黒死牟の攻撃を即座に読んで対抗し、一進一退の激戦を繰り広げ悲鳴嶼が黒死牟の刀を折る事に成功。
しかし…
血鬼術により刀を再生されてしまう。再び優位に立った黒死牟は、過去の記憶と照らし合わせて戦いを楽しむ余裕を見せていたものの、深手を負いながらも気力で喰らいつく実弥、戦いの中で“透き通る世界”を開眼するほどの成長を見せた悲鳴嶼の前に次第にその差を詰められていき、そして無力化したと思っていた無一郎と玄弥の決死の行動によって動きを止められたことでその均衡は崩壊。
予想外の窮地の中で想起したのは、今から数百年前、人を捨てて鬼になってから六十年近く経ったある夜に果たした、痣の後遺症で死んだと思っていた弟・継国縁壱との再会。
齢八十以上にも拘らず全盛期と変わらぬ強さで追い詰められ、しかし弟は自身を仕留める寸前に寿命で事切れてしまい、勝負は縁壱の勝ち逃げという形になってしまった。自身が人間だった頃に持ち得た全てを捨ててでも最後まで縁壱に実力で勝つことができず、二度と負ける事なく勝ち続けるという修羅の道を誓った過去の記憶。
不敗への執念と憤怒で猛り狂い、全身から刃と斬撃を突き出すというこれまでの剣士としての矜持を捨てるかのような反撃で、玄弥・無一郎を両断するが、それをも躱した悲鳴嶼行冥・不死川実弥によって遂にその頚を刎ね落とされる。
それでも尚、凄まじい執念で頚を再生させて、更に身体も大きな変化を見せる。
人間達の手によって追い詰められた黒死牟が、どこまでも越えに超えて成った理想。
誰よりも黒死牟自身が願い、遂に顕現させた誰にも勝る真の最強。
全身に纏った刃から無数の月輪を全周囲に放ち、如何なる存在をも歯牙にかけずして蹂躙する……その光景を、彼は信じて疑わなかった。
しかし、ふと目に入った実弥の刀の刀身に写っていたのは───
「何だこの醜い姿は……」
「侍の姿か?これが…」
異形の「侍」ではなく、もはや醜い「化け物」の姿と成り果てた自分の姿。
止めを刺さんとなおも攻撃を仕掛ける悲鳴嶼と実弥によって再び頸を刎ねられ、こんな事の為に何百年も生きてきたのかと自問をし、己は不死身の怪物ではなく日輪になりたかったとようやく知る。黒死牟は血鬼術を使って体を再生しようとするも、柱達の猛攻に再生が追い付かず、さらなる進化に完全に至る前に消滅していった。残った衣服の中には、かつて弟に渡しその遺骸に残されていた音の鳴らない笛だけが転がっていた。
そして黒死牟の魂は闇の中、一人燃え盛る地獄の炎にその身を焼かれながら虚しく宙を掻き続け、己の強さの為に人である事も侍である事も捨てて自ら鬼となり、仲間も家族も子孫も切り捨ててきた男の最期には、誰も現れる事はなかった。