概要
鱗翅目シロチョウ科モンキチョウ亜科のうちキチョウ属に分類される蝶の総称。
この2種は以前、標準和名でキチョウと呼ばれていた種であり、遺伝子を調べた所、2種が含まれている事が判明した為に区別された。
キチョウという和名は現在のミナミキチョウに与えられたものであり、現在もミナミキチョウの正式な和名はキチョウだが、紛らわしいのでミナミキチョウと呼ばれる事が多い。
ただし、2種の区別は外見上では困難。
2種の総称としての解説
北海道を除く日本全国に分布するシロチョウ科の蝶。
モンシロチョウやモンキチョウよりも一回り小型で、前翅長は1.8~2.7cm。
鮮やかな黄色い翅が特徴的。オスの方が翅の色が濃い傾向がある。
翅の表側の外縁は黒く縁取られるが、秋に羽化する秋型の個体には無い場合が多い。
翅の裏側には褐色の小さな斑紋が散りばめられている。
草原~森林まで広く生息し、街中でもよく見られる一般的な蝶で、河川敷や空地、畑や公園などでよく見られる。
外見が似たモンキチョウと違い、住宅街やオフィス街などの道端でも見られる。
力強く不規則に飛び回り、様々な花の蜜を吸う。
河川敷や沢沿い、湧き水や水溜まりなどの湿った地面に集団で集まり、吸水している事も多い。
幼虫はマメ科の植物を食べる。
成虫で越冬し、気温がある程度上昇した日には真冬でも飛び回る。
枯れ草などに止まると、以外にも翅が周囲に溶け込んで見つけにくい。
ミナミキチョウ
以前キチョウと呼ばれていた学名の種はこちら。
日本の奄美大島~南西諸島に分布し、海外では中国南部、台湾、インドシナ半島、フィリピン、オーストラリア北部に分布する。
沖縄や奄美では様々な場所で見られる身近な蝶の一種。
幼虫の食草はマメ科のアカサヤネム、クサネム、リュウキュウクサネム、アメリカツノクサネム、オカミズオジギソウ、メドハギ、マルバタケハギ、ヤハズソウ 、シロツメクサ、ウマゴヤシ、ムラサキウマゴヤシ、コメツブウマゴヤシ、タイワンコマツナギ、リュウキュウカワラケツメイ 、シイノキカズラ 、ナンテンカズラ 、センナ 、ハマセンナ、モクセンナ、ナンバンサイカチ、ハブソウなどや、クロウメモドキ科のクロウメモドキ、リュウキュウクロウメモドキなど。
成虫は年中見られ、越冬態は無い。
キタキチョウ
日本の本州、四国、九州、南西諸島に分布し、海外での分布は中国南部、朝鮮半島南部、台湾。
日本本土で見られるキチョウはほとんどの場合本種。
山地~市街地まで幅広く見られる普通種。
明るい樹林の林縁を好むが、草原でも見られる。
翅の表側の外縁は黒く縁取られるが、秋に羽化する秋型の個体には無い場合が多い。
翅の裏側には褐色の小さな斑紋が散りばめられている。
ミナミキチョウとは後翅の外縁の曲線が山形になる事などで区別することができるとされるが、区別は困難。
幼虫の食草はマメ科のメドハギ、ミヤギノハギ、ナツハギ、マルバハギ、ツクシハギ、ハイメドハギ、キハギ、ヤハズソウ、ヤマハギなどの萩類や、同じくマメ科のネムノキ、ヒネム(ベニゴウカン)ギンネム、クサネム、フサアカシア、ニセアカシア(ハリエンジュ)、エビスグサ、コマツナギ、ジャケツイバラ、モクセンナ、クサフジ、ウマゴヤシなどや、クロウメモドキ科のクロウメモドキ、ヒメクマヤナギなど。
ネムノキやクサネム、ハギ類を特に好む。
成虫は2月下旬~12月下旬まで長く見られ、成虫で越冬する為、真冬でも暖かい日に見られる事がある。
その他の日本で確認されているキチョウ属
ツマグロキチョウ
本州、四国、九州、屋久島に生息する。沖縄には生息しない。
海外では中国南西部~台湾、インド、ヒマラヤ、東南アジア、ニューギニア島、オーストラリア北部に分布する。
荒地や河川敷などに生息する。
移動性が強く、長距離を移動する事もある。
弱々しくフラフラと飛び回る事や、翅の裏に斜めの帯が入る事、前翅の前端が強く尖る事で区別できる。
幼虫の食草はカワラケツメイだが、愛知県には外来種のアレチケツメイを食べる集団が存在する。
カワラケツメイが減少した影響で本種も激滅しており、絶滅した地域も多い。
越冬形態は成虫。
環境省のレッドリストで絶滅危惧II類に指定されている。
タイワンキチョウ
翅長4~5.5cm程の大型のキチョウ。
翅の黒い縁どりが大きく発達し、よく飛び回りほとんど止まらない事が特徴。
日本では沖縄県に分布し、海外では中国南西部~東南アジア一帯などに分布する。
幼虫の食草はギンネム、アカハダノキ、イタチハギ、ナンテンカズラ、ハマセンナなど。
ホシボシキチョウ
日本では奄美~南西諸島で稀に見られる迷蝶。
海外では中国南部やインド、ヒマラヤ、東南アジア、オーストラリア北部などに分布する
荒地や草地、河川敷などで見られる。
ツマグロキチョウに似ているが翅は丸く、翅の裏側に三列の薄い筋状の斑紋がある。