概要
藤子・F・不二雄原作の漫画・アニメ作品『ドラえもん』のエピソードの一つ。TC第12巻収録。
ドイツの古城を舞台とした話で、ミステリーやオカルトの要素を一部含む異色作。対象ターゲットが高めに設定された、増刊少年サンデー読切作品の一つであり、ページ数も31と非常に多い(TC収録では『ぼく、桃太郎のなんなのさ?』の次に長い)。
ストーリー
パパとママが新しい家を購入しようと話し合っていたが、1000万円の予算では厳しく、当分の間は借家暮らしが続くだろうという結論に至った。
その話をのび太から聞いたドラえもんは、ドイツの城を購入することを提案する。ドラえもん曰く、ドイツには15000以上の城が残っており、不便な場所に建っていたり手入れが大変等の理由で買い手が付かず、ミュンヒハウゼン城は何と1000万円で販売されているという。
そこでドラえもんとのび太は現地時間では夜中のドイツに「どこでもドア」で向かい、まずは2人だけで城の下見をすることにした。懐中電灯を片手に城を探検していると、そこでドイツ人の女性と出会う。「ほんやくコンニャク」を食べて会話すると、彼女こそが城の持ち主のロッテ・ミュンヒハウゼンだったのだ。
彼女はこの城で生まれ育ったのだが、両親が亡くなってからは税金等の理由で維持が困難になり、仕方がなく城を売りに出したと言う。そんな話をしていると、ロッテの叔父・ヨーゼフがやって来る。ロッテ曰く「私の財産を狙っている弁護士」とのことだが、ヨーゼフは「狙われる財産も無いくせに」と言い返す。
ロッテはドラえもんとのび太に対し「この城には幽霊が出ると言われているけど、そんなこと信じないわよね!」と言うが、ドラえもん達はこの時点で少し怖がっていた。その後、ドラえもん達が城内に飾られていた肖像画を見て誰かを尋ねると、ロッテ曰く先祖のエーリッヒ・フォン・ミュンヒハウゼン男爵で、500年前にこの城を建てた人だという。
やがてロッテとヨーゼフは自宅に戻り、お試しの許可を貰ったドラえもんとのび太はパパとママを城に招待する。しかし、城が広すぎる為に、パパは広大な城の中で道に迷ってしまい、ママは掃除をしようにも手入れが行き届いていない場所が多すぎて一向に終わらず、ドラえもんとのび太はかくれんぼするも隠れている相手を見つけることができないことで言い争いになってしまう。
結局、パパとママは「こんな所には住めないよ」と言いながら野比家に戻るが、ドラえもん達は「せめて僕達だけでもここに住もう」と考え、そのまま城の部屋で休むことにした。しかし、部屋でくつろいでいたところへ動く鎧が襲いかかって来る。ドラえもん達はあまりの怖さに叫びながらどこでもドアで野比家に逃げ戻ってしまう。
実はその様子をロッテが目撃しており、彼女は鎧の正体はヨーゼフで、城が誰かの手に渡らないよう鎧を着て追い返していたことを見抜く。すると鎧の男(ヨーゼフ)が逃げ出し、ロッテは当然追いかけるのだが、途中で地下牢に閉じ込められてしまう。
後日、城の件でスネ夫たちに冷やかされながら帰宅したのび太はママに見せてもらった新聞でロッテ行方不明事件を知る。のび太はドラえもんと共に急いでロッテを助けに向かおうとするが動く鎧が怖くて思い悩んでしまう。するとドラえもんがある秘策を思いつき、「幽霊に対抗する方法が1つある!こっちも幽霊を出すんだ!しかも本物を!」と言う。
その頃、ドイツではヨーゼフが城の庭を掘り起こしていた。先祖が埋めた財宝を探していたのだが一向に見つからず、穴を掘り終えたところでヨーゼフは鎧を着た謎の男性と出会う。顔を見ると先祖であるエーリッヒそのもので、そんなことはあるはずがないと混乱したヨーゼフは鎧の男にスコップで殴りかかる。しかし剣で弾き返されてしまい、そのままヨーゼフが逃げ出すとドラえもんとのび太が待ち構えていた。
