概要
ベルギーの新聞社の編集員であったエルジュ(本名ジョルジュ・レミ)による作品。
同国の公用語の一つであるフランス語で執筆された漫画(バンドデシネ)で世界各地で翻訳されているが、日本語版は絵本として紹介されている。
1929年より新聞漫画として連載されていたが、のちに創刊された専門の雑誌を通して書籍化された。
作品本編自体は、作者の逝去により未完のままとなっている。
主人公の少年記者タンタンと相棒の白い犬スノーウィが世界中を旅行し、事件に巻き込まれる。
連載当時のトレンドや国際情勢を反映した場面も多くある。
ストーリーは1巻か2巻ごとに完結する形式。
他の話どうしの直接的な繋がりはあまりないため、順番が入れ替わっても問題なく読める。
実際日本語版の刊行順は原作の発表順と異なっている。
初期作品はモノクロであったが、のちに加筆・修正のうえフルカラー化されている。
フルカラー後はデフォルメを効かせた明瞭な線画と鮮やかな彩色が特徴的で、この技法は「リーニュ・クレール」とも呼ばれる。
その他にも、衛星アニメ劇場やカートゥーンネットワークでテレビアニメ版が放映されたり、2011年には3Dアニメ映画『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』が公開されてソフト化もされた。
主要登場人物
ヒロインは登場せず、女性のキャラクターが少ない(「月世界探検」など最初から最後まで女性が全く登場しない話もある)。これは作者によると「女性を笑い者にしたくないから」との事である。
主人公の少年記者。年齢不詳、国籍はベルギー(アニメ版より)。いつもニッカーボッカを穿いている活動的な少年である。弱い者を見ると放っておけない。
タンタンの愛犬で良き相棒。真っ白い犬。タンタンの言いつけにはよく従うが、骨を見せられると言いつけも忘れて飛びついてしまう。フランス語の名前はミルー(Milou)。
初登場は「ファラオの葉巻」。
国際警察に所属するそっくりさんな二人組の刑事。腕利きということになっているが、やたらとドジを噛ましたり外国に行くのにその国の民族衣装をわざわざ着込んでかえって目立ったりしている。デュポンとデュボンを見分けるポイントは口髭の形。原語ではそれぞれDupond とDupontであり、発音は全く同じ「デュポン」となる。なお二人の血縁は全くなく、双子でも何でもない。
- ハドック船長
初登場は「金のはさみのカニ」。
ひょんなことからタンタンが窮地から救いだした船長。フランス語では「H」の音を発音しないので、原語版では「アドック」と読む。本名はアーチボルト(日本語版ではヘンドリック)。
イギリス人だが、祖先はフランス貴族だった時期があるらしい。「海員禁酒連盟」の会長であるにもかかわらずお酒が大好き。
これまたひょんな事から大きな屋敷を相続して住んでいる。
「コンコンニャローのバーロー岬!」等川口恵子さんの名翻訳のおかげで様々な名言を産み出した。
- ビアンカ・カスタフィオーレ(カスタフィオーレ夫人)
初登場は「オトカル王の杖」。世界的な女性歌手。せっかくの歌声もタンタンやハドック船長らには騒音としか思われていないようだ。イタリア人。
初登場は「レッド・ラッカムの宝」。優れた物理学者。細身ではげ頭に眼鏡をかけている。
20世紀前半にはまだ無かったカラーTVやサメ型潜水艇、果ては月まで行くロケットさえも作り出した。耳が遠くて人の話していることを四六時中間違えるが、「馬鹿」という言葉は禁句。タンタンと船長の二人掛かりでも押さえきれないほどにブチ切れる。
初登場は「なぞのユニコーン号」。ハドック船長が住むムーランサール城の執事。
初登場の時は、前の城主が起こした財宝目当ての銃撃事件や拉致監禁事件など、数々の犯罪に加担していたが、本人は犯罪だとは知らず、解決後に無罪釈放された。
初登場は「かけた耳」。とある南米の国の将軍。
大統領になったが革命で国を追われ、再び自国へ・・・とけっこう波乱に富んだ生活をしている。
初登場は「燃える水の国」。アラビアのケメド国の首長。
息子であるアブダラーを溺愛しており、その為か息子のアブダラーは非常にイタズラ好き。
初登場は「青い蓮」。中国人、タンタンが中国へ行ったときに友達になった少年。漢字名は「張仲仁」と表記する。モデルは作者エルジェの友人といわれる。
初登場は「ファラオの葉巻」。タンタンの宿敵。ハゲ頭にチョビ髭、片眼鏡が特徴。
世界に名だたる富豪で、映画や船舶会社など多くのビジネスも手掛ける金持ち。
だがその裏では麻薬密輸、奴隷貿易、詐欺に誘拐、武器売買、さらにはハイジャックとなんでもやっている。しかしながら自らの豊富な財力をもって、現場からもあっという間に逃走してしまう。
初登場は「ファラオの葉巻」。ラスタポプロスの右腕ともいえる部下。タンタンの宿敵その2。
初登場時は麻薬密輸に関わっており、その後「金のはさみのカニ」でも同じく麻薬密輸に関わっている。このときは表向きハドック船長の部下であった。
その後も奴隷貿易や大富豪誘拐事件など数々の国際犯罪に加担している。
- ドクター・ミュラー
初登場は「黒い島のひみつ」。タンタンの宿敵その3。ハゲ頭に濃い髭が特徴。
表向きは医者だが、その裏ではニセ札製造を行っていた。さらにその後の作品ではパイプライン破壊や政権打倒のため諸国を暗躍している。
エルジェ
作者本人。原作ではタンタンのコンゴ探検で登場し、アニメでは様々な場面で本業や別の仕事でカメオ的に登場、1回だけセリフもあった。BS放送時には「エルジェを探せ」という、彼の出演した場面を探すコーナーがあった。
シリーズ一覧
順番はオリジナル版。
- タンタン ソビエトへ (1930年)
- タンタンのコンゴ探険 (1931年)
- タンタン アメリカへ (1932年)
- ファラオの葉巻 (1934年)
- 青い蓮 (1936年)
- かけた耳 (1937年)
- 黒い島のひみつ (1938年)
- オトカル王の杖 (1940年)
- 金のはさみのカニ (1941年)
- ふしぎな流れ星 (1942年)
- なぞのユニコーン号 (1943年)
- レッド・ラッカムの宝 (1944年)
- ななつの水晶球 (1948年)
- 太陽の神殿 (1949年)
- 燃える水の国 (1950年)
- めざすは月 (1953年)
- 月世界探検 (1954年)
- ビーカー教授事件 (1956年)
- 紅海のサメ (1958年)
- タンタン チベットをゆく (1960年)
- カスタフィオーレ夫人の宝石 (1963年)
- シドニー行き714便 (1968年)
- タンタンとピカロたち (1976年)
- タンタンとアルファアート (1986年)(未完)
余談
- 大貫妙子のアルバム『COPIN(コパン)』には、この作品をテーマとした楽曲、『タンタンの冒険 Les aventures de TINTIN』が収められている。
- 福音館書店から発行された巻数は上記と一致していない為、ムーランサール城を手に入れた筈のハドック船長が後の巻で普通の暮らしをしていたりするが、2007年に全巻が揃った為、金銭に余裕のある方は全部買って元々の順に並べよう。
また、劇場版の公開に合わせて700円とお手頃価格なペーパーバック版も発売された。
学校や公民館の図書館に置いてあるので小さい頃に読んだ事がある人も多いかもしれない。