解説
ロマンシングサガ3
キドラントという村の町長。
(マップ上のアイコンやトレードの町情報では村だが、彼は村長ではなく町長である(注1))
いけにえの穴イベント(SFC版)
村人たちが村のそばの洞窟に住み着いた怪物に生け贄を捧げなければならないと話しており、町長が「お礼はするから洞窟にいる怪物を倒して欲しい」と依頼してくる。しかし主人公達が洞窟に入ると出入口を塞ぎ、主人公達を生け贄にしようとする。ボスを倒せなくても村の女性ニーナが出入口を開けてくれることで洞窟を脱出できるが、代わりにニーナが生贄になってしまう。再び洞窟に入ってボスを倒せばニーナも救出できる。しかしボスを倒したあと町長に話しかけると「私が町長です」としか言わない。お礼をくれたり自分の行為を謝罪することはないのだった・・・。
このイベントは、ゲーム開始時の一連のイベントを終えたあとキドラントに行けばすぐに始められるため、ボスの対処法がわからず詰んだと勘違いしたプレイヤーも多かったのではないか(ボスからは退却でき、出入口まで戻って調べればニーナが外に出してくれる)。そうした事情もあり、やり口の汚い登場人物としてプレイヤーの記憶に強烈に刻まれた。
実はボスのアルジャーノンを作って逃がしてしまった、いわば事件の元凶である女マッドサイエンティストの教授もすぐ近くに住んでおり、一度洞窟から出たあとに彼女から攻略アイテムをもらってくれば楽に倒せるという設計になっている。つまり町長は被害者という側面もあり、教授の存在と攻略法も見つけるのは難しくなく広く知られているのだが、教授が非難されることは稀で、町長がプレイヤーのヘイトを一身に集めた。
- 町長はミニゲーム「トレード」でキドラントを担当するエージェントでもあり、この町でトレードを行うためには嫌でも話しかけなければならないのがまた腹立たしい(トレードでは特に台詞を発することはない)。
ファンの間では、このイベントは容量や納期の都合で関連イベントが削られた事例と推測されることが多かった(注2)。またデータ解析から、表示する台詞のプログラムミスがあるのではないかとも考えられた(注3)――が、バグではなかったことが2014年の「『サガ』シリーズ25周年特別番組」で名言された。その後のインタビューで製作総指揮の河津秋敏氏は、没シナリオなどもなかったと説明しており、「あの場面はこう言ってシラをきるしかないんですよ、町長の立場だと(笑)」と語っている。
2017年3月28日にロマサガ3のPSVita/スマートフォン向けリマスター版の制作が発表されると、タイトルより町長に関する話題の方が上回り、Twitterで募集されたロマサガ3の思い出のシーンで第1位になるなど、ロマサガ3を代表するキャラクター、イベントの1つとして知られている。
イベントの解釈と類例
サガシリーズは自由が売りというイメージがあっただけに、町長に対して手出しできないことに疑問や不満を持つ人も多かったが、ロマサガ3の作中には他にも似たような例はある。政治・経済の要素も多分に盛り込まれた作品のため、手出しできないことにこそ意味があったのかもしれない。
- ヤーマスの悪徳企業ドフォーレ商会は麻薬の密売や地上げを行うだけでなく、モンスターまで使役するが、商会がなくなると困るという住人の声がある。道具屋では会長と思しき老人と会話もできるが、ロビンと共闘しモンスターを倒す際を除き、武力に訴えることはできない。
- 町の中にいる討伐可能な人物としてはボルカノがいる。彼はモンスターを使役しているだけでなく、住人から迷惑がられる余所者だった。
- 主人公の一人ハリードには、祖国の仇である神王教団のローブを、潜入のためであっても着るのを拒否するというイベントがある一方で、神王教団長のティベリウスを討つことはできず、仲間にすれば一緒に冒険することができる。
町長を擁護する意見
その他の作中の描写から、町長を擁護、肯定的に捉えるプレイヤーの意見もある。
- 住人たちの台詞がみな同じことから、村を挙げて旅人に魔物退治をさせる作戦を行っていると考えられる。住人と旅人のどちらかを犠牲にしなくてはいけないなら、旅人を犠牲にするのは仕方がない。町長は責任者として断罪される覚悟を持って「私が町長です」と言っているのではないか。
- ロマサガ3の世界は、荷物運びイベントなどを踏まえると陸路の旅はかなり危険であり、トレード物件を見ると陸運を担うキャラバンなども各地にあることがわかる(注4)。個人・少人数で旅をする人間はそう多くなく、武装した主人公達は盗賊団が偽装したものと思われたのかもしれない。キドラントの住人が村ではなく町と言い張っているのは、盗賊に狙われにくくするためではないか。
- SFC版トレードではキドラントの物件は成長率が良い、アビスリーグに入りにくいといった特徴があったらしい。ここから町長はむしろ善良な人物という解釈もできるかもしれない。
リマスター版の追加要素
アルジャーノン撃破後に話しかけると選択肢が発生するようになった。
内容は「報酬をよこせ」or「一発なぐらせろ」or「用はない」というもの。報酬を選ぶと1万オーラムというロマサガ3では最大級の報酬をくれ、例の台詞の後に「フッ」と勝ち誇ったような笑いを浮かべるようになる。殴ろうとすると「ヒーっ!」と悲鳴を上げて逃げ出すという、なんとも情けない姿を晒す(つまり脅かすことはできるが、殴ることはできない)。
エンペラーズサガ
特定のイベントで、悪に染まった主人公が彼をそそのかして生贄を捧げさせる場面があった。
ロマンシング佐賀
公式ページでは、関連グッズの欄に登場。キャラクター紹介でも、他のキャラクターと違って「私が町長です。」の一言だけだった。
ロマンシングサガリ・ユニバース
事前登録キャンペーンの特典として登場。敵の腕力を減らす骨砕き、知力を減らす脳天割りを閃くテクニシャン。また初期アビリティとして敵のヘイトを自身に向ける「大物オーラ」を初期習得しており、レベルを上げる事で瀕死時に被ダメージを低減する「折れない心」も習得できる。その後、公式ツイッターのフォロワー15万人記念での配布や、イベント報酬としても登場している。
脚注
- (注1)キドラントの住人はどの台詞でも町と呼んでおり、ツヴァイクの町にもキドラントを町と呼ぶ人がいる。
- (注2)ロマサガ3には水晶の廃墟やドフォーレの道具屋の奥、ロム内にデータのみ残る数々の没モンスターなど、様々な関連イベントやマップなどが削られたと思しき部分があった。またこのイベント自体、主人公達がニーナの恋人ポールと出会っていると会話が追加される分岐があるほか、ポールが村に戻るとボスが倒された状態になり、教授の次のイベントが進行しなくなる場合があるといった問題もあった。
- (注3)「私が町長です」は本来ならばイベント発生前に言うべき台詞だったのが、プログラムミスが原因でイベント後になってしまったのではないか、というもの。根拠として、イベント終了後の村人と町長の台詞がどちらもイベント前の台詞として自然なこと、データ内の台詞の格納順がイベント台詞の前に設置されていることの2点があった。一方で「イベント発生前の状態」が存在しないため、台詞のフラグがおかしくなっている可能性が考えられた。
- (注4)現実のキャラバンは主に砂漠・草原地帯で活用されたが、ロマサガ3では地域を問わず存在する。冒険者を目指してキドラントを旅立ったポールが盗賊になってしまったのも、こういった世界情勢によるものと推測できる。