概要
東方Projectに登場する八坂神奈子(やさか かなこ)と八意永琳(やごころ えいりん、愛称:えーりん)のカップリングである。
原作で両者が直接関わりを持つ様子は2014年2月の時点ではまだ見られない。
両者の交流
神奈子は妖怪の山山頂の守矢神社、永琳は迷いの竹林の奥の永遠亭と、人間の里を挟んで反対側に位置する離れた場所を主たる活動拠点としている。
ただしこの空間的距離については、仮に神奈子が永琳のもとを訪れたとして神奈子の場合は分社とそこを介した移動が可能である様子であるので、先述のとおり原作で直接的な接触が見られたわけではないため正確なところは不明ながら、神奈子にとっては分社さえ設置されれば必ずしもこの空間距離は苦ではないのかもしれない。
あるいは神である神奈子も迷いの竹林では迷ったりするのだろうか。
人里との関係
現在は二人とも人間に対して友好的であり、神奈子は精神面と生活面の安定(信仰とそれに対する御利益)、永琳は身体面の改善・保持(医療・医薬)と、それぞれ人間にとって有り難い存在であることにも共通点がある。
両者はそれぞれ幻想郷の外での経験や知識(神奈子は幻想郷に来る以前の外の世界のもので、永琳は月に居た頃またはそれ以前から身につけていたもの)を応用して今でも活動してるのである。
幻想郷以外の技術と物品の活用
『東方求聞口授』によれば、神奈子の鎮座する守矢神社には宝物庫があり、ここには守矢神社が「外の世界」から移転してきた際に一緒に持ち込んだ外の世界のものが収められている。
一方の永遠亭には数々の月の物品が存在する。
神奈子はその技術を河童らに小出しにすることで収益を確保し、永遠亭では永琳らの姫である蓬莱山輝夜が収益や永遠亭の対外交流などを目的に「月都万象展」として所蔵する物品を公開している。
いずれも幻想郷とは違う世界観をその住まいに保有しており、それらを生活や対人関係に活用していることに共通点も持つ。
神二柱
神奈子は今は守矢神社に祀られる神であり、守矢神社に信仰を集めるべく日々奮闘している。
それは時として「また守矢か」と言わしめるような大規模な問題に発展することもあるが、持ち前の性格的な明るさとバイタリティで積極的に幻想郷に関わっている。
その活動は地下核融合発電施設の開設(『東方地霊殿』)や妖怪の山におけるロープウェイ設置の立案(『東方求聞口授』)、ダム建設の主導(『東方茨歌仙』)など幻想郷における大規模なインフラ、ライフラインにまつわるものから、主張の異なる人物との対談(『東方求聞口授』)などの思想面にまで及び、その活動はまさに「乾を創造する程度の能力」を神奈子個人だけでなく周りをも巻き込んで発揮していると言えるだろう。
積極的な神様なのである。
永琳はかつて月の都の建設に携わった高貴な神格をもつ人物であり、キャラクター性からは日本神話における八百万の神の一柱である八意思兼神(オモイカネ)との関連が指摘されている。
永夜異変の後、永遠亭の門戸を開いてその能力と技術とを以て幻想郷おいてはオーバーテクノロジー的ともいえる医療(『東方香霖堂』など)を提供し、彼女自身が出向く必要のある重篤なケースへの往診も含め鈴仙・優曇華院・イナバを通しても人間の里と医療面での関わりをもっている。ただし永琳自身が人間の里まで出向くことはまれで、永遠亭での診療が主である様子である。
また、永琳は今日でも新しい知識の吸収に積極的であるとされ、こちらもまたアクティブな(その医療の恩恵を受けた人々から見てという意味でも)「神様」である。
二人は表に顔を出す頻度こそ異なるものの、それぞれの形で幻想郷に根付いた関わりの中にあり、先述のとおり人々または妖怪から尊敬(ないしは敬服)あるいは信仰される存在なのである。
ただし、『東方求聞口授』において神奈子は霧雨魔理沙から「新参者」と呼ばれており、永琳もまた『東方儚月抄』における八雲紫や八雲藍らの会話から見るに、二人にとっては永琳もまだ幻想郷では間もない人物として位置づけられているようである。
二人とも幻想郷ではまだ馴染みだしたばかり、ともいえる様子である。
