ひみつ道具としての解説
藤子・F・不二雄原作の漫画・アニメ作品『ドラえもん』に登場するひみつ道具の一つ。及び同作品のエピソードの一つ。TC6巻収録。
見た目は普通の図鑑だが、ページを開いて背表紙を叩くと、そのページに載っているものを図鑑から出現させることが出来る。
出現したものは本物である為、生き物なら動き回り、乗り物なら乗り込んで動かすことも可能で、食品であれば実際に食べられる。出現させたものを図鑑の中に戻したい場合は、ページを開いたまま上から押し付ければ良い。
ただし、出現させたものを食べたり破損させてしまった場合、図鑑から絵が消えてしまうことになったり、破損した状態の絵が図鑑に載ってしまうことになる。
また、図鑑に載っていないものを新たに収録させることも可能。上記の初登場エピソードの作中では、ドラえもんが誤ってのび太を図鑑に押し込んだ際、彼が解説付きで図鑑に収録されてしまっている。
エピソードとしての解説
ある日、のび太はジャイアンやスネ夫から「メガネザルにそっくりだ」とからかわれるも、満足げな顔をして帰宅する。その様子を見たドラえもんは「そんなこと言われて、何故怒らない」と憤慨するが、のび太は「僕に似てるなら、よっぽど立派な顔の猿だろ」と舐めきった発言をする。
自信満々にメガネザルを図鑑で調べようとするのび太だが、そこのページは破れてしまっていた。のび太曰く「前に友達に貸した時に破られた」とのことで、ドラえもんは「僕の図鑑で調べなさい」と言いながら、ポケットから「ほんもの図鑑」を取り出す。
動物図鑑に収録されたメガネザルのページを開き、表紙側を軽く叩くと、「キキッ」という鳴き声を発しながら本物のメガネザルが飛び出す。メガネザルを手に載せたドラえもんが「なるほど似ている」と言うと、のび太は「キーッ」とメガネザルそっくりな声を出しながら激怒する。
逃げるメガネザルを図鑑に押し付けると、元の図鑑に収まった。のび太から「良い図鑑だね。貸してよ」と頼まれたドラえもんだが「ダメっ。本物だから、なくなると困るんだ」と言う。しかしのび太から押し負けたドラえもんは、結局彼に図鑑を貸してあげることにする。
その後、のび太の部屋からモクモクと蒸気が噴き出し、その様子を見た友人達は「火事だ!」と騒ぐ。スネ夫が「あれは入道雲」と冷静に解説すると、その入道雲により彼らは激しい雷雨に巻き込まれてしまう。
彼らの様子を見ていたのび太が「この(「おてんき」の)図鑑で出したんだ」と説明するが、友人達はのび太の話を最後まで聞かず、彼が見せた図鑑のほぼ全て(1人に1冊ずつだが)を「貸してあげる」などとは一言も言ってないにも拘らず強奪し持ち去ってしまう。図鑑を取り上げられたことを知ったドラえもんは「君の友達は借りた本を破るような、酷い奴だろ!」と怒り出す。
ドラえもんとのび太は急いで図鑑を取り返しに向かう。すると、ドラえもんは「たべもの図鑑」を持ち去ったジャイアンを発見する。彼は「ちょっとくらい良いじゃんか」と渋るが、ドラえもんは鬼気迫る顔で「すぐ返せ!」と言い放つ。
取り返した図鑑を見ると、ジャイアンは図鑑に収録されたページを全部食べてしまっていた。当然ドラえもんは怒り出し、ジャイアンは渋々自費で購入して弁償することになった(大山版では母ちゃんに弁償代を出してもらおうと頼んだが「自分でやったことなんだから自分で何とかしなさい!」と説教+折檻を受けた)が、それ以前に人の物を勝手に持っていったので自業自得である。
(わさドラ版では特にどら焼きを食べてしまったことに対してドラえもんが怒っており、ジャイアンがたじたじになるほどの迫力を見せている)
次にドラえもん達は「昆虫図鑑」を持ち去ったメガネの少年宅を訪れる。少年は図鑑から出現させた蝶を標本にしようとしていた為、ドラえもんは少年から蝶を取り返す。
そのままドラえもん達が道路を歩いていると、二人組の少年が「のりもの図鑑」に収録されたフォードの1915型を走らせていた。彼らは「一回りしてから返すよ」と言いながら車を走らせるも、そのまま電柱に追突してしまう。ドラえもんは苦々しい顔をしつつ、無惨に壊れてしまったフォードを図鑑に戻す。
(ちなみにわさドラ版ではドラえもんがのび太に対して「全く、君は本当にいい友達を持ってるね!」と皮肉を言っていた。)
そしてドラえもん達は「オバケ図鑑」を借りて行ったしずかの家へ向かったのだが、彼女は鬼や傘化け、骸骨やQ太郎等のお化けを出現させてしまったことでを悲鳴を上げていた(大山版では傘化けが「キャーッて、あんた自分で出したくせに…」とツッコミを入れていた)。
ようやく全ての図鑑がドラえもんの手元に戻ったかと思われたが、彼はまだ「大むかしのいきもの図鑑」が足りないことに気付く。ドラえもん達はスネ夫が持ち去ったと考え、急いで彼の元へ向かうと、スネ夫がマンモス(大山版ではティラノザウルス)を出現させていた。
暴れるマンモスに対し、ドラえもんは「ぞうさん」の歌を歌い、マンモスを宥めようとする。
マンモスが動きを止めた隙を狙って図鑑に戻そうとするが、マンモスの鼻で図鑑が弾き飛ばされてしまう。
すかさずのび太は「おはなし図鑑」から、ターザンやスーパーマン(らしきヒーロー)、ウルトラマン(らしきヒーロー)を次々に出現させてマンモスに攻撃。しかしマンモス相手に全く歯が立たず、すぐに全員が倒されてしまう。
しかも今度はのび太がマンモスに反撃され捕まってしまったが、「タケコプター」で飛んで来たドラえもんがマンモスを図鑑に押し込み、ページの中に戻すことに成功する。ドラえもんが「のび太君、マンモスは図鑑に戻ったから、もう安心だよ」と声をかけるも、のび太の姿が見当たらない。
すると図鑑の中から「ここだよう。出してくれえ!」という声が聞こえてきた為、ドラえもんが図鑑を確認すると、ドラえもんのうっかりミスでマンモスの傍らにのび太及び彼の解説が収録されてしまっていたのが判明した。
余談だが、ジャイアンやスネ夫はともかく、あの真面目そうなしずかまでどさくさ紛れに人の物を勝手に持っていくという非常識な行為を行うのはかなり珍しく、そしてのび太が特に悪戯を働いた(強いて言うなら友人達に不用意にほんもの図鑑を自慢してしまった)訳でもなく、寧ろドラえもんと共に同級生が起こしたトラブルの尻拭いをしたにも拘らず最後は酷い目に遭った話である。