はき気のする「悪」
はきけのするあく
ジョジョの奇妙な冒険_第3部『スターダストクルセイダース』に登場するの空条承太郎が怒気を伴って発した台詞。
不良のレッテルを貼られて、それを自覚している男でも分かる「悪」への怒りを顕わにした言葉(またこの時は、ましてや女を手に掛けている所業へ、承太郎は尚更に怒りを湧かせていた)。
因みに、はき気のする「悪」をみせた相手は、諸悪の根源・DIOに洗脳されていた刺客。この背景から目前の敵を通して、悪の頭目であるDIOにも当てはまる肩書・主張であり、転じて後述にある【「悪」の定義】を本作に限らず、それを感じられる所業・相手へ用いられる言葉。
後述にある【「悪」とは何か】や、本稿の余談にある奇知(ウィット)にぶっ飛んだ駆け引きは、本作『スターダストクルセイダース』に限らずジョジョシリーズ全体にある一端の命題(テーゼ)・作品特有の味と凄みがある展開の一つ。また、ジョジョシリーズで有名な名言の一つ「吐き気を催す邪悪」と類似する内容・一幕になっている。
空条承太郎の家系・ジョースター家と因縁がある男・DIOは、自身の覇道に障害となる彼らを始末しようと刺客を送り込んでいた。
承太郎が通う日本の高校。いつの間にか潜り込んでいた刺客・花京院典明は、自身の超能力「法皇の緑(ハイエロファントグリーン)」によって、承太郎や彼の周囲にいた無関係の人間たちも苦しめ傷つけていく。この所業に不良学生・承太郎は怒りを湧かせていく。
「この空条承太郎は……いわゆる不良のレッテルをはられている…」
「ケンカの相手を必要以上にブチのめし いまだ病院から出てこれねえヤツもいる…」
「イバルだけで能なしなんで 気合を入れてやった教師は もう2度と学校へ来ねえ」
「料金以下のマズイめしを食わせるレストランには 代金を払わねーなんてしょっちゅうよ」
だが こんなおれにも はき気のする「悪(あく)」はわかる!!
「悪(あく)」とは てめー自身のためだけに 弱者を利用しふみつけるやつのことだ!!
ましてや女をーっ!
きさまがやったのはそれだ! あ~~~~ん
そして、目の前に対峙する花京院典明の超能力「法皇の緑(ハイエロファントグリーン)」は、常人には見えず、法で裁くことすら出来るわけがない相手。それを知るのは、今この場にいる承太郎だけで、はき気のする「悪」に立ち向かえるのも己のみ。
『 だから おれが裁く 』
承太郎の光
前述の「ましてや女をーっ!」と怒り・言葉を発する承太郎へ重なるように、原作では漫画的表現で「なんだ~? このピンセットみたいな光?は」な5つ程の発光?が出現している(光の一つは、承太郎が口に咥えているような構図)。
この奇妙な画(一コマ)は、アニメ版だと承太郎の「怒髪天を衝く」を抽象的に表したものとして描写されている。承太郎の「髪と帽子が一体化」している部位から、メラメラと赤い炎(オーラ)が湧き、その火の粉(オーラ)が承太郎の顔に重なり、横へ尾を引く形で「原作にあった謎の光」が再現されている。
この演出から「承太郎の怒り」が、黄金のように輝くほど発光(プッツン)しており、それが謎の光として現れたのだと窺える。
初見の方に限らず往来の愛読者(ファン)にとっても、実に奇妙で、突然の演出に面食らう印象(インパクト)が強い画であろう(これに限らず、原作の奇天烈な演出や細かい描写は、アニメ版の制作陣によって奇知な発想で再現され、人気作の長寿作に携わる意気込みや凄みが伝わってくる)。
「悪」と「正義」とは
承太郎が【「悪」とは】と明言した後、対峙していた花京院典明は彼自身の【「悪」とは】を語る
「悪(あく)」?
「悪」とは敗者のこと…
「正義」とは勝者のこと………生き残った者のことだ
過程は問題じゃあない 負けた奴が『悪』なのだ
承太郎は自分の主張を拒否されたが、向かおうとする結果【はき気のする「悪」を裁く】は変わりないため、機転の利かした駆け引きを展開する。
- 自分の主張を拒否した相手の主張を肯定する
- 相手の主張に則ってブチのめす
実に単純(シンプル)な答え。相手の土俵に乗って決着(ケリ)をつける奇策というか力技で筋を通す承太郎。
なに…敗者が『悪(あく)』
それじゃあーやっぱりィ てめーのことじゃあねーかァ―――ッ
また一端(マニアック)の余談だが、アニメ版だと細かなオリジナルの攻防【花京院典明 / 法皇の緑(ハイエロファントグリーン) vs 空条承太郎 / 承太郎のスタンド(※この時点では彼のスタンドに名前がなく、単純に「俺のスタンド」と言っている)】が繰り広げられ、ハイエロファントグリーンの首根っこを掴んだ承太郎のスタンドが、カウントダウンを取って自然と唾を飲み込ませる緊張の圧力(プレッシャー)を与えるみたいに、右手指を一本ずつ折って拳を作る様子は実にカッコイイ。
承太郎のスタンドが相手の土俵でたっぷり筋を通す展開は、視聴者にとっても爽快感(スッキリ)な戦闘になっている。