概要
1812年発売の初版から収録されている、最古参のグリム童話の一つ。
原題は「Der Froschkönig oder der eiserne Heinrich」=「かえるの王さま、あるいは鉄のハインリヒ」であるが、現代では王ではなく王子として描かれることが多い。
あらすじ
昔々ある所に、美しい王女様がいました。ある日の事、金色の毬で遊んでいた王女様は、うっかりして池に毬を落としてしまいました。王女様は悲嘆にくれましたが、そこに一匹の蛙が現れました。蛙は「美しいお嬢さん、哀しんではいけません。私が毬を取ってきてあげましょう。その代わり、私を貴方のお友達にしてください」と声をかけ、王女様は喋る蛙に驚きつつもそれを受任しました。毬を取ってきた蛙は池に戻り、王女様もお城に帰っていきました。
その晩、王女様が両親と食事をとっていると、窓をペチャリ、ペチャリと打つ水音がしました。振り返るとそこには先刻の蛙が窓に張り付いており、「私もお食事に交ぜて下さい」と言ってきました。まさか本当に蛙が城に来れるはずは無いと思っていた王女様は腰を抜かすほど驚きましたが、お父様もとい王様は「お前が約束したんならちゃんと守りなさい」と言い、蛙は広間に入り一緒に食事を楽しみました。
悪夢のような夕餉を終え、寝ようとする王女様でしたが、そこにまだ忌々しい蛙が付いてきました。この蛙がは「一緒に寝ましょう」と寝室に上がろうとしましたが、勿論王女様は断固として反対しました。そして、「もうお城に入ってこないで!」とまで言い放ちました。
そこまで聞いて蛙はしょんぼりとうなだれ、「解りました。私はもう二度と王女様の下には参りません」と帰ろうとしました。言い過ぎたと感じたのか、王女様は蛙を救い上げ、お別れのキスをしました(※食中毒を起こしかねないので読者諸君はマネしないように)。
するとどうでしょう、みるみる間に蛙は巨大化していき、そして美しい貴公子の姿となりました。
「やった!! 人間に戻ったぞ!!」
嬉しさのあまり蛙のように跳び跳ねる貴公子は、さる王国の王子様でした。悪い魔法使いに、蛙にされてしまったのです。
そして翌日。王子様の生国から、一台の馬車が訪れました。
王子生還の方を受け飛んできた執事のハインリヒは、主君を失った悲しみのあまり胸が張り裂けそうになり、胸に鉄のベルトを巻いておりました。そんな折に、王子から手紙が来たのです。ハインリヒの胸は早鐘のように打たれておりました。
そしてお城を尋ねたハインリヒは、その前に佇む美しい王女様を連れた主君の姿を見て、涙と共に鉄のベルトを落としたそうです。
余談
とまあ、現代のお話ではこのように典型的なスリーピングビューティーオチになっているのだが、初版では蛙の蛮行にブチ切れた王女様が蛙をブン投げて壁に叩き付けたショックで元に戻ったというロマンもへったくれもない話になっている。
これではあまりに教訓性が無いからか、現在では「容姿に囚われず勇気を出して一歩を踏み出した優しい王女様」という一面が強調された先刻のような話仕立てになっていることが多い。
ちなみに、同じくグリム童話の白雪姫も初版では白雪姫の棺を運ばされる事に苛ついた従者が棺に八つ当たりをしたところ、衝撃で白雪姫が毒リンゴを吐き出して息を吹き返すという似たような結末であった。
王子様とお姫様のキスによりハッピーエンドを迎えるという結末はいばら姫から取られたものである。
また、あらすじの中でも触れられているが、この童話を元にした映画「プリンセスと魔法のキス」が公開された時、アメリカでは映画を真似してカエルにキスをした子供がサルモネラ菌に感染して病院に運ばれるという事態が続出したという。重ね重ね、読者諸君は絶対にマネしないように。
関連項目
蛙の王女:ロシア民話集の一つ。
本作を題材とした二次創作
カエルの為に鐘は鳴る(1992年に任天堂より発売されたゲームボーイ用ソフト)
かえるにょ・ぱにょ〜ん(1997年にアリスソフトから発売されたアダルトゲームソフト)
ファイナルファンタジー(相手を蛙にカエる魔法「トード」が登場する。治すには乙女のキッスが必要)
仮面ライダー電王(このエピソードから、なぜかカメレオンイマジンが誕生)
魔法戦隊マジレンジャー(カエルにされていた追加戦士に女性メンバーがキスした事がきっかけで呪いが解け、終盤ハッピーエンドを迎える展開となっている)