概要
ドイツ海軍が保有したドイッチュラント級装甲艦(通称「ポケット戦艦」)の3番艦。
艦名は第一次世界大戦時のコロネル沖海戦で勝利をおさめ、フォークランド沖海戦にて破れ戦死したドイツ東洋艦隊司令長官「マクシミリアン・グラーフ・フォン・シュペー」中将に由来する。シュペー提督(アドミラル)は伯爵(グラーフ)でもあった。→ シャルンホルスト(装甲巡洋艦)の記事を参照。
艦歴
1936年就役。
1937年5月20日、ジョージ6世戴冠記念観艦式に参加、日本海軍の重巡洋艦足柄やフランス海軍の戦艦ダンケルクなどともに各国の注目を浴びる。
ディーゼルエンジンはアドミラル・グラーフ・シュペーの長い航続距離を支えたが、燃料予熱装置からのパイプが設計ミスで露出していた。
第二次大戦が始まると既にドイツを出港して大西洋に進出していた彼女はその長い航続距離を生かして、大西洋・インド洋で9隻の商船を撃沈・拿捕して連合国の経済活動の妨害する「通商破壊」を行ったが、艦長のハンス・ラングスドルフ大佐は捕虜を丁重に扱い、敵国からも尊敬を集めた。
1939年12月6日夜、南大西洋での夜間照明訓練を目撃した船舶に通報された。
12月13日、ラプラタ河口での通商破壊を試みたシュペーはイギリス海軍G部隊(通商破壊艦捜索部隊の1つ)の軽巡洋艦エイジャックス、アキリーズ、重巡洋艦エクセターにウルグアイ沖で捕捉され、エクセターに7発の命中弾を与え大破・戦闘不能とし、エイジャックスには2発の命中弾を与え主砲を半減させ、アキリーズにも損傷を与えたが、自らも多数の命中弾を受け、その殆どは軽微な損傷しか与えなかったが、燃料パイプが破断、測距儀、レーダー装置、食糧貯蔵庫、艦載機などが破壊され、装甲も貫通されて水線下の浸水は6箇所となり、36名の戦死者を出すなど被害も甚大であった。
12月14日、中立国ウルグアイのモンテビデオ港に逃げ込んだが、72時間以内の退去を求められ、ラプラタ川河口はエイジャックス、アキリーズが封鎖。更に、フォークランド諸島から重巡洋艦カンバーランドも駆け付けた。
12月17日、アドミラル・グラーフ・シュペーはモンテビデオ港の沖合で自沈し、乗組員はアルゼンチンに送られた。
12月19日、ラングスドルフ艦長はブエノスアイレスでピストル自殺した。ハーケンクロイツ旗ではなく軍艦旗を身体に巻いていた。
ヒトラーは「戦い抜くことをせず自沈した」、「戦艦への期待は幻滅以外のなにものでもなかった」と述べ、ラングスドルフ艦長の遺族に十分な年金を与えなかった。
ブエノスアイレスで行われたラングスドルフ艦長の葬儀にはアドミラル・グラーフ・シュペー乗組員やドイツの駐在武官、ウルグアイで釈放された連合国船舶の乗組員やイギリス軍軍人も参列した。
アルゼンチンやウルグアイに一部の乗組員が帰化し、現在もその子孫が住んでいる。
創作関連
- 1957年に映画『戦艦シュペー号の最後』が公開された。実際にラプラタ沖海戦に参加した軽巡洋艦アキリーズが出演している。また海戦には参加していないがカンバーランドも本物が出演している。しかしアドミラル・グラーフ・シュペーはアメリカのデモイン級重巡洋艦セーラムが演じており、アメリカ巡洋艦に偽装しているという設定は結構無理がある。
- ゲーム戦艦少女にシュペーを擬人化したキャラ、斯佩伯爵海军上将が登場する。外部リンク
- ゲームアズールレーンにはシュペーを擬人化したキャラクターが登場しており、エイジャックスとの交戦を描いたイベント「アドミラル・グラーフ・シュペー追撃戦」も開催されている。→アドミラル・グラーフ・シュペー(アズールレーン)
- アニメ『ハイスクール・フリート』にて、ドイッチュラント級直教艦として登場する。艦長はテア・クロイツェル、副艦長はヴィルヘルミーナが務める。
擬人化イラスト
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