ヨーゼフからロッテの居場所を聞いたドラえもんとのび太は急いで地下牢へ向かい、無事にロッテを救い出す。ロッテから「どうしてここが分かったの?」と尋ねられたドラえもんは、「タイムマシン」で500年前の世界から先祖に来てもらったと説明し、エーリッヒも「いきなり寝室に彼らが飛び込んで来た時は流石に驚いたが、子孫の危機と聞いて飛んで来た」と補足する。
ロッテとエーリッヒは時空を超えた出会いを果たし(エーリッヒ曰く「ロッテには妻の面影が残っている」とのこと)、エーリッヒは自分がかつて残した財宝を隠し場所から取り出してロッテに渡す。その後、エーリッヒが「ミュンヒハウゼン家の栄光を取り戻すのじゃ!」と言いながらロッテにエールを送り、その様子を見たドラえもんとのび太は微笑みながら「結局、城を買う夢は夢のままで終わったね」と言うのだった。
アニメにおける原作との主な相違点
大山版では1979年7月16、17日及び1986年4月4日に、水田版では2008年12月31日及び2023年9月2日にそれぞれ放送している。
また、渡辺歩監督は本作をベースにした映画を計画してたらしい。
1979年版
- 前後編でアニメ化。
- 基本的に原作版通りの展開だが、のび太の両親は城へ行っておらず、しずか・ジャイアン・スネ夫の3人に関しては登場すらしないので、これらに関する描写や下りはほとんどがカットされている。
- ヨーゼフが最初エーリッヒを泥棒だと思い込む描写はカット。
- 本編終了後のショートアニメは全編が甲冑を身にまとったドラえもんの肖像画が映し出されるというもので、後編はドラえもんとのび太が城から顔を出し周りを見渡すというもの。
1986年版
- サブタイトルは「ミュンヒハウゼン城へようこそ」
- 冒頭パパが実際に土地を視察する場面が追加され、土地の説明も簡略化されている
- のび太が作っていたプラモは飛行機からスペースシャトルに変更
- その後、のび太はいつもとは別の空地でドラえもんとしずかにもう少し夢のある話はないか尋ねており、昨日しずかはテレビを見てミュンヒハウゼン城のことを知ったので、ドラえもんとのび太にこの城を買ってはどうか提案している。そして、ミュンヒハウゼン城の値段は2千万円と原作の2倍の値段になっていて、その後、しずかも2人と一緒にミュンヒハウゼン城を訪れている。
- のび太はパパとママ、それぞれ別々に2千万円くれないか聞いている。
- 今回のみ、ロッテの名前がクリスに変更されている。
- のび太は両親をミュンヒハウゼン城に連れて行った後、しずかに電話をかけていない。このため、しずか、ジャイアン、スネ夫をミュンヒハウゼン城に招待しようとする描写も描かれていない。
- ラスト、一件落着するものび太はママに宿題は終わっているのか呼び出され、ドラえもんと現実の厳しさを痛感しながら、またここに遊びに来ることを約束し、クリスとミュンヒハウゼン城に別れを告げてどこでもドアで帰っていった。
2008年版
- サブタイトルが「ゆうれい城へひっこし」に変更されている。
- ママが土地を買うのに拒んだ理由にはのび太の学費の件も追加され、用意できる資金は1500万円と、原作よりも少しだけ上がっている。
- ドラえもんが売りに出されているドイツの城を列挙するシーンでは、買い手が付かない理由を思わせる城がそれぞれ表示されている。ちなみにこの時ドラえもんがのび太に見せたのは、『世界のドラヤキ』という本。
- ミュンヒハウゼン城の値段は先ほどの用意できる資金と同じ1500万円。
- ヨーゼフはドラえもんとのび太が男爵の肖像画が見た後、「会って城を手放すと聞いたら、さぞや悲しまれるだろうね。ご先祖様は」と嫌味を言っている。
- ロッテはバイクで去る前にドラえもんたちに城の鍵を渡している。
- 今回ものび太は1986年版と同じく両親をミュンヒハウゼン城に連れて行った後、しずかに電話をかけていない。