古事記から見る二人の関係
「日本書紀」と双璧を成す日本神話の古書「古事記」において、日本創世の重要な場面となる、葦原中国平定(国譲り)の談では、永琳と神奈子は因縁浅からぬ関係にある。
高天原より降り立った天津神達は、葦原中国(地上)を統治していた国津神達に対し、国譲り(譲ると言うと聞こえはいいが実態は武力を背景にした侵略である)を迫る。
国津神が次々と降伏していく中、最後まで天津神に抵抗していたのが、国津神のトップ「大国主神」(オオクニヌシ)の子「建御名方神」(タケミナカタ)という神である。
この「タケミナカタ」は諏訪信仰にも登場する神で、東方においては「神奈子の元ネタ、又はその夫」とも言われている。
抵抗虚しくタケミナカタ(神奈子)は打ち負かされ、諏訪の地に下る事になるが、タケミナカタを降した天津神の一柱「建御雷神」(タケミカヅチ、字がタケミナカタと似ているが別人)を選定したのは、天津神のブレインこと思金神(八意思兼神)……そう、永琳の元ネタとされる神である。
タケミナカタの正体については日本神話の中でも謎が多く、諏訪大社に残る縁起と古事記で全く立場が反対で、東方において神奈子は諏訪子を降して諏訪の地を平定したが、古事記においては侵略戦争の敗者である。そもそも古事記、先代旧事本紀に登場するものの、日本書紀には全くと言っていい程登場しない。一説にはタケミナカタは、古事記執筆当時の朝廷の権力争いに利用する為、新たに創作されたとも言われているが、はっきりしない。
ちなみにタケミナカタ(神奈子)の実の父親であるオオクニヌシはどうなったかと言うと……「隠居した」……日本の神々で隠れると言えば「死ぬ」つまり神奈子が天津神に敗北した後、殺害または封印されてしまった事になる。
東方においては古事記より諏訪信仰の設定が強いようだが、仮に古事記の設定から見た場合……
・神奈子は国津神の一柱として月の軍勢相手に戦うも、永琳の派遣したタケミカヅチに敗北して敗走する。
・敗走した先が諏訪であり、神奈子はそこで生き残りの為に諏訪子と戦い、これを降して平定する。
・紆余曲折の末、幻想郷に……
・永琳(八意思兼神)は古事記に置いて「タケミナカタが国譲り抵抗している」と知っているため、確実に神奈子の事を知っており、彼女の父親がどうなったのかも知っている。
・神奈子は永琳の正体を知らないのか、もしくは「昔の事だ」と割り切っているのかは定かではない。
(そもそも古事記の設定が東方で使われていたらの話である)
また、儚月抄においては、以下の様な記述がある。
豊「その縄は遥か昔から、不浄な者の出入りを禁じるために使われてきたのよ」
紫「不浄なもの、をねぇ………土着の神様もその縄で縛ってきたくせに」
豊「…そうね。察しのとおり、正確に言うと月の民に逆らう者の動きを封じるのに使ってきたのよ」
藍「紫様 いったいなんの話を……」
紫「古くはしめくり縄と呼ばれ、太陽の神、天照大御神が岩戸に隠れたときに再び岩戸に入れないように縄で縛ったのが始まりだと言う。それから不浄な者の出入りを禁じるときに使われるようになった縄」
豊「そう、注連縄。これのお陰で月の都は守られている」
紫「注連縄は本当は不浄な者の出入りを禁じるだけの代物ではない。神様を封印する役目も持っている」
藍「え?」
紫「例えばダイコク様、つまり大国主から国を略奪した天津神は大国主の反乱を恐れ二度と出てこられないように神社に封印した」
藍「ダイコク様が封印? ダイコク様って兎たちがいつも歌にしている神様ですか?あいつらのアイドル的な」
紫「大国主の神社は出雲にある大社。藍は知らないかもしれないけど、そこには極めて太い注連縄があるのよ。それは不浄な者の出入りを禁ずるためだけとしては太すぎる……。さらにもう一つ太い注連縄をもった神社があるでしょう?」
藍「もしかして、最近山に越してきた神社ですか?」
紫「あそこの神社、本当の祭神は諏訪の土着神だけど…建前の祭神は建御名方神。大国主の息子にして最後まで抵抗した武神」
藍「大国主の息子で危険分子…。だからあれほど太い注連縄が必要、と」