- パパは部屋に入った後タバコは吸っておらず、その代わり窓から月を眺めて「日本の月とそっくりだなぁ」と一人和んでいる。その後、ママからほうきを持ってきてと頼まれ、城の中をうろついている。また、集金はガス代ではなく新聞代。
- のび太はドラえもんとかくれんぼをした際、甲冑を身にまとって騎士の列に紛れ込み隠れている。
- ドラえもんがのび太は両親が帰ってしまった後、しずか、ジャイアン、スネ夫を城に招待して、そこにロッテも皆に本場ドイツの味をご馳走しようと、たくさんの具材を持ってやって来た。そして皆で協力して料理を作ったり、城の構造を説明したりしており、その後、ドラえもん達はドイツ料理を、ロッテはどら焼きをご馳走になり、互いの国の味を味わっている。
- だがそんな中、ヨーゼフがロッテに「明日は受験なのに大丈夫か?」と言ってやって来たため、ロッテも「私の受験もご心配なく。必ず伯父さんよりもいい弁護士になってみせるわ」と言い返すと共にのび太たちにお礼を言って帰っていった。
- ドラえもんとのび太は夜、ベッドの上で漫画を読んでいる。また、この後2人が家の枕元で問答をする下りはカットされている。
- ヨーゼフはロッテがカブトを脱がしにかかろうとすると、彼女に剣を投げつけ、その隙に逃走した。
- ロッテが行方不明になったという記事が載った新聞はドラえもんが持ってきたもので、その直後しずかもロッテが行方不明になったというニュースを見て野比家にやって来た。ちなみにこの時しずかは幽霊に対抗しようと様々な除霊グッズを持参してきたが、2人から荷物になるや、かえって幽霊を呼びそうとおいていくよう促された。
- ヨーゼフは1つだけでなく、何か所も穴を掘っており、この最中にドラえもん、のび太、しずかがやって来たため、鎧の姿のまま驚かし彼らを追っ払った。そしてのび太は壺にはまってよろめくドラえもんに驚いて外へと逃げ出し、先ほどヨーゼフが掘った穴の一つに落ちるが、穴の底が崩れてしまい地下道に落ちるが、そこでロッテのバイクを見つけロッテと再会できた。
- 一方途中で城にやってきたジャイアンとスネ夫は甲冑を二人場折で装着し、ヨーゼフを誤魔化すが、しずかがヨーゼフを怖がらすため、怖い顔(変顔)をしたことで、スネ夫がこれを見て恐怖のあまり逃げ出してしまい、ジャイアンは外へ放り出されてしまった。
- 上記の経緯により、男爵と会った時、ヨーゼフは鎧を着たままであり、最後もジャイアン以外の全員に追いつめられる形で観念し逃げ出した。
- 城に隠された財宝は城の庭にあるモニュメントを動かすと、城の柱から水が伝わり、庭中央の噴水から大量のコインや宝石があふれ出し、あちこちの水路からも水が流れ出すというものになっている。
- ロッテは男爵からヨーゼフの処罰をどうするか聞かれるが、「本当の犯人は伯父さんに取り付いた悪霊よ。だって伯父さんは私を10歳の時から育ててくれた優しい人だもの」と許すことにし、ヨーゼフもこれに泣き崩れている。
- ラストは全てが一件落着し、のび太がロッテに城の鍵を笑顔で投げ渡すという場面で幕を閉じている。
このエピソードは後に再編集され、米国ローカライズ版にて「Noby's Home is His Castle」のサブタイトルで2015年に放送された。
2023年版
ドラえもん誕生日スペシャルの前半エピソードとして、新作を放送。アレンジが多い2008年版と比べて、タイトルや城の値段といった基本設定は原作そのまま。
- 原作のしずかとジャイアンとスネ夫の3人で台詞があるのはスネ夫だけだったがしずかとジャイアンにも台詞が用意され、ジャイアンはスネ夫同様にのび太を冷やかし、しずかは城に住めることを羨ましがった
- のび太の帰宅が学校帰りから買い物帰りに変更
- 地下牢に扉用と隠し財宝用のスイッチがあり、財宝が隠されている石のベッドは宝箱状に変形
関連タグ
ノイシュヴァンシュタイン城(のちに世界文化遺産にもなった、ドイツを代表する古城。同城のモデルにもなっている)